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◎2012年12月31日(月)
西沢駐車場(8:35)……熊穴橋駐車地(8:52)……白ハゲ口(9:11)……小尾根取り付き(9:40)……白岩山神社(10:16~10:25)……茶立小尾根(10:41)……熊鷹山への稜線(11:04)……熊鷹山(11:15~11:24)……井戸小尾根取り付き(11:42)……三滝展望台(12:20)……白ハゲ口(12:50)……西沢駐車場(13:16)
ハイトスさんが先週、白岩山神社経由で熊鷹山に行かれていた。自分が鹿沼石尊山を歩いていた日である。お誘いいただければ、是が非でも行きたかったのに誠に残念である。ハイトスさんの諸般のご事情もおありであったろう。致し方ない。この白岩山神社には、以前から行きたかった。ちょうど、一年前のこの日、陣地から氷室山に行き、熊鷹山に下った際、途中の茶立尾根に入り、石祠のある小ピークまでは行ったが、その先、神社の位置もはっきりせずにあきらめた。
この白岩山神社については、ネットで探しても、記事は皆無に近い。桐生山野研究会の「氷室山」、あにねこさんの「白岩山神社」、そして、今回のハイトスさんの「白岩山神」だけである。そういう意味では、ハイトスさんの直近の記事は助かった。奇しくも、昨年の大晦日は熊鷹山を歩いていた。今年もまた熊鷹山でラストとなったわけである。
(西沢駐車場)
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熊穴橋手前の駐車地まで乗り入れるつもりでいたが、西沢駐車場を通りかかったら、埼玉県ナンバーの車が1台駐まって準備中。つい、何とはなしにここに駐めてしまった。3人グループだ。おもしろいことに、皆さんゴム長を着用だ。氷室山に行かれるとのこと。すぐに出発された。
駐車場の案内掲示マップを確認。白岩山神社が記されていた。「茶立小尾根」からの点線が付いていた。下からの線はない。ちなみに、掲示板には、この林道から入るには、氷室山、十二山、熊鷹山へのコースはすべて「上級者のみ」と記されている。かなり辛い評価のようだ。
さて、3人組さんがゴム長だったので、当初は久しぶりに登山靴にするつもりでいたが、ゴム長を手にしてしまった。岩場もあるようなので鉄芯入りを選ぶ。これまでうろ覚えでいたが、この鉄芯入りのゴム長、ピン付きではなかった。考えてみれば、岩場歩きには、ピン付きは危険だ。岩では滑る。結果的には良かった。次いで、ザックに20mロープを入れ込む。ハイトスさん記事では必携になっている。ザックがパンパンになり、仕方なく、鍋焼きうどんの調理セット一式は車の中に戻した。帰ってからいただくことにしよう。
(白ハゲ口)
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林道をテクテク歩く。熊沢橋の駐車地には軽ワゴンが1台。ハンターだろうか。間もなく、3人組さんを追い越す。紅一点含みだから、遅くなってしまうのだろうか。「早いですね」と言われたが、息切れ状態で「今のところは」と返答。軽トラに抜かれる。白ハゲ口に到着。軽トラにはハンター氏がいて、「狩りですか?」と聞くと、「下見」とのことだったが、どんなものだろうか。散弾銃やらライフルの銃器は目につかない。
ここの掲示案内板に記された白岩神社は、さっきの掲示とは違って、分岐した道が神社まで続いている。そんなことはないだろう。先達の記録を拝読する限り、道はないことになっている。
(秩父の山の風情に似ている)
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(ここを直進)
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(これは渡れるが)
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(これは無理)
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(取り付きの尾根)
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(この周辺はなかなかいい感じのところ)
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登山道を三滝方面に向かう。細い、斜面のトラバース道だ。下の沢までは高い。朽ちかけた木橋をいくつか渡る。滑ったら怖いところだ。三滝へのコースが分岐する。右は川コースで健脚向け。左は山コースで一般向きとなっている。何だ、一般者コースもあるじゃないの。西に向かわないといけないのだから、ここは左の山コースに入る。植林帯の中をちょっと行くと、三滝コースは右に登る形になる。ここから登山道を離れ、直進して、白ハゲ沢沿いに進む。ここまでは、ハイトスさんレポがマニュアルだ。ここも、沢から高い斜面を歩く形になる。落ち葉の中、下が凍っていないか不安になるが、今のところ大丈夫だ。テープも頻繁に見かける。間違ってはいない。踏み跡も窪みながらも分かる。
