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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

バレエ・スプリーム Bプロ

2017-08-02 04:41:08 | BALLET

<バレエ・スプリーム>Bプロ (7/30 14:00開演)

Bプロは、オペラ座の趣味の良さが全面に感じられたプログラム構成でした。

― 第1部 ―

「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール

オニール八菜、ユーゴ・マルシャン

長身ペアによる華やかなオープニング。
マルシャンはサポート上手ですね。
八菜さんは手の表情のつけ方が上手いと思いました。指が長いきれいな手の形もあるのかもしれないのですが、
粋なのですよね。

「ロミオとジュリエット」 第1幕よりパ・ド・ドゥ
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ

手足の長い伸びやかな長身に若々しい表情の小顔のペアにぴったりの演目・・・と思ったのも束の間。
うーん、ロミジュリに関していえばヌレエフ版はテクニックにこだわり過ぎて情緒を犠牲にしているように見えてしまいました。それぞれのソロのパートの難易度が高く忙しく見える振りのせいなのか、それを見守る側がボーっとしているように見えてしまうのですよね。
もちろん、フェリのように熱視線を全身全霊で表現できる女優バレリーナなら、その間を埋めてつなぐこともできるのでしょうが、いかんせん、恋に浮き立つ可愛いカップルには見えても運命の歯車が動き出してもうとまらない・・というようには見えませんでした。残念ながら・・・。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン

待ってました!真打登場です。
成熟したテクニシャンのためのグランパ・クラシック、若手の技巧派のためのチャイコパというなんとなくのイメージがありますが、この二人は、若々しい外見と成熟した踊りが両立した素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。
テクニシャンペアですと、つい音が走ってしまったり最後崩れんばかりになってしまったり・・という舞台も何度か見てきましたが、マチアスの余裕を持っての音の取り方とミリアムの落ち着きが相乗効果で過不足ない完成度の高い舞台を作り上げていたと思います。
お衣装も、通常女性はサーモンピンク男性は水色基調のことが多いのですが、男性が極淡いグレイッシュホワイトで、女性が淡いピンク、そして背景がティファニーブルーという洒落た取り合わせで、ミリアムがまとめた髪に配したキラキラのピンクのストーンも素敵でした。

― 第2部 ―

「真夏の夜の夢」
振付:フレデリック・アシュトン 
音楽:フェリックス・メンデルスゾーン

高田 茜、ベンジャミン・エラ

ロイヤルの「真夏の夜の夢」タイターニアやオベロンがアジア・アフリカ系のダンサーであると、そのちょっとエキゾチックな風貌が妖精らしく異世界感をうまく演出できる要素になっているなと思うことがあります。王子様にはちょっと違和感のあるエラのオベロンは似合っていました。
高田さんは浮遊感のある美しいアームスがぴったりなのですが、実はAプロでも冒頭ちょっと気になっていた、脚を引き上げるときの軌跡が滑らかでなく、ちょっとギアチェンジが入るような感じになるのが惜しいと思いました。
彼女のプリンシパルとして全幕通しで踊る姿をまだ見ていないので何とも言えませんが、もしかしたら万全ではなかったのかしら。

「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ルイ・モロー・ゴットシャルク

フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ

フランチェスカ・ヘイワードの良さがとてもよく出た演目でした。マルセリーノ・サンベも見た目は二人そろってナポリ人らしい風貌でぴったりなのですが、タンバリンをもって音楽にあわせてアクセントを入れなくてはならないところ、サンベは踊りに専念して音はおろそかになっているのか、決めるところが決まらずに歯がゆかったです。

「白鳥の湖」 第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

金子扶生、フェデリコ・ボネッリ

今回帯同するはずだったサラ・ラムが怪我で降板。
本来、ラムとボネッリが踊るはずだった「コンチェルト」の差し替えと聞けば仕方ないと思うしかないのかもしれませんが。
日本人ソリストの金子さんは長身で現代的な美人さんですが、夢々しさは皆無。幻想の白鳥を踊るタイプには見えず・・。彼女に合ったモダンよりの演目を選んでも良かったのではないかなと思ってしまいました。
ボネッリは本当に安定していますね。粘りのある端正な動き、王子としてのふるまいなどベテランならではのしっかりとした見せ方ができていて安心して観られました。

