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本席の軸は、十四代淡々斎のお筆で
「遠山無限 碧層々」
お正客さまから懇ろに待合、露地、掛物など、ご亭主のお心入れを謝し、
懐石がはじまりました。
亭主相伴の間に杯台を正客へ、円椅を正客前に置きました。
あとでご亭主が
「あらっ、円椅を運んでくださったのですね。
折角ですので、お正客さまとだけ献酬させていただきます」
立礼の懐石で千鳥の杯を行う時、半東が控えていて
移動のたびに円椅を動かしますが、省略する場合も多いのです。
懐石を和やかに美味しく頂戴すると、炭が置かれました。
炭斗は桐の蒔絵が優雅な冊屑箱(さくずばこ)でした。
香合は、梨地に秋草蒔絵の錫縁小箱で、
「かなり古いもので江戸より前の時代のものでございます。
お姫さまが琴爪でも入れていたのでしょうか?」
炭手前が終わり、縁高が運びだされました。
主菓子がとてもステキだったので、ご紹介します。
薄紅色の芙蓉の花のようで、葉が敷かれていました。
中は白餡、葡萄酒と葡萄ジュースが入った葛で包まれ、
花芯の干し葡萄が3粒のっています。
菓子銘を聞き損ねましたが、フルーティで上品な甘さが絶品でした。
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中立のあと、迎えつけは銅鑼でした。
音(響き)と間合い、大小中の打ちわけも程好く、
いいですねぇ・・・大好きな瞬間です。
後座の床には、祇園守り、鉄線、ホトトギス、ワレモコウなど
名残りの花が背負い籠へ入れられています。
点茶盤の茶道具は、海外へ夢が広がるようなエキゾチックな取り合わせでした。
中でも義山の大きな水指はリスの絵柄のある珍しいもので、
団扇のような平たい耳が面白く、木蓋は遠い異国の教会の扉とか。
よく練られた濃茶を美味しく頂戴しました。
この一服を差し上げたくって・・・という
ご亭主の気持ちが込められていました。
主茶碗は志野で、豪快な作風の茶碗ですが、
秋風になびくススキのようにも見えて、時候にぴったりです。
添えられた古袱紗が素晴らしかったです。
ずっしりと重い玉虫のような煌きのあるモールで、
密かに「玉虫の厨子」と名付けました。
次茶碗は弘入の赤楽で、これも味わい深いものでした。
後炭手前をしっかり見せて頂き、風炉中拝見では
灰形、炭の風情に嘆声が続きます。
鮮やかな五色の組み紐で編まれた釜敷に惹きつけられました。
あとで淡々斎の箱書を拝見すると、記念とだけありましたが
何の記念か、謎だそうです。
薄茶と干菓子を美味しく頂戴し、
N先生のおもてなしを深く心に刻んでお暇しました。
ご亭主さま、お正客さま、ご同席の皆様、有難うございました。
Nさんと共に過ごした、神無月の優雅な一会でした・・・。
(1)へ戻る
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「遠山無限 碧層々」
お正客さまから懇ろに待合、露地、掛物など、ご亭主のお心入れを謝し、
懐石がはじまりました。
亭主相伴の間に杯台を正客へ、円椅を正客前に置きました。
あとでご亭主が
「あらっ、円椅を運んでくださったのですね。
折角ですので、お正客さまとだけ献酬させていただきます」
立礼の懐石で千鳥の杯を行う時、半東が控えていて
移動のたびに円椅を動かしますが、省略する場合も多いのです。
懐石を和やかに美味しく頂戴すると、炭が置かれました。
炭斗は桐の蒔絵が優雅な冊屑箱(さくずばこ)でした。
香合は、梨地に秋草蒔絵の錫縁小箱で、
「かなり古いもので江戸より前の時代のものでございます。
お姫さまが琴爪でも入れていたのでしょうか?」
炭手前が終わり、縁高が運びだされました。
主菓子がとてもステキだったので、ご紹介します。
薄紅色の芙蓉の花のようで、葉が敷かれていました。
中は白餡、葡萄酒と葡萄ジュースが入った葛で包まれ、
花芯の干し葡萄が3粒のっています。
菓子銘を聞き損ねましたが、フルーティで上品な甘さが絶品でした。
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中立のあと、迎えつけは銅鑼でした。
音(響き)と間合い、大小中の打ちわけも程好く、
いいですねぇ・・・大好きな瞬間です。
後座の床には、祇園守り、鉄線、ホトトギス、ワレモコウなど
名残りの花が背負い籠へ入れられています。
点茶盤の茶道具は、海外へ夢が広がるようなエキゾチックな取り合わせでした。
中でも義山の大きな水指はリスの絵柄のある珍しいもので、
団扇のような平たい耳が面白く、木蓋は遠い異国の教会の扉とか。
よく練られた濃茶を美味しく頂戴しました。
この一服を差し上げたくって・・・という
ご亭主の気持ちが込められていました。
主茶碗は志野で、豪快な作風の茶碗ですが、
秋風になびくススキのようにも見えて、時候にぴったりです。
添えられた古袱紗が素晴らしかったです。
ずっしりと重い玉虫のような煌きのあるモールで、
密かに「玉虫の厨子」と名付けました。
次茶碗は弘入の赤楽で、これも味わい深いものでした。
後炭手前をしっかり見せて頂き、風炉中拝見では
灰形、炭の風情に嘆声が続きます。
鮮やかな五色の組み紐で編まれた釜敷に惹きつけられました。
あとで淡々斎の箱書を拝見すると、記念とだけありましたが
何の記念か、謎だそうです。
薄茶と干菓子を美味しく頂戴し、
N先生のおもてなしを深く心に刻んでお暇しました。
ご亭主さま、お正客さま、ご同席の皆様、有難うございました。
Nさんと共に過ごした、神無月の優雅な一会でした・・・。
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