きのう開催された米オスカー賞、生中継を優雅にワイン呑みながら観て、その晩の字幕スーパー編集版は、(原稿を書くために)ワインをコーヒーに代えて再見した。
きょうは、その総評。
(1)24部門中「15部門」を的中させる、つまり6割を「ぎりぎり」超したので、今年は「映画小僧」を名乗りつづけられる。
ふぅ、えがったえがった。
(2)最大のインパクト、最高のユーモア
賞そのものとは無関係なところに、いちばん驚いてしまった。
それが、「プレゼンター」ジョディ・フォスターの松葉杖姿。
ジェニファー・ローレンス「―どうしたの?」
ジョディ「メリル・ストリープ(が、押し倒したの)よ」
笑笑笑
原稿があったにしてもだ、こういうのがいえる空気が素晴らしい。
強引に日本で例えると、深津絵里が「原田美枝子にやられた」というようなものでしょう、絵里ちゃんはそんなこといえないし、会場だって「そんなこと、いわせない」空気が出来上がっていると思うもの。
(3)いちばんの大番狂わせ
主要部門のサプライズはないと思われた本年、実際にほとんどの部門がそうなったが、脚本賞だけは予想外の結果に。
受賞した『ゲット・アウト』はたしかに文句なしに面白かったが、それでも意外性に富んだ『スリー・ビルボード』には敵わないと思っていたから。
(4)追悼のパフォーマンス
じつは賞のゆくえ以上に、これがいちばんの楽しみだったりする―という点では、三谷幸喜と同じ。
パールジャムのエディ・ヴェダーによる追悼ソングにのせて、17年に鬼籍に入った映画関係者が映し出される。
そこにはゴジラアクターとして名高い中島春雄、そして鈴木清順も。
(5)杖を使って壇上へ
個人的に最も感動したのは、脚色賞のジェームズ・アイヴォリー。
御年89、映画監督として充分な実績があるにも関わらずオスカーは手にしたことがなかった。
そんなひとが、脚本家として受賞者に。
杖を使ってゆっくり壇上に上がり、オスカー像を下に置いてスピーチ。
グッときた。
ほかに、こころの底からうれしかった受賞は、主演男優賞のゲイリー・オールドマンと、撮影賞のロジャー・ディーキンス。
そしてもちろん、日本人の辻さんも。
全部門を俯瞰して眺めると・・・うん、例年以上によいバランスかと。
いわゆる怪獣映画が作品賞を含む最多受賞、
オタクたちは溜飲を下げたろうし、しかし最多といっても4部門に留まり、
俳優たちの演技合戦が見どころの映画にきっちり演技賞を与えつつ、
フレッシュな才能(=ジョーダン・ピール)も評価したのだから。
(6)やさぐれ姉御のヒトコト
本年度のハイライトは、やっぱりフランシス・マクドーマンドの主演女優賞でしょう。
コーエン兄弟の兄、ジョエルの奥さん。
夫婦そろってオスカー受賞者というのもすごいが、『ファーゴ』(96)を過ぎたあたりから、なぜだか「やさぐれ感」が、しかも「よい意味で?」出てきて、いつの間にかハリウッドの姉御的存在になっていた。
「ノミネートされた女たち、立ち上がってみて」
そうすることによって、ハリウッドにおける「女性率の低さ」を視覚化してみせた。
「me too」問題に極端に寄らないところが、さすがだなと思ったよフランシスおめでとう!!
…………………………………………
以下、全部門の結果を。
※的中させた部門に、◎をつけておきます
~第90回アカデミー賞、全部門結果~
<作品賞>◎
『シェイプ・オブ・ウォーター』
<監督賞>◎
ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』
<主演男優賞>◎
ゲイリー・オールドマン 『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
<主演女優賞>◎
フランシス・マクドーマンド 『スリー・ビルボード』
<助演男優賞>◎
サム・ロックウェル 『スリー・ビルボード』
<助演女優賞>
アリソン・ジャネイ 『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
<長編アニメ映画賞>
『リメンバー・ミー』
<短編アニメ映画賞>
『ディア・バスケットボール』
<脚本賞>
ジョーダン・ピール 『ゲット・アウト』
<脚色賞>◎
ジェームズ・アイヴォリー 『君の名前で僕を呼んで』
<撮影賞>◎
ロジャー・ディーキンス 『ブレードランナー 2049』
<美術賞>◎
ポール・デナム・オースタベリー、ジェフリー・A・メリヴィン、シェーン・ヴィア 『シェイプ・オブ・ウォーター』
<音響編集賞>◎
『ダンケルク』
<録音賞>◎
『ダンケルク』
<編集賞>
リー・スミス 『ダンケルク』
<視覚効果賞>◎
『ブレードランナー 2049』
<歌曲賞>
「Remember Me」 『リメンバー・ミー』
<作曲賞>
アレクサンドル・デスプラ 『シェイプ・オブ・ウォーター』
<衣装デザイン賞>
マーク・ブリッジス 『ファントム・スレッド』
<メイク・ヘアスタイリング賞>◎
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
<外国語映画賞>◎
『ナチュラルウーマン』(チリ)
<短編実写映画賞>◎
『ザ・サイレント・チャイルド』
<長編ドキュメンタリー賞>
『イカロス』
<短編ドキュメンタリー賞>◎
『ヘヴン・イズ・ア・トラフィック・ジャム・オン・ザ・405』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『distance』
