昨日までは、低アルコールドリンクのことを書いていましたが、
本日は日本のクラフトジンとクラフトウォッカの話題です。
岩手県北部の二戸市にある日本酒の酒蔵「南部美人」(南部美人株式会社)が、1902年の創業から119年めとなる今年、日本酒の蔵元として初となるクラフトジンとクラフトウォッカを生産し、2021年8月18日から先行販売します。
8月18日に記者発表会があり、リモート取材しました。
「南部美人」は世界55カ国に輸出もしているグローバルな日本酒の酒蔵です。
それが、どういう経緯でジン、ウォッカを造ることになったのでしょうか?
南部美人の久慈浩介社長によると、きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だった、といいます。
南部美人 久慈浩介社長
昨年、新型ウイルスの感染拡大で消毒用アルコールの需要が激増し、なかなか買えなくなってきたことから、蔵元として消毒用アルコールを提供しよう!ということになりました。
消毒用アルコールは醸造用アルコールから造ることができますので、消毒用アルコールを提供しよう、という件に関してはクリアできました。
しかし、新型ウイルス感染拡大は、別のところにも大きな影響を及ぼしました。
それは、飲食店でのアルコール提供自粛や時短営業です。
飲食店でアルコールが提供できなくなるということは、アルコールの販売量が減るということで、それは生産現場の蔵元だけでなく、日本酒の原料となる酒米契約農家にも影響が及ぶということです。
現実に、「酒米余り」が起きました。
そこで、酒米農家を救うため酒米でも消毒用アルコールを造り、そのための蒸留所も造ろう、と考えましたが、消毒用アルコールのためだけに蒸留所を造るのでは事業として成り立ちません。
消毒アルコールを製造するための「スピリッツ」の免許で同じく製造できるアルコール飲料ならば、消毒アルコールをつくり続けながら、酒蔵本来の仕事ー楽しんでもらうためのアルコール飲料がつくれるのでは?と、酒米でつくったライススピリッツをベースアルコールとしたジンとウォッカの製造に取り組むことにしました。
蒸留所は、二戸市下斗米にある「馬仙峡蔵」の敷地内に新たに設け、2021年2月にはスピリッツ製造免許を取得しています。
酒米は、地元の「ぎんおとめ」という品種がメインで、この酒米を仕込み、蒸留したライススピリッツが、ジン、ウォッカになります。
「コロナがなかったらやらなかった事業」と、久慈社長。
いま、日本の国産クラフトジンはあちこちでよく見ますので、かなりの数があるんじゃないでしょうか。
国産ウォッカはあまり聞きませんが、調べてみると、大手のサントリーで出していました。あとは数社程度?と、少ないようです。
南部美人のウォッカは、岩手県初だそうです。
南部美人は岩手県の酒蔵ですから、ジンとウォッカには岩手県のエッセンスが加わっています。
ジンはジュニパーベリーをはじめとしたボタニカル類を加えますが、南部美人のクラフトジンには、地元二戸市の特産品で、日本一の生産量を誇る浄法寺の「漆」(うるし)が使われています。浄法寺の漆は、今年、文化庁の日本遺産に認定されました。
漆をジンに使うのは初めてだそうです。
ご存じのように、漆に直接触るとかぶれます。
そこで、南部美人では、漆の木材を一度あぶって使います。
あぶることで、スモーキーさ、香ばしさが出ます。
漆を使って蒸留したジンと、ほかのボタニカルのジンは別々に蒸留し、後でブレンドしています。
ウォッカは、二戸市の隣にある久慈市特産の白樺の「炭」(活性炭)で濾過しています。
この白樺は久慈市平庭高原のもので、これも日本一の生産量を誇る炭だとか。
ウォッカの国際ルールでは、白樺の炭で濾過することが求められています。
岩手県北部の二戸市と久慈市の特産品を使い、岩手でしかつくることができない、「岩手のテロワール」を意識した新商品として、「南部美人」の「クラフトジン」と「クラフトウォッカ」が誕生しました。
初回生産の限定版は「ザ・ファーストロット」として、ジン・ウォッカ各2021本が発売されます。
ファーストロットの製造番号は、久慈社長が手書きで記入します。
南部美人 クラフトジン ザ・ファーストロット
容量:200ml 希望小売価格:11,000 円(税込)
アルコール度数:60 度
南部美人 クラフトウォッカ ザ・ファーストロット
容量:200ml 希望小売価格:11,000 円(税込)
アルコール度数:60度
各0001番の商品は、9月23日に開催されるシンワオークションに出品予定。
ジンの落札額全額は二戸市に、ウォッカの落札額全額は久慈市にそれぞれ寄付し、漆の木や白樺の植樹などに使ってもらう予定だそうです。
0002番以降のザ・ファーストロットについては、8月18日より、南部美人の公式オンラインショップで先行販売中です。
二戸市にある蔵元の直営ショップでも販売しています。
ザ・ファーストロットは限定品なので、価格が11,000円となっていますが、次のレギュラーロットからは、アルコール度数が45度になり、価格も手頃になります。
ジンは、700mlサイズ4,300円、200mlサイズ1,650円
ウォッカは、700mlサイズ3,900円、200mlサイズ1,350円
試しやすいサイズと価格の200mlがあるのは嬉しいですね。
今回、ザ・ファーストロットと同じアルコール60度のジンとウォッカを試飲できました。
オススメの飲み方は、氷を入れたロック。
ジンはボタニカルの香りがとても豊かで、ジン好きの私としては、香りを嗅いだだけでうっとり~
口にしても、ボタニカルの風味が濃厚に広がります。
濃い、と感じたら、炭酸水を少し入れてもいいと思います。
ウォッカは、私はふだんは飲まないので、香りがないものだと思っていました。
が、ほのかにお米の香りがする!
ピュアで透明感のある味わいですが、よくよく探ると、ほのかな甘みがあります。
お米を原料としているからでしょうか。
ジン、ウォッカとも、それぞれ単独で飲めますが、カクテルにもできますし、
「ぜひ料理と合わせて飲んでほしい」、と久慈社長。
盛岡市内で行なわれた記者会見場では、それぞれに合う料理が出されました。
ジンは、岩手県産イワナのコンフィ ライム香るラビゴット、ハーブのサラダ添え
ウォッカは、八幡平杜仲茶ポークの軽い煮込み&八幡平サーモンマリネ 2種のブリヌイ
ジンは、代表カクテルにジンライムがありますので、ライムを使うのはいいかも。
ウォッカの故郷ロシアでは、ウォッカにキャビアを合わせますが、ワインでは合いにくい魚卵はウォッカに良さそうです。
料理とのマリアージュは、さまざまな可能性がありそうですね。
南部美人は海外にも輸出をしている蔵元です。
そこで、新発売のジンとウォッカも両商品とも「ヴィーガン」の国際認定を取得し、海外に多いヴィーガンの方(完全菜食主義)にも対応できるようにしました。
日本で製造されるジン、ウォッカの中では、初めてのヴィーガン国際認定取得だそうです。
1年目は、北米・欧州など全世界へ、700ml サイズで 5000 本〜1 万本の輸出を予定しています。
ザ・ファーストロットは販売が限られていますが、次のロットからは一般流通で販売するとのことでしたので、この秋以降、身近な店で出合えそうです。
ザ・ファーストロットが欲しい方は、ぜひ南部美人のHPで確保してください。
南部美人
https://www.nanbubijin.co.jp/