2013年10月6日(日)11:00、
東京宝塚劇場にて、前楽を観て参りました。
3回の観劇で、初日から1週間後、楽の1週間前、そして前楽と3回観て、
お席が17列目、3列目、1列目(!)とどんどん近くなっていったせいもあるのかもしれませんが、
初見で???としっくりこない感じのあった舞台が、2回目でグッとそれぞれの役の完成度が増し、
3度目で、正塚センセイワールドが完成したな、と感じました。
ミュージカル
『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』
モーリス・ルブラン作「ルパン、最後の恋(ハヤカワ・ミステリ刊/ハヤカワ文庫近刊)」より
脚本・演出/正塚 晴彦
[解 説]
フランスの人気小説「アルセーヌ・ルパン」の作家モーリス・ルブラン没後70年となる2012年に発見され話題となっている「ルパン、最後の恋」をいち早くミュージカル化。1921年、パリのイタリア大使館の舞踏会に出席していたレルヌ大公の令嬢は、屋敷からの連絡で急遽呼び戻される。レルヌ大公が謎の死を遂げたのである。悲しみにくれる令嬢は、自身の思いがけない出生の秘密を知り、国際的陰謀の渦に巻き込まれることになる。彼女の4人の親友の一人こそ、アルセーヌ・ルパンその人だった。永遠のヒーローは、如何にしてこの窮地を救うか……。姿なき強敵との死闘が幕を開ける。 (公式HPより)
アルセーヌ・ラウール・ルパン 龍 真咲
カ―ラ・ド・レルヌ 愛希 れいか
*~*~*
■カ―ラの4人の後見人
アルベール・ド・サヴリー大佐(実はルパン) 龍まさき
ドナルド・ドースン 凪七 瑠海
ヘアフォール伯爵 美弥 るりか
ウィリアム・ロッジ 煌月 爽矢
■人殺し3人組(ルパンの配下に)
ドゥーブル・チュルク 綾月 せり
フィナール 光月 るう
プス・カフェ 紫門 ゆりや
■カ―ラの婚約者とその秘書とその手下
オックスフォード公エドモンド 宇月 颯
トニー・カーベット 沙央 くらま
エメット 鳳月 杏
■ルパンの乳母とその夫
ビクトワール・エルヌモン 飛鳥 裕
ヘリンボ―ン 越乃 リュウ
■ルパンを追う警察と予審判事
ジュスタン・ガニマール 星条 海斗
フラヴィ 憧花 ゆりの
■ルパンの手下(子役)
ジョゼファン 珠城 りょう
マリ・テレーズ 咲妃 みゆ
■ルパンの伝記作家
モーリス・ルブラン 北翔 海莉
物語はルパンが回想録を記す作家ルブランに最後の恋とその恋を巡る陰謀と冒険を語る・・・というスタイルで構成されており、作家ルブランはルパンの語る出来事を目の当たりにして、一喜一憂。
常に舞台にいるが、彼の姿を観て交流できるのはルパンのみ。
人間的に悩み、ハラハラしながらルパンの冒険譚を促し、共感する。
ルパンは、美意識の高い義賊で、社会活動家としての一面も。
スーパーヒーロー設定で、常に自分を律して乱れたところを見せることはないクール・ガイ。
そんな彼が唯一心許して本音を吐露するのが、乳母とその夫。
ある意味一本調子のルパンがほぼ舞台に出ずっぱりで、ルブランに語るかルパンの影と称する10人相当の黒マント黒シルクハットの群舞に囲まれて踊る。
主人公に感情移入してその立場で観ると、あまりの平坦なト―ンと全体の照明の暗さに思わず睡魔に襲われることもあるかも?
