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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

訃報 サルヴァト―レ・リチ―トラ氏

2011-09-06 02:50:22 | OPERA
悲しいニュース。
8月28日、シチリアのラグ―サ近郊でスクーター運転中に事故に会いカタ―ニャの病院にヘリコプターで搬送されるも重体と伝えられていた、テノール歌手のサルヴァト―レ・リチ―トラ氏が9月5日にお亡くなりになりました。
イタリア人の先生情報ではヘルメットを装着していなかったのが命取りとなったとか・・。
ちなみに同乗の女性の方はヘルメットをつけていらして、一命を取りとめられたそうです・・・。

事故が報じられてから、17日から開幕のボローニャ歌劇場日本公演の「エルナーニ」の出演予定はキャンセルになってしまっていたのですが、まさか、天に召されてしまったとは・・・;;

ポスト3大テノールと目されていた、実力・人気ともに兼ね備えた歌手で、なんとまだ43歳の若さ・・・。
オペラ界にとっても、大きな損失であり本当に惜しまれます。

彼はスイスのベルン生まれですが、ご両親はシチリア出身。

詳しくは
Opera News
Corriere della Sera

それにしても、今回のボローニャ歌劇場来日公演の歌手のキャンセル、交替ラッシュは凄いですね。

ざっと見たところでも、
「カルメン」ヨナス・カウフマン→ マルセロ・アルバレス
「清教徒」ファン・ディエゴ・フローレス→ セルソ・アルべロ、アントニ―ノ・シラグ―ザ
「エルナーニ」サルヴァト―レ・リチ―トラ→ ロベルト・アロニカ

カウフマンは、9月末のバイエルン国立歌劇場の来日公演でも「ローエングリン」のタイトルロールを歌う予定だったのですが、9月上旬に手術ということで、両方キャンセル。
メトもキャンセルしているので、今年の日本公演は全滅ですねxxx

フローレスは声帯を支える軟骨付近に問題があり、3週間声帯を休める必要があるという医師の所見とのこと。

・・・そしてリチ―トラ・・・
ご冥福を祈ります。





MET2011 「ドン・カルロ」 ②

2011-06-20 06:37:46 | OPERA


ヴェルディ:ドン・カルロ 上演時間:約4時間40分
◎あらすじ(Japan ArtsのHPより)
スペインが「無敵艦隊」を誇った時代。王フィリッポ2世は神の次に強大な権力を持って君臨していた。王子ドン・カルロはフランスの王女エリザベッタと婚約中、互いに本当の恋に落ちて喜びに震えた。しかし政局は変わり、彼女はなんと、父の妃となってしまった。傷心の痛みに苦しむドン・カルロだったが、親友ロドリーゴの友情と助言を入れて、民のために生きようと決心する。だがそれは、王さえもおののかせる宗教裁判長の怒りに触れる、フランドルの救済という道だった。様々な陰謀の交錯する宮廷で、ドン・カルロの身代わりとなってロドリーゴは死に、王妃エリザベッタは権勢を誇るエボリ公女の陰謀に陥れられる。ドン・カルロはついにスペインを旅立つ決心をするが、そこに先祖、カルロ五世の亡霊の声が響き渡った…。主要な役それぞれに見せ場があり、ヴェルディ節が炸裂。最高のキャストで魅せる、壮大な歴史絵巻。

15日(水)18:00公演の感想です。

■第1幕

フランスで初演されたときには5幕だったのをヴェルディ自身がイタリア語版を作った時にカットし、その後また復活させた、という第一幕はフランス、フォンテーヌブローの森の場面です。
2年前、ミラノ・スカラ座来日公演で「ドン・カルロ」を観たときには4幕バ―ジョンでしたので、この5幕版は初見。
戦争に疲れ、生活に窮した民を気にかけて訪問するエリザべッタ姫。民の声に耳を傾け、未亡人に金の鎖をはずして与えるなど、民に慕われる責任感の強い心優しいエリザべッタの人柄を示します。
人々が去り、宮廷に戻ろうとする姫と従者の前にドン・カルロが。
婚約者の姿を垣間見んと使節のふりをして登場、婚約者の王子からの贈り物と称して自分の絵姿の入ったロケットを渡して身分を明かし、互いに一目惚れ。
ここで、カルロのアリア、「私はあの女に逢ったとき」でヨンフン・リ―の歌声開陳。
素晴らしく響く明るい声のテノールです。背も高くスラリとして、見栄えも良し。
ヨン様(笑)は、NHKホールの広さに負けていない声量があってなかなかいいですね。
只、その後、ロドリーゴ役のホロストフスキ―や父王フィリッポ2世のルネ・パ―ぺらカリスマティックなスター歌手と並んで、の場面では、抑揚の付け方、演技などで平板な印象を受けてしまいましたが・・・キャリアの違いもありますし、そこは仕方がないことかと。
最後までスタミナ切れすることなくこの大作のタイトル・ロールをヨナス・カウフマンの代役で務めるという重責を果たしたのは彼のキャリアにとっても大きなプラスになったのでは?

