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池袋から埼京線へ乗り、荒川を渡ると、
上流に雪を抱いた山々がくっきりと連なって見えてきました。
川面を渡る風の冷たさも電車の中までは届かず、
「川で遊んでいる鳥は何かしら?」
浮かんできた和歌をあわてて懐紙に書きとどめました。
某駅の改札口で茶事の連客と待ち合わせました。
客四名全員が初対面なのですが、そこは茶事を共通語とする方々です。
すぐに打ち解けて旧知の如く、いざ、ご亭主が待つマンションへ。
ご亭主の楽居庵さまとのお出会いは、私が茶事を初めて間もなくの頃でした。
思い切って真MLでお客さまを募集して、はじめて本格的な茶事をしました。
ブログにも書きました、長屋門公園・正午の茶事です。
その時の拙いながら一生懸命の茶事へいらしてくださったのが、楽居庵さまでした。
その後もご縁があり、茶事でご一緒したり、瀬谷の吊るし雛の会や
昨春の五事式にお付き合いくださいました。
私が京都へ家うつりするというので、如月17日、ご自宅の茶事へ招いてくださったのです。
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(ご一緒した瀬谷の吊るし雛から)
「楽居庵」と書かれた木の表札が掛けられている玄関を入りました。
待合の居間には内裏雛が飾られ、短冊が掛けられています。
「龍吟雲起」 (りゅうぎんずれば くもおきる)
広島・和風堂で行われた上田宗箇流の初釜の福引で頂戴した短冊とか。
ご亭主の今年の隆盛が見えるようです。
一人亭主でございます・・・香煎が運びだされ、
「風が冷たいのでベランダ腰掛での迎えつけは省略させて頂きます。
湯をお飲みになりましたら、お席へお入りください」
というご案内がありました。
煙草盆や火入のざっくりとした灰形の景色を鑑賞してから
躙り口より四畳半の茶室へ席入りしました。
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床には画賛が掛けられ、梅を愛でる林和靖の画と和歌でしょうか?
表装の一文字と中回しも味わい深いお軸で、あとでお尋ねするのが楽しみです。
炉正面に座り、炉中の息をのむような美しさに見とれました。
きめ細かい炉灰がなだらかな山の景色を作り、
今撒かれたばかりの黒々とした湿し灰が山の稜線を際立たせています。
そして真っ赤に熾った三本の菊炭が炉中を美しく照らしていました。
仮座へ座ってから、ご亭主が濡れ釜を持ち出し、掛けました。
「失礼しました・・・」
「とんでもございません。少し早く席入したようで、そのおかげで、
素晴らしい炉中の風情を愉しませて頂きました」
再び炉前に座り、濡れ釜の形や釜肌の美しさを堪能し、二度も愉しませて頂きました。
・・・ここで大失敗です。
あんなに美しい炉の景色はめったに見られませんので、濡れ釜を持ちだしたときに
「炉中拝見」を所望すべきだった・・・と今も悔やまれます。
気の利かない正客で、ご連客さま、ごめんなさい・・・。
そんなわけで、炉中を鑑賞できたのは、不肖私だけでして、
「一瞬の出会いと判断」のむずかしさを痛感しました。
如月の茶事へ招かれて (2)へつづく
上流に雪を抱いた山々がくっきりと連なって見えてきました。
川面を渡る風の冷たさも電車の中までは届かず、
「川で遊んでいる鳥は何かしら?」
浮かんできた和歌をあわてて懐紙に書きとどめました。
某駅の改札口で茶事の連客と待ち合わせました。
客四名全員が初対面なのですが、そこは茶事を共通語とする方々です。
すぐに打ち解けて旧知の如く、いざ、ご亭主が待つマンションへ。
ご亭主の楽居庵さまとのお出会いは、私が茶事を初めて間もなくの頃でした。
思い切って真MLでお客さまを募集して、はじめて本格的な茶事をしました。
ブログにも書きました、長屋門公園・正午の茶事です。
その時の拙いながら一生懸命の茶事へいらしてくださったのが、楽居庵さまでした。
その後もご縁があり、茶事でご一緒したり、瀬谷の吊るし雛の会や
昨春の五事式にお付き合いくださいました。
私が京都へ家うつりするというので、如月17日、ご自宅の茶事へ招いてくださったのです。
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(ご一緒した瀬谷の吊るし雛から)
「楽居庵」と書かれた木の表札が掛けられている玄関を入りました。
待合の居間には内裏雛が飾られ、短冊が掛けられています。
「龍吟雲起」 (りゅうぎんずれば くもおきる)
広島・和風堂で行われた上田宗箇流の初釜の福引で頂戴した短冊とか。
ご亭主の今年の隆盛が見えるようです。
一人亭主でございます・・・香煎が運びだされ、
「風が冷たいのでベランダ腰掛での迎えつけは省略させて頂きます。
湯をお飲みになりましたら、お席へお入りください」
というご案内がありました。
煙草盆や火入のざっくりとした灰形の景色を鑑賞してから
躙り口より四畳半の茶室へ席入りしました。
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床には画賛が掛けられ、梅を愛でる林和靖の画と和歌でしょうか?
表装の一文字と中回しも味わい深いお軸で、あとでお尋ねするのが楽しみです。
炉正面に座り、炉中の息をのむような美しさに見とれました。
きめ細かい炉灰がなだらかな山の景色を作り、
今撒かれたばかりの黒々とした湿し灰が山の稜線を際立たせています。
そして真っ赤に熾った三本の菊炭が炉中を美しく照らしていました。
仮座へ座ってから、ご亭主が濡れ釜を持ち出し、掛けました。
「失礼しました・・・」
「とんでもございません。少し早く席入したようで、そのおかげで、
素晴らしい炉中の風情を愉しませて頂きました」
再び炉前に座り、濡れ釜の形や釜肌の美しさを堪能し、二度も愉しませて頂きました。
・・・ここで大失敗です。
あんなに美しい炉の景色はめったに見られませんので、濡れ釜を持ちだしたときに
「炉中拝見」を所望すべきだった・・・と今も悔やまれます。
気の利かない正客で、ご連客さま、ごめんなさい・・・。
そんなわけで、炉中を鑑賞できたのは、不肖私だけでして、
「一瞬の出会いと判断」のむずかしさを痛感しました。
如月の茶事へ招かれて (2)へつづく
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