うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

つなぐ、思い

2018年02月04日 | あやの事

言葉を覚えた、幼い、あの頃から、

いつも、心の奥には、

「どうして、私が産まれてしまったのだろう」

という言葉が沈んでいた。

 

おはようございます。

母さんは、私に厳しかった。

まるで、

「どうして、お前を産んでしまったんだろう」と

言っている様だった。

そして、酒に酔うと、

「お前は産む予定じゃなかった」と言っていた。

酷いもんだ。

勝手に産んでおいて、それはないだろう。

 

そんな母さんは、今、年老いて、ちょっとボケてきて、

自分が言った酷い言葉も、忘れていく。

私は、すべて忘れたふりをして、毎日、実家へ通っている。

酷いもんだ。

忘れるなんて、それはないだろうが、母さんめ!

 

そう思ったが、そんな私は、ただでは諦めない。

鬼と化した、娘からの仕返しの始まりだ。

 

猫ベッドを気まぐれで1個編んでみた母さんが、

「これは編むのが大変や。2度と編まんぞ」と言うから、

いや、2度どころか、5度は編んでもらうぞと、

尻を叩いてやった。

 

そんな母さんは、以前は猫が苦手だった。

見るのも嫌だと言っていたから、

5年ほど前のある日、

川から拾った、びしょ濡れの子猫を、

真っ先に、母さんにほいっと渡してやったんだ。

「うわ~、気持ち悪い」っと悲鳴を上げたから、

これはいい仕返しになるぞと、閃いて、

「いいか、母さん。この子に何かあったら、承知しないぞ」

と脅して、昼の間、母さんに預けてやった。

鬼や。わしは鬼や。と言わんばかりに脅してやったんだ。

どんぶり勘定の母さんに、詳細な育児日記も付けさせた。

夕方、子猫を迎えに行くと、

母さんは、右手に箸を、左手には、猫ジャラシを振りながら、

夕飯を食べていた。

「おい、助けてくれ。もう腕が死にそうや」と

助けを乞う母さんをしり目に、育児日記を開いては、

「母さん、子猫のシッコの時刻が書いてないじゃない!」

と、姑のような口調で、

重箱の隅をつつくような、文句を言ってやった。

 

それが、あやという猫だった。

母さんは、私の予想を、遥かに超える育児をした。

まるで、孫のように、いや親のように、

あやを大事に育ててくれた。

私が、「あやは、顔がブサイクだ」と笑うと、

母さんは、本気で

「そんな事ない!そんな酷い事を、この子に言ったら、あかん」

と怒った。

 

そのあやは、親とはぐれて、川に落ちていた猫だった。

当時、保護した日の夜、探しに来た母猫と再会を果たした。

しかし、

母猫は、あやの体を、しきりに舐めてから、置いて行った。

あの時、立ち尽くすあやを見て、

私は、初めて、命の重さを実感したような気がしたんだ。

 

この子は、親が産んだから、ここに居るんだ。

命を懸けて産んだ、母さんが居るから、

この子は、ここで生きているんだ。

産んでくれて、ありがとう。

そう、心から思えた。

 

だから、私は、

母さんに、あやを預けた。

思ってみたくなったんだ。

産んでくれて、ありがとう。ってね。

そして、

産まれ来る、すべての命に、

ありがとうと、言いたくなったんだ。