やがて、沢が二分する。そのセンターに小尾根が張り出している。あれが取り付きのようだ。さて、一旦、沢に下りないといけないが、丸太を3本組んだ渡しがあった。これは朽ちたというよりも腐っている気配。こんなのは渡れない。四つん這いで沢に下りた。
(次第に急になり、先に、最初の岩場が見えてくる)
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(茶立尾根が見える)
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(岩峰が近づき、尾根はヤセてくる)
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(見下ろすとこんな感じ)
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(岩峰基部。鎖が垂れている)
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(ようやく到着。命からがらの状態であった)
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やさしい感じの尾根だったが、これは束の間。じわりじわりと急になる。テープも消えた。ハイトスさんが見かけた石祠の台座には気づかない。急で、それどころではない状態になっていたのである。やがて岩場が出てきた。ゴム長のヒモを強く締める。こんなところで脱げていたら、履き物なしで歩くしかない。通過に手こずった。太めの木に手をかけたら、根っこから折れてしまって、バランスを崩す。左手に熊鷹山が見えるものの、遅々として進まない。
最初の岩場を何とかクリア。今度は十二山らしきピークが右手に見えだし、振り向くと、氷室山に続く尾根も見える。陣地も見えているはず。急登を這って進むと、尾根は痩せてきて、前方に岩峰のようにものが見えてきた。左右はスパッと切れ落ちている。こりゃ、戻るに戻れないわ。前に進むしかない。
ようやく岩峰の基部に到着。ここまで、スムーズに着いたわけではない。恐々と登ってきた。さて、この岩峰、どうやって登るのだろうか。シミュレーションをしても、何れのルートも転落となる。困った。しかし、よく見ると、鎖が上から下りている。錆付きの鎖。使わない手はないので手にした。鎖の端に鉄の札が付いていた。何と、札には「上作原村 願正 松井市右衛門」、その裏には「安政二年●四月」と刻まれていた。この鎖、風雨風雪にさらされ続けて160年の年代物かよ。鎖そのものよりも、上の支えがどうなっているのやら。半分だけ頼りにして、岩をつかまえて這い上がった。後半は全面的に鎖頼りであった。まぁ、何とか、神社に到着はしたが、この恐怖心は中倉尾根のキレット通過以来だ。中倉山はまだいい。短時間で終わったが、ここは精神的にも時間的にも、とてつもなく長く感じた。
(社殿の中。がらくただらけといった感じ)
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(絵柄が彫られている。当時、かなり金もかけたのだろう)
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岩峰の上に鎮座する神社とは思えない程のたたずまいだ。夏の日、セミなんかが周りで鳴いていたらいい雰囲気だろう。ここまでは、熊も上がっては来られまい。まず、鐘の鰐口が目に付いた。銅製か。穴が開いている。社の上の天井も破れている。中の石祠はひっくり返り、手にしてみたが、かなり重く、まして中腰の姿勢だ。補修は無理。ここで、ぎっくり腰になってしまったら、ミイラになってしまうのがオチだ。ハイトスさんの記事で後追いする奇特な方がいても、数ヶ月先だろう。今日は大晦日。明日の初詣に、こんな神社まで命がけで繰り出す人もいるまい。
しばらくいい気分に浸った。この神社、桐生山野研究会の記事によれば、石祠は天保三年のようだ。鰐口には文久三年と彫られている。石祠の四面には、細かい、何かの絵のような凝った彫りがあった。休んでいると、間近に落石の音が聞こえた。カラカラと、大分下まで落ちて行ったような長い音響が続いた。
ところで、ここで、石祠の屋根を持ち上げたのがたたったのか、家に帰ったら、腰をやられたようで、背中をかがめて歩いている。やはり、余計なことはすべきでなかった。
(神社の裏から下る)
