虫と猫とカズコは、
季節に敏感だ。
おはようございます。
連休明け、玄関ドアはいつにも増して重く感じた。
「よっこらせ」
やけくそ気味にドアを開けると、
「セセセセセッセミだ!?」
ここから私は玄関を出て、セミに最接近した状態から、
セミに背中を向けて、玄関に鍵を掛けなければならない。
「この時期が来た・・・。」
夏の間、命を燃やしまくったセミ達が死んでいく時期だ。
まさに『セミファイナル』の時期だ。
死んでるように見せかけて、ちょっとでも油断した瞬間、
「ビャビャビャビャビャビャー」
と急に騒がれて、
死にゆくセミと共倒れに、自分の心の臓も止まりそうになる。
これを『セミ爆弾』『セミファイナル』と呼ぶらしい。
連休明けの呆けた今なら、
もはや、セミ共々ファイナルになるかもしれない。
「もうこの際、カズコ呼んじゃおうか?」
私は咄嗟に閃いた。
立秋が過ぎたとはいえ、猛暑が続く中、
カズコはとっくに、秋の嵐が始まっていた。
揺らぎの季節は、カズコの情緒を激震させる。
連休中も、新しいスマホが「りんりん、りんりん」と楽しげに歌うが、
取ってみれば、荒れ狂ったカズコの声だ。
私はそのおかげで、早々に新しいスマホの着信音がトラウマ化していた。
しかし、
それを逆手にとって、私の方からカズコを呼びつけ、
セミを退かしてもらおう!と企んだのだ。
一旦玄関を閉めて、実家へ電話してみた。
「おお、どうした?」
出たのは父さんだった。
「母さんに替わって。」
「ん?ババァか・・・寝とるけど?」
寝とるか、寝とるんか、寝てしまっとるんか・・・
寝ているカズコを起こすのは、案外難しいもので、テクニックが要る。
間違えると、ただでさえ寝起きの悪いカズコが、拗れてこれも面倒だ。
父では無理だ。
「チックショー!」
結局、私は物音を立てぬよう息をも止めて、玄関をすり抜け、
慎重に素早く、セミをチラチラ見ながら鍵を掛けた。
「ガチャン」
よし、よしよしよし。
すぐさま壁に張り付いて階段を一段降りた瞬間、
「ビャビャビャビャビャビャー」
「うぎゃーーーーーー」
と、結局、そう相成った。
我が家の猫らは、
のん太「かかぁ、雨降ってるら」
昨日の雨で、猛暑日更新が、やっと途絶えた。
ちょっとだけ、涼しくなったね。
あや「雨?雨なの?あたしも風に当たりたいわ」
涼しい風も久しぶりだもんね。
あや「ちょっとコイツ、邪魔なんだけど」
雲行きが怪しくなってきたね。
おたま「あや姉、涼しいだね、嬉しいだね」
あや「舐められた最悪。唾ついた最悪~」
ああ、そうなるよね。