ヘンリー「ジミーは根っからの悪党だ。人殺しや恐喝でのし上がった。でも彼がいちばん好きなのは盗み。ほんとうに、こころの底から楽しんで盗みを働いた」―『グッドフェローズ』(90)より
敬愛するデ・ニーロは盗人が似合う。
イコール、ギャングみたいな印象があるが、『グッドフェローズ』はその両方、トップ画像・文末動画の『ヒート』(95)では強盗、『ミーン・ストリート』(73)ではコソ泥、『RONIN』(98)ではプロの強奪犯を演じている。
狂人もいいが、冷血な犯罪者を演じるデ・ニーロは格好いい。
格好いいなんて評せるのも、映画のなかの話だから、、、なんだけど。
私服保安員になった自分が「初めて窃盗犯を捕まえたとき」の話・・・の最終回。
当たり前のことだが、実際の泥棒はデ・ニーロのように格好よくはない。
あれと同じだ、パソコンの遠隔操作でいくつもの冤罪事件を引き起こした片山某という被告。
彼が真犯人だと告白するまで、自分なんかは「そーとー頭の働くヤツだから、きっとクールなイケメンにちがいない」と思っていたんだもの。
だから、すべてが彼の犯行と分かったとき落胆したよ。ズッコケタよ。
単なるモテないマザコンじゃねーか! って。
自分の目の前でパソコンのケーブルを盗んだのは、ホームレス二人組だった。
そう、いっちゃ悪いがパソコンに無縁であろうホームレス。
うちひとりが店員に罵声を浴びせて周囲の気を引くあいだに、相棒がジャンパーの内ポケットにケーブルを仕舞いこんだ。
なんでケーブル?
この際、なんだってよかったんだと思う。
パソコンに差し込むものとも思わずに盗ったんじゃないか。
犯行現場を「この場できっちり目撃すること」を現認(げんにん)というが、私服保安員がここまではっきりと現認出来るケースも珍しい。
ラッキーちゃあラッキーだが、なんだか拍子抜けしてしまった。
ある種のビギナーズラック?
・・・う~ん、ちがうと思うな。
単にラッキーだったというか。
先輩保安員、登場。
「え? あいつらが盗ったの?」
「はい、そうです」
「現認した?」
「えぇ、この目ではっきりと」
しかし先輩は、浮かぬ顔をしている。
「面倒だなー、あいつらか」
ベテランになると、いわゆる「大物」にしか興味がいかない。
「小物を3人」挙げるより、「大物をひとり」挙げたい。
しかも相手はホームレス、身柄引受人がくるかどうかも分からないし、手続きが面倒だと予想したのである。
まぁでも犯罪は犯罪。
現認「してしまった」し、これは新人を教える研修である。
「じゃ俺が声をかけるから、君はサポートして」
「・・・サポートって、なにをすればいいんですか」
「逃げないように、ベルトを掴むとか」
「分かりました」
多少の抵抗は見せるも、警察署に連行することは出来た。
問題は、ここからだった。
「お兄さん! どうせ捕まえてくるんだったら、もっとマシなヤツにしてくれよ!」
中年の警官にそういわれた。
ケーブルを盗ったほうのヤツが、取調室で脱糞してしまったのである。
クソモラシ。
警官たちは「新聞紙持ってきてー!」とかなんとかいって、ワイワイ騒いでいる。
ホームレスだから体臭がきつかった。
そのうえ、クソまで漏らしちゃった。
取調室大混乱、、、みたいな。
なるほど。
先輩保安員は、こういうところまで見抜いて? 面倒だといったのかもしれない。
しかし、である。
関係者の99%が不愉快な顔をしているこの現場で、ただひとり自分だけが清々しい顔をしていた。満足そうな顔をしていた。
研修の初日で、1時間も経たずに結果を残したわけだから。
厄介な小物―だったかもしれないが、大物だろうと小物だろうと得点を決めたことに変わりはない。
「自分は出来る」―そう思っちゃったのは自分ひとりだけでなく、自分を採用した会社もそうだった。
そこでうちのボスは「口だけの契約」だった委託研修の内容を「なかったこと」にして研修を取り消し、自分ひとりしかスタッフの居ない状態で私服保安業を始めていくのである。
窃盗にはいろんなケースがあるのに、たったひとつの事案で「よし分かった!」という危なさ。
我ながら、ムチャクチャな展開だなぁ! と思う。
研修を請け負った警備会社が激怒したのも無理はない・・・が、それはまた別の話だ。
おわり。
※銃弾飛び交う、スケールの大きな銃撃戦。