エリザべッタ役のポプラフスカヤ嬢もミミ役にスライドさせられたバルバラ・フリットリの代役で、フリットリファンからは冷たい眼で観られていたようで、お気の毒でしたが、丁寧な所作と歌唱で、派手さはないながらも健闘していたと思います。
とても特徴的な四角い輪郭のお顔の方ですが、今回の衣装が、ベラスケスの絵画のスペイン宮廷風で、固い豪奢な素材でハッキリとしたフォルムのものなので、その直線的なラインが良くお似合いだと思いました(なにやら微妙な感想ですね^^;)
2人の恋の炎が燃え上がり、幸せな結婚生活を夢見ていたところに王宮から知らせが入り、講和のために、父王の妃となることが決まったと知らされて冷水を浴びせられたようになる2人。
フィリッポ2世からは、もし、エリザべッタさえ承知なら、と配慮が観られますが、講和のためにこのお話を受けてください、という民からのプレッシャーに、責任感の強いエリザべッタが心ならずも承知。
急転直下、絶望の淵に立たされる恋仲の2人・・・。
この幕があることで、 王子ドン・カルロと父王の妃エリザベッタの絆が如何に運命的なものであるかが、明確に印象付けられます。

■第2幕

第1場 スペイン、サン・ジュスト修道院

苦しい胸の内を鎮めるために、亡き祖父カルロ5世の霊廟を訪れるドン・カルロ。
そこに親友である、ポ―ザ侯爵ロドリーゴが登場。
心を許して相談するカルロ。でもフランドルから帰国したロドリーゴにとっては、スペインの圧政に苦しむ新教徒の国、フランドルが目前の関心事。窮状を訴え、その救済を使命として分かち合います。
ここで歌われるのが有名な友情のテーマ「あの方だ!~我らの胸に友情を」
恋に悩むちょっとへタレな王子、ヨン様と、公正な統治と自由を理想と掲げる崇高な理念を胸にした堂々たる騎士ホロストフスキ―が、心を許した友人同士、というにはちょっと年齢差が気になりますが、それぞれニンにあった役どころで、良い感じです。
ホロストフスキ―がこういう若々しい役、というのも新鮮ですが、とにかく銀髪と堂々とした容姿が舞台映えすることこの上なく、ようやくこの幕でテンションが上がって参りました^^
この2重唱の友情のテーマはその後、動機として何度も繰り返されることとなります。

第2場 修道院の庭

エボリ公女と女官たちが、庭に憩っている華やいだ場面。
白と金の刺繍が華やかなモノトーンの高いフリルの立ち襟のスペイン宮廷服の貴婦人が居並ぶ様は壮観で美しい。
METは衣装が豪華で、衣装好きとしては本当に楽しいですv
ここではエボリ公女の技巧をこらしたアリア「美しいサラセンの宮殿の庭で」が聴かせどころ。
エカテリーナ・グバノヴァは声も美しく、くせのない歌唱で、心地よく聴けますが、エボリとしてはもっとケレン味があっても良いかも・・・。ボロディナなら、もっと妖艶度が強かっただろうなぁと過りますが、好演でした。
マンドリンを手に絡む、テバルト役のレイラ・クレアが良く通る声と明るくはっきりとした美しい顔立ち、軽快な身ごなしで目を惹きました。
エリザべッタが登場、続いてロドリーゴが現れて、面会を求めるカルロからの手紙を渡します。
カルロは、フランドル行きの為、国王に口添えをとの面会だったのが、恋しいエリザべッタを前に思わず恋慕の情を告白してしまいます。
エリザべッタは苦しみつつもそれを退けます。
そこに王が現れて、1人でいる王妃に不審の眼を向け、責任をとってもらおうと、フランスから王妃づきの女官として同行してきたアレンベルク伯爵夫人を解任・追放。周囲の同情を一身に集めながら、エリザべッタは王に恨みを言うでもなく、優しく伯爵夫人を労わります。「泣かないで友よ」

