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たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

雪の雨乞山は<たかが…されど>の山だった。まさか、こんな準里山にしんどい思いをすることになろうとは…。

2021年01月12日 | 近所じゃない群馬県の山
◎2021年1月9日(土)

路肩駐車地(9:50)……雨乞山(11:56~12:18)……高平口分岐(12:24)……作業道に出る(13:27)……登山口?広場(13:39)……集落に入る(14:08)……駐車地(14:39)

 「雨乞山」は全国にあるが、今回歩いたのは白沢村(現・沼田市白沢町)と川場村の村境に位置する雨乞山。緊急事態宣言は群馬県には適用されていないから関係ないよといえばそれまでだが、おおっぴらに県境を越えるのも考えもの。群馬県内のマイナーな山ならとせめて自粛する。そんな状況で、以前、高木が雪の雨乞山はなかなか良いとか、登ってみたいと言っていたのを思い出した。高木にお薦めコースを聞くと、望郷ラインは通行止めだから、白沢からではなく川場コースがいいと思うが、雪で車は入れないはず。田園プラザ(道の駅)から歩くしかないんじゃないのとの返事。まぁそれは覚悟のうえだが、他に面白いコースはないのかと探すと、ほとんどが川場、白沢村側からの2~3時間コースのピストン歩きで、正直のところ、皆んなつまらない歩きをしているものだなと感心した(小笑)。しかも、あくまでも無雪期の歩き。地図を見る限りはどこでも無数のコースを歩けるように思えるが、雪のある今はどんなものだろう。
 そんな中で、あにねこさんの記事がひっかかった。もちろん無雪期の歩きだが、道の駅(川場田園プラザ)近くから入って、高平口に下っている。その後は自転車利用で戻ってはいるが、地図を見て、だったら、680m三角点を経由する村界尾根通しで行けばよかったのにと思ったが、あにねこさんのことだから、検討もされたのだろう。とりあえず、あにねこさんの記事とルートマップを刷り出し、持参して出発する。雨乞山から先の歩きは、特に考えてもいず、適当なところから北側の林道に下るつもりでいる。これはあくまでも、雪はあってもトレースがあるだろうの前提で、結果として、これは大甘だった。雪は予想以上に深かったし、少なくとも川場側にトレースやコースの窪みやらはまったくなかった。強引にそれをやり、えらい思いをすることになる。あにねこさんの歩きですら、前半の一部しか役に立つことはなかった。雪の有無でこうも違うものかと改めて思い知らされた。例えば谷川岳のようなメジャー系の雪山では、吹雪や雪崩にでも遭わない限りはそんなこともないだろう。雪の里山は恐るべしだ。

 短時間歩きで済むだろうとタカを括って遅い出発になった。関越を走りながらやけに東京ナンバーが目立った。最初はコイツラはと思いながらも、自分は県内移動だから良しというわけでもなく、越県ではないにしても、結局は自分も同じことをしているんだなとつくづく感じた。スノボーを積んでレジャー目的だけでもないだろう。三連休だし、故郷の親に会いに帰る人もいるはずだ。他人のことをとやかく言う筋合いではないなと思いながら沼田インターから出た。

(駐車地から雨乞山)


(後ろにはテーブルマウンテンの三峰山)


 田園プラザに車を入れるつもりでいたが、警備員が駐車場の案内をしていて、何か言われるのも嫌なので、広い路肩でもあればと望郷ラインに入り込んだら、望郷ラインに通行止め情報の看板はなかった。一部、凍結と積雪はあったが、難なく広い路肩に車を置いた。この際、もっと脇に寄せようと車を移動したらスリップでタイヤが空回りし、四駆にして事なきを得たが、この時期の凍結路はあなどれない。この駐車地は、おそらく、あにねこさんが車を置いた所と同じだろう。駐車地からは、正面に雨乞山、振り返れば三峰山がよく見えている。

(車道を行く。この先に倉庫のようなものはポツンポツンとあるが、人家はない)


(車道は終わった。正面の尾根に取り付こうとした)


(あにねこさん記事には「草原」とあったが、ここを林の方に向かう)


(作業道。ボコボコしていて歩きづらい)