そんな彼を取り巻く人々が物語を動かしている,という視点で観ると、俄然いきいきと舞台が動き出します。
見どころの一つは、社会事業家ルパンがスラムで浮浪児たちを組織して道路建設に当たらせるところ。
「道路を作ろう」
場面冒頭のソロ、蓮つかさ、咲妃みゆの歌声が美しく、コーラス、群舞が活き活きとしています。
個別に感想を。
■アルセーヌ・ラウール・ルパン(アルベール・ド・サヴリー) 龍 真咲
細くてシュッとしたスタイルにグレイッシュ薄紫サテンの燕尾服とシルクハットとか、ブルーのシルクスーツ、黒い軍服など、金髪に映えてお衣装は全てとても良くお似合い。
この作品の実験的な試みとして、歌と台詞が突然切り替わる・・という手法が使われていますが、歌・台詞が入り乱れる構成が適用されるルパン、ルブランの2人が際立って歌唱力のある人たち故、それが成功しています。
台詞からその同じキーで歌に流れてオケの音に乗っていく・・・というスムースさはこの2人ならでは。さすがです。
ただ、そのせいか、セリフのリズムがメトロノームで刻んだかのような不思議な一定のトーンを崩さず、しかも台詞初めに母音を挿入する「まさき節」がそれに加わるため「ゥあな-たを失うことになるかも、しれぬぁいからです 」という感じ?
この語りのクセと常にク―ルな佇まいが周囲から浮き上がり、初見では違和感でしたが、次第にそれがクセになる?という・・(笑)
■カ―ラ・ド・レルヌ 愛希 れいか
対してリアルな演技で、アルベールを愛する芯の強い令嬢として、しっかりと存在していたちゃぴ(愛希)。
ロザリー(ベルばら)、サリー(ミ―マイ)と、健気な庶民の娘役が似合っていたので、貴族の令嬢役はどうかしら?と心配していましたが、長身にドレスが似合い、背筋を伸ばして、自ら愛を告白する、聡明で行動力もある現代的な令嬢を好演。
ラストシーンでの白と紺にラベンダーピンクのサッシュをあしらったドレスが、ルパンのブルーのスーツと並んだ時の色彩設計がとてもきれいで、お似合い感が増していました^^
■後見人チーム
□ドナルド・ドースン 凪七 瑠海
月組初登場。あごひげとメガネをつけて、ミステリアスで冷酷な黒幕を。最後ルパンに対峙するキーパーソンという美味しい役どころを、初回観た時には演じきれていないというか、役として軽すぎる感じを受けたのですが、2回目には、ルパンとライバルながら、違う道を行く・・・という同格の存在であることをしっかりと示して観ごたえのあるラストにつなげてくれました。ハリのある歌声で押し出しが強いのも良い感じ。小顔で細身の長身が宙組では少年ぽく見えて役柄が限られる印象がありましたが、若い月組では大人っぽい役でもさほど違和感がないかも。今後にも期待です。
□ヘアフォール伯爵 美弥 るりか
カ―ラを取り巻く後見人4人の中で唯一、後見人らしい仕事を貴族的な品格を持って遂行したヒト。
落ち着いた声質が活かされて、カ―ラの出自を語る長い説明台詞に説得力がありました。
見た目も麗しく、常に周囲を気遣ってエレガントにふるまう姿と、何事も直截的な表現を避けて教養ある人物として練られたセリフがすんなりハマって魅力的。
後見人の任を解かれてルパンに別れを告げに来るシーンで、カ―ラとの恋をさりげなく後押しする場面の押しつけがましくない人間的な温かみがなんとも爽やか。