一方、王にロドリーゴが進言。 
フランドルの窮状を報告した上で、後世の歴史家にあなたが暴君であったと(ネロのような)言わせてはなりません、と不興を買うことを恐れずに真っすぐに進言するロドリーゴの男気に王が心を動かされ、自らの悩みを打ち明けます。
外憂内患。反抗的な息子に心を開かない新妻・・・。
誰にも弱みを見せたことのない王の意外な本音に「自分に王が心を開いている!」と内心の感動を歌うロドリーゴ。
腹心に取りたてようという王に今のままでいいと生意気な彼に、「宗教裁判長には気をつけよ」と言い残す王。
いや~、千両役者であるスター歌手2人ががっぷり対峙した重厚な場面で、ワクワクするなんてものではなく・・・。
2人のファンであるわたくしとしては、この日一番の興奮(笑)。
でも、パ―ぺの本領は4幕で更に発揮されるのですが(!)

■第3幕

第1場 王妃の庭園

夜中に密かにお目にかかりたい、という手紙を王妃からのものと思いこみ、勇み足で待ち人に愛を歌うカルロ。
しかしそれは自分に気があると思い込んでいたエボリ公女。勘違いに気付き青ざめるカルロに自分の早とちりを知らされて自尊心を傷つけられるエボリ。逆上して王妃との不倫を王に知らせると報復を誓うエボリと自分の短慮を後悔するカルロ。
そこにロドリーゴが現れて、エボリを抹殺しようとするのをカルロが留めます。
ロドリーゴは予測される事態に備えて密書を自分に渡すようカルロに言います。

第2場 バリャドリード大聖堂の前

公開処刑場に異教徒が十字架にかけられ火刑の準備が粛々と進められます。
見せしめの儀式ゆえ、宗教関係者、王と王妃、そして民衆が取り囲む大場面。
黒白赤金、民衆のブラウン系に対する権力者側の豪奢が際立つ演出。
そこにフランドルからの6人の使節を引き連れたカルロが助命の嘆願。
使節たちは真摯に言葉を尽くして王に訴えますが、王の厳しい態度にカルロが逆上、剣を抜いてしまいます。
この使節団、何気に豪華で、「ラ・ボエーム」でショナ―ル役だったエドワード・パークスも参加^^
それにしても、王子が口添えしてくれるということで、フランドルの使節も希望をつないだでしょうに、頼りにならない王子で気の毒ですねxxx
誰か取り押さえよ。
しかし、相手は王子。衛兵が躊躇し、カルロ自身も抜いた剣を手に進退きわまったところで、ロドリーゴが進み出て、目を観て、自分に預けるようにと。
「マルケーゼ!」公爵に取りたてる!王の信頼更に篤く。
わたしは即位にあたり、火と剣で統治すると誓ったのだ、との王の言葉どおり、処刑は執行されるのでした。

■第4幕

第1場 王の居室

眠れず悶々とするフィリッポ2世。
王妃は自分を愛したことがない・・・深い孤独。誰とも分かち合うことのできない悩み。
ルネ・パ―ぺ、「ひとり寂しく眠ろう」。
陰影深い歌唱、にじみ出る孤独と老いの影に権力者の傷ついた心の内が描き出されて胸を打ちます。
王妃が自分の白髪を見て悲しそうな顔をした・・・忘れられないあの表情、と歌うパ―ぺに涙。なんて、可哀そうな王様!
声だけでなくちょっとした手の動き、表情にも心が現れていて、円熟の演技。
ピアニシモでもオケを超えて伝わる自在な声の響き。
息を潜めて見いってしまいました・・・。この日一番の熱唱かと。
ゆっくりと眠れるのは墓場に行ってからか。揺らぐ蝋燭の炎に自分の人生を思います。
そして、自分に刃を向けた息子・・・。
盲目の90歳、宗教裁判長が到着します。
遅くにすまない。相談事とは?
王子のことだ。裏切り者だが、息子を父が死に追いやって良いものか、宗教的な見地からはどうだろう?
極刑を!
「イスパニアの地に異端の栄えたためしはありません」
権力第一主義の冷酷な厳罰を迷いなく主張する宗教裁判長をステファン・コーツァンが好演。
低いけれども声質が軽いイメージを覆し、パ―ぺと対峙するボリュームもしっかりと出してきていましたが、やや声が若いかな?
陰影を強調した原型をとどめないメークと白と赤の衣装で舞台では完全に隠されていましたが、終演後のサイン会でお目にかかった彼は、意外なほどスッキリとした都会的で端正なイケメンでありました^^;
お気に入りの忠臣ロドリーゴについても彼の自由主義的な思想ゆえ危険分子と断罪。
あまりの冷たさと権力至上主義にイラっときて反論を試みる王でしたが、ではなぜわたしを呼んだ?と言われ、今夜のことは水に流してほしいと和解を申し出、考えておこうと去る宗教裁判長。
なぜ、王権は宗教に屈しなければならないのだ・・・!
これは、この当時の政治的権力者共通の悩みであったことでありましょう。
親子、男女、宗教と政治・・・様々な対立軸がフィリッポ2世の中にあるのです。
このオペラのタイトル、「ドン・カルロ」ではなく「フィリッポ2世」でもいいかも・・^^;

