~大島渚のキャリア10傑~
出来上がったシナリオ―かなりの自信作―を、コンクールへの出品ではなく、まず著名な映画作家に読んでもらいたい。
そう考えた22歳の自分は、大島渚の住む鵠沼に向かった。
(以下、敬意を表してオオシマと表記する)
アポなしである。
「瞬間湯沸かし器」と称されることの多い怒りっぽい監督なので、どやされるかもしれない。
いっぽうで情熱家としても知られるから、逆に褒められるのではないか・・・などと、いろいろ想像した。
呼び鈴(だった)を鳴らすと、出てきたのは監督夫人。
小山明子として、オオシマ絶頂期を様々な側面から支えた才女がそこに立っていた。
「―そう、町田から来たの? いいところよね。でもごめんね、主人、いま体調が悪くて、ひとに会わせられる状態じゃないの」
「・・・そうですか」
「(シナリオを受け取り)でも、読むことは出来るから。ちゃんと渡しておきますからね」
「ありがとうございます」
たったそれだけの会話だったけれど、なんだか感動したなぁ!!
オオシマ、2013年1月15日に鬼籍に入る。
合掌。
(1)『絞死刑』(68)
死刑に反対するというより、死刑「制度」に異を唱えるという異色の国家批判映画。
それでいて笑えるというのが、この映画の面白さ。
予告編の最後が強烈なので、とにかくこれだけでも観てほしい。
ナレーションは、オオシマ自身が担当。
(2)『愛のコリーダ』(76)
猟奇的な側面で語られることの多い阿部定事件を、定と吉蔵の愛の神話として描く。

この物語に嫉妬を抱く男女は多いだろう、自分もそうなんだ。
(3)『少年』(69)
いわゆる「当たり屋」で生計を立てていた一家に焦点を当て、近代日本の暗部を捉えてみせる。
少年を演じる阿部哲夫の瞳が、ひたすら素晴らしい。
(4)『日本の夜と霧』(60)
公開打ち切りを決定したことに激怒したオオシマが、松竹を退社したことで知られる問題作。
延々と政治論争を繰り広げる過激な創りだが、めっぽう面白い。
(5)『儀式』(71)
ある一家の儀式―冠婚葬祭―を繰り返し描くことにより、見えてくるニッポン。
という狙いがあったはずだが、やや観念的に過ぎ、捉えどころがなくなってしまった印象は受ける。
ただ小山明子のエロスを堪能出来たので、結果オーライ! と自分は考えていたり。

(6)『青春残酷物語』(60)
無軌道な若い男女を描き、新世代の映画誕生を高らかに謳いあげる。
青りんごをかじる川津祐介―いま観れば、まさに「青いね!」となるかもしれないが、象徴的なショットとして記憶に残る。
(7)『戦場のメリークリスマス』(83)
はっきりいえば物語として、うまくまとまっているとは思えない。
思えないが、音楽の力でそれをカバーしている。
(8)『日本春歌考』(67)
「考」とはいうが、春歌に対する論考が展開されるわけではない、ただ延々と春歌を歌うだけの行き当たりばったり、、、な珍作。
前衛にもほどがある! と初見(高校2年生)は思ったが、伊丹十三が『家族ゲーム』(83)以上に好演しているので飽きることはない。
(9)『飼育』(61)
捕えられた黒人兵士が、村で「飼育」されていく。
大江健三郎、初期の代表作を映画化。
黒人兵と少年たちとの交流がきちんと描かれるので、ほかのオオシマ映画に比べれば観易いのかも。
(10)『御法度』(99)
『戦メリ』のテーマをさらに深化させた、オオシマの遺作。

近藤勇を崔洋一に演じさせたセンスはさすが。
この感覚が、北野武のキャスティング考に影響を与えていると思う。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『(作り笑い)また、今度ね…』
出来上がったシナリオ―かなりの自信作―を、コンクールへの出品ではなく、まず著名な映画作家に読んでもらいたい。
そう考えた22歳の自分は、大島渚の住む鵠沼に向かった。
(以下、敬意を表してオオシマと表記する)
アポなしである。
「瞬間湯沸かし器」と称されることの多い怒りっぽい監督なので、どやされるかもしれない。
いっぽうで情熱家としても知られるから、逆に褒められるのではないか・・・などと、いろいろ想像した。
呼び鈴(だった)を鳴らすと、出てきたのは監督夫人。
小山明子として、オオシマ絶頂期を様々な側面から支えた才女がそこに立っていた。
「―そう、町田から来たの? いいところよね。でもごめんね、主人、いま体調が悪くて、ひとに会わせられる状態じゃないの」
「・・・そうですか」
「(シナリオを受け取り)でも、読むことは出来るから。ちゃんと渡しておきますからね」
「ありがとうございます」
たったそれだけの会話だったけれど、なんだか感動したなぁ!!
オオシマ、2013年1月15日に鬼籍に入る。
合掌。
(1)『絞死刑』(68)
死刑に反対するというより、死刑「制度」に異を唱えるという異色の国家批判映画。
それでいて笑えるというのが、この映画の面白さ。
予告編の最後が強烈なので、とにかくこれだけでも観てほしい。
ナレーションは、オオシマ自身が担当。
(2)『愛のコリーダ』(76)
猟奇的な側面で語られることの多い阿部定事件を、定と吉蔵の愛の神話として描く。

この物語に嫉妬を抱く男女は多いだろう、自分もそうなんだ。
(3)『少年』(69)
いわゆる「当たり屋」で生計を立てていた一家に焦点を当て、近代日本の暗部を捉えてみせる。
少年を演じる阿部哲夫の瞳が、ひたすら素晴らしい。
(4)『日本の夜と霧』(60)
公開打ち切りを決定したことに激怒したオオシマが、松竹を退社したことで知られる問題作。
延々と政治論争を繰り広げる過激な創りだが、めっぽう面白い。
(5)『儀式』(71)
ある一家の儀式―冠婚葬祭―を繰り返し描くことにより、見えてくるニッポン。
という狙いがあったはずだが、やや観念的に過ぎ、捉えどころがなくなってしまった印象は受ける。
ただ小山明子のエロスを堪能出来たので、結果オーライ! と自分は考えていたり。

(6)『青春残酷物語』(60)
無軌道な若い男女を描き、新世代の映画誕生を高らかに謳いあげる。
青りんごをかじる川津祐介―いま観れば、まさに「青いね!」となるかもしれないが、象徴的なショットとして記憶に残る。
(7)『戦場のメリークリスマス』(83)
はっきりいえば物語として、うまくまとまっているとは思えない。
思えないが、音楽の力でそれをカバーしている。
(8)『日本春歌考』(67)
「考」とはいうが、春歌に対する論考が展開されるわけではない、ただ延々と春歌を歌うだけの行き当たりばったり、、、な珍作。
前衛にもほどがある! と初見(高校2年生)は思ったが、伊丹十三が『家族ゲーム』(83)以上に好演しているので飽きることはない。
(9)『飼育』(61)
捕えられた黒人兵士が、村で「飼育」されていく。
大江健三郎、初期の代表作を映画化。
黒人兵と少年たちとの交流がきちんと描かれるので、ほかのオオシマ映画に比べれば観易いのかも。
(10)『御法度』(99)
『戦メリ』のテーマをさらに深化させた、オオシマの遺作。

近藤勇を崔洋一に演じさせたセンスはさすが。
この感覚が、北野武のキャスティング考に影響を与えていると思う。
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明日のコラムは・・・
『(作り笑い)また、今度ね…』