 通行止めにはなってはいないが着雪のある車道を歩いて行くと、すぐに終点になった。左に低い尾根が見えたので、もしかして、あれが村界尾根なら、そのまま上がって雨乞山に行くのが楽じゃないのかと、原っぱ状のところを横断して近づくと、どうもその尾根先が不明瞭で、地図ではわからない尾根がいくつか見え、すんなりとは行けそうにもなく、これは失策だった。すでに積雪は30センチほどあって、何日か前の足跡もあったが、これもまた尾根取り付き前で引き返している。あにねこさんの記事によれば、車道先に作業道が続いているらしく、それには気づかなかったが、そちらに移動してみると、植林の中に荒れてはいるがしっかりとした幅広の作業道があった。地図上では破線路になっていて、先で折り返しになっている。これだけでもかなりのタイムロスをしている。雪でヒザまで来るところもあって、スムーズな歩きで作業道には出られなかった。平地で早々に息切れし、汗をかいてしまった。

(分岐した作業道に入ると、こちらも障害物が多い)


(右上に続く作業道に入ってみる)


 こうなったら、破線路の作業道と村界尾根の距離が狭まったところから尾根に上がるつもりになったが、作業道は間もなく直進と左に分岐。根拠もなく、ここがあにねこさん記事のY字路だろうと判断して左に行く。「根拠もなく」と記したのは、あにねこさんの記事には、この先で木橋や小川を渡ったとの表記が見られるが、そんなものは見なかった。すべてが雪の下なのか別のY字路だったのか。分岐に林道作業線の標柱だけはあった。
 ここもまた倒木がうるさく、高度は若干稼いではいるものの果たしてこれでいいのかと思っているところで、右下から作業道が上がって来て合流し、右に上がっている。ここは、直進ではなく右だろうと、これを選択。ここから、あにねこさんのルートからは離れてしまったようだ。とにかく、早いとこ村界尾根に上がってしまいたいという気持ちだけが先行する。後で考えると、ここは直進した方が、すぐに尾根に出られたようだ。

(シカ道を辿って小尾根をトラバース)


(村界尾根に出た)


 倒木を避けながらそのまま行くと、作業道はあっけなく終わった。戻ろうと思ったが面倒くさかったし、あの作業道を直進したところで、尾根にぶつかるともこの時点では考えもしなかった。何せ、地図にない作業道だ。幸いに、この辺は雪が少なくなっていて、シカ道かもしれないが、上に向かう踏み跡が続いていた。傍ら左に直上する小尾根があったが、これは急なので避け、トラバースする踏み跡を追った。
 ヤブがひどく、右手は急斜面。さらに雪がかぶった落葉の下は凍結している。大汗をかきながらようやく村界尾根に登り上げた。10時43分。出発から一時間近い。大汗ついでの余談。今回のズボンはワークマン製で、内側にフリース加工を施したものだが、これだけで十分なのに、さらにヒートテックを履いているから、汗が内側に溜まり、通気も悪くなって、晴れているうちは気にならないが、気温が低下すると、かなり冷たくなってくる。前回も同じことをやっているから、ヒートテックを履かなきゃよかったわけだが、出発時の寒さを考えれば我慢もできなくなるし、途中で脱ぐわけにもいかない。
 尾根はおとなしいものの、やはりヤブ尾根で、木の枝がやたらと顔や身体にあたる。振り返ると、反対側は急下降になっていて、トラバースして正解だったようだ。尾根に乗ったからには、このまま安泰に雨乞山に行けると思った。

(里山の特徴だから仕方はないが、地図にない作業道がやたらとあって、ハイカーはその都度に惑わされる。これは尾根を寸断した作業道)


(ヤブがひどいので)


(作業道に逃げた)


(尾根に復帰するとヤブは消えていた)


 再び雪が積もり出したところで尾根が寸断。左右を作業道が通っている。わけがわからないが、ここは尾根通しに直進。ここの十字路に人の足跡はない。ウサギやシカの足跡だけはかなりある。
 尾根伝いに行くと、また作業道が右下に見えた。おそらく、さっきの尾根を寸断した作業道の延長だろうが、その作業道が分岐して進行方向の尾根下を通っている。尾根の枝ヤブから解放されたいので作業道に下って上がる。作業道はおかしな方向に向かっては、尾根に戻ったりする。作業道はあくまでも作業用であり、登山道のはずもなく、尾根に上がった時点で、もう見切りをつけることにして、結局は尾根歩きに復帰した。枝ヤブはもう消えていた。