エリザべッタが現れて、宝石箱がなくなったと訴えます。
これのことかと王。
カルロの絵姿が・・・と1幕での思い出のロケットを見せられて、でも毅然と、かつての婚約者ですから!と言い放つエリザべッタ。やましいところはありません!
しかし不貞となじられ、あまりのことに失神して床に倒れ伏します。 
騒ぎに駆けつけたエボリとロドリーゴ。全てを知る彼は、普段の抑制の効いた様子からは想像できない逆上ぶりに驚き、エボリは自分の嫉妬心が引き起こした事態の深刻さに慄然とします。
女性二人が残された部屋で、エボリはエリザべッタを慰め、自らの罪を告白します。
嫉妬と虚栄心から宝石箱を盗み出して王に直訴したこと、そして、実は王の愛人であったことを明かし、王妃は明日には修道院に入るか出国するかを選びなさいと言い渡します。
後悔の念に苛まれながらエボリ公女が歌うアリア「ああ、むごい運命よ」
ああ、美貌が呪わしい・・・というフレーズで有名なこの曲、美貌というには育ちすぎた体型の歌手が歌うことも多く、ん?と思わされることがしばしば(笑)のアリアですが、若く容姿の整ったグバノヴァは合格。
しっとりとした後悔とカルロを救うために残された時間に力を尽くそうと誠実さを打ち出す歌唱は、ヴェールの歌よりも彼女の持ち味に合ってると思いました。

第2場 牢獄

ロドリーゴは牢獄のカルロを訪ねます。
預かった密書に細工をして全ての責任をかぶった。罪に問われるのは自分となったので、
フランドルの未来はカルロに託すとロドリーゴ。「終わりの日は来た」
王の指示が届き、衛兵の1人がロドリーゴを射殺。
虫の息でカルロに抱きかかえられながら、エリザべッタの伝言、今夜サン・ジュスト修道院で待っている、というメッセージを伝え、親友のために死ぬ歓びを歌いながら息を引き取ります。「カルロよ聴きたまえ」

王が現れて、カルロはロドリーゴが身代わりになったいきさつを説明。
なんと惜しい!忠義な男を!

ロドリーゴ、男の花道な美味しい役ですね。
ホロストフスキ―の存在感がとても大きいので、この場面、ロドリーゴが完全主役、という感じでした。


■第5幕

サン・ジュスト修道院にエリザべッタが現れます。
彼女にはもう 、現世に望みはありません。カルロとの一瞬燃え上がった愛と短かった青春をなつかしみ、運命を受け入れて死後にカルロと結ばれる、というエリザベッタのアリア。「世のむなしさを知る神」
カルロは、フランドルのために尽くすようにとエリザべッタに励まされますが、別れの言葉とともにエリザべッタが去ると共に、国王と宗教裁判長が登場。
衛兵がカルロをとらえようとすると、霊廟の奥から故・カルロ5世の亡霊があらわれて、カルロを連れ去ります。

正直、4幕で集中力を使い果たして、5幕目の印象がほとんどありません^^;
このあたりわたくしの観客力の限界でした^^;

最後の一音までドラマをとぎれさせることなく歌い続けたオケとマエストロ・ルイ―ジのパフォーマンスは素晴らしかったです。
そして、やはり、色々な対立軸を孕んだ大きなテーマを主軸にした ヴェルディ・オペラの持つ作品力と、それを表現するために一丸となって舞台を作り上げるMETの地力、そしてそのドラマを牽引する、ホロストフスキ―の実力、パ―ぺの充実、が心に残った公演でした。

3演目を一週間で観るという幸福な体験をしたわけですが、これだけキャンセル、変更があって尚、個々の公演についてはそれぞれアヴェレ―ジ以上の感動をしっかりと味あわせてくれたMETには感服しました。