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今日の課題はこれで済み。だが、ここをまた下るわけにはいかない。反対側に下りる。ハイトスさんによれば、ここがロープ使用ポイントかと、下を覗き込むと、素手で何とか下りられそうだ。下り斜面には踏み跡もある。ということは、裏口から参拝にいらっしゃる方はいるのであろうか。ロープは荷物になってしまったが、保険と思えば安いものだ。命と鍋焼きうどんを天秤にかけるのもおかしなものだ。
それにしても、この白岩山神社の探索、自分は怖い、恐ろしいを連発してやかましく歩いているが、ハイトスさんもあにねこさんも、その記事は、至って冷静沈着な記述になっている。大した方々だ。人格の違いかねぇ。あにねこさんに至っては、記事の写真を拝見する限り、女性の姿もお見受けする。怖くも何ともなかったのだろうか。※この時の女性の手記を『山のまち桐生』で見つけた。ご参考まで。ここ。
(神社ピークを振り返って)
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(茶立尾根)
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(小ピークの石祠)
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神社から下った鞍部からの登り。ここから茶立尾根に向かうのだが、これが、さっきまでの神社への登りの延長で、これまた遅々として進まない。急斜面が済んだわけではない。心持ち緩くなり、危険も遠ざかっただけの話だ。後ろを振り向くと、神社ピーク(これを白岩山と言うのだろうか)は妖怪の棲む山に見えなくもない。気分的なものだろう。
ようやく茶立尾根に乗る。合流点には、千切れたテープが巻かれていた。やはり、こっちから神社に向かう人もいるようだ。ところで、この茶立尾根、地形図を見ると、途中で切れている。下ることは可能なのだろうか。すごく疑問だ。尾根型なのか、踏み跡なのかは不明だが、歩く人も多いように見受ける。
一年前に見た石祠を再訪。年代不明。ハイトスさんは「白岩山神の前宮か?」と記されているが、向きが違う。背中合わせの向きになっている。崇める地区が違うのではあるまいか。右手に白くなった男体山が見えた。熊鷹山からの眺望を期待しよう。
(熊鷹山に向かう)
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(そして、熊鷹山)
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(日光の山並み)
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稜線に出る。これまでとはうって変わった平坦な道筋を熊鷹山に向かう。雪だまりを見ると、四つ足の足跡はあっても、人間のものはない。今日はだれも歩いていないようだ。熊鷹山に着いた。やはりだれもいない。冷たい風が音を立てて流れている。展望台に登って景色を眺める。今日は天気が良くてよかった。ぐるりと展望が広がる。赤城山の白さはまだらだ。奈良部山の方に続くなだらかな稜線。ここは歩いたが、そのさらに先は未訪。なぜか、日光の山でも、社山周辺の白が濃い。それにしても寒い。ドーナツを食べて退散。
ここから、ハイトスさんの後追いルートで下ってもいいが、昨年やっている。あにねこさん経由の井戸尾根を下ろうか。ちなみに、下の看板には、井戸尾根も茶立尾根も、「井戸小尾根」、「茶立小尾根」と記されていた。この尾根は下ったことがない(と思っていた)。
(井戸尾根の分岐)
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(チェーンスパイクを装着)
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(井戸尾根の様子)
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茶立尾根の取り付きを素通りすると、十二山の手前で、踏み跡が分岐する。右に行くと小ピーク。右に進む。テープが巻かれ、標識があった。何だ、しっかりした登山道なのじゃないの。「三滝→」方面に下る。下ってすぐ、気が緩んでしまったためか、落ち葉の上でずるっと滑った。立ち上がってまた滑る。下が凍結している。尻餅をつき、ズボンが泥んこになり、パンツまで浸みてきた。この場合のパンツは下着の方。やはり、下りは注意しないと。ここで、とっておきの助っ人をザックから取り出す。チェーンスパイク。烏ケ森さんの記事で見かけたグッズだ。こりゃいいねとモンベルの通販で買ってしまったが、使えるシチュエーションがなくて、持ち歩きのままだった。ようやくの、年内デビューにこぎつけた。ゴム長にもフィットする。これはなかなかいい。装着も手こずらずの片足5秒。履いて、念押しで後ろをグイッと上げるだけで収まる。おかげさまで、危なげないサクサクの下りを体験した。これが、多めの雪があったらダンゴになるらしい。