(「部林」の標石)


(岩場が出てくる。ここは右から巻く)


(巻きながら雨乞山)


(岩場は後ろにも続いていたので、ここから岩場に登った)


(縦に真っ二つに割れた岩)


 歩きやすい穏やかな尾根になり、標石が置かれている。標石には「部林」の文字が記されている。おそらく、の林といった意味かと思うが、これが白沢村なのか川場村なのかはわからない。林とはいっても杉やヒノキの植林ではなく、カラマツの疎林だ。左右の村の樹の植生は同じ。この部林の標石が尾根上にしばらく続く。
 ここで思わぬバリアが現れる。前方に岩峰じみた岩場。直登でも行けそうだが、右から巻いたものの、背後に岩場はまだ続いていた。こうなったら、不安定な巻きよりも岩場の上を歩いた方が無難。岩場に登って歩いた。そして、そのまま岩場は下ることもなく尾根に同化して消えた。ここは、最初から素直に岩場を登った方が賢明。とはいっても、ここを歩く人はいるまい。さて、ここの岩場の終点付近に二つに尻割れしたような岩があった。これが「ふたつ岩」かなと思ったが、あにねこさんの記事では、ふたつ岩は北の849m標高点ピークにあるらしい。

(この辺からペンキやらテープが目に入るようになる)


(先行者の足跡。前一方向)


(ようやく標識に出会う)


 尾根上の雪も深くなってきた。そして、樹に巻かれたテープも目に付くようになったが、これはどうも登山用のマークではなく、植林作業用のようだ。ここで、つまりは、849mピークへの分岐ということになるが、そちらから登って来たらしい新しい一人分のトレースが目に入った。雨乞山の方に向かっていて、真新しいから今日のもの。帰路の足跡はない。ここで初めて他人様のトレースを見つけてうれしくなった。川場側から登っているわけだから、この足跡を頼りに下れもするし、先行者と行き会えば、歩いたルートの情報も聞ける。どうせ、今に至っても、どうやって下るのか決めかねているのだから。

(雨乞山への登りになったが)


(先行者の足跡は左の作業道に入り込んでしまった)


 先行者のトレースを追いながら尾根を歩く。前方に雨乞山が見えてはいるが、どうも遠い。まだまだだ。少なくとも無雪期の倍は時間がかかっているはずだ。本日初の標識を見てほっとした。11時24分。雨乞山までは500m。ここで白沢村からの下古語父口とかのコースと合流するようで、標識からは600mとなっているが、そちらにはシカの足跡しかなく、自分が来た方向は「川場村括林口2.0km」となっていて、地図を見ても「括林」の地名はないものの、おそらくは、目の前の足跡はそこから来たのかと思われる。ところで、後で思ったことだが、この「下古語父」、自分が駐車した地点は白沢町下古語父のエリアのようで、600m歩きでここまで来られる登山口が別にあるようだ。地図を見る限り、距離的には、最初の破線の作業道をずっと歩いて、折り返し部分が登山口なのかなと思ったりしているが、そうだとすれば、同じ下古語父から、やけに長くややこしい歩きをしていたわけで、ここまで、かなりの神経と体力を費やしてしまっているということになる。おバカさんとしか言いようがない。
 雨乞山への鞍部で先行者の足跡が突然消えた。ここにもまた左に細い作業道のような窪みがあり、シカ跡に混じってそちらに下っている。つまり、雨乞山には行かず、ただの部林の見回りだったのか。山頂に向かう足跡はシカだけだが、夏道は充実しているようで、雪道ながらも道型が明瞭だ。ここから山頂までがきつかった。ここで残りの体力を使い果たしてしまった。この時点で、山頂からの下りは高平口分岐から分かれる一般ルートで北側の林道に出るつもりになっていたし、しっかりした道型、もしくはトレースもあることを疑いもしなかった。まして里山というよりも準里山。とにかく、無雪期のネット記事を見ての印象が強く、さっきの、最初の標識を見るまでの区間はちょっとした間違い歩きをしてしまい、標識から先の歩きは楽勝とばかりに思っていた。したがって、今日の登り活動のラストはここだけだと。

(次第にきつくなって)


(夏道に逃げる)


(結局、直登)


(こんな看板があった)