MET2011 「ドン・カルロ」 ①

2011-06-17 03:37:06 | OPERA
2011年6月15日(水)18:00~
NHKホールにて

Metroplitan Opera 2011Japan Tour
Verdiの「Don Carlo」を観て参りました。

この演目が、今回の一連のキャンセル騒ぎで一番影響を被ったかもしれませんね。
わたくし自身、ルネ・パーぺとバルバラ・フリットリのスペイン国王夫妻の並びは2009年ミラノ・スカラ座来日公演と
同じ豪華な並びで、しかもドン・カルロがヨナス・カウフマン、親友ロドリーゴにディミトリ―・ホロストフスキ―、
エボリ公女にオルガ・ボロディナって・・・とMET来日公演の予定CASTを観ただけで、めまいを起こしながらチケットGETを誓ったという(笑)
実現していたらどんな舞台になったでしょう!
もう、銀河系軍団、ドリーム・チーム、という煌びやかな舞台だったでしょうね。

さて、今回、結局のところ、カウフマンとボロディナのキャンセル、ネトレプコのキャンセルの穴埋めにフリットリが異動・・・
で、オリジナル・キャストで残ったのは、ルネ・パ―ぺとホロストフスキ―のみ。
・・・のみって・・・この二人が残ってくれて良かった!!
と神に幾度 感謝したことでしょう!

代役の歌手たちの頑張りもあり、終演23時までの5時間、実に充実していました^^

ヴェルディ「ドン・カルロ」全5幕 イタリア語版

フランス語版台本: ジョゼフ・メリ、カミ―ユ・デュ・ロクル
原作: フリードリヒ・シラーの戯曲
イタリア語版翻訳: アッキレ・デ・ラウジエレス、アンジェロ・サナルディーニ

指揮: ファビオ・ルイジ
演出: ジョン・デクスター
衣装: レイ・ディフェン
照明: ギル・ウェクスラー
舞台監督: スティーブン・ピックオーヴァー

出演者【登場順】

木こり: リチャード・バーンスタイン
テバルド: レイラ・クレア
エリザべッタ: マリーナ・ポプラフスカヤ
ドン・カルロ: ヨンフン・リ―
レルマ伯爵: スティーブン・ガートナー
アレンベルク伯爵夫人: サラ・ウェバー・ガロ
修道士: ジョーダン・ビシュ
ロドリーゴ: ディミトリ・ホロストフスキ―
エボリ公女: エカテリーナ・グバノヴァ
フィリッポ2世: ルネ・パーぺ
王室の布告官: アダム・ローレンス・ハ―スコウィッツ
天よりの声: オルガ・マカリナ
フランドルの6人の使節: リチャード・バーンスタイン、フィリップ・ココノリス、
                デイヴィッド・クロ―フォード、ジェフ・マットシ―、
                エドワード・パークス、マイケル・トッド・シンプソン
宗教裁判長: ステファン・コーツァン

上演時間 4時間40分
第1幕・第2幕 105分  休憩25分 第3幕 35分 休憩25分 第4幕・第5幕 85分                 


  







MET2011「ランメルモールのルチア」 ②

2011-06-15 10:53:33 | OPERA
2011年6月12日(日) 15:00公演
東京文化会館にて

The Metropolitan Opera Japan Tourの
「Lucia di Lammermoor」の感想です。



ドニゼッティ:「ランメルモールのルチア」 上演時間:約3時間15分
■あらすじ(Japan Arts HPより)
「17世紀のスコットランド。ランメルモールの領主エンリーコは、その権力を磐石にして宿敵に対抗するため、自分の妹ルチアを裕福な貴族アルトゥーロと政略結婚させようとしていた。一方ルチアは、以前助けてくれた騎士エドガルドと密かに愛し合っていたが、実はこの騎士こそ、兄エンリーコの宿敵であった。兄の計略によってエドガルドが心変わりをしたと信じこまされたルチアは、失意のうちに政略結婚のサインをしてしまう。追い討ちをかけるように、婚礼の場に駆け込んできたエドガルドにも責められ、ルチアはついに発狂、祝宴が続く中、血染めの花嫁衣裳をまとい、息絶えて行く。“狂乱の場”と呼ばれる名アリアはもちろん、ドラマ全体にも見所の多い、ベルカント・オペラの傑作。」

端的に言ってしまうと、17世紀スコットランドを舞台にした「ロミオとジュリエット」。
偽の手紙で運命が狂わされていく辺りは「オテロ」風味?
この演出では時代が19世紀に設定されているそうで、中世っぽさとスコットランドの民族色はやや薄れていますが、
兄エンリ―コの忠実な僕ノルマンノの服装がダークな色調で分かりづらくはありますが、タータンチェックのストールを肩から斜め掛けしてベルトで押さえる軍服調で舞台はスコットランドなのだな、と匂わせます。