マイケル・マンの演出、完璧。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『昔の名前で出ています』
敬愛するデ・ニーロは盗人が似合う。
イコール、ギャングみたいな印象があるが、『グッドフェローズ』はその両方、トップ画像・文末動画の『ヒート』(95)では強盗、『ミーン・ストリート』(73)ではコソ泥、『RONIN』(98)ではプロの強奪犯を演じている。
狂人もいいが、冷血な犯罪者を演じるデ・ニーロは格好いい。
格好いいなんて評せるのも、映画のなかの話だから、、、なんだけど。
私服保安員になった自分が「初めて窃盗犯を捕まえたとき」の話・・・の最終回。
当たり前のことだが、実際の泥棒はデ・ニーロのように格好よくはない。
あれと同じだ、パソコンの遠隔操作でいくつもの冤罪事件を引き起こした片山某という被告。
彼が真犯人だと告白するまで、自分なんかは「そーとー頭の働くヤツだから、きっとクールなイケメンにちがいない」と思っていたんだもの。
だから、すべてが彼の犯行と分かったとき落胆したよ。ズッコケタよ。
単なるモテないマザコンじゃねーか! って。
自分の目の前でパソコンのケーブルを盗んだのは、ホームレス二人組だった。
そう、いっちゃ悪いがパソコンに無縁であろうホームレス。
うちひとりが店員に罵声を浴びせて周囲の気を引くあいだに、相棒がジャンパーの内ポケットにケーブルを仕舞いこんだ。
なんでケーブル?
この際、なんだってよかったんだと思う。
パソコンに差し込むものとも思わずに盗ったんじゃないか。
犯行現場を「この場できっちり目撃すること」を現認(げんにん)というが、私服保安員がここまではっきりと現認出来るケースも珍しい。
ラッキーちゃあラッキーだが、なんだか拍子抜けしてしまった。
ある種のビギナーズラック?
・・・う~ん、ちがうと思うな。
単にラッキーだったというか。
先輩保安員、登場。
「え? あいつらが盗ったの?」
「はい、そうです」
「現認した?」
「えぇ、この目ではっきりと」
しかし先輩は、浮かぬ顔をしている。
「面倒だなー、あいつらか」
ベテランになると、いわゆる「大物」にしか興味がいかない。
「小物を3人」挙げるより、「大物をひとり」挙げたい。
しかも相手はホームレス、身柄引受人がくるかどうかも分からないし、手続きが面倒だと予想したのである。
まぁでも犯罪は犯罪。
現認「してしまった」し、これは新人を教える研修である。
「じゃ俺が声をかけるから、君はサポートして」
「・・・サポートって、なにをすればいいんですか」
「逃げないように、ベルトを掴むとか」
「分かりました」
多少の抵抗は見せるも、警察署に連行することは出来た。
問題は、ここからだった。
「お兄さん! どうせ捕まえてくるんだったら、もっとマシなヤツにしてくれよ!」
中年の警官にそういわれた。
ケーブルを盗ったほうのヤツが、取調室で脱糞してしまったのである。
クソモラシ。
警官たちは「新聞紙持ってきてー!」とかなんとかいって、ワイワイ騒いでいる。
ホームレスだから体臭がきつかった。
そのうえ、クソまで漏らしちゃった。
取調室大混乱、、、みたいな。
なるほど。
先輩保安員は、こういうところまで見抜いて? 面倒だといったのかもしれない。
しかし、である。
関係者の99%が不愉快な顔をしているこの現場で、ただひとり自分だけが清々しい顔をしていた。満足そうな顔をしていた。
研修の初日で、1時間も経たずに結果を残したわけだから。
厄介な小物―だったかもしれないが、大物だろうと小物だろうと得点を決めたことに変わりはない。
「自分は出来る」―そう思っちゃったのは自分ひとりだけでなく、自分を採用した会社もそうだった。
そこでうちのボスは「口だけの契約」だった委託研修の内容を「なかったこと」にして研修を取り消し、自分ひとりしかスタッフの居ない状態で私服保安業を始めていくのである。
窃盗にはいろんなケースがあるのに、たったひとつの事案で「よし分かった!」という危なさ。
我ながら、ムチャクチャな展開だなぁ! と思う。
研修を請け負った警備会社が激怒したのも無理はない・・・が、それはまた別の話だ。
おわり。
※銃弾飛び交う、スケールの大きな銃撃戦。
マイケル・マンの演出、完璧。
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『昔の名前で出ています』