現在、
ニュージーランドは国、ワイン産業全体を挙げて、
環境に配慮した継続可能な(sustainable)、自然なワインづくりに力を入れています。
NZ北島、オークランドの北80kmに位置する
Matakana(マタカナ)で、弁護士の
ジェイムス・ヴルティッチ氏(1944年生まれ)が1990年に立ち上げた
“Providence”(プロヴィダンス) も、化学肥料、除草剤、SO2を使わないワインづくりを行っています。
クロアチアから移民としてやってきた両親がオークランドの北の海岸近くでワインづくりをしていた影響を受け、ジェイムスとペーターのヴルティッチ兄弟は、1970年代後半に
The Antipodean vineyard をマタカナの地に立ち上げました。
そこでは
カベルネ・ソーヴィニヨンをベースにした、仏ボルドー第1級のシャトー・ラトゥールのようなスタイルのワインを目指していました。しかし、兄弟喧嘩で決裂。そこで、ジェイムスは自身のプロヴィダンスを立ち上げた、という経緯があります。
The Antipodean とは数キロしか離れていない場所にProvidenceはあります。
The Antipodean の場所ではカベルネ・ソーヴィニヨンが熟しにくかったことから、Providenceでは、あの有名な
Petrus (仏ボルドー、ポムロル)のような、偉大なメルロのワインをつくりたい! とジェイムスは考えました。
最初がシャトー・ラトゥール、次がペトリュスと、超一流の名前が出てきます
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kirakira.gif)
というのも、
フランス以外の場所で最高のボルドースタイルのワインをつくりたい!という高い理想が、ジェイムスにはあったからです。
わずか2haの畑、醸造所も仮小屋のようなところから、彼のワインづくりは始まりました。
Providence のファーストヴィンテージは
1993年です。
ニューワールドワインの中でも、NZワインは価格的にやや高めが特徴ですが、その中においても、Providenceは185NZドル(2002年頃の資料で確認)という
超高価格ワイン(2012/2/22現在のレートは1NZD約75円)です。
Providenceの名が日本でも知られ、騒がれるようになったのは、
徹底したボルドーコンセプトの高品質ワインへの興味もあったと思いますが、
NZワインで最も高価格だったこともあるでしょう。
20世紀から21世紀に移り変わる頃が、最もこのワインが飲まれた時代でしょうか。
現在、若いワイン愛好家の中には、Providenceの存在を知らない人もいるかもしれませんね。
先日、そんなProvidenceを、しかも熟成の進んだ
1998年 を飲む機会がありました
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/5e/5fd703c5e34fbfb38902da1b836ac533.jpg)
左)
Providence MATANAKA Merlot Cabernet Franc Malbec 1998
右)
Providence MATANAKA Syrah 1998
左が、
メルロ、カベルネ・フラン、マルベックをブレンドしたワインで、これが基本となります。
色調は思ったよりも明るく、若々しい外観をしています。香りはカベルネ・フランを強く感じ、熟成感も漂います。しかし、九日含むと酸が非常にイキイキとして軽快で、まだまだ若い!もう少し寝かせておきたいですね。
アルコール12.5%とは意外な数値です。軽快でエレガントさを感じるのは、ライトなアルコール度数ということもあるのでしょう。ガツンと濃厚タイプではなく、バランスを取り、フィネスを感じさせるタイプのワインだと思いました。
右は
シラー100%。オーストラリアのシラーズではなく、
南仏ローヌのシラーのようなスタイルを目指していると、以前来日したジェイムス氏から聞きました。
香りはシラー独特のスパイシーさがあり、少々薬っぽいニュアンスも加わり、ミント、ハーブ、そして甘いアロマもどんどん出てきます。
こちらもガツンというパワフルさはなく、タッチがとてもデリケート。アルコールも12.5%。一緒に飲んだ人たちから、少々物足りないかな?ボトル差があるのでは?という声が上がりました。
ジェイムス・ヴルティッチ氏 (2008年の来日の際のショット)
この他のラインナップでは、
シラーブレンド(+カベルネ・フラン、メルロ、マルベック)の
Providence Four Apostles (2005年から)、
カベルネ・フラン主体でつくる
Privete Reserve などがあります。PRは、ボルトーはサン・テミリオンのシャトー・シュヴァルブランを意識しているようです。
2008年に取材した時、彼は
「飲んでおいしいワイン、1杯飲んだらまたもう1杯飲みたくなるワイン、食事と合わせておいしいワイン、エレガントで、アルコールを感じず、フェミニンだけれど隠れたパワーがあるワイン、調和の取れたワインを目指している」と語っていました。
今回1998年のワインを飲み、彼の言葉を今一度振り返ってみると、なるほどね、と、納得。
では、最近のProvidenceはどうなっているでしょうか?
相変わらずいいお値段で、やはり今も人気は高いようですね。
飲み方ですが、ジェイムスによると、
良い年、例えば2005年のPRなどは012年頃から実力を発揮し始める とのことですから、
時期を見極めて開ける ことをお勧めします。
1998年が今飲んでもまだちょっと若い、と思ったくらいですから。
とはいっても、いつが最高の飲み頃か?は、いつも判断しにくいものではありますが(笑)