うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

天才と暮らすという事は・・・

2019年04月14日 | 日記

我が家の天才は、

今度こそ、目覚めるのか。

 

おはようございます。

私が彼と出会った頃、彼は

「眠るように生きていきたい」と言っていた。

当時、彼は仕事を失い、妻に出ていかれ、

税金も滞納するほど、困窮していた。

元妻と2人で暮らしていた、広すぎるマンションのローンも払えず、

気付けば、我が家に転がり込んでいた。

転がって来たというより、じめ~っとした闇のように

家の隙間から入って来たような印象だった。

 

大量に運ばれてきた荷物は、

フランス製の衣服と、フランス語のぶ厚い本、

何だか知らない、フランス製の調理器具と

とにもかくにも、おフランスの香りがプンプンしていた。

彼は、かつてはフレンチの天才だったらしいが、

私には、到底、そんな事信じられなかった。

やっと就職できた会社は、給食会社で、

彼は、社員食堂でご飯を炊いたりみそ汁を作る仕事に就いたが、

調理師のくせに、だし巻き卵の作り方も知らないと言う。

知らないって?

あんた日本人だろ?

「油料理といえば、唐揚げではなくコンフィーが得意なんです」と言うが、

なんですか?

こ・・・こんふぃ?

といった具合だった。

 

あれから10年、なんとか給食会社で踏ん張っていた。

歯を食いしばって踏ん張っていたというより、

感覚を鈍らせるように、まさに眠るように過ごしてきた。

そんなある日、いつものように電車で通勤していると、

ふいに声を掛けられた。

フレンチ時代の先輩調理師だ。

「君は、今、何をしているんだい?」と聞かれ、

今の現状を伝えたところ、先輩は、

「君が?それはいけない。もったいない。

時間のある時でいいから、一度ちゃんと話そう」と言ったそうだ。

その先輩は、今や某リゾート会社の取締役になっているらしく、

おじさんが、ついでに、「その先輩、フランス人なんですけど」と、

言うものだから、

あまりに突然の話で、私は戸惑った。

電車の中での会話、何語で話してたの?

ねえ、フランス語?日本語?どっち?と。

 

そんな訳で、おじさんは正式な面接も受け、

今は、事業部で採用を検討中だそうだが、どうなんだろ?

フレンチの世界に戻れるのかな?

やっと、眠りから覚めることが出来るのかな?

 

私は、この10年、眠るように生きる男と生活をしてきた。

それは、決して楽しい生活ではなかった。

たまに、揺すらないと起きなくなりそうで、怖かった。

「腐るなよ。腐っちゃだめだ」と揺すり続けた。

一緒にいると、私まで眠ってしまいそうで、本当に怖かったから、

必死で揺さぶった。

猫達にも揺さぶってもらった。

すると、猫達は、実に巧妙に彼を揺さぶってくれるのだ。

夜も眠れないくらい、揺さぶってくれるから、

私は夜は猫達に任せて、普通に寝たから詳しくは知らない。

 

今回の事が決まれば、彼は放っておいても目覚めるだろう。

私や猫達が揺さぶらなくたって、もういいんだ。

そう思うと、私は安堵と共に、一旦区切りたいという気持ちがよぎる。

よぎってよぎって、仕方ないのだ。

 

あれは、数年前の事だ。

亡くなった彼のお父さんは、

病床で意識も無いまま、私に言った。

「息子を、どうか、よろしくお願いいたします」と。

何度も何度も、声にならない声で必死に訴える姿に、

私は、思わず「はい」と約束してしまったんだ。

本当は、お父さんが亡くなったら、彼と別れると決めていたのにだ。

 

優しいというより弱々しく、

穏やかというより消極的で、

寡黙というより言葉を知らず、

人を疑う事も、羨む事も、恨む事も知らない、

極めて純度の高い天才は、ひとたび興味を持ったことへは

その才能で、命を懸けてでも突き詰めていく。

それが、我が家のおじさんの真の姿だ。

不器用な天才だ。

真の姿を知っているのは、きっと両親くらいだろう。

だから、お父さんは、誰かにバトンを渡したかったんだ。

 

しかし今、

私は、受け取ったバトンを、手放したいと思っている。

だって私は、眠っている彼しか知らないんだもん。

揺さぶり続ける必要は、もう無いんだもん。

目覚めかけた天才は、すでに眠っていた彼とは全く違う。

顔が、全く違うんだ。

すごい輝いた顔をしている。

こんな顔は、どれだけ揺さぶっても1度も見せた事のない顔だ。

それは嬉しくて、安心するけど、

この10年がまるで意味もなく消えてしまった気がして、

私は、すっかり空っぽになってしまった。

 

「おかっぱちゃん、ありがとうね」と言って

元気に旅立ってくれたら、

私はドンと彼の背中を叩いて、笑顔で送り出せて、

そうなれば、ちょっとは誇らしく思えるのだが、

天才には、私の気持ちなんて理解はできないんだ。

「これからも、変わらずお願いしますね」と、

飄々と言う天才に、私の心は、なぜか戸惑う。

それを選んできたのは、私なんだからお門違いなんだけど、

自業自得なんだけど、人の心って、複雑ですね。

 

私、どうしたらいいんでしょうね?

知らんがなって、言ってやってください。

 

うんこさんや?

これからは、自分のための事を考えたいんだよね。

もちろん、うんこのための事は、ずっと考え続けてるぞ。

だからね、うんこのダイエットは強化すっぞ!

うんこ「ちっ!」

そんな顔するな~。

もっと輝け~。