■第1幕

林に続く道端の土手。背景に木々と屋敷のシルエットが。
ヒロイン・ルチアの兄、領主のエンリ―コ・アシュトン、護衛隊長ノルマンノ、牧師でルチアの家庭教師でもあるライモンドの3人。
不審者の立ち入りに部下に捜索を指示するノルマンノ、捜索隊が2頭の立派な大型犬をつれているのがMETならでは^^
さすが役者犬、良い子にしています^^
エンリ―コが衰退する家の窮地を救うためルチアを金持ちのアルトゥーロに嫁がせようと語ると、
ライモンドは母親の死に沈むルチアを慮り、ノルマンノは、暴れ馬?から窮地を救われたことで宿敵レ―ヴェンスウッド家のエドガルドとルチアが恋仲となっていることを明かします。
不審者とは憎きエドガルドか!怒りに燃えるエンリ―コ役のルチッチが上手いです。よく響くバリトンでヴェルディものが似合いそう。

一方ルチアは森の泉のそばで、エドガルドを待っています。
ダムラウ、インタビュー画像ではブロンドでしたが、ここではブルネットに。
ダークグリーンの襟の詰まったドレスがスコットランドっぽいです。
お付きの侍女に泉の悲しい伝説を語るところで、後の悲劇を示唆している場面で、ぞっとするような幽玄の表現から一転して、宿敵エドガルドへの熱い思いを歌います。(「あたりは静まりかえり」)
そこに颯爽と現れるエドガルド。
シベリア出身の新星アレクセイ・ドルゴフくん。
スラリと長身でサラリとした金髪、顔立ちに少年っぽさが残る彼はリアル・エドガルド。
ヴィジュアルの説得力はまずOKかと^^
出産したばかりで今や母となったダムラウですが、エドガルドがサッと脱いで草の上に敷いたマントにいそいそと膝をついてくつろぐ様も愛らしく、ちゃんと少年少女のカップルに見えるところはさすがの演技力。
この悲劇は2人の若さゆえの傷つきやすさ、弱さから引き起こされるものなので、そこの前提が見えてこないとドラマが成り立たない。ですので、これは大事なポイントです。
父親を殺された恨みと愛するルチア。殺したのはルチアの兄、と恨みながらも、政治的任務のためにフランスに渡らなければならないが、お兄さんにはちゃんと話して二人の仲を認めてもらおう、とエドガルド。
ちょっと、矛盾していませんか?^^;ルチアは今はまだ秘密の仲でいたいと言います。
旅立ちを急ぐエドガルド。引きとめるルチア。2人ははめていた指輪を交換し、二重唱「ここで妻としての永遠の証を~ああ!私の燃えるため息が」を歌います。別れがたい2人。でも、エドガルドはさっそうと出発。
ここで2人はお互いを生涯の伴侶と誓ったのです。

■第2幕

アシュトン家、薄暗がりの城内大広間。
下手側の大きなデスクの他の家具にはほこりよけの布が掛けられていて、留守中のよう。
きっと召使も縮小して、緊縮財政でまわしているのだろうと伺える演出です。
そのデスクにかけたエンリ―コがルチアに持ちかけたのはアルトゥーロとの縁談。
当然、心に決めた方が、ときっぱりルチアは断りますが、エドガルドからと言われて読んだ手紙に書かれた心変わりをたやすく信じ、茫然自失に。
ここでの二重唱も圧巻。「こちらにおいで、ルチア~もしも、お前がわしを裏切るようなら」
気丈にふるまってたのに、裏切りという思いがけない出来事にぽっきりと心が折れて、動揺するルチア。
そこにつけこむエンリ―コ。
家のために結婚するのだ、しないのなら家を裏切ることになるのだぞ。
絶対家父長としての威圧感は、昔の名家はさもありなんと納得の強さ。

牧師ライモンドも現れてルチアに我慢を要請します。
ライモンド役のアブドラザコフ、背が高く黒髪で慈愛に満ちたバス・バリトン。
ちょっとステキ。ダムラウとの並びも美男美女でいい感じ・・・・とプロフィールを見たら、今回キャンセルしたけれどもエボリ公女にキャスティングされていたオルガ・ボロディナの旦那様なのですね。
ボロディナと言えば、2001年「サムソンとデリラ」でドミンゴの相手役だった記憶が。妖艶な方でした。
今回エボリ、楽しみにしていたのに残念!
押し切られた形での承諾。
あぁ良かった、早速準備だ。
さぁ、披露宴だ!
召使たちが現れて機敏に布をはずし、場を整え始めます。

