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にっぽん男優列伝(356・最終回)渡哲也

2017-01-19 00:10:00 | コラム
~にっぽん男優列伝、最終回~

41年12月28日生まれ、75歳。
島根出身。

公式プロフィール


きょーれつな、違和感。

平仮名で表記してしまうほど、違和感を抱きました。

北野武が監督した『BROTHER』(2001)、渡哲也(わたり・てつや)さんはヤクザの組長を演じています。

まぁどうしたことでしょう。

ヤクザの世界を描いたこの映像空間に、ヤクザが似合うはずの渡さんが「なぜ、しっくりこないのか」。

モノスゴ乱暴にいってしまえば、相性の問題かと。

それしか、いいようがありません。

『ゴッドファーザー』(72)の世界に、『グッドフェローズ』(90)のキャラクターが紛れ込んでしまったというか。

似て非なるもの、、、ということなのでしょうか。


角刈りのサングラス、という印象が強い渡さんですが、父親が酔うとよく歌っていたことから、自分にとっては『くちなしの花』のひと、、、になるのかもしれません。

ともあれ、この連載の最終回に相応しい俳優さんでよかった。




<経歴>

実弟は渡瀬恒彦。

空手、柔道の有段者。

浅丘ルリ子の共演者を募るオーディションに、弟さんが「勝手に」応募。
渡さん本人は、その気はなかったものの、石原裕次郎に憧れていたため「試しに」日活へ。
そこでスカウトされ、64年に日活専属の俳優に。

映画俳優デビュー作は、65年の『あばれ騎士道』。

『青春の裁き』(65)、『真紅な海が呼んでるぜ』(65)、『泣かせるぜ』(65)、『拳銃無宿・脱獄のブルース』(65)、『星と俺とで決めたんだ』(65)。

「ぜ」とか「だ」で終わるタイトルの映画が多いのは「時代」であり、それぞれのスタジオが持っていた個性でもありました。
つまりスタジオシステムが残っていた「ぎりぎり」の時代を生きた俳優であり、また、数々の身体的な受難と戦ってきたひとでもあります。

鈴木清順の『東京流れ者』(66)、
『赤いグラス』(66)、『逢いたくて逢いたくて』(66)、『骨まで愛して』(66)、『愛と死の記録』(66)
『続東京流れ者・海は真っ赤な恋の色』(66)、裕次郎の大ヒット作のリメイク『嵐を呼ぶ男』(66)、
『青春の海』(67)、『夢は夜ひらく』(67)、『陽のあたる坂道』(67)、『反逆』(67)、『錆びたペンダント』(67)、『紅の流れ星』(67)、『東京市街戦』(67)、
『無頼より 大幹部』(68)、『男の掟』(68)、『大幹部・無頼』(68)、『大幹部・無頼非情』(68)、
『あゝひめゆりの塔』(68)、『無頼・人斬り五郎』(68)、『花ひらく娘たち』(69)、『地獄の破門状』(69)、『野獣を消せ』(69)、『無頼・殺せ』(69)、『やくざ渡り鳥・悪党稼業』(69)、『前科・仮釈放』(69)、
『大幹部・殴り込み』(69)、『荒い海』(69)、『昭和やくざ系図・長崎の顔』(69)、『やくざ番外地・抹殺』(69)。

『やくざの横顔』(70)、『斬り込み』(70)、『スパルタ教育・くたばれ親父』(70)
藤田敏八の『新宿アウトロー・ぶっ飛ばせ』(70)、『関東流れ者』(71)、『関東幹部会』(71)、『さらば掟』(71)。

70年代―日本映画の斜陽化を受け、日活がロマンポルノ路線に舵を切る。
渡さんは柄じゃないからと退社を決意します。

「顔つきといい好むジャンルといい、東映だろう」とシロートの自分は単純に思うわけですが、裕次郎に憧れていた渡さんは敢えて石原プロモーションを選びました。
そのころ石原プロは、倒産寸前だったにもかかわらず!!

渡さん主演による『西部警察』のシリーズ(79~、テレビ朝日)は、石原プロ再建のためのプロジェクトだったというわけです。
(87~2011年まで、社長を務める)


日活以降の映画出演作をまとめましょう。

『追いつめる』(72)、『剣と花』(72)、『人生劇場 青春・愛欲・残侠篇』(72)、『反逆の報酬』(73)、『花と龍 青雲篇 愛憎篇 怒涛篇』(73)、『ゴキブリ刑事』(73)、『野良犬』(73)、『人間革命』(73)、『ザ・ゴキブリ』(73)、
映画史的に評価の高い『仁義の墓場』(75)、
『続・人間革命』(76)、『やくざの墓場 くちなしの花』(76)。

肋膜炎に始まり、急性肝機能不全症や腓腹筋断裂を患い、そして直腸癌の危機に直面。
流れた企画も多いですが、不屈の精神力で何度も復活。

ただ、そのため、80年代以降の映画出演は極端に少なくなりました。

『時計―Adieu l’Hiver―』(86)、
『第1回欽ちゃんのシネマジャック「港」』(93)、『わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語』(96)、
走って大丈夫なのかと観客のほうが心配した『誘拐』(97)、『時雨の記』(98)、
『長崎ぶらぶら節』(2001)、『修羅の群れ』(2002)、『レディ・ジョーカー』(2004)、最新作は『男たちの大和/YAMATO』(2005)。

俳優活動をつづけているっていうだけで、元気をもらえるひとも多いでしょうね。


以上、にっぽん男優列伝でした。
(たぶん5年くらいやってた! 長かった…)

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『にっぽん男優列伝・特別篇:個人的ベスト男優10人』
コメント (3)
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