星組から異動して、2番手、3番手どころを務めてきましたが、凪七さんの異動で、(同期で成績が凪七さんの方が上なので)一歩退いた感もあり、ファンとしてはちょっぴり心配なところでもありますが・・・^^;
それぞれの魅力を花開かせて切磋琢磨してほしい・・と思っております。
■人殺し3人組(ルパンの配下に)
フィナールがリーダー格で、ツイードジャケットにストールを胸元にあしらった着こなしも、黒髪オールバックに映えて魅力的。誰だろうと後でチェックして、ベルばらのダグー大佐で脚をガクガクさせる演技で目を惹いた、光月るう氏であることがわかって驚きました^^; 彼女、役者ですね。
役どころとしては、正塚芝居に欠かせない「酒場で絡む男たち」で、必ず、声を荒げて絡み、クールな主人公にあっさりと片付けられて逃げるor子分にさせられる、という御約束の展開ですが^^;
プス・カフェ(紫門 ゆりや)はチャーミングなへたれ、 ドゥーブル・チュルク(綾月 せり)は力自慢のドジと役どころがはっきりとしていて、3人とも好演。
■カ―ラの婚約者とその秘書とその手下
□オックスフォード公エドモンド 宇月 颯
なんだかとっても残念な人xxx。
秘書のトニーに「家族の中でも持て余し者だった彼をおれが一人前の男にしてやった」的なことを言われてしまっているちょっと挙動不審で、血筋的に国王候補の可能性があると言われても、議会から不信任案を突き付けられそうな頼りなさで・・・。最初から、カ―ラのためを思って行動している設定の後見人たちが彼を推すのが解せなく、カ―ベットの死の後は上流階級に必須の自制心がまるで観られない乱れっぷりを社交界の人々の前でさらすという失態も。カ―ラの言う「年月は嫌悪感を強めもする」という台詞に合わせた演技設定なのかもしれませんが、もう少し基本は魅力的な男性、という線を崩さない方が、カ―ラのルパンへの思いも引き立ったのでは・・?
□トニー・カーベット 沙央 くらま
黒い野望を秘めた悪人。
浅はかな小悪党なれど、それを自覚して実行する怖さがあり、平坦で自虐的な台詞に一抹の色気も感じられて、彼女ならではの役作り。
「ミーマイ」では脇に退いた感がありましたが、次の全ツ「仁」では、美弥さんを差し置いて(?)雪組では2番手である早霧せいなさんの役である坂本竜馬役を射止め、巻き返しか?と。
正2番手を置かない体制の月組では、凪七、美弥、沙央の3つ巴でしばらくハラハラさせられそうですね。
□エメット 鳳月 杏
横柄なカ―ベットの手下なれど、へいこらするのではなく、更に余裕感を持って、クールに命令を受け止めていなす感じが魅力的。この人も、静止画よりも、演技で魅力を発揮するタイプですね。何気に注目しています。
■ルパンの乳母とその夫
□ビクトワール・エルヌモン 飛鳥 裕
もと雪組組長、そして月の次期組長に・・という飛鳥さん。乳母ながら男前なぶっきらぼうな中に愛情をにじませる絶妙の距離感が良い感じ。チョイ悪スタイルででも人の良さそうな旦那さまに愛されている奥さんにしては乳母CAPに地味な茶系のブラウスとロングスカートの衣装がちょっと違和感。
□ヘリンボ―ン 越乃 リュウ
ルパンの怪盗としての活動をサポートする発明品を生み出す、研究班?
