2021年8月13日(金)14:00~
東京文化会館にて、
第16回世界バレエフェスティバルに行って参りました。
お席は14列下手サブセン。
1階は満席のようでしたが、わたくしの左2席が空いていて、このご時世だからか・・・と心が痛みました。
とはいえ、バレエの来日公演自体、2020年のパリオペラ座バレエ団公演以来なので、世界の一流ダンサーがこれだけ東京に来てくれていることに感動しながら・・の開幕です。
一言ずつ感想を。
─ 第1部 ─
◆「ゼンツァーノの花祭り」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド
オニール八菜、マチアス・エイマン
◆「ゼンツァーノの花祭り」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド
オニール八菜、マチアス・エイマン
可愛らしい拵えの二人。マチアスの綺麗に伸びたつま先、ふわりと膝の高さくらいまで優につま先が来るジャンプの高さと着地のしなやかさを存分に見せながら、ブルノンヴィルスタイルの細かな足技を見せる演目。
オニール八菜さんはちょっとお顔が疲れている?あるいはこういう可愛い感じがちょっと似合わない?もっと彼女に合う演目は別にありそうですが・・・。今回の参加者の中では若手なので、オープニングのフレッシュカップル演目を振り分けられた感じですね。マチアスの弾むような若々しさにはピッタリでした。
◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:レオニード・ラヴロフスキー
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
オリガ・スミルノワ、ウラジーミル・シクリャローフ
ラヴロフスキー版を観る機会があまりないので、興味深い。
フラットなバルコニーの上でロミオ登場から別れがたい二人・・・までの恋の上昇気流が綴られます。クリサノワのヘアバンドのようなヘッドドレスとドレスの肩先を覆うキャップスリーブが共にパールのネット状になっていて素敵でした。シクリャローフくんと比べてスミルノワが高身長に見えて、その彼女のリフトを安定感バッチリにこなすシクリャローフくんの成長に(というか、可愛さで抜擢されていたデビュー当時から何年経ったと思っているのだ自分←)感嘆。カーテンコールで全ダンサーが並ぶと、意外にもさほど高身長の印象がなかったスミルノワ。舞台で大きく見えるタイプのダンサーなのか。
身体をひねるポージングが多いジュリエットでしたが、その造形が美しかったです。
◆「パーシスタント・パースウェイジョン」
◆「パーシスタント・パースウェイジョン」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
菅井円加、アレクサンドル・トルーシュ
トル―シュが登場するとどことなく詩情が感じられるのですよね・・・。とはいえ、この作品はAプロには珍しいコンテ。菅井さんがグレータフタのシンプルで禁欲的なラインのロングドレスにぴしっと固めた黒髪シニヨンの外見同様シャープなダンスで魅せました。しかし、久しぶりのバレエ、バレフェスに会場入りからコーフンしていたわたくしは、この演目ではやや上の空で次のために密かに英気を養っておりました・・・ごめんなさい💦
◆「オネーギン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
ドロテ・ジルベール、フリーデマン・フォーゲル
◆「オネーギン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
ドロテ・ジルベール、フリーデマン・フォーゲル
相方のユーゴ・マルシャンが間に合わず、急遽組んだカップルのドロテ、フォーゲル君組。薄物のネグリジェに後ろ一本の三つ編みにベージュシフォンのリボンのドロテ。感受性豊かな大きな瞳に黒髪痩身で、少女の初恋の夢想・・・の場面、ピッタリです。そこに現れる彼女の夢の中の圧倒的な支配者である黒いピッタリとしたシャツ姿のオネーギン。若いレンスキー役者だったフォーゲルくんがいつか挑戦したいと言っての初挑戦の舞台では髪がフワフワして、まだ役と馴染んでいないなぁと思ったのも今は昔。ピタッとなでつけた髪、高身長でクランコダンサーとしてシュツットガルトを代表するフォーゲル君、大柄なドロテを相手に難しいリフトをなんなくこなし、意外な組み合わせながら、それぞれが役に合っていて、とても良いのでは・・・とうっとり眺めている終盤、オネーギンが鏡の中に戻る寸前のリフトからの流れで、下手から上手に向かうところで盛大に音を立てて転んでしまいました💦 タイミングがずれたのか・・・ヒヤッとしましたが、つまづいてからの体制立て直しの様子を見るに、故障とかはなさそうで、ホッとしましたが・・・。二人はその後、鏡に消えるオネーギン、手紙を情熱的に書き連ねるタチアナ、の演技にすぐに戻って、ミスをリカバーしてくれましたが・・・。初日ならではのアクシデントでしょうか。どうぞご無事で。二人の並びはとても良かったと思います。
