
◎2024年10月11日(金)
秋田の中学の同窓会(正確には同期会)に呼ばれた。13日に開催。卒業寸前で足尾中学校に転校したのに、幹事さんや地元有志の粋なはからいは嬉しい。5年前にも通知をもらって参加している。車で行けば、秋田まではとてつもなく遠い。新幹線で行きたくとも、JR沿線に住んでいるわけでもなく、荷物もあれば車頼りになる。
紅葉の時季だし、真っ先に浮かんだ地元の<安の滝>に行くのが楽しみだったが、道が崩壊工事で、今年の見物は無理とのこと。前日の12日は宮城に住む孫の運動会。あまり気は進まなかったが、年長組だし、幼稚園最後の運動会ということもあり、ましてパパは仕事で行けないらしい。見てやった方がよいだろうと、11日出発で、以前から観たいと思っていた蔵王の<白龍の滝>に寄り、翌日は運動会。そのまま娘の家に二泊して秋田に行ってもいいが、娘ファミリーは、運動会が終われば旅行に出かけるとのことで、放り出される。秋田に向かえば、半端に長いムダな時間を過ごすことになりそうなので、12日は花巻に泊まることにした。花巻を選んだのには特別な意味はない。到着する夕方時に宮沢賢治記念館でもあるまいし、岩手の山歩きをするには時間的に無理。調べれば、花巻にも、観光滝ではあるが観られる滝がいくつかあった。そもそも、宮城から秋田までも遠い。ワンクッションを置くには花巻が手頃だった。盛岡だと、ただ泊まるだけになる。
参考までにまとめるとこうなる。11日…出発。白龍の滝。後烏帽子岳。娘宅泊。12日…運動会。花巻の滝巡り。花巻泊。13日…同窓会。阿仁の宿泊まり。14日…福島で宿泊。15日…吾妻連峰。帰宅。といった旅程。吾妻連峰の紅葉歩きは帰りがけの駄賃といったところで、そもそも、秋田の山奥からその日のうちに帰宅するのは一日がかりの仕事で、もはや体力的、年齢的にきつい。
白龍の滝は一昨年に行った<三階の滝>のある沢上流にある地味な滝だ。三階の滝は、ただ、「恐かった」という印象でしかなく、むしろ、その澄川先の<不動滝>の方がストレートにわかりやすく、豪快で好みだった。まぁ、それ以来、白龍の滝も観ておくべきと思っていた。時間次第では、後烏帽子岳まで登って、今季初の東北の紅葉見物を楽しむつもりでいる。
(出発)

(少しの色づきはあった)

遠刈田温泉を過ぎたあたりから雲行きは怪しくなり、スキー場の駐車場に入った時には、すでに青空は消え、薄いガスすらかかっている。紅葉狩りを楽しむには不向きな空模様。第一目的は白龍の滝だから、多少の雨でも問題はないが、果たして後烏帽子まではどうだろう。とりあえず、沢靴を履き、地下足袋をザックに入れて出発。地下足袋は滝見の後で履き替える。9時46分。後烏帽子を含めた周回なら、少なくとも7時間はみるべきで、この時間出発でそれを実行したら、時間的にはかなり厳しい。安直ながら、ゲレンデを下れば何とかなるかと楽観していた。
(NO1)

(歩道入口)

(こんな標識がずっと続く)

(遊歩道。まだ緑の世界)

(たまには早い紅葉を見かける)

(この辺は、歩き不足できつく感じた)

石子遊歩道に向かう。適当に北に向かうと「1あなぐま」の標識を見かけ、先に「石子遊歩道入口」の看板。ここの遊歩道には、「2まがも」、「3もぐら」、「4らいちょう」…というように、100mほどの間隔で標識が置かれ、最終のゴンドラ駅の「40らいおん」で終わるようだが、それぞれに動物やら鳥、昆虫のイラストが描かれている。この40枚の標識の中に猫、狸、狐はいるのに、さらに身近なブタやら、犬、ヘビ、イノシシ、熊はない。イメージが悪くなるとも思えない。ここに雷鳥がいるわけでもないのにNO4に存在する。ともかく、こんな標識やら遊歩道ということで、楽でのどかな感じはするが、明らかに登山道。「5うし」を過ぎたあたりから傾斜は若干きつくなる。少し涼しくなり、ここのところブログ記事にもならない地元の金山やら三毳山をばかりを歩いている状態では、こんな傾斜もつらく感じる。
(オオルリコースは左)