きょうは、その総評。
(1)24部門中「15部門」を的中させる、つまり6割を「ぎりぎり」超したので、今年は「映画小僧」を名乗りつづけられる。
ふぅ、えがったえがった。
(2)最大のインパクト、最高のユーモア
賞そのものとは無関係なところに、いちばん驚いてしまった。
それが、「プレゼンター」ジョディ・フォスターの松葉杖姿。
ジェニファー・ローレンス「―どうしたの?」
ジョディ「メリル・ストリープ(が、押し倒したの)よ」
笑笑笑
原稿があったにしてもだ、こういうのがいえる空気が素晴らしい。
強引に日本で例えると、深津絵里が「原田美枝子にやられた」というようなものでしょう、絵里ちゃんはそんなこといえないし、会場だって「そんなこと、いわせない」空気が出来上がっていると思うもの。
(3)いちばんの大番狂わせ
主要部門のサプライズはないと思われた本年、実際にほとんどの部門がそうなったが、脚本賞だけは予想外の結果に。
受賞した『ゲット・アウト』はたしかに文句なしに面白かったが、それでも意外性に富んだ『スリー・ビルボード』には敵わないと思っていたから。
(4)追悼のパフォーマンス
じつは賞のゆくえ以上に、これがいちばんの楽しみだったりする―という点では、三谷幸喜と同じ。
パールジャムのエディ・ヴェダーによる追悼ソングにのせて、17年に鬼籍に入った映画関係者が映し出される。
そこにはゴジラアクターとして名高い中島春雄、そして鈴木清順も。
(5)杖を使って壇上へ
個人的に最も感動したのは、脚色賞のジェームズ・アイヴォリー。
御年89、映画監督として充分な実績があるにも関わらずオスカーは手にしたことがなかった。
そんなひとが、脚本家として受賞者に。
杖を使ってゆっくり壇上に上がり、オスカー像を下に置いてスピーチ。
グッときた。
ほかに、こころの底からうれしかった受賞は、主演男優賞のゲイリー・オールドマンと、撮影賞のロジャー・ディーキンス。
そしてもちろん、日本人の辻さんも。
全部門を俯瞰して眺めると・・・うん、例年以上によいバランスかと。
いわゆる怪獣映画が作品賞を含む最多受賞、
オタクたちは溜飲を下げたろうし、しかし最多といっても4部門に留まり、
俳優たちの演技合戦が見どころの映画にきっちり演技賞を与えつつ、
フレッシュな才能(=ジョーダン・ピール)も評価したのだから。
(6)やさぐれ姉御のヒトコト
本年度のハイライトは、やっぱりフランシス・マクドーマンドの主演女優賞でしょう。
コーエン兄弟の兄、ジョエルの奥さん。
夫婦そろってオスカー受賞者というのもすごいが、『ファーゴ』(96)を過ぎたあたりから、なぜだか「やさぐれ感」が、しかも「よい意味で?」出てきて、いつの間にかハリウッドの姉御的存在になっていた。
「ノミネートされた女たち、立ち上がってみて」
そうすることによって、ハリウッドにおける「女性率の低さ」を視覚化してみせた。
「me too」問題に極端に寄らないところが、さすがだなと思ったよフランシスおめでとう!!
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以下、全部門の結果を。
※的中させた部門に、◎をつけておきます
~第90回アカデミー賞、全部門結果~
<作品賞>◎
『シェイプ・オブ・ウォーター』
<監督賞>◎
ギレルモ・デル・トロ 『シェイプ・オブ・ウォーター』
<主演男優賞>◎
ゲイリー・オールドマン 『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
<主演女優賞>◎
フランシス・マクドーマンド 『スリー・ビルボード』
<助演男優賞>◎
サム・ロックウェル 『スリー・ビルボード』
<助演女優賞>
アリソン・ジャネイ 『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
<長編アニメ映画賞>
『リメンバー・ミー』
<短編アニメ映画賞>
『ディア・バスケットボール』
<脚本賞>
ジョーダン・ピール 『ゲット・アウト』
<脚色賞>◎
ジェームズ・アイヴォリー 『君の名前で僕を呼んで』
<撮影賞>◎
ロジャー・ディーキンス 『ブレードランナー 2049』
<美術賞>◎
ポール・デナム・オースタベリー、ジェフリー・A・メリヴィン、シェーン・ヴィア 『シェイプ・オブ・ウォーター』
<音響編集賞>◎
『ダンケルク』
<録音賞>◎
『ダンケルク』
<編集賞>
リー・スミス 『ダンケルク』
<視覚効果賞>◎
『ブレードランナー 2049』
<歌曲賞>
「Remember Me」 『リメンバー・ミー』
<作曲賞>
アレクサンドル・デスプラ 『シェイプ・オブ・ウォーター』
<衣装デザイン賞>
マーク・ブリッジス 『ファントム・スレッド』
<メイク・ヘアスタイリング賞>◎
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』
<外国語映画賞>◎
『ナチュラルウーマン』(チリ)
<短編実写映画賞>◎
『ザ・サイレント・チャイルド』
<長編ドキュメンタリー賞>
『イカロス』
<短編ドキュメンタリー賞>◎
『ヘヴン・イズ・ア・トラフィック・ジャム・オン・ザ・405』
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明日のコラムは・・・
『distance』