─ 第2部 ─
追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)
─ 第2部 ─
追悼 カルラ・フラッチ、パトリック・デュポン(映像)
2021年にお亡くなりになった、バレエ界の、そしてバレフェスのレジェンドお二人の懐かしい過去映像が流れました。
カルラ・フラッチ女史は、わたくしが見た2000年にはすでにレジェンドの特別出演枠で、若きマッシモ・ムッルの奴隷とパールのネックレスで戯れるクレオパトラでした。映像はそれこそ創世記の1976年でしょうか、シルフィードのロマンチックチュチュに背羽根の捕まえようとするとスルりと逃げてしまう可憐な妖精でした。
パトリック・デュポンは、わたくしがバレエを真剣に見始めた時には既に活躍の最後のあたりで・・・バレフェスで活躍する姿を見るのはこの映像が初めて。白鳥の湖一幕の道化。なんてチャーミングな!彼はその卓越した身体能力以上に、舞台人として観客を魅了するすべを身に着けた人なのだなぁと実感。映像なのに、会場には笑いと拍手が起こりました。
良き追悼となったと思います。
◆「白鳥の湖」より 第1幕のソロ
振付:パトリス・バール
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
◆「白鳥の湖」より 第1幕のソロ
振付:パトリス・バール
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
ダニール・シムキン
シムキンくんのソロ。いつも組んでいるコチェトコワとかサレンコとかの都合がつかなかったのか・・・。しかも純クラ。もともと王子タイプではないけれどもテクニックは純クラなので、小柄なお姫様必須なのですが・・・。
大人になってますますおでこくんになったシムキンくん。モノクロームの湖の映像の前で、モスグリーンの軍服に白タイツで一人憂愁の王子を踊るシムキンくん。彼のクラシックバレエ愛が伝わってきました。
ドラゴンボールが好きなPOPな超絶技巧ダンサーである往年のシムキンくんよ、どこに・・・。時は流れゆく。
◆「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
◆「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
アマンディーヌ・アルビッソン、マチュー・ガニオ
バレフェスでダイヤモンドと言えば、ヴィシニョーワ様、ルテステュ様、ロパートキナ様と、カリスマティックな大スターがその個性を前面に出して踊る、というイメージ。
パリオペの実力派中堅?ベテランの二人、手堅く決めてきました。
マチューっていかにも甘くて華やかな王子様なのだけど、彫の深さの加減故か、舞台に出るとなぜか絶妙に地味になるので、手堅く落ち着いた雰囲気のアルビッソンとの並びはお似合いでした。パリオペの純白チュチュに胴着とビスチェ部分にラメ入り生地を使って大きなラインストーンを配したゴージャスなお衣装なれど、オーボエの哀愁漂う音楽に合ったメランコリックなダイヤモンドでした。
◆「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
金子扶生、ワディム・ムンタギロフ
◆「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
金子扶生、ワディム・ムンタギロフ
金子さんが程よいハリのある筋肉のついたスレンダーボディに黒髪巻き毛のアップヘアで、なんとも魅惑的なラテン美女に。マノン、のイメージと言うよりもカルメンの方がしっくりきそうなビジュアルなれど、金髪で優し気なムンタギロフとのコンビネーションも良い感じ。難しいリフトの連続の振りも情感や恋の高揚感を失うことなくこなしていましたが・・・。「マノン」だけは、何度も何度もみたシルヴィ・ギエムの残像が残っているため、腰の位置で抱きかかえられたマノンが足を小刻みにパタパタさせるところ、ちょっと端折って見えてしまい、あぁ、このマクミランの振付を空中でしっかりと全て明確に見せることの出来るダンサーであるシルヴィは本当に得難いダンサーだったのだなと。当たり前のようにそのパフォーマンスを定期的に享受していたことのすごさを改めて振り返る演目ではありました。
