「シャトー・メルシャン」の甲州ワインの新ヴィンテージ(2011年)の発表会の際、
甲州ワインを楽しむのにピッタリの料理レシピの提案がありました。
それは
塩麹を使った料理 です。
以前なら、塩麹って何?というほど知られていないものでしたが、昨年大ブレイクし、今や誰もが知る存在になりました。
塩麹 の原材料は
米麹、塩、水ですが、米麹の大元は麹種になります。
麹種は酒造りには欠かせないもので、うまい酒をつくるには良い麹種をつくる必要がありました。
室町時代初期(約600年前)にはすでに麹種を専門につくる種麹屋があり、その中のひとつの店が今も残っているといいますから、たいしたものです。
種麹は日本酒だけでなく、味噌、しょうゆ、焼酎、みりん、米酢などをつくるための麹の材料に不可欠な、日本の食文化を支える微生物の塊。
上記はおなじみの発酵食品、調味料ですが、塩麹の名前はほとんど耳にしませんでした。
塩麹は江戸時代からつくられていましたが、しょうゆや味噌など、美味しいものが出てきたため、一時消えてしまったようなのです。
消えたといっても、どこかで細々と受け継がれてきたのでしょう。
それが現代でこんなに人気が出るとは、昔の人は驚いているでしょうね(笑)
今回、この
塩麹を使った料理レシピに甲州ワインを合わせるとピッタリ! という提案がメルシャンから出され、検証を行ないました。
プレゼンテーターは、
発酵料理研究家・管理栄養士の舘野真知子(たてのまちこ)さんと、
シャトー・メルシャン ワインメーカーの生駒 元(いこまげん)さん(醸造部長)。
左)舘野真知子さん 右)生駒 元さん
「塩麹には麹由来の吟醸香があり、甲州ワインにも発酵由来の吟醸香があるが、海外のワインには吟醸香は表面に出ていない。甲州はアロマがおとなしいので吟醸香が出やすいと思われる。また、甲州はニュートラルで、甲州自体にうまみはないが、塩麹と合わせることでうまみが引き出されると仮説を立てた」と生駒さん。
「塩麹をチリワインに合わせてみたところ、ワインが華やかすぎて合わず、日本酒だとちびちび飲む感じ、甲州ワインを合わせたらスイスイ入ってきたんです」と舘野さん。
ワインと塩麹は、どちらも発酵というプロセスでつくられるもの。
麹を使って発酵させる日本酒は確実に塩麹に合いそうだと思いますが、甲州ワインにも炊いたご飯的な風味を感じることがあるので、甲州+塩麹もイケるかもしれません。
そこで、甲州ワインと塩麹を使った料理を合わせてみました。
合わせたワインは、昨日紹介した4アイテムです。
勝沼のあわ+
塩麹とブラックオリーブのフムス フレッシュ野菜のスティック添え
シャトーメルシャン甲州きいろ香+ハーブサラダニソワーズ
豆腐とゆで卵の塩麹漬け
写真の左側が
フムス(豆をペースト状にした中東の料理)。
茹でたひよこ豆に塩麹、レモン汁、EXオリーブオイル、にんにく、クミンなどを加えてフードプロセッサーにかけ、ペースト状にし、みじん切りにしたブラックオリーブを混ぜ合わせています。
フムスはピタパンで挟んで食べられていますが、ここでは、スティック野菜につけるディップとして、また、全粒粉のパンに載せていただきました。
スパイシのクミンがよく効いていますが、やさしい味のディップです。スティック野菜のみずみずしさと「勝沼のあわ」のじゅわっとジューシーな口当たりがよく合います
写真の右側に盛り付けられているのが、ニース風サラダをアレンジした
ハーブサラダニソワーズ。塩
麹に一晩漬け込んだゆで卵と豆腐がいい味を出しています。ドレッシングにも塩麹を加え(すりおろし人参+レモン汁+粒マスタード+EXオリーブオイル)てありました。サラダの中にグレープフルーツが入っていましたが、これは「きいろ香」との相性を考えたそうです。
フレッシュ感のあるこのサラダは「きいろ香」に合いましたが、塩麹を使ったドレッシングは「勝沼のあわ」にもよく合いました。
シャトーメルシャン勝沼甲州+
鶏手羽と生椎茸のエスニック塩麹ピラフ コリアンダー添え
このレシピでは、味の強いものに塩麹を合わせています。
塩麹はたんぱく質、でんぷん、脂肪を分解する作用があり、この鶏肉の場合、
塩麹に一晩漬け込むことで肉がやわらかくなり、脂肪が低分子に分解され、サッパリ仕上がる とのこと。
フライパンで焼き色をつけた鶏肉を玄米と一緒に炊き込んでいます。味の染み込んだ鶏肉が「勝沼甲州」に合います。しっかり味のついたご飯は「グリ・ド・グリ」に合うのでは?と試したところ、こちらもイケました。
シャトーメルシャン甲州グリ・ド・グリ+
シーフードと玉ねぎのガーリックソテー塩麹トマトソース
塩麹に漬け込んだシーフードと、こげ色がつくまでしっかりソテーした玉ねぎをトマトソースで合わせた一皿。舘野さんによると、トマトは、特に
火を通したトマトは塩麹と相性がいい そうです。
この料理は南仏のブイヤベースをイメージしているということで、南仏のロゼワインを甲州の「グリ・ド・グリ」に置き換えてマリアージュを考えています。くたっとなった玉ねぎは「グリ・ド・グリ」によく合いますね!シーフードは、ホタテと海老は良かったですが、イカは少々臭みが出るように感じました。また、「グリ・ド・グリ」はフムスのディップと合わせても美味でした。
「
塩麹は“うまみ塩”と考えてほしい。塩麹は素材の旨味を上げ、引き出していくので、塩麹を使う料理では、使う調味料の数をそぎ落としていくとよい」と舘野さん。
なお、塩麹はたんぱく質や脂肪だけでなく、でんぷん質も分解する効果があるため、ご飯に混ぜると粘り気がなくなりポロポロになるそうですから、調理の際は要注意です。
他のアルコール類と比較すると、「
甲州ワインには、ハツラツとした酸味に加え、適度なミネラル感、独特の渋みがある ので、
食中酒として楽しめるバランスの良さ があるのでは?」と生駒さん。
甲州ワインオ適度なミネラル分は日本で育った野菜との相性がよく、渋みは油分を洗い流す効果がある上、山菜や野菜のえぐみや苦味成分とも相性がよいこともあるのでしょう。
塩麹を使った料理に合わせて甲州ワインを飲んでみると、すーっと自然に入ってきます。とてもやさしいマリアージュです。
塩麹料理は他のワインとも合いそうですが、おだやかでやさしい味わいの甲州ワインとは本当によくなじみ、どちらもより美味しくなる相乗効果があるように思いました。
塩麹を使った料理とのマリアージュを考える際には、甲州ワインをぜひ覚えておきたいですね
今は、塩麹を手作りする人も多いでしょうか。その場合は、ヨーロッパの硬水はNGで、軟水がよくなじみます。また、岩塩は鉄分が多いので塩麹には合わず、ナトリウムとマグネシウムの配合バランスのよい海塩がいいそうですので、参考にしてください。