生産性はあまり高そうではなく、ビクトワ―ルとの関係は完全に女性上位な感じなれど、可愛げと色気のある旦那で、ルパンにも遠慮なく接する、癒しキャラ。
この公演で退団の月組名物お色気組長の最期の役としてはカジュアルすぎる気がしないでもありませんが・・・
印象に残る役なので良しとしましょう(上から目線でスミマセン)
■ルパンを追う警察と予審判事
□ジュスタン・ガニマール 星条 海斗
ルパン3世なら銭形警部ポジ。
ルパンの宿敵を自任し、ルパン逮捕に夢をかけるが、今回はあっさりと姿を現したルパンの協力者としての役割を担わされて、不本意な気持ちに1人で葛藤。
このシリアスで暗いト―ンの作品中、客席の笑いを着実に引き出す力技はさすがマギーさん(星条)。87期万歳。
□フラヴィ 憧花 ゆりの
ガニマ―ルに対する時だけ強気の男口調。スタイリッシュなターバンを合わせたグリーンのドレスに大きな書類カバンでパリでただ一人の女性予審判事を軽妙に演じて、良いコンビぶりを発揮。
憧花さんは上品なキャラを崩さずに笑いをとれるところがステキ。
■ルパンの手下(子役)
ジョゼファン 珠城 りょう
マリ・テレーズ 咲妃 みゆ
あまり見せ場なし。マリ・テレ―ズのフランス版コケコッコ―の鳴き真似が上手すぎる。
新公コンビゆえ、ヒーローヒロインの近くでお勉強、というポジ。これが普通です(だから、星組の礼真琴君のロミオ+本公演役変わりは異常^^;)
■ルパンの伝記作家
モーリス・ルブラン 北翔 海莉
いなくても良い役では・・・と散々言われつつも、前例のない、難しい立ち位置を自ら模索して、しっかりと存在感を出してきたところが流石の北翔さん。
もともと、ルパンのコロス、という名称でのルパン・ダンサーズが彼の心情をあらわす役どころで若手が大量に投入されていますが、スタイリッシュなダンスシーンであるだけで、別段内面を表してはいないような・・・??
寧ろ、ポーカーフェイスのルパンに、人間味溢れるルブラン氏が突っ込みを入れてくれることでルパンの物語が進む・・・という構成でなりたっていると感じました。
こうして立ち位置を勝ち取っていく、北翔さん、リアル年配役が似合うVISUALでのTOPはどうかしら?という懸念はあれど、魅力的な役者さんであることは間違いありません。
今後の動向が気になりますね。
HappyEndで、舞台・美術がセンス良く、音楽も独特のニュアンスがあって、キャッチーな主題歌こそなかったですが、わたくしはなかなか面白いと思いました。
ただ、完成形になるまでに時間がかかったのが、新作ならではの難しさで・・・再演されるかどうか微妙ですね^^;
東京宝塚劇場にて、前楽を観て参りました。
3回の観劇で、初日から1週間後、楽の1週間前、そして前楽と3回観て、
お席が17列目、3列目、1列目(!)とどんどん近くなっていったせいもあるのかもしれませんが、
初見で???としっくりこない感じのあった舞台が、2回目でグッとそれぞれの役の完成度が増し、
3度目で、正塚センセイワールドが完成したな、と感じました。
ミュージカル
『ルパン -ARSÈNE LUPIN-』
モーリス・ルブラン作「ルパン、最後の恋(ハヤカワ・ミステリ刊/ハヤカワ文庫近刊)」より
脚本・演出/正塚 晴彦
[解 説]