◆「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
アレッサンドラ・フェリ、マルセロ・ゴメス
◆「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
アレッサンドラ・フェリ、マルセロ・ゴメス
解放のPDD. 白いナイトシャツ姿でダウンヘア―のフェリ。冒頭、指を濡らして後頭部から首筋、乳房をなぞり、身体の中心部に向けておろしていくところから、濃厚なエロスと女性性が立ち上り、一気に引き込まれるところ、さすがフェリ。年齢を重ねた女性だからこその、内側から立ち上る人間の性と生の根源的な力を感じさせるパフォーマンスでした。受け止めるゴメス共々、ラテンの血が響き合う素敵なカップルでしたが、好みから言うと、男性に繊細さがあって、女性と拮抗する感じがあるほうが、作品全体のフォルムがしっくりとくるのはこの作品にローラン・イレールの幻影をどうしても見てしまうファンのサガですかしらね・・・。ゴメスさまはもちろん、安定感抜群のパフォーマンスでフェリの情念をしっかりと受け止めていて素晴らしかったです。
◆「海賊」
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリゴ
エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン
◆「海賊」
振付:マリウス・プティパ
音楽:リッカルド・ドリゴ
エカテリーナ・クリサノワ、キム・キミン
これぞフェス!これぞバレフェスの華!
旬のダンサーが技を競い華を競う。会場を興奮のるつぼに落とし込む!
キミンは本当に素敵なダンサーですよね・・・。
回転の高さは言うに及ばず、フワッと浮き上がってからのきれいなポージングで回転してからの音のない着地、までがまるでスローモーションのように明確に見える。どうしたらこんなことができるのか。180度開脚しての3連続ジャンプとか、手脚が長くて高身長で、くっきりした黒髪の艶やかさといい、本当に目の覚めるようなダンサーです。上半身にジュエリーだけをつけての鮮やかなターコイズのハーレムパンツ姿はお似合い。
クリサノワも負けておらず、ちょっとオシポワをエレガントにしたようなテクニックの強いダンサーで、淡い草色のドレスが彼女にはお似合いだけれど、キミンのターコイズとはあっていないような・・・。
などという些末なことは帳消しにしてくれる爽快な二人のパフォーマンスでした。
─ 第3部 ─
◆「スワン・ソング」
振付:ジョルジオ・マディア
音楽:モーリス・ベジャールの声、ヨハン・セバスティアン・バッハ
ジル・ロマン
─ 第3部 ─
◆「スワン・ソング」
振付:ジョルジオ・マディア
音楽:モーリス・ベジャールの声、ヨハン・セバスティアン・バッハ
ジル・ロマン
ベジャールバレエ団代表。紗幕の後ろでのパフォーマンス。
紗幕をキャンバスのようにしてライトで図形が描かれたり・・・の演出。
ダンスそのものを見せるというより、総合的なパフォーマンスアートとでもいうべき作品、でしょうか。これは、往年のベジャールダンサーであるジルが、バレエ界の縮図であるバレフェスに登場した、という記録として受け止めました。参加してくださることにい意義がある、というか。
小林十市 連載エッセイ「南仏の街で、僕はバレエのことを考えた。」【第16回】世界バレエフェスティバル、そして「表紙」の思い出。 | バレエチャンネル | 公演、ダンサー、バレエ団、レッスン、悩みや疑問などの情報を届けます (balletchannel.jp)
↑ ベジャールダンサーとして名を馳せた小林十市さんが、「バレエチャンネル」で連載エッセイを書いていらっしゃいますが、今回のバレフェスによせてご自身の出演回の思い出をつづっていらっしゃいます。URLを張ったつもりだったのですが・・・。飛べなかったら、ググってください^^;
◆「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル
息の合った二人。踊りこんでいることがわかる物語が浮かび上がる踊りでした。手紙を読んだバデネスは明らかに動揺している。そこにさっそうと登場するオネーギン。愛を請うて床に足を流し、タチアナに縋りつくオネーギン・・・タチアナが一回転しての抱擁を繰り返すところ、フォーゲル君は微笑みを浮かべるのですね。この瞬間、彼はタチアナの愛を取り戻したと希望を持っている。しかし、横たわった姿勢からのはじける様なアラベスクのところでタチアナが彼を断ち切ると心を決めたことがわかり・・・からの激しく手紙を破り捨てて彼に出て行って!と指さして・・からの顔を覆っての嗚咽・・・。
文学少女からの公爵夫人というタチアナが秘めていた情熱の揺らぎ、というにはあまりにラテン的にストレートなバデネスのタチアナでしたが(わたくし的にはアイシュバルトとゲランが双璧)素晴らしかったです。
◆「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス
スヴェトラーナ・ザハロワ
◆「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス
スヴェトラーナ・ザハロワ
コロナの隔離時期などとの調整で出演が叶わなくなったダンサーの代わりに別の公演ですでに日本入りしていたザハロワ様にご登場願ったという流れらしいのですが、やはり彼女のクラシックバレリーナとしての美しさは格別ですね。
瀕死は、白鳥の最後の苦しみを野性を感じさせる表現を織り交ぜることが多いように思うのですが、ザハロワの白鳥はどこまでも儚く優雅で、最後絶命の瞬間にカクっと手首が落ちるところまで、繊細な美そのものでした。
◆「ライモンダ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ
◆「ライモンダ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
マリーヤ・アレクサンドロワ、ヴラディスラフ・ ラントラートフ
わたくしはマーシャファンなので、オニール八菜さんや金子扶生さんのような大輪の薔薇系ダンサーを観ると、アレクサンドローワ的なダンサー出現!と喜んできたのですが、なんと、御大ご登場ですよ^^さすがバレフェス。
しっかし・・・マーシャ、貫禄が・・・。もともと堂々としたタイプですが、更に貫禄が・・・。ラントラートフさんは相変わらず飄々と軽快な王子様で、一層マーシャの貫禄が印象的に^^;
でも、こういうクラシカルでゴージャス感のある演目、いいですね。
ラントラートフさんのロイヤルブルーのロングマントがマーシャの回転に巻き込まれてしまった一幕があり、そこから、ラントラートフさん、マント捌きに一層注意を払っていらしたような^^;
初日ならではのアクシデントが散見された回でしたし、いつもなら4部制でもう一度休憩があって・・・と言うところではありましたが、久しぶりの海外バレエとの触れ合いがこのようなゴージャスな面々によるもので、なんとも胸いっぱい感無量。緊急事態宣言下、関係者の方々も薄氷を踏む思いでう準備されていたのであろうことを思うと、本当に感謝の念に堪えません。
この3年に一度という素晴らしいフェスティバルが今回も絶えることなく続いていることに大きな拍手を送りたいと思います。
フィナーレの花火の映像は、夏に東京に来てくれたダンサーへのサービスなのかな、粋なことを・・・^^と思いましたが少し長かったかな?ダンサーが客席にお尻を向ける時間が長いと興覚めですから、ちょっと調整して欲しいかも。
あと、Aプロの楽日とBプロも同じく初日と楽日を観る予定です。
指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
佐々木さん曰くの「奮発して」の東フィルでしたが、後半金管がやらかしてましたね^^;
これも初日ならでは、でありますように(^_-)-☆
ピアノ: 菊池洋子(「ル・パルク」、「瀕死の白鳥」、「ライモンダ」)
チェロ: 伊藤悠貴(「瀕死の白鳥」)
お二人とも、特にピアノの菊池さんが素晴らしかったです。
黒のアメリカンスリーブのシックなロングドレスで、ダンサーに促されても袖のピアノの位置で一礼してスッと去るスマートさといい、卓越した演奏といい理想的なあり方で、バレフェスに対する位置づけをしっかりと理解されている大人のふるまいに感動しました。
◆上演時間◆
第1部 14:00~14:55
休憩 20分
第2部 15:15~16:10
休憩 20分
第3部 16:30~17:15
◆上演時間◆
第1部 14:00~14:55
休憩 20分
第2部 15:15~16:10
休憩 20分
第3部 16:30~17:15