今週は、
ブルゴーニュワインをテーマにリポートしています。
本日のテーマは、ブルゴーニュ北部に位置する
Chablis シャブリ。
シャルドネからつくられる白ワインの産地です。
遅ればせながら、昨年、シャブリのワークショップが、ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)の主催により都内で開催されましたので、リポートします。
ガイド役は、ソムリエでワインテイスターの
大越基裕さん。
会場内は、青いロングカーペットをシャブリを流れるセラン川に見立て、右岸と左岸のそれぞれの位置にシャブリの
1級畑、特級畑の写真を置いています。
写真の向きがあちこちなのは、畑の向きと合わせているからです。
特級畑は1か所に固まって存在しています
シャブリ委員会のベルナール・レグナンさん
シャブリといえば、フランスのブルゴーニュ地方の北部の白ワインの産地です。
その名前はあまりにも有名となり、アメリカで「カリフォルニア・シャブリ」と名付けられたワインが堂々と登場し、その後、原産地呼称保護の動きが起こることになるわけです。
今回は、シャブリ1級の個性&魅力を探ることがテーマでした。
シャブリの
1級畑は40もあります。
それらを分類し、統括すると、それでも
17にもなります。
さすがに、そこまで細かくは紹介しきれませんので、代表的ないくつかに絞って紹介されました。
まず、
川の右岸、左岸によって大きく分けられます。
右岸は少し粘土質が多い土壌で、、ワインに豊かさと力強さを与えてくれます。
南向き、南西向きの畑が多いので、ブドウの熟度が上がりやすくなります。
左岸は東、北向きの畑が多くなりますが、斜面の角度によってさまざまな方向を向きます。
斜度の強さによって表土の薄い厚いがあったり、風の通り道がどうなっているか、など、さまざまな条件により、右岸の中でも、左岸の中でも、さまざまなテロワールがあり、シャブリ1級の畑は非常に複雑だなぁと思います。
シャブリで特徴的な土壌は
“キンメリジャン土壌”です。
約1億5千万年前のジュラ紀後期に遡る地層で、かつて海だったところに堆積物がたまってできました。灰色の泥灰土の土壌が石灰層と交互に現れ、小さな牡蠣などの化石が見られることがあります。
キンメリジャン土壌は、
ワインにピュアな味わい、ミネラル感、フィネスを与えるといわれます。
さて、いよいよテイスティング。
【左岸】 Vaillons 2015 / Montmains 2015
ヴァイヨンと
モンマンは東西にほぼ隣り合う1級畑です。
西側のヴァイヨンは南東向きの丘陵にあり、少し暖かいテロワールで、表土は粘土質。
東側のモンマンは南東から北東に伸びる地形で、北風を受ける涼しいテロワールになり、浅い粘土質の表土の下にキンメリジャンの泥灰土があります。
飲んでみると、ヴァイヨンの方がフルーツのリッチさがあり、モンマンの方が軽快で繊細、洗練された感じがあります。
どちらも2015年と若いので、酸がフレッシュで、イキイキとしていますが、暖かい畑と冷涼な畑の違いがよくわかりました。
【左岸】 Beauroy 2015 / Vau de Vey 2014
ボーロワは左岸の一番北の南東向き急斜面にあり、乾燥した東風を受け、表土もやせて乾燥していますが、日照に恵まれるため、少し暖かいテロワールです。
ヴォー・ド・ヴェイも南東向きで、朝の日照を受けますが、涼しい風が吹き、厚いキンメリジャン土壌であることから、涼しい気候になります。
ボーロワは、キリリとしたミネラルの厚み、塩気、石のニュアンスを強く感じました。ボディはかなり骨太に感じます。
ヴォー・ド・ヴェイは、本来は繊細でエレガントな味わいだと思いますが、この時に飲んだワインはゴマのような独特の風味があり、果実の豊かさ、ほわっとした印象がありました。年の違いなのか、生産者の個性なのか、なかなか興味深かったです。
【右岸】 Fourchaume 2015 / Vaupulent 2015
右岸を代表する1級畑のひとつが
フルショーム。右岸北部に位置し、スラン川に向けて斜面が開けている明るい畑で、午後の光をよく浴びます。土壌は、小石の少ない厚い粘土質。
