「年賀状」は、今年の優秀賞受賞作品です。
牧康子さんは、「童子」同人。長年出版社にお勤めし、雑誌や書籍の編集をされていましたが、定年後、小説やエッセイを書き、昨年は近松文学賞で最優秀賞をご受賞されています。また『繭の部屋』(主婦の友社)と著作もあります。
今年ももう年賀状のことを考えなくてはならない季節。
年が明け、どさっと年賀状の束が届くのは、嬉しいし、一枚一枚見るのも、楽しい。でも作るときは、(はあ)というのが、正直なところ。年々そういう気持ちがつのります。
「年賀状」の主人公もまた、年を重ね、徐々にフェイドアウトしていこうと決意。ところが、年賀状を出さなかった友人男性から「どうしたのかと思って」と電話が来るのです。一気に、学生時代の恋心が思い出され、そして・・・。
銀の雫というこの賞には、「高齢社会をどう生きるか?」というテーマがあります。テーマのある公募の場合、ちゃんとテーマにそっているかというのは、大事なこと。この年賀状は、まさに誰もが感じることでしょう。高齢というテーマでは、すぐに痴呆や介護が思い浮かびますが、牧康子さんの作品は、まずその切り取り部分がよかった! そして、文章は完璧。緻密で丁寧で、好感がもてます。
大賞受賞作、もう1編の優秀賞受賞作も、おもしろかったです。特に、もう1編の優秀賞受賞作は、小学生の視点での作品で、児童文学をやっている私としては、書きようで一冊の児童文学になるなあと思ってしまいました。
それにしても700編以上の応募から選ばれるのですから、すごい。
牧やすこさんは、写真や俳句も満載のHPをもっていらっしゃいます。このブログの横をスライドして、ブックマークからご訪問できますので、定年後のすてきな暮らしぶり、ものへのこだわりなど、さすがもとインテリア雑誌を作っていらっしゃっただけあります。
何より、この受賞作「年賀状」を、連載の形で載せていらっしゃいます。ぜひ、お読みください。