おかっぱは、起きていようと、
努力している。
いつだって、起きていようと努めているのだ。
おはようございます。
好きなテレビ番組は、何ですか?と問えば、
おかっぱは、迷わず、答える。
「何でも、お宝鑑定団?お宝、何でも鑑定団だったっけ?」
正しくは、『開運 なんでも鑑定団』だが、
おかっぱは、自身の好きな番組を、迷わず正確に言えないまま答えるのだ。
その理由は、おかっぱの早寝体質にある。
火曜日、夜8時54分、
『開運 なんでも鑑定団』は始まる。
♪help!I need somebody
help!Not just anybody
help!You know I need someone help
助けて!誰かが必要だ。
助けて!誰でもいい訳じゃないけど、
誰かの助けが必要なんだ。
助けてくれ~!
と最後、叫んだか叫ばなかったかの瞬間、
おかっぱは、睡魔に負け、意識を失う。
毎週だ。
当然、お宝は一つも観る事が叶わないどころか、
タイトルコールさえ滅多に見聞きできずにいるから
好きな番組名を正確に言えないという訳だ。
しかし、テレビ愛知は、そんなおかっぱを救った。
日曜日、午前11時25分、傑作集を再放送している。
テレビ愛知がそこまでしてくれているのに、
おかっぱは、土日の昼寝も省くことができない。
どうしても、11時20分辺りから、眠くなってしまうのだ。
これも、揺るがない体質だ。
そして、やはり、
助けて!
どなたか~どなたが助けてください!
閉じてゆく瞼を恨みながら、心は叫んでいる。
それなのに、
時にその時間、不意に玄関チャイムが鳴っても、
その千載一遇のチャンスには、意識的に無視を決め込んでしまう。
自ら救いの手を払いのけるという、訳の分からない天邪鬼だ。
そんなおかっぱは、それでも諦めない。
男が仕事で遅くなるとラインで知らせて来た時もだ。
「遅くなるので、先に休んでいてください」
この男の優しさに、おかっぱは、こう返した。
「ねてたらおこすた」
もう、すでに半分寝ていることが伺えるが、
おかっぱは、遅くでも帰宅した男に晩御飯を滞りなく用意したいのだ。
それでないと、男は面倒な汁物を自分で温めてまで飲んだりしない。
せっかく作った汁物を無駄にしたくない一心だ。
そして、10年以上、おかっぱと共に暮らしてきた男なら、
この文字を、「寝てたら起こして」という意だとは解釈できた。
それをやらずに、そっとしておくと、
それはそれで、厄介な事になる事も、知っている。
男は帰宅後、起きて待っている猫達を撫ぜ、
そして、おかっぱに声を掛けた。
「ただいま、帰りましたよ」
炬燵に入って向こう向きに横たわっている、
おかっぱの背中は、ピクリとも動かない。
台所には、アジフライが置いてある。
「これは、普通に食べればいいのだろうな」
男は、おかっぱを起こすまでもないと判断し、
アジフライの乗った皿を炬燵へ運んだ。
すると、おかっぱは目を閉じたまま、座る男の方へ体ごとゴロンと寝返った。
「起こしちゃいましたか?おかっぱちゃん?」
声を掛けてみると、それでも瞼は固く閉ざされたまま、
しかし、おかっぱは声を発した。
「ソース」と呟いたのだ。
男は、懸命に起きようとしている女に憐れみを感じ、
優しく静かに答えようとした。
「そうですね、ソース掛けて食べまっ」
とその時、突如、
「ソースぶっかけて、逃げろ――!」
おかっぱは、逃げろと叫んだ。
「へっ?」
おじさんが、へっとなっている隙に、おかっぱは、やはり目を閉じたまま、
でもしかし、にんまりと笑みを浮かべて断言した。
「でも、エビは食べた方がいい!絶対!!祭りだから。」
男は、家中を探し回った。
「どこに、エビがあるのだろうか?」と。
だから寝ていても起こせと言ったに違いないと。
しかし、エビは見つからない。
男は意を決して、おかっぱを揺さぶった。
「ねえ、エビはどこにあるんですか?」
すると、半眼のおかっぱは、ただひたすらに、微笑んでいる。
「あっ」
男はようやく気が付いた。
この人、寝ぼけてると。
エビなど、はなから無い事を悟った男は、
やはり、汁物には手を付けず、遅い晩御飯を終えたのだった。
悔しい・・・。
だれか、助けてー!
さて、我が家のヤングチームは、なにしてんの?
仲良くしてんの?
仲良く寝んねするのかな?と思いきや
のん太「こにょ、こにょ!真っ黒め」
たれ蔵「わ~のんちゃん強いね(棒読み)」
数分後
のん太「のんを、たちゅけろ~!」
べろんべろんに舐められていた。