昨日は、
第7回「J.S.A.ソムリエ・スカラシップ」の結果速報をお知らせしましたが、本日は決勝の審査内容をリポートします。
このコンクールは、将来、全日本最優秀ソムリエコンクールや世界大会に進出できる若い人材の育成を目的としたもので、27歳以下の方のみが応募できます。
今年は91名のエントリーがありましたが、公開決勝に進めんだのは下記の6名でした。
決勝進出者 (審査順)
近藤佑哉(28)(ホテルニューオータニ東京)※4回目
鈴木友也(26)(くろぎ上海)※2回目
田中叡歩(25)(ホテルニューオータニ大阪)※4回目
渡辺航大(28)(ロオジエ)※2回目
松永文吾(28)(エノテカ株式会社)※2回目
山田琢馬(25)(パレスホテル東京)※2回目
エントリー資格は27歳以下ですが、カッコ内は2018年4月23日時点の年齢です。
審査は一人づつ順番に行なわれ、先に審査を終了した選手だけが、後からの選手の審査を見ることができます。
審査1
グラスに注がれた1種類のワインについてフルコメント。日本語/3分
トップバッターの近藤選手は、仏アルザスのピノ・グリと判断。
ピタリと当てたのは、松永選手。
仏プロヴァンスのロゼと判断しました。
山田選手も、仏プロヴァンスのロゼと判断しました。
左のボトルが正解のプロヴァンスロゼです。
右は、次のサービス実技で登場するシャンパーニュ・デュヴァル・ルロワ。
他に出たアンサーは、日本のシャルドネ、仏ロワールのミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌ・シュル・リーなど。
プロヴァンスロゼは淡いピンク色をしていますが、白ワインと判断する人が多かったのが興味深いですね。色
ピノ・グリのワインはピンクの色調が出ることがあるので、なるほどね。
審査2
透明グラスに注がれた8種について、タイプ、原料、銘柄をコメント。日本語/3分
3番目のグラスは、外観からしてビール。
「常陸野NEST BEER」だとズバリ当てたのは、鈴木選手だけでした。
多かったアンサーが、ヒューガルデンホワイト。
テイスティングは選手の個性が出ます。
1番から順番にテイスティングしていく田中選手。
最初に香りを取り、わかったものからランダムにテンポよく回答を出していく渡辺選手。
ソムリエは、ワインだけでなく、すべての飲料のことを理解、把握する必要があります。
世界レベルのコンクールでは、ワイン以外のアルコール類の出題は必至。ですから、幅広い知識が必要です。
審査3
シャンパーニュ デュヴァル・ルロワ キュヴェ・パリを7人の客に均等に注ぎ切る。
英語/4分
ボトルのプレゼンテーションは済んでいて、グラスもテーブルにセットされているので、抜栓して注ぐだけです。
制限時間内に全員に注ぎ切れない選手がほとんどでした。
というのも、サービスの途中で、シャンパーニュに関する質問が入ってきたからです。
途中の質問を軽くクリアしながら、最後まで注ぎ切ったのは田中選手ただひとり!
抜栓後、ソムリエがワインの状態をチェックするために、「チェックさせていただいていいでしょうか?」と尋ねるシーンがあるのですが、準備の手違いでソムリエ用のテストグラスが用意されていなかった場面が、鈴木選手の時にありました。
これは完全にスタッフサイドの不備。
そんな慌てる状況にもかかわらず、鈴木選手は笑顔でサービスに当たっていました。
ワイン販売店勤務で、通常業務では他の選手ほどはワインサービスをしていないはずの松永選手ですが、英語でのサービスがとてもスムーズでした。
途中で入った質問(英語)は、
デュヴァル・ルロワは日本でどう楽しまれているか?
デュヴァル・ルロワのキャラクターをどう捉えているか?
シャンパーニュの日本市場の可能性は?
シャンパーニュを訪問する機会があったら、何をしたいか?
キュヴェ・パリとフードとの相性例は?