 夏道を無視して直登すると、かなりしんどく、結局、夏道に入ったりしたが、これとて雪がある分、楽なわけではなく、最後はやはり直登になった。ズボズボと足がヒザまで埋まる。今日はスパ長で来ていた。長靴のフードを延ばしても隙間から雪が入るので、これまたワークマン製の農耕用スパッツを付けてカバーした。樹には「急な下り」の看板が打ち付けられている。疲れた身体には一歩一歩の登りがかなり重い。

(山頂はそこだと思うが雪も深くてきつい)


(東屋が見えて)


(山頂に到着)


 ようやく傾斜が緩んだものの、山頂はまだ先。ゆっくり行くと、東屋が見えた。地元の方には失礼ながら、雨乞山はこの程度の山なのだ。それでいて、こんなにきつい山とは思いもしなかった。先日の赤城山の半端な雪山体験には比べようもないきつさ。これではラッセルもどきだ。やっと山頂。出発から2時間以上かかってしまった。いつの間にか青空は遠くに行ってしまい、真上はどんよりした空になっていた。急に寒くなった。汗を溜めた下半身は特に冷たく感じる。山頂に新しい踏み跡はない。

(山頂から。谷川岳やら武尊山方面は視界にはない)


(大分雲が低くなってきた)


(形からして、やはり三峰山の存在感があり過ぎだ)


(正面部)


(赤城連山。左が黒檜山。いつも反対側から見ているから、地蔵岳のアンテナ群を見るまでわからなかった)


(河岸段丘のアップ)


(石祠。向きは白沢村側)


(三角点は雪に隠れて頭すら出ていなかった。足探りで掘り出した)


(こんな東屋)


 しばらく呼吸を整えてから展望を楽しむ。ここには展望盤があった。かぶっていた雪を払いのけた。つまりは、ここ数日、だれもここには来ていないということだが、赤城山から南アルプスまで一望できそうでいて、直近の、関越自動車道から見えた真っ白な谷川岳と武尊連山は雲で見えない。それを見たくて来たということもあって、これは残念。名物の河岸段丘だけはわかった。そんなことを記しても、景色よりも、ようやく登れたといった感慨が強く、とにかく休みたいの一言。ベンチもあったが、尻濡れが嫌で、さりとてザックからシートを出すのも面倒で、立ったまま、空腹を満たし、落ち着いてから、ようやくの一服を味わった。

(反対側に下る)


(真っ白で見えづらいが、道型は雪に覆われても確認できる。川場側への下りも、頭の中ではこうだったのだが)


 すっきりした青空に戻りそうもないので、途中で脱いでいた上着を着て退散する。反対側に下る。こちらは本日の足型はないものの、道型は明白。下って行くと、奇特な単独氏が登って来た。瞬間、物好きもいるものだなと思ったが、彼もまた下って来るオレにびっくりしたようだ。自分の前に足跡はないのに下って来る人がいたのだから。立ち話で、彼は高平口から登って来たとのことで、川場方面への分岐標識はありましたかと尋ねると、標識はあるけど、足跡はなかったとのこと。ここでがっくりときたが、道型はあるだろうとまだ楽観気分でいる。もっと話をしたかったが、彼氏がマスクをしていたし、こちらはノンマスク。それ以上の会話は避けた。

 ここまでも長たらしかったが、自分にはここからが本日のメインイベント状態になる。軌跡図を見ていただければおわかりかと思うが、この先、確かに模範的にそのまま村界尾根やら破線路を忠実に歩いてはいる。これはあくまでも結果的なことであって、偶然にそうなったということ。実際にはかなりまずい歩きになっている。

(ここで川場方面への分岐になるが、取り付きの跡もなく、取りあえずは標識の指す方向に行った)


(暗中模索の状態。樹の間隔が広くなっているところが登山道と見当つけるしかない)


