ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ミステリアスなベルジュラックワイン【前編】

2012-08-06 18:46:52 | ワイン&酒
2011年10月に仏ベルジュラックワイン委員会主催のプレス向けセミナーがあり、その講師を(社)日本ソムリエ協会の前会長だった 故・小飼一至(こがいかずよし)さんが務められました。


故・小飼一至さん (2011年10月撮影)

小飼さんは2012年3月に急逝 されましたが、亡くなる前に私が最後にお目にかかったのがこのセミナーでした。この日は体調を崩されていて、お話をされるのが辛そうでしたが、まさかこの5カ月後に急にお亡くなりになるとは思いもしませんでした。

ベルジュラックワイン については、私も以前、雑誌記事を書かせていただいたことがありますが、この時に小飼さんから伺ったワインと料理とのマリアージュのお話を皆さんにもお伝えしたいので、あれから時間が経ってしまいましたが、ここで紹介したいと思います。



ベルジュラック はフランス南西部のドルドーニュ川の流域に広がる地域で、ボルドーの東に位置しています。

大西洋から約100km上流がベルジュラック地区の西端モンラヴェル(Montravel)です。
よって、モンラヴェルは海の影響を受け、その西のボルドーのサン・テミリオン地区と気候的に近くなります。
その他の地域は大陸性気候になり、平均気温は暖かく、夏は暑く、冬が短く、降雨量はサン・テミリオン地区よりも少なくなります。

土壌は粘土質と石灰質が主体で、一部は石灰粘土質、砂混じり粘土質となります。

ベルジュラック地域の畑面積は12,600ha(参考:アルザス地方は約15,000ha)。
アペラシオンの数は13あり、辛口白ワイン、赤ワイン、ロゼワイン、甘口白ワインの4タイプを生産しています。

アペラシオンが13もあるなんて覚えきれない・・・と諦めないでください。
大きくは6つ に分けられ(ベルジュラック、モンラヴェル、ペシャルマン、ロゼット、モンバジャック、ソーシニャック) 、しかもそのうち3つが甘口のAOCなんです。

甘口白ワイン
ベルジュラック地域の甘口・半甘口ワインは、主にセミヨン種によってつくられます。
AOC Rosette (ロゼット)  *半甘口
AOC Monbazillac (モンバジャック)
AOC Saussignac (ソーシニャック)



ベルジュラック地域の周辺、ペリゴール地方は、ジビエ、フォアグラ、バスク豚、黒セップ茸、トリュフ、クルミ、イチゴ、プラムなど 美食の宝庫


ベルジュラックの甘口ワインとのお勧めマリアージュに フォアグラ は外せません

もう少し内陸に入ったところでつくられているブルーチーズ(ロックフォール、ブルー・デ・コースなど)、イチゴなどを使ったフルーツタルト、フルーツのサラダ、白身肉、ソースを使った料理にもマッチします。


Seigneurs de Monbazillac 2008 Chateau de Monbazillac
(輸入元:ロイヤルリカー株式会社、参考上代:2,000円)

半甘口タイプ。白桃のようなニュアンスとデリケートな酸をもち、やさしい甘さのワインです。

小飼さんのお勧めマリアージュは、フォアグラのパテ、鴨肉、ロックフォールチーズ、イチジクやアンズのタルト、中華のゴマ団子、酢豚、おせち料理、鯉の甘露煮など。

「ボルドーより軽く、貴腐が少なく、うまい具合にソフトで利用価値がある。2,000円という価格は他より安い。(ボルドーに)片寄ってはいけない」とのアドバイスがありました。

たしかに、ボルドーの甘口ワインは非常に高価で、なかなか手が出ません。
これくらいの価格帯であれば、また、小飼さんのお勧めマリアージュを見ると、思ったよりも手軽に使えそうな気がしてきますよね?

ベルジュラックの甘口、覚えておいて損はありません



その他に、ベルジュラック、モンラヴェル、ペシャルマンがあり、甘口も3AOCが含まれています。

Bergerac
AOC Bergerac Rouge
AOC Bergerac Rose  *唯一のロゼ
AOC Bergerac Sec (Vins blanc sec)
AOC Cotes de Bergerac (Vins rouge)

甘:AOC Cotes de Bergerac (Vins blanc doux)

Montravel
AOC Montravel (blanc)
AOC Montravel (rouge)

半甘:AOC Cotes de Montravel (Vins blanc doux)
半甘:AOC Haut-Montravel  

Pecharmant
AOC Pecharmant (rouge)



“ペシャルマン”は赤のみ なので覚えやすいでしょう。
“モンラヴェル”も辛口の白赤+半甘口なので比較的覚えやすいですが、“ベルジュラック”は辛口白ロゼ赤+甘口のフルラインナップで、名前も少々紛らわしいので、ちょっと注意が必要です。

ベルジュラックワインの使用ブドウ品種はボルドーと同様

セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデル
ロゼカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、シラー

ワイン(辛口):主にソーヴィニヨン
柑橘系のアロマに富み、フレッシュで力強いアタック、フルーティで香り豊か

ワイン(半甘口、甘口):主にセミヨン
黄金を帯びた黄色。砂糖漬けフルーツ、フルーツ、スパイス、花のアロマに満ち、味わいは豊満でリッチ。

ワイン
比較的濃く深い色調。赤いフルーツ、カシス、プルーンのアロマがあり、腰のある力強い味わいが特徴。中でも、以下のAOCワインは選ばれたテロワールからつくられ、樽で熟成させるものが多い。
AOC Cotes de Bergerac、AOC Montravel、AOC Pecharmant


まだまだ続きます →【後編】(明日アップします)

コメント (2)
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