(こちらが多分、石子遊歩道だろう。標識は見かけなかった)

(五本ナラ)

「6しか」を過ぎると「オオルリコース」の標識が目に入った。これは野鳥の森自然観察センターからのコースのようで、石子遊歩道とは一部重複しているのか、異名のままに同じ道なのかはわからない。ただ、ここで道は分岐し、テープで巻かれた沢方面に行く道を選ぶと「8かっこう」が現れたから、部分重複かと思われる。この8には「五本ナラ」と、同根分離の大きなナラの樹があった。
(ここから右手に三階滝沢に下る)

(目を凝らしても踏み跡らしきものはなかった)

(真下に沢)

(これに足をひっかけて転倒)

(沢に出る。三階の滝は右手)

だらだらと記しても退屈なので中略。目標は「12ろば」。そこから三階滝沢に降りる。「ろば」に到着はしたが、沢への目印はない。ネット記事ではテープやらロープがあるとあったが…。目の前は踏み跡もないヤブ。もっとも、参考にしたネット記事は5年以上前のものだ。目印がなければ、適当に下るしかない。左手の上流側に下ると記されていたはずだが、下流側がヤブも薄そうだったので右側下りに方向転換。たいしたヤブでもなく、ほどなく沢の音が間近になり、真下に沢が見えた。無事に沢に降り立つことができればラッキーだ。崖だったら戻るしかない。それでもちょっとした急斜面だった。尻もちをつき、足を何かにひっかけてつんのめった。まだ安全圏だったが、ひっかけたのはトラロープだった。ロープに頼ることもなく、三階滝沢に下りられた。そこはまさに、三階の滝の落ち口だった。10時20分。出発から35分。経過が長い文章のわりにはあっという間かもしれない。
(三階の滝の落ち口)

(もう少し下って、エコーラインの滝見台をアップで。これ以上は恐くて行けない)

沢はナメになっている。ザックをおろし、帽子は脱いでヘルメットに交換。後で思えば、わざわざヘルメットにする必要もなかったみたいだ。落ち口の先に行ってみた。落ち口から三階の滝の全容は見下ろせない。正面にエコーラインの滝見台が見えた。ズームで撮ってみたが、後でピンボケの写真を確認すると、5人くらいいた。向こうからオレの姿は見えまい。
(では参りましょう)

(岩にへばりついた落ち葉が曲者)

(ずっと続く。気持ち良く歩ける)

上流に向かう。ナメで心地良い。冷たくもなく、水量はせいぜい膝下。ただ、水勢はある。要注意は落ち葉。沢から離れて迂回する際に、岩の上に貼り付いた落ち葉が滑り、危うく転倒しそうになったのが数回。フェルト底と濡れた落ち葉は相性が悪いようだ。できるだけ、沢の中を歩くようにした。しばらく気持ちよく遡上して行く。
(ナメは一旦途切れる。小滝が続くようになる。落ち葉にはかなり神経質になっている)

(左手から巻いて)

(淵が出てくる。左から巻いたので確認はしていないが、腿には達する深みかと思う)

(巻こうとしたが、枝が邪魔で、右手をジャブジャブ)

ナメはずっと続くわけではなく、ナメ区間が長ければ飽きてもくる。沢幅が狭くなってくると、岩も出てきて変化が加わった。腰上まで浸かりそうな淵が現れたりする。当然、巻くしかないが、滑る落ち葉には用心した。この辺の小滝、とはいっても高さ1mもないが、流れを見ているだけでも気持ちは和む。新緑の中で春ゼミの鳴き声を聞きながらの歩きは最高かもしれない。残念ながら、その時季でもないし、沢沿いの紅葉はまだない。
(ナメが復活した気配)

(やはり。下流方向)

(さすがにここは遠慮した。右からの巻き)

(ここは左から。上流部で変化が加わってきた)

(2m50cmといったところか)

木々の色づきを感じたあたりでナメが復活。正直のところ、もう少しスリリングな体験をしたかったが、落ち葉滑り以外にそれはなかった。ただ、この先のナメには緩い連瀑もあって、水の勢いも出てきてそれなりに楽しめる。さすがに、淵状のところは、岸辺の岩に落ち葉がたっぷりで、ここまで来てドボンでは目も当てられずに大回り。
(凹凸のあるナメ。歩いていて、それなりに面白かった)