 標識はすぐにわかった。そのまま行けば高平口までは道型も踏み跡もあって問題なく下れるだろうが、反対側の「川場村 林道終点口 1.1km」を指す方面には道型の窪みすらなく、どこをどう歩けばいいのかわからない。まして雪は深い。ここで賢明な頭なら、雨乞山に戻って、上り使用の自分のトレースと途中まであった足跡を追うのが当たり前の選択だと思うが、自分の場合は賢明ではなかった。感で歩こうと先に踏み込んでしまった。
 とにかく樹の間隔が広いところが登山道だろうと行くと、気まぐれに目印テープがあったりして、これは正しいようだが、どうも北に向かうべきところを北東に向かっている気配があり、コンパスを出して北にセットした。だが、分岐からすぐに下るべき北尾根に気づいていない。GPSを出して確認すると、すでに過ぎている。まったくの白い世界だと、地形も読めない。たまたま、自分のいる位置が村境の点線上にあった。このまま歩いてみることにしよう。点線は先で破線路に交差する。この時点ではまだ余裕もあった。いざとなれば、自分のここまでの足跡で戻ればいいという思いもあった。

(こんなのがあった。結わえられたロープの意味が不明。後で考えれば、直進せずに左に下れという意味だったのかもしれない。なかのビレジの張り紙)


(左に雨乞山)


(テープもあるにはあるが、別にここを左に下れという意味ではないだろう。急斜面だ)


 人工物が目に入った。ゲートのようにロープが樹に結わえられ、張り紙のようなものがひらひらしている。回り込むと、「世田谷区民健康村なかのビレジ⇒」とあった。「なかの」というのがどこなのか地図で確認すると、田園プラザの北側に中野という地区があり、おそらくそこだろうが、この張り紙の矢印の方向が東向きになっていて、そちらに道型らしきものもない。そういえば、高平口分岐の標識の近くに、この、なかのビレジの標識があったような気がする。いずれにしても、この場では張り紙も何の役に立たない。ただ、雪の下には道があると思えばほっとはする。村界尾根とはいっても幅が広くて、自分が歩いているのが正しいのかもまったくわかっていない。たまにテープを見つけてそちらに向かうと、その先のテープがなかったりを繰り返す。雨乞山は左の位置にあって、かなり離れてしまった。

(岩場通過。トラロープを目にしてほっとする)


(雨乞山からかなり遠くなった)


(尾根型が狭まり)


(小ピークに達した。先にぼんやり見えるピークに向かって下ることになる)


 ようやく尾根が狭くなって尾根筋が明瞭になってほっとした。だが、これで安心できるわけでもなく、岩がゴロゴロ出てきて、嫌な登りになった。体力はもう限界だ。勘弁して欲しい。岩の間にはトラロープが続いている。どこに行き着くのかは予想もできないが、登山道を正しく歩いていることは確かだ。改めてほっとして、何とか気力が出てきた。岩場を越えた。雨乞山の標高はすでに超えている。トラロープも終わって小ピークに着いた。すでに雪は腿まで達している。完全にラッセルだ。

(かなり深い雪の尾根を下る。以降、しばらくは気が動転していて写真を撮っていられる状態ではなかった)


(せいぜいこんなものくらいか)


 さて、問題はこの先だ。この辺から左寄りに方向を変えないといけない。運よく、それらしき尾根があった。これを下ればいいかと思うが、目印も何もない。おそるおそる下る。尾根が直進と左に分岐。濃いシカ道が左に向いていたのでそれを頼りに下ると、どうも谷底に向かっているような気配があったので戻る。ここで、よほどに谷に降りてしまうかといった根拠もない衝動に駆られたが、それをやったら、里山でも死の彷徨になりかねない。
 さっきから雪がちらちらと落ちて来ていたが、本降りになりつつある。尾根の目の前には高いピークがある。ここを下りきってから、あそこに登り返しということはあるまいな。だとしたら、今の体力では無理。周囲に目印がなくなって久しく、雪も少なくはなっても相変わらずにヒザまで来る。どうもかなりヤバい情況下にあるようで、遭難という言葉がちらりと脳裏をかすめる。GPSを取り出し、地図を出して位置を確認する。今、村界尾根から離れ、破線路を下っている。ほっとはしたが、その先が尾根上がりになっている。やはりな。ここまで来てどうすんベぇ。やはりあのピークに登るのか…。まいったなぁ。
 すでに冷静な状態ではなくなっている。帰路、ほっとしたところで地図を改めて確認すると、尾根上がりと思っていたところは実は沢筋の下りで、等高線を逆さに読んでいた。そして、目の前のピークは雨乞山の北東にある1030m級ピークで、そこに登り返すわけではなかった。

(尾根を下ると作業道)


(そのまま登り返すトレースはシカのもの)


