たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

八ヶ岳/赤岳(当日編)

2007年12月09日 | 八ヶ岳
◎2007年12月8日(土)-木と

 気温は-4度。6時45分、2人とも、とりあえずフリースを着ただけで出かけた。防寒上下はザックの中。木は今年、オレがカモシカで代わりに買ってきてやったテントを含めれば、山の装備に20万円以上を投入しているのだが、今のところテント以外の出番がほとんどない。今回持参のモンベル防寒上着にしても、昨夜宿で着て、すぐに暑いと言っては脱ぎ出す始末。厳冬期の北アルプスを歩くわけでもなし、こんなのは冬のテントで寝るための防寒着であって、歩くには不向きじゃないだろうか。他の購入品を含めて、使いたくて仕方ない無邪気さは理解できる。むしろおニューの出番があって困るのはオレ。防寒と下着類を除けば、ほとんどがサンキで買った代物。-10度を超えたら保証は無い。

 今のところアイゼンはまだ早い。赤岳山荘の駐車場には10台ほどの車と15人程の人だかり。テントもあった。山荘から出てきた犬連れのオバサン、駐車代を回収に行くのだろう。予約を入れていてやまのこ村に泊まったことを話したら、「すみませんでした。急に病院に出かけることになってしまって、頼んで行ったんですよ」。電話くらい入れてくれればいいのに。適当なものだ。

 出がけに、やまのこのオニイサンに南沢は崩壊していて、入れないかもしれませんよと言われていたが、ロープを張ってはいるものの足跡は続いている。危険を冒す必要はないから北沢ルートを行く。先を行く7人ほどを追い越す。不思議にほとんどが、ヘルメットとアイスクライミング用のピッケルを装備している。後で調べたら、ポイントが随所に有るようだ。オレ達みたいな縦走スタイルは珍しい。しかし、見た眼で判断するのは失礼だが、どう見てもタイプじゃないのが多いように思える。さて、この林道歩きは最初の30分、しこたま疲れた。木の荒い息使いも聞こえる。オレもまだ冬用の靴が馴じまないでいる。トイレを先行されたオッサンを抜く。かなり遅い歩きをしている。7時35分、林道終点。粉雪ながらも、下は締まっていて、今のところアイゼンもピッケルも要らず、歩きやすい。

 次第に八ヶ岳特有の雪の風景。氷と雪を貼り付けたようなシラビソの樹林帯。沢沿いの道はトレースもはっきりしている。左手に硫黄岳、大同心、小同心、前方には阿弥陀が次第に大きくなる。オッサンが1人。赤岳ですか?と問うと、取りあえず小屋に行ってみて決めるそうだ。実を言えば、この我々も、赤岳に行くとはしていながらも、硫黄岳、横岳もこの時点では視野に入れていた。欲を言えば、赤岳を含めた縦走を目論んでいた。ただ、現実問題として無理だろうから、赤岳鉱泉に着いた時点で、どちらかを先行するかを決め、状況次第で下ることにしていた。

 ふと前方に見覚えのある黄色のヘルメット。多治見の彼女に追いついた。赤岳鉱泉まで同行する。なかなか強い。聞けば、週二で歩いているようで、雪山も結構、嗜んでいるらしい。ヘルメットは別にアイスクライミングをするつもりではなく、バリエーションルートを歩くためのものらしい。間近に見ると、細かいキズがいっぱい付いていた。

 赤岳鉱泉8時33分着。出発から1時間45分。標準タイムは2時間だから、今のところ早いペース。積雪は30cm程度。気温-7度。彼女はここでチェックイン。オレ達も300円のコーヒーを飲む。ドリップのコーヒー。おいしかった。木が宿泊者カードに記入しているのを脇から見ていて、名前が中村某子さんだと言っていた。彼女はそのまま部屋に入って行ったから、ここで別れる。小屋の脇には人工の氷の柱があった。高さは7~8m位だろうか。木が情報を仕入れてきて、通称アイスキャンディーというのだそうで、ここでアイスクライミングの練習をするらしい。あまり興味は湧かない。

 赤岳鉱泉には想い出がある。11年前の1月に木とここに泊まった。どこに登るつもりで来たのかは忘れたが、行者小屋を経由したから、翌日は硫黄岳にでも行くつもりだったのだろうか。とりあえずここに泊まったのだが、木が酔っ払って、階段から落ちた。その時、足を温めるナイロン製の靴下カバーを履いていたから余計に加速がついた。結果は尾骶骨にヒビ。翌日は、今日来た北沢ルートをゆっくりと下った。山には登らず。車に辿り着くまでえらい時間を費やした。尾骶骨にヒビを入れたのは木だけの話ではなく、このオレもその5年後にやっている。やはり木との山行。野口五郎岳の下りで雨上がりの木の根で滑り、腰を激打。翌日、余りにも痛みがぬけず、整形外科に行ってレントゲンを撮ったら、尾骶骨にヒビが入っていた。