「ドン・キホーテ」よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

ヤーナ・サレンコ、スティーヴン・マックレー

今回はやはりペアではサレンコ・マックレーの炸裂する花火のようなパフォーマンスが全体を締めてくれました。
小柄だけれども引き締まって洗練されたショーマンシップあふれる二人。
何度も組んでいるので阿吽の呼吸で相手を活かし自分の見せ場も作れます。
驚くほどバリエーション豊かで、なおかつ奇をてらいすぎないマックレー。
軽やかにキトリとしての粋な表情を作りながらも、素晴らしいバランスの妙で魅せるサレンコ。
お衣装も定番の黒白赤ですが、マックレーのジャケットは金糸の刺繍のベスト付で豪華、サレンコのチュチュは赤いクラシックチュチュの内側にたっぷりと白いペチコートを重ねて縁のラインが動きにつれて揺れる感じが素敵でした。
もうこれだけで、大満足。

―第3部―


「眠れる森の美女」 ディヴェルティスマン 
振付:マリウス・プティパ 
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

序曲: 全員
リラの精: オニール八菜
ローズ・アダージオ: 高田 茜、スティーヴン・マックレー、ベンジャミン・エラ、 
                              ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン
オーロラ姫: ミリアム・ウルド=ブラーム
王子: フェデリコ・ボネッリ
オーロラ姫と王子のパ・ド・ドゥ: ミリアム・ウルド=ブラーム、ジェルマン・ルーヴェ
青い鳥(パ・ド・ドゥ): フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ
青い鳥(コーダ): フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ、ユーゴ・マルシャン
オーロラ姫と王子のパ・ド・ドゥ: ヤーナ・サレンコ、スティーヴン・マックレー
王子: マチアス・エイマン
オーロラ姫: レオノール・ボラック
コーダ: 全員

えーと、これは次々と場面ごとに主役が変わっていく感じでの眠れる森の美女ダイジェスト版といったところですが。
いかにもリラの精タイプのオニール八菜さんは期待通りの物語の導き手。
からの高田さんがパリとロイヤルの美しい王子に囲まれて。。。の場面。
最初プログラムを見てさぞかし・・と楽しみにしていたのですがちょっと微妙でした。
まず、パリの王子二人が長身でお衣装もいかにもパリオペラ座の洒落ていてさりげなく手の込んだ刺繍の入っているクールパステルの美しいものに対し、ロイヤルの王子二人は小柄でお衣装も古風。
何より高田さんのお衣装が、これしかなかったの??と言いたくなる中途半端な丈のピンクでジョーゼットの長袖にアクセントとして濃いピンクのバラのつぼみが随所にあしらわれたもの。
きれいなアームスが隠れて、淡いパステルのパリオペ王子と並ぶとピンクの色調が濃くて野暮ったい。
踊り自体は破たんなかったものの、オペラを使わずとも高田さんが普通以上に汗びっしょりになってしまわれていることが見て取れて、そうでなくてもハの字眉で(これが抒情的な演目だと非常に効果的なのですが)ちょっと自信のない姫に見えてしまいました。

続いてのミリアムは元から小柄でウエーブの美しい金髪をきれいに結い上げてのダブルのティアラがゴージャス。
もちろん手の込んだ美しいパリオペ衣装。そろそろ貫禄が出てしまうベテランに差し掛かったミリアムですが、先ほどの不安を払しょくしてくれました^^;

白眉はマックレーとサレンコのPDDと、マチアスのソロ。
とりわけ、マチアスは存分に自分の良さを発揮する身体能力だけでない生命の輝きと王子としてのノーブルさを兼ね備えた素晴らしい演技で、若く美しい新人エトワールたちにまだ備わっていないものを見せつけてくれました。

この日は東京公演の千秋楽でしたので、カーテンコール時に上から金のコンフェッティが降り注ぎ、ダンサーたちも満足気で、客席も個々の場面全てが大満足とはいかないものの、これからの可能性や、オペラ座とロイヤルのスタイルの違いをこうして打ち眺めることのできた楽しさに心躍らせている様子で。
実際に始まる前には、行き当たりばったりな企画で、どんなものかしら・・とあまり期待をしていなかったのですが、
心楽しく良い雰囲気で見終えることができました。

バレエ団に限らず、どんな団体にも栄枯盛衰、良い時と困難な時があるものですし、黄金のヌレエフ世代のパリオペラ座、吉田都さんや熊川さん、ジョナサン・コープにダーシー・バッセル、そしてギエムの時代を観てきての今はちょっと物足りない感じがしないでもありませんが、恵まれた素質を持ったこれからも楽しみに見ていきたい人たちを観られた公演でした。

※音楽は特別録音によるテープを使用。
◆上演時間◆
第1部 14:00 - 14:40
休憩     15分
第2部      14:55 - 15:40
休憩          15分
第3部        15:55 - 16:35