(作業道の左には沢が流れている)


 そろそろ尾根を下りきって鞍部になる。登り返しを回避する手段はないものかと思案しながら鞍部に出ると驚いた。鞍部を作業道が通っている。どこに続く作業道かは知らないが、いずれは林道に出て、車道に出られるはず。登り返しをせずに済むなら、とんでもない村外れに出ても遭難することはあるまい。この作業道を右に行くことにしよう。登り返し方面には濃いトレースがあった。よく見ると、それはシカの複数の足跡だった。もちろん、作業道にはケモノの足跡すらない。左を見ると、作業道の続きは確認できず、ここで終わりになっているようだ。ということは、この先で作業道が終点を迎えるといった事態にはなるまい。

(かろうじて作業道だとわかる。雪は深かった)


(自然観察林の看板)


(ここで標識。全体的に標識が少ないような気がするが、雪のない時期なら、この程度で迷わずに歩けるということなのだろう。自分には、せめて、高平口分岐との間に一基は欲しかった。有る無しで安心度がえらく違う)


(橋だと思うを渡る)


 緩やかな下り道。左には雪をかぶって沢が流れている。またGPSを取り出す。何ということはない。カーブした破線路をそのまま歩いていた。全身から力が抜けた。とにかく助かった。
 作業道とはいえ、雪は相変わらず深い。げんなりしながら歩いて行くと、左に「雨乞山自然観察教育林」の看板。もう自然観察は腹いっぱいだ。そして標識。来た方向には「雨乞山登山道入口 山頂まで1.4km」。向かう方向には「川場村中野地区」とある。今さらどうでもいいが、自分が歩いたルートは果たして標識が示す正規のコースだったのだろうかと疑念が湧く。やがて、雪をかぶった小橋を渡ると広場に出た。あるのは国有林の看板と簡易トイレが二つあるだけ。

(林道終点の広場だろうか。ここにもロープのゲートがある。雨乞い儀式に関係したものなのだろうか)


(スノーモービルが広場を一周している。右に作業道が延びているが、ここは左に行く。黒くなった四角いものは簡易トイレ)


(おかげでかなり楽チンな歩きになった)


(ゲートは開放されたまま。行けるなら行ってみなといったところか)


(ここで大休止となった)


 もしかしたら、ここは林道終点ではなかろうか。無雪期の状況は知らない。それどころか雨乞山は初めて来た山だ。ここまで車が入れるようになっているのではないのか。現に、車の轍が広場を一周して残っている。この轍、よく見るとキャタピラの跡で、小型の除雪車かスノーモービルでも入っているのだろう。これはありがたい。轍の上を歩けばいくらか楽だ。ただ、信頼はできない。ズボズボに変わりはなく、踝上程度ではあるが埋まってしまうし、場所によってはヒザまで来る。
 次第に雪が少なくなってきた。地面が見え出したところで休憩。同時に雪は止み、陽が出てきた。瞬間、樹々から落ちた雪がダイヤモンドダストになってキラキラ光る。もうこうなると、気持ちの余裕も出き、山頂以来の一服を吸ってほっとする。上着を脱いで、スパッツも外した。

(集落に入った)


(除雪車はここまで来ている。ここから車道歩きになる)


(子供たちがソリ滑りをやっていた)


(改めて三峰山。あの山には積雪期に行ったが、トレースはばっちりだったから苦労した覚えがない)


(こちらはよくわからないが、道をカーブしてからだから、昭和村の大峯山かもしれない)


(大正10年製。「敬者道」とある。調べてもわからず)


(心身ともに疲れたわ)


(駐車地に到着)


 里が見えてきた。そして広い車道も。除雪車の溜めた雪の堆積を越えて車道入り。人家が続くようになり、左手には子供たちの嬌声。ソリ滑りを楽しんでいる。懐かしい光景だ。正面には三峰山が横たわっている。
 車道をテクテクと歩く。雪できれいになった長靴に泥が付くようになり、また雪で泥が落ちる。長い距離だが、安堵感から、距離を感じないで歩ける。人家の間を抜けて駐車地に到着。脇の望郷ラインの凍結した道を白沢方面から軽自動車が猛スピードで走り抜けて行った。地元の方は恐ろしいことをする。あんな車にあおられたら、脇に寄った途端にスリップしてガードレールに激突する。