(こんなのを見かけた。中は狭い)
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(三滝。三段式なのだろうか)
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(標識は随所にある)
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(チェーンスパイクを外す)
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(終盤が近づき)
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(ここで周回完了)
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(白ハゲ口に戻る)
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1046m標高点で尾根が分岐。右手にテープがあったので、それに合わせる。しかし、何とテープの多い尾根なのか。ところで、さっきから、ここを下ったことがある感じがしていた。ここは、何十年か前、初めて熊鷹山に行った際に下っている。あの時は、氷室山に行った帰りだったか。確か、下部はかなり急だったような。
やはりそうだった。三滝が近づくと急になった。ロープが現れる。土砂崩れでもあったのか、ロープを張った木が倒れたりしていて悪路っぽい。「滑落注意」の看板があったが、まだ急な下りは続く。
三滝を展望台から眺める。水の勢いはいい。ちょっと下に行くって覗くと、三滝に向かう丸太の橋組がはるか下に見えた。次のタイコオロシの滝はパス。入口付近を見ただけ。河原で休み、チェーンスパイクを外して、泥を洗いおとす。
危なげな斜面を歩いて、植林帯に入った。白ハゲ沢への分岐は近いはず。やがて、今朝の分岐に合流して白ハゲ口に付いた。ハンター氏の軽トラがまだあった。
(熊穴橋の駐車地)
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林道を下る。今日は、自分にはかなり手強い、なかなかのいい歩きをさせていただいた。きっかけを作っていただいたハイトスさんには感謝だ。それにしても、白岩山神社の直下は曲者だった。もういいでしょう。そう言いながらも、久しぶりに自然林の中の歩きを満喫できたのは確かだ。同じ安蘇の山や城山の、植林帯の歩きが続いた後だけに、なおさらだ。年内ラストにするには気分の良い歩きができた。
西沢駐車場に到着。氷室山グループはまだお戻りになっていない。鍋焼きうどんを食べた。その間、ハンター氏の軽トラが下って行った。
帰路、途中のゲートが閉まっていた。ヒモを外せばいいだけのことだが、やはり、本来は、ここ、通行止めなのだろう。その看板もずっと続いていた。西蓬莱山の神社に車が1台。その先、名水汲みのところでは、車を数台見かけた。
(本日のGPS軌跡)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図メッシュ(標高)を使用した」(承認番号 平23情使、 第832号)
西沢駐車場(8:35)……熊穴橋駐車地(8:52)……白ハゲ口(9:11)……小尾根取り付き(9:40)……白岩山神社(10:16~10:25)……茶立小尾根(10:41)……熊鷹山への稜線(11:04)……熊鷹山(11:15~11:24)……井戸小尾根取り付き(11:42)……三滝展望台(12:20)……白ハゲ口(12:50)……西沢駐車場(13:16)
ハイトスさんが先週、白岩山神社経由で熊鷹山に行かれていた。自分が鹿沼石尊山を歩いていた日である。お誘いいただければ、是が非でも行きたかったのに誠に残念である。ハイトスさんの諸般のご事情もおありであったろう。致し方ない。この白岩山神社には、以前から行きたかった。ちょうど、一年前のこの日、陣地から氷室山に行き、熊鷹山に下った際、途中の茶立尾根に入り、石祠のある小ピークまでは行ったが、その先、神社の位置もはっきりせずにあきらめた。
この白岩山神社については、ネットで探しても、記事は皆無に近い。桐生山野研究会の「氷室山」、あにねこさんの「白岩山神社」、そして、今回のハイトスさんの「白岩山神」だけである。そういう意味では、ハイトスさんの直近の記事は助かった。奇しくも、昨年の大晦日は熊鷹山を歩いていた。今年もまた熊鷹山でラストとなったわけである。
(西沢駐車場)
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熊穴橋手前の駐車地まで乗り入れるつもりでいたが、西沢駐車場を通りかかったら、埼玉県ナンバーの車が1台駐まって準備中。つい、何とはなしにここに駐めてしまった。3人グループだ。おもしろいことに、皆さんゴム長を着用だ。氷室山に行かれるとのこと。すぐに出発された。