フランスの人気小説「アルセーヌ・ルパン」の作家モーリス・ルブラン没後70年となる2012年に発見され話題となっている「ルパン、最後の恋」をいち早くミュージカル化。1921年、パリのイタリア大使館の舞踏会に出席していたレルヌ大公の令嬢は、屋敷からの連絡で急遽呼び戻される。レルヌ大公が謎の死を遂げたのである。悲しみにくれる令嬢は、自身の思いがけない出生の秘密を知り、国際的陰謀の渦に巻き込まれることになる。彼女の4人の親友の一人こそ、アルセーヌ・ルパンその人だった。永遠のヒーローは、如何にしてこの窮地を救うか……。姿なき強敵との死闘が幕を開ける。 (公式HPより)
アルセーヌ・ラウール・ルパン 龍 真咲
カ―ラ・ド・レルヌ 愛希 れいか
*~*~*
■カ―ラの4人の後見人
アルベール・ド・サヴリー大佐(実はルパン) 龍まさき
ドナルド・ドースン 凪七 瑠海
ヘアフォール伯爵 美弥 るりか
ウィリアム・ロッジ 煌月 爽矢
■人殺し3人組(ルパンの配下に)
ドゥーブル・チュルク 綾月 せり
フィナール 光月 るう
プス・カフェ 紫門 ゆりや
■カ―ラの婚約者とその秘書とその手下
オックスフォード公エドモンド 宇月 颯
トニー・カーベット 沙央 くらま
エメット 鳳月 杏
■ルパンの乳母とその夫
ビクトワール・エルヌモン 飛鳥 裕
ヘリンボ―ン 越乃 リュウ
■ルパンを追う警察と予審判事
ジュスタン・ガニマール 星条 海斗
フラヴィ 憧花 ゆりの
■ルパンの手下(子役)
ジョゼファン 珠城 りょう
マリ・テレーズ 咲妃 みゆ
■ルパンの伝記作家
モーリス・ルブラン 北翔 海莉
物語はルパンが回想録を記す作家ルブランに最後の恋とその恋を巡る陰謀と冒険を語る・・・というスタイルで構成されており、作家ルブランはルパンの語る出来事を目の当たりにして、一喜一憂。
常に舞台にいるが、彼の姿を観て交流できるのはルパンのみ。
人間的に悩み、ハラハラしながらルパンの冒険譚を促し、共感する。
ルパンは、美意識の高い義賊で、社会活動家としての一面も。
スーパーヒーロー設定で、常に自分を律して乱れたところを見せることはないクール・ガイ。
そんな彼が唯一心許して本音を吐露するのが、乳母とその夫。
ある意味一本調子のルパンがほぼ舞台に出ずっぱりで、ルブランに語るかルパンの影と称する10人相当の黒マント黒シルクハットの群舞に囲まれて踊る。
主人公に感情移入してその立場で観ると、あまりの平坦なト―ンと全体の照明の暗さに思わず睡魔に襲われることもあるかも?
そんな彼を取り巻く人々が物語を動かしている,という視点で観ると、俄然いきいきと舞台が動き出します。
見どころの一つは、社会事業家ルパンがスラムで浮浪児たちを組織して道路建設に当たらせるところ。
「道路を作ろう」
場面冒頭のソロ、蓮つかさ、咲妃みゆの歌声が美しく、コーラス、群舞が活き活きとしています。
個別に感想を。
■アルセーヌ・ラウール・ルパン(アルベール・ド・サヴリー) 龍 真咲
細くてシュッとしたスタイルにグレイッシュ薄紫サテンの燕尾服とシルクハットとか、ブルーのシルクスーツ、黒い軍服など、金髪に映えてお衣装は全てとても良くお似合い。
この作品の実験的な試みとして、歌と台詞が突然切り替わる・・という手法が使われていますが、歌・台詞が入り乱れる構成が適用されるルパン、ルブランの2人が際立って歌唱力のある人たち故、それが成功しています。
台詞からその同じキーで歌に流れてオケの音に乗っていく・・・というスムースさはこの2人ならでは。さすがです。
ただ、そのせいか、セリフのリズムがメトロノームで刻んだかのような不思議な一定のトーンを崩さず、しかも台詞初めに母音を挿入する「まさき節」がそれに加わるため「ゥあな-たを失うことになるかも、しれぬぁいからです 」という感じ?