(そして白龍の滝。左から入り込む沢は石子沢)

ゴツゴツした段差のあるナメが続くようになると、右手に滝が見えてきた。あれが白龍の滝のようだ。11時5分。入渓から45分か。すぐ近くを登山道が通っているはず。あっけなくというか、ちょっと物足りない感じがした。
滝は本流の三階滝沢にかかるが、滝下で左から別沢が合流している。この沢は石子沢で、先を見ると、導水管が横切っている。大方の後烏帽子岳歩きの記事には、白龍の滝を落ち口から見下ろしている写真を掲載している。後で知ったことだが、これまでは、白龍の滝を正面から観るには沢を遡行するしかないと思っていた。だから沢を歩いて来た。
(白龍の滝を正面から。派手な滝ではなかった)

(近づいて)

(見上げると、シャワーで行けそうな気がする。夏ならやったと思う)

(左岸を行けそうだが、一番上の垂直の岩が気になる)

(前後するが、石子沢の先に橋のようなものが見える。あの付近を登山道が通っているようで、これだったら、沢登りで白龍の滝に来ずとも、軽く下れるだろう)

(アップにすると、導水管が通っているようで、橋ではないようだ)

しばらく滝を眺めていた。好みの直瀑ではないが、女性的な斜瀑の美滝だ。落差は12mとあったから、そんなものかもしれない。不動滝のように、呆然と立ちつくすレベルではなく、こんなものかといった気持ちがかすかに出ていた。観たかった滝だ。つべこべ言わずにこれで自己満足としよう。
(滝越え)

(やはりこれは無理。身の丈以上の岩だった。右に逃げる)

(落ち口。よく見る光景の写真だ)

この滝は直登できそうだなと思ったが、シャワーを浴びに来たわけでもないので、右から登る。幸いにも、岩がステップ状になっている。上がってみる。ラストの一枚岩の乗り越えはきつそうだ。あっさりと右から巻いて落ち口に出た。なるほど、ここからの眺めが、ネット記事で見慣れた白龍の滝のようだ。
(渡渉地点にはトラロープ)

(三階滝沢の上流。導水管を見ただけで行く気は失せた)

(一週間後ならきれいだろうな)

(踏み跡を石子沢方面に行ってみると)

(例の導水管橋。この下をトラロープで渡渉するようになっていた。水は浅く、飛び石でも濡れずに渉れる)

三階滝沢はまだ続いているので入ってみたが、導水管が乱雑に延び、周囲からは樹々が覆いかぶさり、狭い回廊のようになっている。石もゴロゴロしている。こんなところを歩いても面白くはあるまい。ここで切り上げとするか。戻ってゲレンデ方面に行ってみると、登山道にぶつかった。渡渉部分らしいところにはトラロープが設置されている。さしたる意図もなく、滝下で見た石子沢の橋状の導水管に行ってみた。ここで沢下を見ると、何ということはない。危険もなく滝下に出られるようだ。傾斜も緩い。これに気付くハイカーはさほどにいないだろう。沢歩きが嫌なら、ここから石子沢を慎重に2分もせずに下れば白龍の滝の正面に出られる。
(さらに行ってみる。ここで二人連れに出会った。どういう歩きコースなのかは聞かなかった。時間的に後烏帽子ではなかろう)

登山道を少し歩くと、二人連れが登って来た。直進すればゲレンデに出るし、左に行けば登山道だとはわかっていたが、本日初めての出会いハイカーだったので、聞くまでもなかったが、挨拶代わりに、登山道の行き先を確認した。こちらはヘルメットスタイルだし、沢登りと心得てくれたらしい。まして、ズボンの裾も濡れている。頭の地図どおりの返答をいただいた。
(ゲレンデに出たが、座り込める場所もなく引き返す)

天気が回復する兆しはなく、むしろ、ヘルメットを外すと小雨が落ちていた。休んだら後烏帽子方面と思っていたが、これじゃダメだな。そもそも山の上の方は雲にすっぽりで何も見えない。後烏帽子岳はやめるか。滝を観ただけでも収穫はあった。やめるとなったら潔いものだ。ゲレンデに出て、腹を満たそう。出がけにバナナを3本食べただけだった。
(正直のところ、どこに出るのか知らなかったが、とりあえず下る)