駐車場の案内掲示マップを確認。白岩山神社が記されていた。「茶立小尾根」からの点線が付いていた。下からの線はない。ちなみに、掲示板には、この林道から入るには、氷室山、十二山、熊鷹山へのコースはすべて「上級者のみ」と記されている。かなり辛い評価のようだ。
さて、3人組さんがゴム長だったので、当初は久しぶりに登山靴にするつもりでいたが、ゴム長を手にしてしまった。岩場もあるようなので鉄芯入りを選ぶ。これまでうろ覚えでいたが、この鉄芯入りのゴム長、ピン付きではなかった。考えてみれば、岩場歩きには、ピン付きは危険だ。岩では滑る。結果的には良かった。次いで、ザックに20mロープを入れ込む。ハイトスさん記事では必携になっている。ザックがパンパンになり、仕方なく、鍋焼きうどんの調理セット一式は車の中に戻した。帰ってからいただくことにしよう。
(白ハゲ口)
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林道をテクテク歩く。熊沢橋の駐車地には軽ワゴンが1台。ハンターだろうか。間もなく、3人組さんを追い越す。紅一点含みだから、遅くなってしまうのだろうか。「早いですね」と言われたが、息切れ状態で「今のところは」と返答。軽トラに抜かれる。白ハゲ口に到着。軽トラにはハンター氏がいて、「狩りですか?」と聞くと、「下見」とのことだったが、どんなものだろうか。散弾銃やらライフルの銃器は目につかない。
ここの掲示案内板に記された白岩神社は、さっきの掲示とは違って、分岐した道が神社まで続いている。そんなことはないだろう。先達の記録を拝読する限り、道はないことになっている。
(秩父の山の風情に似ている)
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(ここを直進)
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(これは渡れるが)
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(これは無理)
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(取り付きの尾根)
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(この周辺はなかなかいい感じのところ)
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登山道を三滝方面に向かう。細い、斜面のトラバース道だ。下の沢までは高い。朽ちかけた木橋をいくつか渡る。滑ったら怖いところだ。三滝へのコースが分岐する。右は川コースで健脚向け。左は山コースで一般向きとなっている。何だ、一般者コースもあるじゃないの。西に向かわないといけないのだから、ここは左の山コースに入る。植林帯の中をちょっと行くと、三滝コースは右に登る形になる。ここから登山道を離れ、直進して、白ハゲ沢沿いに進む。ここまでは、ハイトスさんレポがマニュアルだ。ここも、沢から高い斜面を歩く形になる。落ち葉の中、下が凍っていないか不安になるが、今のところ大丈夫だ。テープも頻繁に見かける。間違ってはいない。踏み跡も窪みながらも分かる。
やがて、沢が二分する。そのセンターに小尾根が張り出している。あれが取り付きのようだ。さて、一旦、沢に下りないといけないが、丸太を3本組んだ渡しがあった。これは朽ちたというよりも腐っている気配。こんなのは渡れない。四つん這いで沢に下りた。
(次第に急になり、先に、最初の岩場が見えてくる)
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(茶立尾根が見える)
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(岩峰が近づき、尾根はヤセてくる)
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(見下ろすとこんな感じ)
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(岩峰基部。鎖が垂れている)
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(ようやく到着。命からがらの状態であった)
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やさしい感じの尾根だったが、これは束の間。じわりじわりと急になる。テープも消えた。ハイトスさんが見かけた石祠の台座には気づかない。急で、それどころではない状態になっていたのである。やがて岩場が出てきた。ゴム長のヒモを強く締める。こんなところで脱げていたら、履き物なしで歩くしかない。通過に手こずった。太めの木に手をかけたら、根っこから折れてしまって、バランスを崩す。左手に熊鷹山が見えるものの、遅々として進まない。
