大ベテラン作家、一色悦子さんの新刊です。
一色さんは、福島県郡山市のご出身。
私は以前、『アテルイ 坂上田村麻呂と交えたエミシの勇士』を書いたとき、一色さんの『子どもを抱く坂上田村麻呂』も読ませていただきました。田村麻呂は、郡山で生まれたという伝説があるのです。その伝説も取り入れようかと、郡山にあるという田村麻呂の産湯を汲んだ井戸のところへ行こうとしたこともあったのですが、残念ながら行き着けませんでした・・(『アテルイ』の中で、その説をとるのも中途半端と感じ、断念)。
さて、このたびの一色さんの本は、東日本大震災後の原発事故で、全町民が避難をしなくてはならなくなったふたば町の人々の中から、全町民(実際には、もう遠くに住み着いた方もいらっしゃいますが)が、再び一緒に住む町を新しく造ろうと計画を始める。それを身近で見続けている少女が、明治時代に、安積という地を開拓し、移り住んできた人々のことを知り、そのことを小説にした中條百合子という17歳の少女の存在を知ります。
北海道や海外でも、こうして開拓をした土地を自分のものにしていくという歴史があります。。それが福島にもあったのです。
人とはなんと、たくましいのでしょう。
これらの歴史を調べ、本にした一色さんにも、そのたくましさを感じます。
もう1編は、「教室のすぐ隣にある戦争」。これは、日露戦争と今の日本をオーバーラップさせ、一人の少女が田中正造の本をスピーチコンテストで発表するまでの物語。そうだ・・。日本はロシアと戦争をしたことがあったのです。
歴史を知ることは未来を造ること、過去は消えていなくて、この足元の大地にあるのです。 オビに書かれている文です。