 長かった。それでも5時間も歩いてはいない。精神的なものだろう。里山だと嘗めてかかったのがこういう失態を招いてしまった。雨乞山から尾根伝いに下って帰って来た方が、ちょいバリ歩きになって十分に楽しめかもしれない。今回の歩き、ただの登山道歩きなのに、道も型もすっぽりと埋まって隠れ、スノーハイクの楽しさからは程遠く、苦痛以外の何ものでもなかった。
 雪が消えたら、改めて来てみよう。素顔の雨乞山はどんな山なのだろう。少なくとも神経をすり減らすことはあるまい。

 後日談だ。今回の雨乞山の件は高木にメールで知らせたが、早速、翌日の10日に夫婦で雨乞山に行ったそうだ。高平口から入って往復一時間半歩き。川場・高平口分岐で、前日に歩いたオレの足跡を見かけたとのこと。その時のヤツの笑い顔が目に浮かぶ。きっと、夫婦して笑っていたのだろう。

(今回の軌跡。雪の時期はこれを参考に歩かれても責任は持ちかねます)

「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図200000(地図画像)、数値地図25000(地図画像)、数値地図25000(地名・公共施設)、数値地図250mメッシュ(標高)、数値地図50mメッシュ(標高)及び基盤地図情報を使用した。(承認番号 平24情使、 第921号)」

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4 コメント

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Unknown (あにねこ)
2021-01-12 23:39:40
腿まである積雪で、夏道がわからないところの下りは難しいですね。写真と文で、やばそうな雰囲気が伝わって来ました。そこを乗り切ったワークマンのズボンとスパッツはなかなか優秀そうですね。680m三角点の尾根を下る発想はありませんでした。写真の道標にも「白沢町下古語父口」としっかり書いてあるのですが、ルートは未だに不明なので、無雪期に再訪されるのでしたら、是非。
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お疲れさん (俺だ)
2021-01-13 06:19:31
たっぷりと堪能できてよかったな。おかげさまで、翌日はいい山歩きできたよ。下古語父からのルートは地元でははよく歩かれているようだが、俺は行ってない。無雪期に一度は歩かないと無理だと思う。川場コースはトレランのルート整備で歩いているので、大体の地形は把握できる。トラロープやテープはその時の者だと思う。
そろそろ濃厚接触してーなぁ。
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あにねこさん (たそがれオヤジ)
2021-01-13 09:19:01
あにねこさん、こんにちは。早速のコメント、ありがとうございます。
前半部はあにねこさんのコースのパクリ歩きの予定が、早々から逸脱歩きになってしまったようです。
今回の歩きで思ったことですが、里山だといった侮りが自分にあり、初めての山とはいえ、積雪があっても難なく歩けるといった甘い気持ちがかなりあったようです。帰路の下りもまた、夏道体験で歩いていれば、恐々と歩くこともなく、これでいいんだと確信して下れたでしょう。
しかし、雨乞山は意外に楽しめそうな山ですね。普通のコースならネット記事でわかりますから、敢えて歩かずともいいような気がしますが、その下古語父口が気になりました。雪がない時にでも歩いてみたいものです。作業道のカーブ付近かなと思ったりもしているのですが。いずれにしても、雪がなければ、どこをどう迂回しても遭難の心配はないような気がします(笑)。
ところで、ここのところワークマンブランドできめ込んでいますが、高いブランド物より、長持ちはしないでしょうが、私のようなチョイ歩きにはちょうどよく、気軽なブランドだと思っています。
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俺だへ (たそがれオヤジ)
2021-01-13 09:20:24
コメント入れを強制してすまん。ありがとう。
確かに堪能し過ぎてゲップが出るくらいだ。オレが歩いたコースは、おそらくは、普通の登山道のつなぎ合わせかと思うけど、こう雪が深いと、無雪期なら、熾烈なヤブ山を歩いている感じだったよ。
トレランルート? なるほど。行き着いた小ピークから川場村に下ったけど、そのまま村境の尾根を行くのがコースかもな。
いずれ、途中から下古語父口に出てみるよ。そこから雨乞山に別ルートで登り直しても雪がなければ余裕だろう。
高木と濃厚接触をするつもりはないけど、飲み会はしたいものだ。この情況ではいつのことになるのやら。少なくとも暑気払いの時期は無理かもな。
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