最初の岩場を何とかクリア。今度は十二山らしきピークが右手に見えだし、振り向くと、氷室山に続く尾根も見える。陣地も見えているはず。急登を這って進むと、尾根は痩せてきて、前方に岩峰のようにものが見えてきた。左右はスパッと切れ落ちている。こりゃ、戻るに戻れないわ。前に進むしかない。
ようやく岩峰の基部に到着。ここまで、スムーズに着いたわけではない。恐々と登ってきた。さて、この岩峰、どうやって登るのだろうか。シミュレーションをしても、何れのルートも転落となる。困った。しかし、よく見ると、鎖が上から下りている。錆付きの鎖。使わない手はないので手にした。鎖の端に鉄の札が付いていた。何と、札には「上作原村 願正 松井市右衛門」、その裏には「安政二年●四月」と刻まれていた。この鎖、風雨風雪にさらされ続けて160年の年代物かよ。鎖そのものよりも、上の支えがどうなっているのやら。半分だけ頼りにして、岩をつかまえて這い上がった。後半は全面的に鎖頼りであった。まぁ、何とか、神社に到着はしたが、この恐怖心は中倉尾根のキレット通過以来だ。中倉山はまだいい。短時間で終わったが、ここは精神的にも時間的にも、とてつもなく長く感じた。
(社殿の中。がらくただらけといった感じ)
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(絵柄が彫られている。当時、かなり金もかけたのだろう)
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岩峰の上に鎮座する神社とは思えない程のたたずまいだ。夏の日、セミなんかが周りで鳴いていたらいい雰囲気だろう。ここまでは、熊も上がっては来られまい。まず、鐘の鰐口が目に付いた。銅製か。穴が開いている。社の上の天井も破れている。中の石祠はひっくり返り、手にしてみたが、かなり重く、まして中腰の姿勢だ。補修は無理。ここで、ぎっくり腰になってしまったら、ミイラになってしまうのがオチだ。ハイトスさんの記事で後追いする奇特な方がいても、数ヶ月先だろう。今日は大晦日。明日の初詣に、こんな神社まで命がけで繰り出す人もいるまい。
しばらくいい気分に浸った。この神社、桐生山野研究会の記事によれば、石祠は天保三年のようだ。鰐口には文久三年と彫られている。石祠の四面には、細かい、何かの絵のような凝った彫りがあった。休んでいると、間近に落石の音が聞こえた。カラカラと、大分下まで落ちて行ったような長い音響が続いた。
ところで、ここで、石祠の屋根を持ち上げたのがたたったのか、家に帰ったら、腰をやられたようで、背中をかがめて歩いている。やはり、余計なことはすべきでなかった。
(神社の裏から下る)
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今日の課題はこれで済み。だが、ここをまた下るわけにはいかない。反対側に下りる。ハイトスさんによれば、ここがロープ使用ポイントかと、下を覗き込むと、素手で何とか下りられそうだ。下り斜面には踏み跡もある。ということは、裏口から参拝にいらっしゃる方はいるのであろうか。ロープは荷物になってしまったが、保険と思えば安いものだ。命と鍋焼きうどんを天秤にかけるのもおかしなものだ。
それにしても、この白岩山神社の探索、自分は怖い、恐ろしいを連発してやかましく歩いているが、ハイトスさんもあにねこさんも、その記事は、至って冷静沈着な記述になっている。大した方々だ。人格の違いかねぇ。あにねこさんに至っては、記事の写真を拝見する限り、女性の姿もお見受けする。怖くも何ともなかったのだろうか。※この時の女性の手記を『山のまち桐生』で見つけた。ご参考まで。ここ。
(神社ピークを振り返って)
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(茶立尾根)
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(小ピークの石祠)
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神社から下った鞍部からの登り。ここから茶立尾根に向かうのだが、これが、さっきまでの神社への登りの延長で、これまた遅々として進まない。急斜面が済んだわけではない。心持ち緩くなり、危険も遠ざかっただけの話だ。後ろを振り向くと、神社ピーク(これを白岩山と言うのだろうか)は妖怪の棲む山に見えなくもない。気分的なものだろう。