(こんなのが出てきた。ゲレンデを歩いた方が歩きコースが重複しないで済むだろう)

(ゲレンデ下り)

(よくは知らないが、方角的には大鳥谷山という山だろうか)

ゲレンデに出たとて、草地は水を含んで、足を伸ばして座れる状況ではなく、スキー場の施設らしいものもあったが、雨除けになるようなところもない。結局、登山道を下ることにしたが、目にしたのは「19なまけもの」。先には「18いわな」、これでは、入渓地点の12に戻ってしまう。同じ道を戻りたくもなく、ヤブ漕ぎでゲレンデに向かった。ゲレンデ下りの方が視界も広くてまだましだ。草地は滑りそうにもないので、そのまま沢靴で下った。
(レストハウスを経由して)

(陽が出ていれば、少しはきれいに見えたと思うが)

(駐車場に戻った)

小雨の中を駐車場に到着。12時。2時間少々の歩きで終わってしまった。雨のせいにしてしまったが、暗に、後烏帽子岳に行けない口実を、この雨に求めていたのかもしれない。土台、ほとんど山歩きもしていないのに無理な話だった。
大型バスが駐車していた。中国人らしい観光客団体が、三分にもならない色づきした紅葉をスマホに収めてさっさとバスに戻って下って行った。時間が早過ぎる。どうしよう。ふと思い出した。この先500mほどに<つばの滝>があるようだ。そこに行ってみよう。小雨とはいっても霧雨に近く、傘をささずとも行ける。
【つばの滝】
空地に車を駐車。林道を歩く。足は長靴にした。林道入口に標柱はあるが、<つばの滝>の標識板はない。撤去されたのかはわからない。いずれにせよ、先にも、<ことりはうす1000m>の標識はあっても、沢沿いに向けての滝標識はない。外した跡形はある。崩壊でもしているのだろうか。観光行政の立場からしてはとにかく行って欲しくない滝なのだろうが、ロープやらゲートで閉ざされているわけでもない。
沢沿いの踏み跡には、苔むした梯子状の木道が横たわっている。ゴツゴツした石だらけの沢だ。ほどなくして先に滝の姿が見えた。ここを観光滝の感覚で、普通の靴で歩いたら濡れるし、滑りもして危ないだろう。長靴だからサクサクと滝前に出られた。車道の入口から5分もかからなかった。
白龍の滝に比べたら、少しは荒削りの姿で、斜瀑ではあっても、傾斜はある。登って行きたかったが、沢靴でもないし、角張った岩が滑りそうなのでやめたが、落ち口付近をよく見ると、本流の沢以外に、周囲の湧き水も加わって落ちているかのように見える。実際は沢の流れが多岐に分離したのが集合しているだけかもしれない。落差は15mほどらしい。ということは、白龍の滝よりも3mほど高いということになるか。これはこれで見ごたえはあった。白龍の滝とつばの滝。好みに甲乙はつけがたいが、沢歩きもし、滝を登れた白龍の滝の方が楽しかったか。姿としてはつばの滝だ。ところで、この「つば」とは何だ?
(滝の標識があったのだろうが、撤去されている。クマが器用に金具を外すはずもない)

(林道を少し下る)

(これはあるのだが。つばの滝は左の沢沿い)

(ここでも撤去)

(ほどなく、つばの滝が見えてくる)

(たいして時間はかからなかった)

(上にあがって)

(こじんまりした滝つぼ)

(上部は雨だれのようにきれいだ)

(名残惜しい気はする。もっと上まで行きたかった)

(戻りましょう)

戻る。この時間では、娘たちが家に帰っているには早過ぎる時間だが、家の鍵は預かっている。その都度の自分専用のベッドはあるし、ビールを飲んで昼寝でもしようか。
遠刈田温泉に入ると青空がのぞいていた。雨は山だけだったようで、路面も濡れていない。結局、何も食べなかったので、来る途中で見かけたラーメン屋にでも入るつもりでいたが、店の駐車場は満車で、外で待っている客もいた。そこまでして食べたくもないので素通りした。
(白龍の滝の軌跡)

