ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

大学などの技術移転状況を調査した単行本「大学技術移転サーベイ」が発行されました

2011年06月10日 | イノベーション
 一般社団法人の大学技術移転協議会が執筆・編纂した単行本「大学技術移転サーベイ 大学知的財産年報2010年度版」が社団法人発明協会から、このほど発行されました。

 この単行本の前書きに「わが国の大学などにおける技術移転の状況を調査分析した」ものが中身と説明されています。技術移転」「知的財産」などの小難しい専門用語が入っている専門書のような単行本だけに、書店などでも一般の方の目に留まる可能性はあまり高くないようです。でも、一般の方にとっては将来の仕事をつくり出してくれるという点で、影響を与える可能性を秘めた中身になっています。



 最近は、電機や自動車などの産業分野では日欧米や韓国、台湾、中国などの企業が国際市場で激しく競合しており、電機や自動車の事業分野では企業が自分で基盤技術の研究開発にヒト・モノ・カネなどの資源を投入する余裕を失っています。この結果、将来の新規事業を起こすネタ不足に陥っています。

 企業が基盤研究開発に精力をかけられなくなり、ヒト・モノ・カネなどの研究開発資源を既存事業の競争力強化に振り向けています。競争に勝たなくては、企業が存続できなくなるからです。この結果、革新的な新規事業起こしの技術シーズを大学や公的研究機関の研究シーズから見いだそうという機運が高まり、大学や公的研究機関から産みだした研究シーズの技術移転を受けようという機運が高まっています。

 企業は大学や公的研究機関(例えば産業技術総合研究所など)などの研究開発成果から産まれた知識や特許などを導入する“技術移転”を受け、この技術シーズを基に新規事業起こしを図ることを考えています。こうした成功事例で有名なのは、任天堂のゲームソフトウエア「「脳を鍛える大人のDSトレーニング」です。



 東北大学未来科学技術共同研究センターの川島隆太教授(当時の所属先、現在はスマート・エイジング国際共同研究センター(SAIRC)の教授です)の研究成果を技術移転して生まれたゲームソフトウエアの通称「脳トレ」は大ヒットしました。2005年の話です。

 単行本「大学技術移転サーベイ」に「2010年度版」入ってることから分かるように、毎年、今ごろに発行され、各年度ごとの“大学技術移転”の実績が分かるように報告されたデータ集であり、解説書でもあります。2007年から毎年発行され、各年度の技術移転実績を報告しています。

 日本の大学の中で、産学連携に熱心な大学は承認TLO(技術移転機関)という組織を1998年から設けました。文部科学省と経済産業省から支援を受ける“承認TLO”は現在、42機関あります。2010年度版は、こうした承認TLOは平均17.9人で運営されているとのアンケート調査結果を示しています。突出してTLOのスタッフ数が多い産業技術総合研究所系の認定TLOを除くと、平均11.3人となってます。

 最近の技術移転実績として大阪大学の「白血球の全タンパク質を簡便・迅速に抽出する技術」などを紹介しています。この技術移転先は深江化成(神戸市)です。

 まだ読み始めたばかりで、全貌はまだつかんでいません。大学や公的研究機関の技術移転の実績を読み込んでみたいと思います。日本の将来の新規事業起こしの可能性を読み取ってみたいと思います。