ようやく茶立尾根に乗る。合流点には、千切れたテープが巻かれていた。やはり、こっちから神社に向かう人もいるようだ。ところで、この茶立尾根、地形図を見ると、途中で切れている。下ることは可能なのだろうか。すごく疑問だ。尾根型なのか、踏み跡なのかは不明だが、歩く人も多いように見受ける。
一年前に見た石祠を再訪。年代不明。ハイトスさんは「白岩山神の前宮か?」と記されているが、向きが違う。背中合わせの向きになっている。崇める地区が違うのではあるまいか。右手に白くなった男体山が見えた。熊鷹山からの眺望を期待しよう。
(熊鷹山に向かう)
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(そして、熊鷹山)
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(日光の山並み)
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稜線に出る。これまでとはうって変わった平坦な道筋を熊鷹山に向かう。雪だまりを見ると、四つ足の足跡はあっても、人間のものはない。今日はだれも歩いていないようだ。熊鷹山に着いた。やはりだれもいない。冷たい風が音を立てて流れている。展望台に登って景色を眺める。今日は天気が良くてよかった。ぐるりと展望が広がる。赤城山の白さはまだらだ。奈良部山の方に続くなだらかな稜線。ここは歩いたが、そのさらに先は未訪。なぜか、日光の山でも、社山周辺の白が濃い。それにしても寒い。ドーナツを食べて退散。
ここから、ハイトスさんの後追いルートで下ってもいいが、昨年やっている。あにねこさん経由の井戸尾根を下ろうか。ちなみに、下の看板には、井戸尾根も茶立尾根も、「井戸小尾根」、「茶立小尾根」と記されていた。この尾根は下ったことがない(と思っていた)。
(井戸尾根の分岐)
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(チェーンスパイクを装着)
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(井戸尾根の様子)
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茶立尾根の取り付きを素通りすると、十二山の手前で、踏み跡が分岐する。右に行くと小ピーク。右に進む。テープが巻かれ、標識があった。何だ、しっかりした登山道なのじゃないの。「三滝→」方面に下る。下ってすぐ、気が緩んでしまったためか、落ち葉の上でずるっと滑った。立ち上がってまた滑る。下が凍結している。尻餅をつき、ズボンが泥んこになり、パンツまで浸みてきた。この場合のパンツは下着の方。やはり、下りは注意しないと。ここで、とっておきの助っ人をザックから取り出す。チェーンスパイク。烏ケ森さんの記事で見かけたグッズだ。こりゃいいねとモンベルの通販で買ってしまったが、使えるシチュエーションがなくて、持ち歩きのままだった。ようやくの、年内デビューにこぎつけた。ゴム長にもフィットする。これはなかなかいい。装着も手こずらずの片足5秒。履いて、念押しで後ろをグイッと上げるだけで収まる。おかげさまで、危なげないサクサクの下りを体験した。これが、多めの雪があったらダンゴになるらしい。
(こんなのを見かけた。中は狭い)
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(三滝。三段式なのだろうか)
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(標識は随所にある)
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(チェーンスパイクを外す)
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(終盤が近づき)
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(ここで周回完了)
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(白ハゲ口に戻る)
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1046m標高点で尾根が分岐。右手にテープがあったので、それに合わせる。しかし、何とテープの多い尾根なのか。ところで、さっきから、ここを下ったことがある感じがしていた。ここは、何十年か前、初めて熊鷹山に行った際に下っている。あの時は、氷室山に行った帰りだったか。確か、下部はかなり急だったような。
やはりそうだった。三滝が近づくと急になった。ロープが現れる。土砂崩れでもあったのか、ロープを張った木が倒れたりしていて悪路っぽい。「滑落注意」の看板があったが、まだ急な下りは続く。