(この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
秋田の中学の同窓会(正確には同期会)に呼ばれた。13日に開催。卒業寸前で足尾中学校に転校したのに、幹事さんや地元有志の粋なはからいは嬉しい。5年前にも通知をもらって参加している。車で行けば、秋田まではとてつもなく遠い。新幹線で行きたくとも、JR沿線に住んでいるわけでもなく、荷物もあれば車頼りになる。
紅葉の時季だし、真っ先に浮かんだ地元の<安の滝>に行くのが楽しみだったが、道が崩壊工事で、今年の見物は無理とのこと。前日の12日は宮城に住む孫の運動会。あまり気は進まなかったが、年長組だし、幼稚園最後の運動会ということもあり、ましてパパは仕事で行けないらしい。見てやった方がよいだろうと、11日出発で、以前から観たいと思っていた蔵王の<白龍の滝>に寄り、翌日は運動会。そのまま娘の家に二泊して秋田に行ってもいいが、娘ファミリーは、運動会が終われば旅行に出かけるとのことで、放り出される。秋田に向かえば、半端に長いムダな時間を過ごすことになりそうなので、12日は花巻に泊まることにした。花巻を選んだのには特別な意味はない。到着する夕方時に宮沢賢治記念館でもあるまいし、岩手の山歩きをするには時間的に無理。調べれば、花巻にも、観光滝ではあるが観られる滝がいくつかあった。そもそも、宮城から秋田までも遠い。ワンクッションを置くには花巻が手頃だった。盛岡だと、ただ泊まるだけになる。
参考までにまとめるとこうなる。11日…出発。白龍の滝。後烏帽子岳。娘宅泊。12日…運動会。花巻の滝巡り。花巻泊。13日…同窓会。阿仁の宿泊まり。14日…福島で宿泊。15日…吾妻連峰。帰宅。といった旅程。吾妻連峰の紅葉歩きは帰りがけの駄賃といったところで、そもそも、秋田の山奥からその日のうちに帰宅するのは一日がかりの仕事で、もはや体力的、年齢的にきつい。
白龍の滝は一昨年に行った<三階の滝>のある沢上流にある地味な滝だ。三階の滝は、ただ、「恐かった」という印象でしかなく、むしろ、その澄川先の<不動滝>の方がストレートにわかりやすく、豪快で好みだった。まぁ、それ以来、白龍の滝も観ておくべきと思っていた。時間次第では、後烏帽子岳まで登って、今季初の東北の紅葉見物を楽しむつもりでいる。
(出発)

(少しの色づきはあった)

遠刈田温泉を過ぎたあたりから雲行きは怪しくなり、スキー場の駐車場に入った時には、すでに青空は消え、薄いガスすらかかっている。紅葉狩りを楽しむには不向きな空模様。第一目的は白龍の滝だから、多少の雨でも問題はないが、果たして後烏帽子まではどうだろう。とりあえず、沢靴を履き、地下足袋をザックに入れて出発。地下足袋は滝見の後で履き替える。9時46分。後烏帽子を含めた周回なら、少なくとも7時間はみるべきで、この時間出発でそれを実行したら、時間的にはかなり厳しい。安直ながら、ゲレンデを下れば何とかなるかと楽観していた。
(NO1)

(歩道入口)

(こんな標識がずっと続く)

(遊歩道。まだ緑の世界)

(たまには早い紅葉を見かける)

(この辺は、歩き不足できつく感じた)

石子遊歩道に向かう。適当に北に向かうと「1あなぐま」の標識を見かけ、先に「石子遊歩道入口」の看板。ここの遊歩道には、「2まがも」、「3もぐら」、「4らいちょう」…というように、100mほどの間隔で標識が置かれ、最終のゴンドラ駅の「40らいおん」で終わるようだが、それぞれに動物やら鳥、昆虫のイラストが描かれている。この40枚の標識の中に猫、狸、狐はいるのに、さらに身近なブタやら、犬、ヘビ、イノシシ、熊はない。イメージが悪くなるとも思えない。ここに雷鳥がいるわけでもないのにNO4に存在する。ともかく、こんな標識やら遊歩道ということで、楽でのどかな感じはするが、明らかに登山道。「5うし」を過ぎたあたりから傾斜は若干きつくなる。少し涼しくなり、ここのところブログ記事にもならない地元の金山やら三毳山をばかりを歩いている状態では、こんな傾斜もつらく感じる。
(オオルリコースは左)