ヴォーピュランはグランクリュのプレリューズと隣り合う位置にあり、南西向き斜面です。表土は粘土石灰質が主で、その下にキンメリジャンの泥灰岩。
フルショームは、フローラル系やカリンなどのアロマが華やか。味わいはふくらしているが、とても繊細でキレイな味わいで、上品です。バランスよく、おいしい。さすがです。
ヴォーピュランは、桃っぽいふっくらした甘みがあります。フルーツの厚みとミネラルの引き締まりが心地よく、これもおいしい。
この
ヴォーピュランと、次に登場する
ヴォーロラン(Vaulorent)は、フルショームのグループに入ります。
上の右のエチケットをよく見ると、下の方にFOURCHAUMEと大きく書かれていて、真ん中にLes Vaulorentと書かれています。
同じグループなので、知名度の高いフルショームの名前を出してもOKなんです。
こうしたグループは、傾向の近いワインということなので、お店であれば、同じグループのワインをワインリストに載せるのではなく、別のものをオンリストする方が幅が広がります。
逆に、個人ベースで楽しむなら、同じグループのシャブリを並べて飲み比べる、というのは、なかなか面白いかもしれません。
【右岸】 Vaulorent 2015 / Montte de Tonnerre 2014
フルショームグループの
ヴォーロランは、グランクリュの集まる丘の続き、つまり、グランクリュのはしっこにあります。白い泥灰岩とキンメリジャン土壌で、水はけよく、豊かさと引き締まった感じを併せ持つワインになります。
モンテ・ド・トネールは西向きの畑で、表土は深くなく、土壌はキンメリジャンの泥灰質石灰層になります。シャブリの典型的なクリマで、ミネラル感とリッチさを併せ持つワインになりますが、フルショームほどはリッチではありません。
ヴォーロランを飲むと、繊細で線の細さを感じますが、果実味はよく熟しています。少し冷たさのあるミネラルも感じました。
モンテ・ド・トネールは、透明感があり、洗練されていて、クールでエレガント。バランスいいです。
キリリとした酸を特徴とするシャブリは、若いうちにイキイキとしたフレッシュ感を楽しむのもいいですが、
1級や特級クラスのものは、熟成させて楽しむのもオススメです。
食事との素晴らしいマリアージュも楽しめるはずです。
この時は、2010年と2008年ヴィンテージが紹介されました。
【左岸】 Cote de Lechet 2010 【右岸】 Vaillon 2008
熟成した1級は、なめらかさ、クリーミーさが現れ、若いシャブリと違った個性を見せてくれます。
ヴァイヨンは2015年のものと比べると、キャラメルやカフェオレのニュアンスが出てきて、うまみ、複雑味が乗り、余韻も長い~
右岸、左岸、さらにはそれぞれのクリマの違い、熟成の度合いと、シャブリ1級ワインは、かなり色々な楽しみ方ができそうです。
シャブリの輸出先NO.1はイギリス(30%)。いかにもイギリス人が好みそうなスタイル。
第2位は8%の日本、同率でスウェーデン、アメリカ。
日本はシャブリにとって重要な市場なんですね。
日本では、40、50年前のレストランのワインリストの白ワインのコーナーには、必ずやシャブリが載っていたと思います。
その頃は、シャブリはワインリストの主役のひとつでした。
しかし、世界各国から数多のワインが集まってくる現代では、「とりあえず、シャブリはどれかひとつ載せておけばいいか…」みたいな選ばれ方をしていそうです。
ですから、今の若い世代の人にとっては、シャブリは、名前は知っているけれど、実はあまり飲んだことがないワインかもしれません。
もはや、シャブリは、ノスタルジーを感じさせるワインかもしれませんが、フランスの伝統産地ブルゴーニュのひとつという、重要な存在です。
せっかくですから、これを機に、シャブリのワインを思い出してみませんか?
中央は、ブルゴーニュワイン委員会 マーケティング・コミュニケーション責任者フランソワーズ・ルールさん。
最後にブルゴーニュ伝統の歌と踊りを披露してくれました。