三滝を展望台から眺める。水の勢いはいい。ちょっと下に行くって覗くと、三滝に向かう丸太の橋組がはるか下に見えた。次のタイコオロシの滝はパス。入口付近を見ただけ。河原で休み、チェーンスパイクを外して、泥を洗いおとす。
危なげな斜面を歩いて、植林帯に入った。白ハゲ沢への分岐は近いはず。やがて、今朝の分岐に合流して白ハゲ口に付いた。ハンター氏の軽トラがまだあった。
(熊穴橋の駐車地)
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林道を下る。今日は、自分にはかなり手強い、なかなかのいい歩きをさせていただいた。きっかけを作っていただいたハイトスさんには感謝だ。それにしても、白岩山神社の直下は曲者だった。もういいでしょう。そう言いながらも、久しぶりに自然林の中の歩きを満喫できたのは確かだ。同じ安蘇の山や城山の、植林帯の歩きが続いた後だけに、なおさらだ。年内ラストにするには気分の良い歩きができた。
西沢駐車場に到着。氷室山グループはまだお戻りになっていない。鍋焼きうどんを食べた。その間、ハンター氏の軽トラが下って行った。
帰路、途中のゲートが閉まっていた。ヒモを外せばいいだけのことだが、やはり、本来は、ここ、通行止めなのだろう。その看板もずっと続いていた。西蓬莱山の神社に車が1台。その先、名水汲みのところでは、車を数台見かけた。
(本日のGPS軌跡)
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「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図メッシュ(標高)を使用した」(承認番号 平23情使、 第832号)
そうですか、大げさではありませんでしたか。少しは安心いたしました。
しかし、ハイトスさんは、私以上にヤバイところがお好きなんだなと思ってしまいましたよ。中倉キレットだってそうじゃないですか。そのヤバイところの後追いをしている私もまたおかしなもんですけどね。お互い、年甲斐もなくですからねぇ。
今年は、あまり、度を超した危ないところには歩かないように願いますよ。その度に、こちらも触手が動いてしまうんですから。
白岩山神も、わんさと人が入ったら、あの年代物の鎖の劣化が心配です。せいぜい、あと2~3人といったところじゃないですか。
今年もよろしくお願いいたします。
一人で行っちゃいかんのに一人で行っちゃったのですね。
ところでロープは心の支えです。(笑)
自分も怖かったですよ、すっごく。
特に鎖のある岩峰基部から右のガケをのぞき込んだときは足がすくむ思いでした。
そして鎖に頼らざるを得なくなったときに、この鎖がぼろっlとなったら結構下まで落ちるだろうな等と一瞬頭をよぎりました時は久々にヒヤリとしましたよ。
これで自分と二人分の新しい情報がアップされたので足を向ける人が出てくるかもしれませんが、注意を促すという意味でも単独行はおやめくださいは良い警鐘でしょう。
たそがれさんの表現は大げさでも無く穏当なものだと思います。
K女さんは不思議な身体をお持ちのようですね。骨折は何度もするものではないような気がします。一回したらアウトかと。
スリルですか。結果としてはそうですけど、スリルに伴う愉悦の感覚はありませんでしたね。やはり、恐怖が適切でしょう。
なるほど、チェーンスパイクはタイヤチェーンからの発想かも知れませんね。原型のものは以前からありましたが、着脱自在にしたこの製品は、やはり優れ物ですよ。旧スタイルのものは、チェーン部分がこんがらがったりしましたからね。
気持ちのさっぱりする写真とは、雪山に行って来いということでしょうか。しばしお待ちを、と言いたいところですが、残雪の腐りかけた雪までお披露目がなかったりして。
社殿の中の乱れが気になったのでしょうけど、腰を痛めたのは失敗かも、古い貴重な物でも、管理出来ないのはさびしいですね。
チェーンスパイクは、車のタイヤチェーンからの発想で出来たような道具、手軽だけど、優れものだなと思った。下りには、利用価値ありますね。
今年も、綺麗な気持ちのさっぱりする写真を待っています。
昨日、みー猫さんも歩かれたのですか。気になって拝見いたしました。新年のご挨拶と、温泉ヶ岳の狭間で埋もれていましたね。失礼いたしました。
谷倉山縦走も、今年のテーマになりそうな感じですね。厳しいお歩くきの予感は、バテ気味の私よりも、むしろみー猫さんかもです。
山専用長靴ですか。森林作業用というのは見かけますね。その筋の高級品としては、何万もするものを見かけましたが、たかが長靴です。使い捨て感覚でお考えになった方がよろしいのでは?
今年もよろしくお願いいたします。
最終日のハードな山行ですね!今年のより厳しい歩きを予感しちゃいました。それにしても皆長靴ですか?図らずも昨日は私も普通ゴム長で歩いたのですが、チェーンスパイクなるアイテムの登場で一気に使用範囲が広がりそうです。山専用長靴なぞ出来ても良さそうですね。
みー猫