(こちらが多分、石子遊歩道だろう。標識は見かけなかった)

(五本ナラ)

「6しか」を過ぎると「オオルリコース」の標識が目に入った。これは野鳥の森自然観察センターからのコースのようで、石子遊歩道とは一部重複しているのか、異名のままに同じ道なのかはわからない。ただ、ここで道は分岐し、テープで巻かれた沢方面に行く道を選ぶと「8かっこう」が現れたから、部分重複かと思われる。この8には「五本ナラ」と、同根分離の大きなナラの樹があった。
(ここから右手に三階滝沢に下る)

(目を凝らしても踏み跡らしきものはなかった)

(真下に沢)

(これに足をひっかけて転倒)

(沢に出る。三階の滝は右手)

だらだらと記しても退屈なので中略。目標は「12ろば」。そこから三階滝沢に降りる。「ろば」に到着はしたが、沢への目印はない。ネット記事ではテープやらロープがあるとあったが…。目の前は踏み跡もないヤブ。もっとも、参考にしたネット記事は5年以上前のものだ。目印がなければ、適当に下るしかない。左手の上流側に下ると記されていたはずだが、下流側がヤブも薄そうだったので右側下りに方向転換。たいしたヤブでもなく、ほどなく沢の音が間近になり、真下に沢が見えた。無事に沢に降り立つことができればラッキーだ。崖だったら戻るしかない。それでもちょっとした急斜面だった。尻もちをつき、足を何かにひっかけてつんのめった。まだ安全圏だったが、ひっかけたのはトラロープだった。ロープに頼ることもなく、三階滝沢に下りられた。そこはまさに、三階の滝の落ち口だった。10時20分。出発から35分。経過が長い文章のわりにはあっという間かもしれない。
(三階の滝の落ち口)

(もう少し下って、エコーラインの滝見台をアップで。これ以上は恐くて行けない)

沢はナメになっている。ザックをおろし、帽子は脱いでヘルメットに交換。後で思えば、わざわざヘルメットにする必要もなかったみたいだ。落ち口の先に行ってみた。落ち口から三階の滝の全容は見下ろせない。正面にエコーラインの滝見台が見えた。ズームで撮ってみたが、後でピンボケの写真を確認すると、5人くらいいた。向こうからオレの姿は見えまい。
(では参りましょう)

(岩にへばりついた落ち葉が曲者)

(ずっと続く。気持ち良く歩ける)

上流に向かう。ナメで心地良い。冷たくもなく、水量はせいぜい膝下。ただ、水勢はある。要注意は落ち葉。沢から離れて迂回する際に、岩の上に貼り付いた落ち葉が滑り、危うく転倒しそうになったのが数回。フェルト底と濡れた落ち葉は相性が悪いようだ。できるだけ、沢の中を歩くようにした。しばらく気持ちよく遡上して行く。
(ナメは一旦途切れる。小滝が続くようになる。落ち葉にはかなり神経質になっている)

(左手から巻いて)

(淵が出てくる。左から巻いたので確認はしていないが、腿には達する深みかと思う)

(巻こうとしたが、枝が邪魔で、右手をジャブジャブ)

ナメはずっと続くわけではなく、ナメ区間が長ければ飽きてもくる。沢幅が狭くなってくると、岩も出てきて変化が加わった。腰上まで浸かりそうな淵が現れたりする。当然、巻くしかないが、滑る落ち葉には用心した。この辺の小滝、とはいっても高さ1mもないが、流れを見ているだけでも気持ちは和む。新緑の中で春ゼミの鳴き声を聞きながらの歩きは最高かもしれない。残念ながら、その時季でもないし、沢沿いの紅葉はまだない。
(ナメが復活した気配)

(やはり。下流方向)

(さすがにここは遠慮した。右からの巻き)

(ここは左から。上流部で変化が加わってきた)

(2m50cmといったところか)

木々の色づきを感じたあたりでナメが復活。正直のところ、もう少しスリリングな体験をしたかったが、落ち葉滑り以外にそれはなかった。ただ、この先のナメには緩い連瀑もあって、水の勢いも出てきてそれなりに楽しめる。さすがに、淵状のところは、岸辺の岩に落ち葉がたっぷりで、ここまで来てドボンでは目も当てられずに大回り。
(凹凸のあるナメ。歩いていて、それなりに面白かった)