 30分の休憩後、アイゼンを付け、ピッケルをザックから外して出発。結局、赤岳を先行することにする。9時。ここからはトレースもまばらになる。硫黄岳に向かうトレース、行者小屋に行くトレースに分かれるが、合わせても、今までの半分にも満たない。歩き始めて間もなく、木のアイゼンが外れる。それも左右各1回。いつものパターン。3回目の期待はなかった。ワンタッチなんかにしているからそうなる。オレみたいにカジタックスのヒモ式がしっかりと固定する。大同心、小同心から卑猥な連想をして、笑いながら歩いて行くと、もう中山乗越。この先、1人分のトレースしか無くなった。行者小屋着9時36分。この1人分のトレースの持ち主の青年が休んでいた。ここから先、今日のところはだれも歩いていない。大声で笑って来たから、それに気付き、もしかして、我々が着くのを待っていたりして。ようやく赤岳が見えた。やはり阿弥陀岳の姿は超然としていて好きだな。

 赤岳に向かう。ダラダラ上り。まずは目標を、赤岳より100mばかり低い阿弥陀の山頂が目の高さに来るところに置く。無風で陽も射し、心地よい上りが続く。極めて軽快な足取り。積雪も膝を超えることはない。標高が増すにつれ、遠望する北アルプスの北部の連山が広がっていく。そして蓼科山から天狗も大きくなる。阿弥陀の高さにどんどん近付く。今日は最高だよなぁ、なんてセリフも出た。やがて、森林限界を越えてハイマツ帯。次第に、東からつまり、上から吹いてくる風を感じるようになる。日陰になると、ところどころで、膝を超える積雪部が出てくる。気温も-10度。夏道をそのまま登っているが、ここにかけられている鉄の網目状の階段がいやらしい。穴にアイゼンの爪先がひっかかり、足を上げる際にバランスを崩す。だからといって、階段の脇を通ると、何となく滑落の危険があってやばそう。下を見ると、あの青年は何所へ行ったのか姿が見えない。阿弥陀か地蔵尾根にでも向かったのか。

 やがて木が不調を訴える。ここのところ頻発するシャリバテ。大盛り2杯も4時間が限度。こっちはまだ持続可。木がパンを喰っている間、さっさと阿弥陀分岐に到達。11時15分。階段手摺の鎖がシャーベット状になっている。ここでようやく阿弥陀岳の高さか。素晴らしい光景が広がっていた。真正面に南アルプス南部の山々。北岳や甲斐駒もはっきりと見える。そして中央アルプス。富士山はここからは見えない。あまりの見事さに、権現、編笠を入れた白根三山の写真を中嶋宛に写メールしてやった。ここからは麓の町が見えるので携帯もつながる。今年に入ってからだったか、阿弥陀で遭難があって、携帯で救助を要請したケースがあったが、そういう意味では無責任な山域だ。中嶋から折り返しの返信が届く。雪が少ないなと言ってきたので、今度は足もとの雪を写して送ってやった。ここで菓子パンを1つ食べる。

 木がなかなか上がってこない。途中で休んでタバコなんか吸っている。こっちも、風景だけ眺めてじっとしていると寒いので行動開始。ここからは岩場。アイゼンを付けての岩場は慎重にならざるを得ない。そして、邪魔なピッケルはザックに括りつける。トレースは雪で分からないが、かろうじて岩に記されたペンキが頼りになる。間もなく山頂というところで、下山者1名。聞けば、地蔵尾根から登って来たという。「地蔵尾根をもう1人、来ましたよ」と言っていたが、美濃戸にあんなに人がいたのに、赤岳の客は4人しかいないのだろうか。12時、山頂着。ようやく富士山が見えた。それもはっきりと。今日は空気も澄んでいて遠くまで見渡せる。浅間山も見える。しばらくして木が上がってきた。ここで大休止とし、スープを飲みながらパンを食べる。地図を広げて今後のコースを検討する。この時間では、横岳、硫黄岳経由の赤岳鉱泉下りは無理だろう。日没までに美濃戸に戻るには、あと1時間は足りない。地蔵尾根を下るとするか。出発前に木はY美さんに写メールを送ったが、ここは阿弥陀が邪魔になって、送信不可。残念でした。