その浮き立つ背後とは裏腹に机の上の短剣(レターオープナー?)を手に自分に向けて暫し考えますが、そのままその剣を袖の下にしのばせます。

さて、照明も明るくなり、シックなアイボリー~グレー系の中間色のフォーマルの紳士淑女たち、大勢の招待客も到着。
まだ茫然として事実を受け入れることの出来ないでいる風情のルチア、真っ赤なドレスで顔面蒼白。
到着した花婿アルトゥーロは美しさに感嘆しますが、ルチアがふさいでいるのは母親を亡くして間もないせいですとエンリ―コがすかさず言い訳。

そこに疾風怒濤の勢いで衛兵を突き飛ばし、舞台奥中央からまっしぐらに前方、婚姻のサインを終えた花嫁に向ったのはエドガルド。
ここ、ブロンドの前髪をなびかせて若さゆえの勢いでマントを翻して登場したエドガルド、カッコ良かった。ドラマティック。
本当に、ドルゴフくんはこの役に合っています。
噂を聞きつけて急遽帰国したんだ!
花婿と兄がこのお邪魔虫を追い払おうとしますが、自分こそが彼女の婚約者と言って譲らないエドガルド。
ところが誓約書を見せられて、ルチアの裏切りにショックを受けた彼は、指輪を投げ捨て、ルチアから奪い返した指輪をはめ、さぁ、殺せとばかりに衛兵から奪い取った剣を差し出すジェスチャー。
うーん、ここでルチアや婚約者を刺すでもなく、自害して果てるでもなく、恨み事は言っても指輪はきちんとはめてるし、剣も結局はだれも傷つけていないし、エドガルドってホントにおぼっちゃま。
本当に乱暴なことは出来ない性質なのですね。
この場面、あまりのことに嘆くルチア、批難するエドガルド、ルチアさまお可哀そうにのレイモンドと、妹を犠牲にしてしまったと後悔するエンリ―コらによる有名なセスト(六重唱)が。緊迫感とハーモニーの妙が素晴らしい!
エドガルドは怒りと絶望に我を忘れて走り去ります。

■第3幕

荒廃したレーベンスウッド家。
1人、鬱々としているエドガルドのもとにエンリ―コ登場。よくもさっきは邪魔してくれたな。
今頃、ルチアとアルトゥーロは・・・と嘲笑うエンリ―コ。嫉妬に苦しむエドガルド。
激しい掛け合い。
翌朝決闘だ。

一方、アシュトン家では・・・。
1階の大広間での祝宴がたけなわのランメルモール城。
2階へつづく階段とそこから続く2階の廊下の奥は若夫婦の寝室。
そこから現れた蒼白のライモンドが階下の招待客にもたらした知らせは・・・。
ルチア様がアルトゥーロ様を刺し殺して狂ってしまわれた!叫び声が聞こえて扉を開けたらそこには・・・、ということ。
お可哀そうなルチア様・・・。
背景に大きな月が現れます。Lunatic・・・狂気のシンボル。
そこにフラフラと姿を現したのは白い婚礼のドレスを血で染めたルチア。

ソプラノの技量の見せどころ。
所謂「狂乱の場」、正気を失った状態のルチアが、テクニックを駆使して、狂気、恐怖、失った愛の日々への甘い追憶、などを自在に使い分けた声で表現します。
亡霊に怯え、自分のドレスの血を見て恐怖し、エドガルドとの逢瀬に心ときめかせた日々(「優しいささやきが」)、果たせなかったエドガルドとの結婚式を思って語りかける様(「お香がたちこめて」)などデリケートな歌唱が歌詞とピッタリ寄り添った演技でより素晴らしいものとなっています。
小造りで整った顔立ち、ドレスの似合う容姿もルチア役者として最強。
ダムラウ、圧巻。
狂気の演技も、逝ってしまったヒト、というよりは、かよわい魂が次々と押し寄せるプレッシャーと絶望的な状況に耐えられなくなって破綻をきたした、という状況から観ていて納得の出来る流れを踏まえた演技。
狂気そのものが単独で浮き立つのではなく、若さゆえにわが身を守る世知も強さもなかった純粋な若い女性の壊れた心の悲しみがきちんと伝わります。
帰宅して状況を把握できず憤るエンリ―コをエドガルドかと迎えるルチア哀れなり。
階段に座り込んで花嫁のヴェールを小さく引き裂きます。
医者が現れて鎮静剤の注射を打ちますが、その薬がまわって朦朧とする様をも曲に合わせてコロラトゥ―ラの技法にのせて表現。
いたたまれずエンリ―コ退場。
最後、幻のエドガルドに天国で会いましょう、と呼びかけて気を失い階上に運ばれるルチア。