(そして白龍の滝。左から入り込む沢は石子沢)

ゴツゴツした段差のあるナメが続くようになると、右手に滝が見えてきた。あれが白龍の滝のようだ。11時5分。入渓から45分か。すぐ近くを登山道が通っているはず。あっけなくというか、ちょっと物足りない感じがした。
滝は本流の三階滝沢にかかるが、滝下で左から別沢が合流している。この沢は石子沢で、先を見ると、導水管が横切っている。大方の後烏帽子岳歩きの記事には、白龍の滝を落ち口から見下ろしている写真を掲載している。後で知ったことだが、これまでは、白龍の滝を正面から観るには沢を遡行するしかないと思っていた。だから沢を歩いて来た。
(白龍の滝を正面から。派手な滝ではなかった)

(近づいて)

(見上げると、シャワーで行けそうな気がする。夏ならやったと思う)

(左岸を行けそうだが、一番上の垂直の岩が気になる)

(前後するが、石子沢の先に橋のようなものが見える。あの付近を登山道が通っているようで、これだったら、沢登りで白龍の滝に来ずとも、軽く下れるだろう)

(アップにすると、導水管が通っているようで、橋ではないようだ)

しばらく滝を眺めていた。好みの直瀑ではないが、女性的な斜瀑の美滝だ。落差は12mとあったから、そんなものかもしれない。不動滝のように、呆然と立ちつくすレベルではなく、こんなものかといった気持ちがかすかに出ていた。観たかった滝だ。つべこべ言わずにこれで自己満足としよう。
(滝越え)

(やはりこれは無理。身の丈以上の岩だった。右に逃げる)

(落ち口。よく見る光景の写真だ)

この滝は直登できそうだなと思ったが、シャワーを浴びに来たわけでもないので、右から登る。幸いにも、岩がステップ状になっている。上がってみる。ラストの一枚岩の乗り越えはきつそうだ。あっさりと右から巻いて落ち口に出た。なるほど、ここからの眺めが、ネット記事で見慣れた白龍の滝のようだ。
(渡渉地点にはトラロープ)

(三階滝沢の上流。導水管を見ただけで行く気は失せた)

(一週間後ならきれいだろうな)

(踏み跡を石子沢方面に行ってみると)

(例の導水管橋。この下をトラロープで渡渉するようになっていた。水は浅く、飛び石でも濡れずに渉れる)

三階滝沢はまだ続いているので入ってみたが、導水管が乱雑に延び、周囲からは樹々が覆いかぶさり、狭い回廊のようになっている。石もゴロゴロしている。こんなところを歩いても面白くはあるまい。ここで切り上げとするか。戻ってゲレンデ方面に行ってみると、登山道にぶつかった。渡渉部分らしいところにはトラロープが設置されている。さしたる意図もなく、滝下で見た石子沢の橋状の導水管に行ってみた。ここで沢下を見ると、何ということはない。危険もなく滝下に出られるようだ。傾斜も緩い。これに気付くハイカーはさほどにいないだろう。沢歩きが嫌なら、ここから石子沢を慎重に2分もせずに下れば白龍の滝の正面に出られる。
(さらに行ってみる。ここで二人連れに出会った。どういう歩きコースなのかは聞かなかった。時間的に後烏帽子ではなかろう)

登山道を少し歩くと、二人連れが登って来た。直進すればゲレンデに出るし、左に行けば登山道だとはわかっていたが、本日初めての出会いハイカーだったので、聞くまでもなかったが、挨拶代わりに、登山道の行き先を確認した。こちらはヘルメットスタイルだし、沢登りと心得てくれたらしい。まして、ズボンの裾も濡れている。頭の地図どおりの返答をいただいた。
(ゲレンデに出たが、座り込める場所もなく引き返す)

天気が回復する兆しはなく、むしろ、ヘルメットを外すと小雨が落ちていた。休んだら後烏帽子方面と思っていたが、これじゃダメだな。そもそも山の上の方は雲にすっぽりで何も見えない。後烏帽子岳はやめるか。滝を観ただけでも収穫はあった。やめるとなったら潔いものだ。ゲレンデに出て、腹を満たそう。出がけにバナナを3本食べただけだった。
(正直のところ、どこに出るのか知らなかったが、とりあえず下る)