 一旦下って、赤岳展望荘。山頂の頂上小屋、行者小屋ともに、年末年始だけの営業。正月を山小屋で迎える方々は、どんな社会的なステータスにいるのか、すごくうらやましいと思う。少なくとも、家庭環境のしがらみから抜け出せない人には出来ない話。展望荘の軒下には、見事なほどの霧氷の柱が下がっていた。ここで地蔵尾根を登ってきた6人と出会う。さっきのオッサンの話と違い、結構、いるじゃない。とはいっても、この先、行者小屋までだれとも出会わなかった。

 地蔵尾根を下りにかかる。我々が登って来た文三郎尾根と違い、ここはすぐに樹林帯に入って行く。急坂ではあるが、鉄の階段もさほどなく、雪上だからか快適に下れる。逆に、あの文三郎尾根を下るのは大変だろうな。特に山頂から阿弥陀分岐までの岩場。地蔵尾根往復をする人が多いのではなかろうか。あっという間で行者小屋。13時25分。テントが5張。皆、揃ってグリーンのテント。木の話では、エスパーステントだという。外に出ている3人のスタイルを見ていると、アイスクライミングのようだが、こんなところにもポイントがあるのだろうか。10分休憩。

 赤岳鉱泉14時20分。朝に比べて随分の賑わい。例のアイスキャンディーに10人ほど取りついている。順番待ちもいるようだ。見物人もその倍の数。後でネットで見たら、今日からこのアイスキャンディーが解禁になっていて、それが目当てに来る人も結構いたのだろう。見るからに初心者と思しき人がかなりいる。ここのテント場は行者小屋とは対照的に黄色のテントだらけ。ダンロップが多い。美濃戸までの下り、かなりの人と出会った。40人とは会ったような気がする。スノーシュー持参もいたが、概して、若いのが縦走用のピッケルを持ち、年配者がアイスクライミングのピッケルとヘルメットを装備している。変な感じ。雪は日中の日差しでやわらかくなっていた。

 長い林道歩き。飽きてくる。さすがこの時間には、登って来る人はいないが、1人いた。林道終点でビバークか。美濃戸山荘に着いた時にはほっとした。下の駐車場にはほぼ50台の車。少なくとも、今晩の唐沢鉱泉には100人は泊まるのだろうか。寝る時、布団も行き渡らずに寒いだろうな。やまのこ村の駐車場には15時30分着。土産に手ぬぐいを買いに店に入るが、オニイサンが炬燵で寝ている。熟睡しきっていて、声をかけても起きない。カウンターに2本分、1,300円を置いてきた。帰り道、原村に入り、夕暮れ時の八ヶ岳の光景が目に焼きつく。山頂以上に、連峰すべてがきれいに見渡せた。そして、反対側には鋸岳と甲斐駒のシルエット。いつも見慣れた赤城山と袈裟丸、そして浅間山、男体山よりも何と比較にならない素晴らしい眺望か。木と笑い合った。

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3 コメント

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Color Sense (Yossy)
2007-12-09 23:31:35
先週に続き頑張りましたね。
もうすっかりと雪山になり白、晴天で青、帰りの夕焼け、さらに周りの山々など、今回は読んだ後に色を感じました。山の名前にも色が入っているからもあるし。冬の山はヤブなどが出てこないせいか、本当に山沿いを登っているように思えて来たけど、見晴らしが最高そうですね。でも、寒そう。雪のせいで空気が澄んでいて、読みながら、気持ち良かったですよ。
アイスキャンディーの事が良く解らず、ネットで見ました、練習用に作るのですね。冬の楽しみ方の一つなのか、ちょっと私には理解不能。
ケガには十分注意して、腰も足も指も・・
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Unknown (俺だ)
2007-12-10 19:02:13
今回は天候に恵まれたのが収穫だった。尾てい骨も無事だったし、今年一番のいい山歩きだったとおもう。前夜の清めを減らしたのがよかったのかも。「唐沢鉱泉」は訂正しろや。
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Unknown (mailaddress-1234)
2007-12-10 20:33:31
Yossyさん「先週に続き」ではありません。同じ週でした。
俺ださんよ、訂正したよ。唐沢鉱泉もまた想い出深い♨小屋なんだよ。同じ八ヶ岳にあるものだから、つい間違えてしまった。唐沢鉱泉の時も、木がいっしょだったから、酔った勢いというか、若気の至りを演じたものだ。折にふれて書いてみたいと思っている。
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