この語りのクセと常にク―ルな佇まいが周囲から浮き上がり、初見では違和感でしたが、次第にそれがクセになる?という・・(笑)
■カ―ラ・ド・レルヌ 愛希 れいか
対してリアルな演技で、アルベールを愛する芯の強い令嬢として、しっかりと存在していたちゃぴ(愛希)。
ロザリー(ベルばら)、サリー(ミ―マイ)と、健気な庶民の娘役が似合っていたので、貴族の令嬢役はどうかしら?と心配していましたが、長身にドレスが似合い、背筋を伸ばして、自ら愛を告白する、聡明で行動力もある現代的な令嬢を好演。
ラストシーンでの白と紺にラベンダーピンクのサッシュをあしらったドレスが、ルパンのブルーのスーツと並んだ時の色彩設計がとてもきれいで、お似合い感が増していました^^
■後見人チーム
□ドナルド・ドースン 凪七 瑠海
月組初登場。あごひげとメガネをつけて、ミステリアスで冷酷な黒幕を。最後ルパンに対峙するキーパーソンという美味しい役どころを、初回観た時には演じきれていないというか、役として軽すぎる感じを受けたのですが、2回目には、ルパンとライバルながら、違う道を行く・・・という同格の存在であることをしっかりと示して観ごたえのあるラストにつなげてくれました。ハリのある歌声で押し出しが強いのも良い感じ。小顔で細身の長身が宙組では少年ぽく見えて役柄が限られる印象がありましたが、若い月組では大人っぽい役でもさほど違和感がないかも。今後にも期待です。
□ヘアフォール伯爵 美弥 るりか
カ―ラを取り巻く後見人4人の中で唯一、後見人らしい仕事を貴族的な品格を持って遂行したヒト。
落ち着いた声質が活かされて、カ―ラの出自を語る長い説明台詞に説得力がありました。
見た目も麗しく、常に周囲を気遣ってエレガントにふるまう姿と、何事も直截的な表現を避けて教養ある人物として練られたセリフがすんなりハマって魅力的。
後見人の任を解かれてルパンに別れを告げに来るシーンで、カ―ラとの恋をさりげなく後押しする場面の押しつけがましくない人間的な温かみがなんとも爽やか。
星組から異動して、2番手、3番手どころを務めてきましたが、凪七さんの異動で、(同期で成績が凪七さんの方が上なので)一歩退いた感もあり、ファンとしてはちょっぴり心配なところでもありますが・・・^^;
それぞれの魅力を花開かせて切磋琢磨してほしい・・と思っております。
■人殺し3人組(ルパンの配下に)
フィナールがリーダー格で、ツイードジャケットにストールを胸元にあしらった着こなしも、黒髪オールバックに映えて魅力的。誰だろうと後でチェックして、ベルばらのダグー大佐で脚をガクガクさせる演技で目を惹いた、光月るう氏であることがわかって驚きました^^; 彼女、役者ですね。
役どころとしては、正塚芝居に欠かせない「酒場で絡む男たち」で、必ず、声を荒げて絡み、クールな主人公にあっさりと片付けられて逃げるor子分にさせられる、という御約束の展開ですが^^;
プス・カフェ(紫門 ゆりや)はチャーミングなへたれ、 ドゥーブル・チュルク(綾月 せり)は力自慢のドジと役どころがはっきりとしていて、3人とも好演。
■カ―ラの婚約者とその秘書とその手下
□オックスフォード公エドモンド 宇月 颯
なんだかとっても残念な人xxx。
秘書のトニーに「家族の中でも持て余し者だった彼をおれが一人前の男にしてやった」的なことを言われてしまっているちょっと挙動不審で、血筋的に国王候補の可能性があると言われても、議会から不信任案を突き付けられそうな頼りなさで・・・。最初から、カ―ラのためを思って行動している設定の後見人たちが彼を推すのが解せなく、カ―ベットの死の後は上流階級に必須の自制心がまるで観られない乱れっぷりを社交界の人々の前でさらすという失態も。カ―ラの言う「年月は嫌悪感を強めもする」という台詞に合わせた演技設定なのかもしれませんが、もう少し基本は魅力的な男性、という線を崩さない方が、カ―ラのルパンへの思いも引き立ったのでは・・?
