日常会話で「億万長者」ということばを使ったことがない。
使ったことがないし、使っているひとに会ったこともない。
「金持ち」「リッチマン」のほうが通用し易いので、大抵はこのふたつのことばを使う。
だからであろうか。
QTタランティーノの出世作『パルプ・フィクション』(94)において、ハーベイ・カイテルが「君のおじさんは億万長者なのか?」という台詞があって、その日本語字幕に違和感を抱いたのだった。
単に「金持ち」でよくね? と。
そんなわけで。
今宵の映画10傑は、金持ちのキャラクターを選出してみた。
富豪が居て、成金が居て、犯罪者も居る。
出自や環境はちがっても「金は持っているのに、幸福には見えない」という共通点があるのは、
映画監督たちがけっして金持ちではないという背景も手伝って「金で幸福は買えない」という主張が出てしまうのだろうか、
しかし演じ手のなかには高額なギャランティをもらえる俳優が居たりして、ほんとうのところはどうなのかな? などと万年貧乏な自分は思っちゃうのだけれども。
金で幸福を買えないことは、なんとなく分かる。
分かるが、それでも自分はチャリを走らせながら、「どこかに金、落ちてないかな~」などと目をキョロキョロさせる不審な行動をやめられないのである。
(1)『アビエイター』(2004…トップ画像)
富豪、ハワード・ヒューズの物語。
精神的にやばかった彼ではあるが、潤沢な資金があったからこそ、あんなに派手な映画を「ほぼ個人で」撮ることが出来たのだろう。
(2)『天国と地獄』(63)
貧乏人の逆恨みと「勘違い」によって、他人の子どものために身代金を払う羽目になった男。
刑事のひとりはいう、「貧乏育ちのせいか、金持ちはどうも虫が好かん。最初はイヤな野郎だと思っていたんですがね」
そう、権藤は苦労して財産を築いた男だから、身代金を用意する「広いこころ」を持っていたんだよね。
(3)『ノーカントリー』(2007)
「偶然」大金を手にした男の、恐怖と逃走の物語。
あんな狂人が追いかけてくるなんて誰も想像しないだろう、自分もきっと金をいただいちゃうと思う。
(4)『市民ケーン』(41)
死ぬ間際に「バラのつぼみ」と呟いた、新聞王ケーンの生涯とは。
金と権力ですべてをほしいままにした・・・ように見える男でも、やっぱり手に入れられなかったものがあったのだ。
(5)『レインマン』(88)
兄の天才的な能力―記憶力、計算速度―に助けられ、経済的ピンチを「カジノで」切り抜けた男。
この10傑のなかでは、比較的「幸福な」物語である。
(6)『カジノ』(95)
マフィアが牛耳っていたころの70年代のラスベガスを描く、スコセッシの大作。
金がどのようにマフィアに渡るのかを流麗なカメラワークで表現していて、いろいろ勉強になる。
(7)『わたし出すわ』(2009)
なぜか大金を持っているヒロイン(小雪)が、同級生たちの夢を実現させようと金を出す。出す。出しまくる。
天才・森田芳光による久し振りのオリジナル作品であり、話は面白いが、後半やや失速するのが惜しい。
(8)『街の灯』(31)
浮浪者チャーリーは、自死しようとしていた富豪を助ける。
富豪は酔っているあいだだけチャーリーを命の恩人だ親友だと歓迎するが、酔いが醒めると知らんぷり。
(浮浪者を演じ続けた)チャップリンらしい金持ちの描きかただよなぁ、、、なんて思う。
(9)『泥棒成金』(55)
ヒッチコックが持つ一側面「優雅さ」だけで撮られたような、ひじょうにお洒落なサスペンス。
金持ちの宝石しか盗まない泥棒の犯罪と恋を描き、なんだか別世界の御伽噺のようだが、たまにはこういうのを観て現実の「プア感覚」を忘れるのもいい。
だいいち、泥棒稼業のクセしてイケメンだし、そもそもが生活に困っていなさそうだし。
原題『To Catch a Thief』―これを「泥棒」と「成金」の組み合わせで表現した担当者はえらい!
