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懐石のあと、いよいよ初炭です。
五行棚に黒の紅鉢がお似合いですが、
火床が狭いので初炭まで火種を持たせるのは難しく、
ご亭主の腕の見せ所でもあります。
鵜篭の炭斗に炭が小さく切られ、かわいい枝炭も入っています。
炭が置かれ、香が焚かれました。
香合は妙喜庵古材で作られた銀縁四方でした。
香が薫るころに「パチパチ」という音が幽かに聞こえ、客一同も安堵しました。
微かな薫りと筧の水音に清寂と安らぎを覚えます。
初炭が終わるころ、露地に水を撒く音が聞こえてきました。
銀杏の練切(亀屋万年堂製)を頂き、中立です。
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銅鑼の合図でにじり口を入ると
床には白い花がぼんやり浮き立って見えました。
近づくと、秋丁子、フジバカマ、白の岩シャジンが籠に生けられていました。
炭火の赤さが黒い紅鉢に映えて美しく、濃茶への期待が高まります。
濃茶点前が始まりました。
まもなく、墨蹟窓の簾が巻き上げられ、
この瞬間、花にもう一度命が吹きこまれたように、別の表情を見せました。
他の簾も巻き上げられ、陰から陽への見事な転換です。
細長い茶入より緑の濃茶が回し出され、湯が汲まれ、濃茶が煉られました。
さらさらと流れるような点前を皆、静かに吸い込まれるように拝見しています。
緊張感と充実感のみなぎるひと時・・・・。
「無心」という銘の黒楽で濃茶がだされ、客四名で頂戴しました。
「室閑茶味清」
濃茶は一保堂の雲門の昔でした。
細長く優しい形の茶入は肩衝長茶入、飯能焼の細井陶遊造です。
作者が志戸呂焼が好きで、土は志戸呂とのことでした。
仕覆は鹿羊文金襴。
茶杓は、えーと・・・・銘「時雨」でした。
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茶事を通じて思うことが二つありました。
名残の茶事にふさわしい道具のいくつかはご亭主の先生から、
さらには先生の先生から先生へ譲られたお品でした。
道を継ぐ人と場所(汲古庵)を得て、先生方も道具もきっと大喜びでしょう。
水撒き、簾あげなど縁の下の力持ち役の半東はKさん社中のHさんでした。
Hさんとは茶事入門教室以来のご縁ですが、
ご亭主の茶事の半東をこなされ、目を見張るばかりの上達ぶりです。
そして、いつも一生懸命の様子が好ましく、今後の活躍を楽しみにしています。
話しは尽きませんが、ご亭主さま、相伴させて頂いたお客さまと和やかに楽しく
汲古庵でのひと時を過ごすことができ、いろいろなご縁に感謝いたします。
(1)へ戻る
やっと 
五行棚に黒の紅鉢がお似合いですが、
火床が狭いので初炭まで火種を持たせるのは難しく、
ご亭主の腕の見せ所でもあります。
鵜篭の炭斗に炭が小さく切られ、かわいい枝炭も入っています。
炭が置かれ、香が焚かれました。
香合は妙喜庵古材で作られた銀縁四方でした。
香が薫るころに「パチパチ」という音が幽かに聞こえ、客一同も安堵しました。
微かな薫りと筧の水音に清寂と安らぎを覚えます。
初炭が終わるころ、露地に水を撒く音が聞こえてきました。
銀杏の練切(亀屋万年堂製)を頂き、中立です。
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銅鑼の合図でにじり口を入ると
床には白い花がぼんやり浮き立って見えました。
近づくと、秋丁子、フジバカマ、白の岩シャジンが籠に生けられていました。
炭火の赤さが黒い紅鉢に映えて美しく、濃茶への期待が高まります。
濃茶点前が始まりました。
まもなく、墨蹟窓の簾が巻き上げられ、
この瞬間、花にもう一度命が吹きこまれたように、別の表情を見せました。
他の簾も巻き上げられ、陰から陽への見事な転換です。
細長い茶入より緑の濃茶が回し出され、湯が汲まれ、濃茶が煉られました。
さらさらと流れるような点前を皆、静かに吸い込まれるように拝見しています。
緊張感と充実感のみなぎるひと時・・・・。
「無心」という銘の黒楽で濃茶がだされ、客四名で頂戴しました。
「室閑茶味清」
濃茶は一保堂の雲門の昔でした。
細長く優しい形の茶入は肩衝長茶入、飯能焼の細井陶遊造です。
作者が志戸呂焼が好きで、土は志戸呂とのことでした。
仕覆は鹿羊文金襴。
茶杓は、えーと・・・・銘「時雨」でした。
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茶事を通じて思うことが二つありました。
名残の茶事にふさわしい道具のいくつかはご亭主の先生から、
さらには先生の先生から先生へ譲られたお品でした。
道を継ぐ人と場所(汲古庵)を得て、先生方も道具もきっと大喜びでしょう。
水撒き、簾あげなど縁の下の力持ち役の半東はKさん社中のHさんでした。
Hさんとは茶事入門教室以来のご縁ですが、
ご亭主の茶事の半東をこなされ、目を見張るばかりの上達ぶりです。
そして、いつも一生懸命の様子が好ましく、今後の活躍を楽しみにしています。
話しは尽きませんが、ご亭主さま、相伴させて頂いたお客さまと和やかに楽しく
汲古庵でのひと時を過ごすことができ、いろいろなご縁に感謝いたします。
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