ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

夏野教授は「iモードの登場がスマートフォンの普及を早めた」と分析しました

2011年06月04日 | 汗をかく実務者
 慶応義塾大学教授の夏野剛(たけし)さんは、日本市場の携帯電話機がスマートフォンに代替していく現状を予測していたようです。“携帯電話機”のような小型携帯機器がWebサイトなどのインターネットと接続できることで、利用可能になるサービスビジネスを考え続けていたからです。もちろん、いくつかのIT企業の取締役などとして、現在でも考えています。

 夏野さんは現在、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科の特別招聘(しょうへい)教授です。夏野さんは、NTTドコモ(エヌティーティードコモ、東京都千代田区)がiモードサービス(携帯電話網を使って提供するインターネット接続サービス)を始めた時の「マルチメディアサービス部長」として有名な人物だと、6月2日の当ブログでお伝えしました。

 神奈川県藤沢市の慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で開催された、慶応藤沢イノベーションビレッジ(SFC-IV)設立5周年記念セミナー「革新的起業 起業家精神が未来を創る」に登場し、パネルディスカッションのコメンテーターを務めました。



 身振り手振りを交えて、分かりやすく伝えるように、務めています。

 このセミナーの参加者は100人を超えました(参加者数の実数は発表されていません)。参加者の半数以上は学生です(多くがたぶん慶応大学の学生です)。夏野教授の日ごろの授業での発言内容が魅力的なことや、単行本「1兆円を稼いだ男の仕事術」(2009年、講談社発行)や「グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業」(幻冬舎発行、2009年)などの著者を見たいなどの動機で多数集まったようです。

 夏野さんは早稲田大学を卒業後に入社した東京ガスの社員時代は、「Macオタクとして、初期のインターネットを楽しんでいた」そうです。その後、同社を退社し、1993年に米国のペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクールに入学します。この時の授業で「インターネットを利用したビジネスを考えるという課題がでて驚いた」そうです。1994年は米国のネットスケープ社がブラウザー「Netscape Navigator」を提供し始めた時期です。パソコンマニアが楽しんでいたものを、同大学院では「すぐにビジネス化を検討していたことに衝撃を受けた」と語ります。これが、後のiモードサービスに結びつきます。

 同大学院のMBA(経営学修士)を取得した1995年に帰国し、インターネットサービスプロバイダ(ISP)支援システム事業を手がけるハイパーネット社、に、最初は社外ブレーンとして参画します。後に同社の副社長に就任します。今回も「一度、ITベンチャーをつぶしているので」と語り、起業の困難さを体験した者として、創業後の難問山積に対する心構えを説きます。

 セミナーに参加している学生の多くは「効率のいい創業の仕方を教えてください」という“幼い質問”を問いかけます。これに対して、コメンテーターの夏野教授やパネリストのITベンチャー企業の創業者4人は「社会を良くする解を追究するという姿勢が大切」と答え、解には苦労してたどり着くものであり、起業に対する王道はないと説きます。



 こうしたITベンチャー企業の創業者の助言を直接聞ける点が、慶応大学湘南藤沢キャンパスで学ぶ学生の有利さです。

 ペンシルベニア大学経営大学院で新技術をビジネス化することの重要性を学び、ITベンチャー企業の起業を体験したことが、その後のNTTドコモでのiモードサービス事業化の成功として花開きます。米国でMBAを取得した優れ者でも、失敗から学んで成功にたどり着いたことになります。iモードサービスの事業化では「パソコンとの互換性の高いCompact HTML仕様の採用にこだわった」という逸話があります。

 夏野さんは「おサイフケータイ」事業の立ち上げに成功したことが、インターネットのビジネス化の成功例と自己評価しています。
 
 今回のパネルディシカッションでのコメントとして、「iモードサービスの登場が、携帯電話機とインターネットを接続する発想となり、これが現在のスマートフォン登場を早めた」と解説します。夏野さんは米国アップル社の「iPhone」の完成度の高い仕様に驚いたと噂されています。今回のコメンテーターとしての発言を聞いて、夏野さんはiPhoneを超える小型携帯機器の開発を考えているように,想像しました。