(こんなのが出てきた。ゲレンデを歩いた方が歩きコースが重複しないで済むだろう)

(ゲレンデ下り)

(よくは知らないが、方角的には大鳥谷山という山だろうか)

ゲレンデに出たとて、草地は水を含んで、足を伸ばして座れる状況ではなく、スキー場の施設らしいものもあったが、雨除けになるようなところもない。結局、登山道を下ることにしたが、目にしたのは「19なまけもの」。先には「18いわな」、これでは、入渓地点の12に戻ってしまう。同じ道を戻りたくもなく、ヤブ漕ぎでゲレンデに向かった。ゲレンデ下りの方が視界も広くてまだましだ。草地は滑りそうにもないので、そのまま沢靴で下った。
(レストハウスを経由して)

(陽が出ていれば、少しはきれいに見えたと思うが)

(駐車場に戻った)

小雨の中を駐車場に到着。12時。2時間少々の歩きで終わってしまった。雨のせいにしてしまったが、暗に、後烏帽子岳に行けない口実を、この雨に求めていたのかもしれない。土台、ほとんど山歩きもしていないのに無理な話だった。
大型バスが駐車していた。中国人らしい観光客団体が、三分にもならない色づきした紅葉をスマホに収めてさっさとバスに戻って下って行った。時間が早過ぎる。どうしよう。ふと思い出した。この先500mほどに<つばの滝>があるようだ。そこに行ってみよう。小雨とはいっても霧雨に近く、傘をささずとも行ける。
【つばの滝】
空地に車を駐車。林道を歩く。足は長靴にした。林道入口に標柱はあるが、<つばの滝>の標識板はない。撤去されたのかはわからない。いずれにせよ、先にも、<ことりはうす1000m>の標識はあっても、沢沿いに向けての滝標識はない。外した跡形はある。崩壊でもしているのだろうか。観光行政の立場からしてはとにかく行って欲しくない滝なのだろうが、ロープやらゲートで閉ざされているわけでもない。
沢沿いの踏み跡には、苔むした梯子状の木道が横たわっている。ゴツゴツした石だらけの沢だ。ほどなくして先に滝の姿が見えた。ここを観光滝の感覚で、普通の靴で歩いたら濡れるし、滑りもして危ないだろう。長靴だからサクサクと滝前に出られた。車道の入口から5分もかからなかった。
白龍の滝に比べたら、少しは荒削りの姿で、斜瀑ではあっても、傾斜はある。登って行きたかったが、沢靴でもないし、角張った岩が滑りそうなのでやめたが、落ち口付近をよく見ると、本流の沢以外に、周囲の湧き水も加わって落ちているかのように見える。実際は沢の流れが多岐に分離したのが集合しているだけかもしれない。落差は15mほどらしい。ということは、白龍の滝よりも3mほど高いということになるか。これはこれで見ごたえはあった。白龍の滝とつばの滝。好みに甲乙はつけがたいが、沢歩きもし、滝を登れた白龍の滝の方が楽しかったか。姿としてはつばの滝だ。ところで、この「つば」とは何だ?
(滝の標識があったのだろうが、撤去されている。クマが器用に金具を外すはずもない)

(林道を少し下る)

(これはあるのだが。つばの滝は左の沢沿い)

(ここでも撤去)

(ほどなく、つばの滝が見えてくる)

(たいして時間はかからなかった)

(上にあがって)

(こじんまりした滝つぼ)

(上部は雨だれのようにきれいだ)

(名残惜しい気はする。もっと上まで行きたかった)

(戻りましょう)

戻る。この時間では、娘たちが家に帰っているには早過ぎる時間だが、家の鍵は預かっている。その都度の自分専用のベッドはあるし、ビールを飲んで昼寝でもしようか。
遠刈田温泉に入ると青空がのぞいていた。雨は山だけだったようで、路面も濡れていない。結局、何も食べなかったので、来る途中で見かけたラーメン屋にでも入るつもりでいたが、店の駐車場は満車で、外で待っている客もいた。そこまでして食べたくもないので素通りした。
(白龍の滝の軌跡)

(この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
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