など。
山田選手
ユーモアたっぷりに余裕で答える選手もいれば、上がってしまったのか、語学に自信がなかったのか、なかなか答えられない選手もいました。
質問の途中で時間終了、となった選手も多かったです。
スムーズに抜栓する渡辺選手
サービス実技の際の質問は、国際レベルのコンクールでは必ずといっていいほど入ります。
想定される質問を予測し、英語での回答を用意しておく事前準備が必要になってきます。
近藤選手
なお、サービス手順としては、
抜栓後、ホストに断ってチェックの試飲をした後、ホストにホストテイスティングをしてもらい、OKをもらってからゲストに注ぎます。
ゲストに注ぐ順番は、メインゲストが一番先で、わからない場合は、女性からです。
女性が複数いた場合は、年齢の高い女性から注ぎます。
今回、抜栓したワインのチェックなしに、また、ホストテイスティングも飛ばして、いきなりゲストに注いでしまった選手もいましたが、相当上がっていたようです。
多くの人の目が注がれるステージでも、通常と変わらないサービスができるような訓練は、コンクールでは必須ですね。
審査4
グラスに注がれたワイン1種類を、ワインをほとんどわからないお客様に説明する。
英語/3分
審査5
和牛を使った料理を食べたいお客様に、指定の白ワイン1種類を説明する。英語/3分
審査6
グラスワイン販売を検討しているワインの採用メリットを、上司にプレゼンテーションする。英語/3分
審査4~6は、同じテーブルで続けて行なわれました。
右から順に、審査4、5、6のワインでした
選手たちはそれぞれ一生懸命やっていますが、ポイントずれてるなぁ、と思うシーンが多々ありました。
ワインのテイスティングコメントをいちいち言っても、また、専門用語で説明されても、客としては、「知りたいのはそんなことじゃないよ」です。
酸っぱいワインが苦手な人が気になるのは「すっぱさ(酸)」でしょうし、渋いワインが苦手な人が気になるのは「渋み(タンニン)」の質や強さでしょう。
出されたワインは、いったいどんな性質のワインなのか?
こんな料理に合わせたら、よりおいしくなる。
こんなシチュエーションにオススメ。
といったことが知りたいはず。
でも、それを英語で喋らないといけないわけですから、なかなか難しいものがあります。
最終審査は、
「テイスティング」「ワインコメント」「サービス」の3つが点数化され、公開決勝の直前にも行なわれた審査の得点を加えた持ち点が基準となりますが、得点が高いだけでは優秀賞に選ばれません。
今度、継続的な努力ができる人物であるか?
また、人としての資質も問われます。
16時から始まった審査は、一人当たりの所要時間が約30分×6人でしたので、19時までかかりました。
順番待ちで精神的に疲れた選手もいたかもしれません。
そんな長丁場の決勝を制し、優秀賞に輝いたのは、昨日も紹介した次の3名です。
(中央3人、左から)
松永文吾さん、近藤佑哉さん、田中叡歩さん
左端は田崎真也会長、右端は、このスカラシップを7年に渡って支援しているシャンパーニュ・デュヴァル・ルロワの専務ジュリアン・デュヴァル・ルロワ氏。
優秀賞の3名は、複数回の挑戦を重ねています。
スカラシップは年齢の上限が決まっているので、挑戦のチャンスは限られています。
28歳を迎えてしまった人は、次がありません。厳しいですね。
優秀賞のひとり、松永さんは、料飲店ではなく、酒販店「エノテカ」勤務です。
「エノテカ」からは、予選を通過した31名の中に7名が入り、さらには決勝まで進んだ12名の中にも4名が残りました。その中から、松永さんが優秀賞に選ばれたのは、画期的なことです。
JSAでは、プロフェッショナル向けの認定呼称を「ソムリエ」に統一しました。
統一前は、酒販店勤務の場合は「ワインアドバイザー」という呼称でしたが、「ソムリエ」に統一されたことで、以前はアドバイザーの呼称だった分野の方が、ソムリエコンクールにどんどんエントリーするようになってきそうです。
そして、この先、アドバイザー出身のソムリエが、全日本最優秀ソムリエコンクールを制することがあっても、おかしくありません。
優秀な人材が認められる機会が増えてきたのはいいことです。
選手の皆さんも審査員の皆さんも、お疲れさまでした!