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主人公はロカンタン。特にその身の上が詳しく述べられているわけではないが、分かっていることは、彼は30歳であり、ド・ロボンヌ侯爵という18世紀にいた人物の史的研究をする人物であるということである。
歴史的には、antiquary(アンティカリー)という研究史性に属するといえるのであろう。これは、必ずしも、専門職についていなくても、古物趣味などがあり過去への回帰を試みるような研究姿勢であるといえる。
これを現在的視点から見ると彼は、おそらく今でいうニートという存在に近いのかもしれない。
彼は歴史上の事物を研究している。しかし、特に大学などの研究機関に属したりするというタイプのいわゆる雇用されているという形での研究者というようには思われない。
今は、若者が没頭するものとしてインターネット、出会い系、チャットなどに対して描かれるであろうところが、時代背景もあり、書物に没頭したり、執筆に従事しようとするが身が入らないといったような姿に投影されているのであろう。
つまり、サルトルに自体は、その意図はなかったかもしれないが、人生ということに対して思弁をめぐらす結果、実存という不条理さに思いをめぐらし、徐々に孤独に陥っていくというベクトルはおよそ現在でのニートもしくは、社会的引きこもりというものに近似するといえる。
時代と作家サルトルの個性して、引きこもるというよりは、カフェで読書、執筆をする。もしくは、カフェで出会った女性と情事を起こすというような形になっているのであろう。
その程度差こそあれ、ロカンタン少年は今を生きる若者と同じく、人生における不条理さに追従されているといえるのではないだろうか。
(このことは、後に希望格差についての箇所で詳述)
まず、ロカンタン少年と創作について見て見たいと思う。
創作とは冒頭でも述べたように、ド・ロボンヌ侯爵に対する書物を書き上げようとすることだ。
彼の創作に関しては、①カフェ②図書館という場所が重要になる。
それぞれ創作をするという場所に加えて次のような性格があるといえる。
①カフェ
:避難場所としての性格
→自然という溌剌としたものからの避難
→他者との緩やかのコミュニケーションがとれる場として
→マダムとの性的関係を再帰する場所として
*このカフェについては、後に実存観との関連で詳述
②図書館
:純粋制作意欲を書き立てる場所として
→これは、独学者という男との会話などを含む。
ここからは、実存と嘔吐ということについて見ていきたいと思う。
(次に)