□トニー・カーベット 沙央 くらま
黒い野望を秘めた悪人。
浅はかな小悪党なれど、それを自覚して実行する怖さがあり、平坦で自虐的な台詞に一抹の色気も感じられて、彼女ならではの役作り。
「ミーマイ」では脇に退いた感がありましたが、次の全ツ「仁」では、美弥さんを差し置いて(?)雪組では2番手である早霧せいなさんの役である坂本竜馬役を射止め、巻き返しか?と。
正2番手を置かない体制の月組では、凪七、美弥、沙央の3つ巴でしばらくハラハラさせられそうですね。
□エメット 鳳月 杏
横柄なカ―ベットの手下なれど、へいこらするのではなく、更に余裕感を持って、クールに命令を受け止めていなす感じが魅力的。この人も、静止画よりも、演技で魅力を発揮するタイプですね。何気に注目しています。
■ルパンの乳母とその夫
□ビクトワール・エルヌモン 飛鳥 裕
もと雪組組長、そして月の次期組長に・・という飛鳥さん。乳母ながら男前なぶっきらぼうな中に愛情をにじませる絶妙の距離感が良い感じ。チョイ悪スタイルででも人の良さそうな旦那さまに愛されている奥さんにしては乳母CAPに地味な茶系のブラウスとロングスカートの衣装がちょっと違和感。
□ヘリンボ―ン 越乃 リュウ
ルパンの怪盗としての活動をサポートする発明品を生み出す、研究班?
生産性はあまり高そうではなく、ビクトワ―ルとの関係は完全に女性上位な感じなれど、可愛げと色気のある旦那で、ルパンにも遠慮なく接する、癒しキャラ。
この公演で退団の月組名物お色気組長の最期の役としてはカジュアルすぎる気がしないでもありませんが・・・
印象に残る役なので良しとしましょう(上から目線でスミマセン)
■ルパンを追う警察と予審判事
□ジュスタン・ガニマール 星条 海斗
ルパン3世なら銭形警部ポジ。
ルパンの宿敵を自任し、ルパン逮捕に夢をかけるが、今回はあっさりと姿を現したルパンの協力者としての役割を担わされて、不本意な気持ちに1人で葛藤。
このシリアスで暗いト―ンの作品中、客席の笑いを着実に引き出す力技はさすがマギーさん(星条)。87期万歳。
□フラヴィ 憧花 ゆりの
ガニマ―ルに対する時だけ強気の男口調。スタイリッシュなターバンを合わせたグリーンのドレスに大きな書類カバンでパリでただ一人の女性予審判事を軽妙に演じて、良いコンビぶりを発揮。
憧花さんは上品なキャラを崩さずに笑いをとれるところがステキ。
■ルパンの手下(子役)
ジョゼファン 珠城 りょう
マリ・テレーズ 咲妃 みゆ
あまり見せ場なし。マリ・テレ―ズのフランス版コケコッコ―の鳴き真似が上手すぎる。
新公コンビゆえ、ヒーローヒロインの近くでお勉強、というポジ。これが普通です(だから、星組の礼真琴君のロミオ+本公演役変わりは異常^^;)
■ルパンの伝記作家
モーリス・ルブラン 北翔 海莉
いなくても良い役では・・・と散々言われつつも、前例のない、難しい立ち位置を自ら模索して、しっかりと存在感を出してきたところが流石の北翔さん。
もともと、ルパンのコロス、という名称でのルパン・ダンサーズが彼の心情をあらわす役どころで若手が大量に投入されていますが、スタイリッシュなダンスシーンであるだけで、別段内面を表してはいないような・・・??
寧ろ、ポーカーフェイスのルパンに、人間味溢れるルブラン氏が突っ込みを入れてくれることでルパンの物語が進む・・・という構成でなりたっていると感じました。
こうして立ち位置を勝ち取っていく、北翔さん、リアル年配役が似合うVISUALでのTOPはどうかしら?という懸念はあれど、魅力的な役者さんであることは間違いありません。
今後の動向が気になりますね。
HappyEndで、舞台・美術がセンス良く、音楽も独特のニュアンスがあって、キャッチーな主題歌こそなかったですが、わたくしはなかなか面白いと思いました。
ただ、完成形になるまでに時間がかかったのが、新作ならではの難しさで・・・再演されるかどうか微妙ですね^^;
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