場面変わって。
決闘の場として指定したレ―ヴェンスウッドの墓場ではルチアを失ったエドガルドが悲しみにくれています。
もう、この場で殺されても構わない、ルチアを失ったのだから。
最終幕でのテノールの見せ場のアリア。(「私の祖先の墓よ」)
高音もきれいに伸びていました。
ドルゴフくん、声質そのものはふくらみがなく硬質で、でも不快ではなく、自然の4元素でいうと火でも水でも土でもなく、風、という感じの声。
若さに似合わぬテクニックの確かさと丁寧な歌唱で、とても気持ち良く感情移入できますし、エドガルドの短慮にイラつくこともなく、若さゆえの悲劇だなぁとしみじみさせてくれる資質は貴重です。
初MET共演、初来日。
一日限りの代役で、緊張したかも知れませんが、自分の良いところをしっかりと打ち出してみせることが出来たのではないでしょうか。
ロンドンではボリショイ・オペラの公演で「エフゲニ―・オネーギン」に出たらしいとNaoko様に教えていただきました(ご本人はご覧にはなっていないそうです、残念)。その後、それで調べたら、レンスキー役だったとか。ぴったり!だと思います。
レパートリーを選ぶタイプかも。これから年齢を重ねていくとどうかしら?
上手に成長していってほしい貴重な演技派Visual系テノールとして、今後も注目したいと思います。

ルチアの死を告げられたエドガルドは、最後、天国で一緒になれますように!と歌い上げて自らの剣で自害します。
この時、すでにエドガルドは亡霊となったルチアに包み込まれるように見守られており、その慈愛の視線を受けながらの歌唱。
膝をついた彼に覆いかぶさるかのように手を広げて立つルチアは白粉をふったような白髪で、ミケランジェロのピエタのよう・・・。

オケも良かった。
マエストロ・ノセダが、終演後、良かった奏者を指揮台から君と君、そして君も、と1人ずつ手で名指しして褒めていました^^





MET2011「ランメルモールのルチア」 ①

2011-06-12 21:57:41 | OPERA
2011年6月12日(日)15:00~
メトロポリタン・オペラ、「ランメルモールのルチア」を観に、東京文化会館に行って参りました。

今回は、お誘いいただきましたお席ゆえ、なんと、右斜め前方にバルバラ・フリットリ様ご一行が・・の良席でございました^^(ありがとうございました

MET、今回の怒涛の来日キャンセルによる変更は一点。
テノール・ヒーローエドガルド役のジョセフ・カレーヤが震災の余波を懸念して・・と来日せず、その穴を埋めたのは、声帯手術を終えたばかりのロランド・ヴィラゾンとシベリア出身の新星、アレクセイ・ドルゴフくん。
吉と出るか凶と出るか・・・不確定要素に賭けるしかない病み上がりのスーパースターか、期待のニューフェースか。
9日の木曜日のソワレが「ランメルモールのルチア」の初日、で、エドモンド=ヴィラゾンだったそうですが、終幕のアリアも無難にこなして、最後は大熱演だったとか。

今日はドルゴフくん。後2日は予定通りのべチャワですから、一日限りの限定版です^^
楽しみです。

メトロポリタン・オペラ
ドニゼッティ 「ランメルモールのルチア」全3幕

台本: サルヴァト―レ・カンマラ―ノ
原作: ウォルター・スコット(小説「ラマムアの花嫁」)

指揮: アンドレア・ノセダ
演出: メアリー・ジマーマン
美術: ダニエル・オストリング
衣装: マーラー・ブルーメンフェルド
照明: T.J.ガ―ケンズ
振付: ダニエル・ぺルツィク
舞台監督: サラ・イ―ナ・マイヤース

CAST(登場順)

ノルマンノ: エドゥアルド・ヴァルデス
エンリ―コ: ジェリコ・ルチッチ
ライモンド: イルダ―ル・アブドラザコフ
ルチア: ディアナ・ダムラウ
アリ―サ: テオドラ・ハンスローヴェ
エドガルド: アレクセイ・ドルゴフ 
アルトゥーロ: マシュー・プレンク

フルート・ソロ: ステファン・ラーグナ―・ヒェスクルドソン
ハープ:  安楽真理子
グラス・ハーモニカ・ソロ: チェチ―リア・ブラウア―

上演時間 3時間15分
第1幕40分 休憩25分 第2幕40分 休憩25分 第3幕60分

素晴らしかったです!
ダムラウ、声も演技も圧巻!
6重唱の聴かせどころも最高でした。

あらすじと個々の場面の感想はまた明日UPします。