(10)『大逆転』(83)
エリートとホームレスを「入れ替えたら」どうなるのか。
会社を経営する兄弟の「くだらん賭け」により、無一文になったエリートと、裕福な暮らしを約束されたホームレス。
「幸福なんて、自分しだい。金は関係ない」というようなエンディングは気持ちいいが、そういい張る強さは、現在の自分は持ち合わせていなかったりして・・・・・。
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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『黄金週間特別企画(11)りぼーん』
使ったことがないし、使っているひとに会ったこともない。
「金持ち」「リッチマン」のほうが通用し易いので、大抵はこのふたつのことばを使う。
だからであろうか。
QTタランティーノの出世作『パルプ・フィクション』(94)において、ハーベイ・カイテルが「君のおじさんは億万長者なのか?」という台詞があって、その日本語字幕に違和感を抱いたのだった。
単に「金持ち」でよくね? と。
そんなわけで。
今宵の映画10傑は、金持ちのキャラクターを選出してみた。
富豪が居て、成金が居て、犯罪者も居る。
出自や環境はちがっても「金は持っているのに、幸福には見えない」という共通点があるのは、
映画監督たちがけっして金持ちではないという背景も手伝って「金で幸福は買えない」という主張が出てしまうのだろうか、
しかし演じ手のなかには高額なギャランティをもらえる俳優が居たりして、ほんとうのところはどうなのかな? などと万年貧乏な自分は思っちゃうのだけれども。
金で幸福を買えないことは、なんとなく分かる。
分かるが、それでも自分はチャリを走らせながら、「どこかに金、落ちてないかな~」などと目をキョロキョロさせる不審な行動をやめられないのである。
(1)『アビエイター』(2004…トップ画像)
富豪、ハワード・ヒューズの物語。
精神的にやばかった彼ではあるが、潤沢な資金があったからこそ、あんなに派手な映画を「ほぼ個人で」撮ることが出来たのだろう。
(2)『天国と地獄』(63)
貧乏人の逆恨みと「勘違い」によって、他人の子どものために身代金を払う羽目になった男。
刑事のひとりはいう、「貧乏育ちのせいか、金持ちはどうも虫が好かん。最初はイヤな野郎だと思っていたんですがね」
そう、権藤は苦労して財産を築いた男だから、身代金を用意する「広いこころ」を持っていたんだよね。
(3)『ノーカントリー』(2007)
「偶然」大金を手にした男の、恐怖と逃走の物語。
あんな狂人が追いかけてくるなんて誰も想像しないだろう、自分もきっと金をいただいちゃうと思う。
(4)『市民ケーン』(41)
死ぬ間際に「バラのつぼみ」と呟いた、新聞王ケーンの生涯とは。
金と権力ですべてをほしいままにした・・・ように見える男でも、やっぱり手に入れられなかったものがあったのだ。
(5)『レインマン』(88)
兄の天才的な能力―記憶力、計算速度―に助けられ、経済的ピンチを「カジノで」切り抜けた男。
この10傑のなかでは、比較的「幸福な」物語である。
(6)『カジノ』(95)
マフィアが牛耳っていたころの70年代のラスベガスを描く、スコセッシの大作。
金がどのようにマフィアに渡るのかを流麗なカメラワークで表現していて、いろいろ勉強になる。
(7)『わたし出すわ』(2009)
なぜか大金を持っているヒロイン(小雪)が、同級生たちの夢を実現させようと金を出す。出す。出しまくる。
天才・森田芳光による久し振りのオリジナル作品であり、話は面白いが、後半やや失速するのが惜しい。
(8)『街の灯』(31)
浮浪者チャーリーは、自死しようとしていた富豪を助ける。
富豪は酔っているあいだだけチャーリーを命の恩人だ親友だと歓迎するが、酔いが醒めると知らんぷり。
(浮浪者を演じ続けた)チャップリンらしい金持ちの描きかただよなぁ、、、なんて思う。
(9)『泥棒成金』(55)
ヒッチコックが持つ一側面「優雅さ」だけで撮られたような、ひじょうにお洒落なサスペンス。
金持ちの宝石しか盗まない泥棒の犯罪と恋を描き、なんだか別世界の御伽噺のようだが、たまにはこういうのを観て現実の「プア感覚」を忘れるのもいい。
だいいち、泥棒稼業のクセしてイケメンだし、そもそもが生活に困っていなさそうだし。
原題『To Catch a Thief』―これを「泥棒」と「成金」の組み合わせで表現した担当者はえらい!
(10)『大逆転』(83)
エリートとホームレスを「入れ替えたら」どうなるのか。
会社を経営する兄弟の「くだらん賭け」により、無一文になったエリートと、裕福な暮らしを約束されたホームレス。
「幸福なんて、自分しだい。金は関係ない」というようなエンディングは気持ちいいが、そういい張る強さは、現在の自分は持ち合わせていなかったりして・・・・・。
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