杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ネット通販の裏側で

2010-02-09 10:50:26 | ニュービジネス協議会

 昨日(8日)は(社)静岡県ニュービジネス協議会西部部会の企業視察で、創業1889年という老舗の倉庫会社・浜松委託倉庫㈱米津出荷センターを訪問しました。中田島砂丘の西、米津浜に近い、国道1号線バイパス沿いにあり、遠州のからっ風を覚悟し、ババシャツとスパッツを着込んで向かったのに、春のようなポカポカ陽気で風もなく、海岸をお散歩したくなる気分でした。

 

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 ここは3年前に改装した最新式の倉庫で、ネット通販の出荷代行を主業務とし、マイナス25℃の冷凍倉庫、10℃の定温(低温)倉庫、常温倉庫を完備しています。せっかく防寒服で来たのだし、マイナス25℃を体験するなんてめったにないから、喜び勇んで入ったものの、冷気をガーッと浴びて「ひぇ~っ!」と思わず声を上げてしまいました。すぐに10℃の定温フロアに出ると、10℃のフロアがなんと暖かいこと・・・!

 

 

 クライアントは有名菓子メーカー、輸入食品卸業者、ホテル、酒販店、健康食品業者、美容理容関係など。この日はバレンタインデー間近とあって、1階の10℃の定温フロアでは女性スタッフがチョコレート菓子の配送準備に追わImgp1916 れていました。

 2階はワイン、日本酒、ビール類がズラリ。私が愛飲する静岡の○○や、地酒通に愛される△△なども。でも圧倒的に多いのはワインで、過去には一人で1回に600万円分注文した人もいたとか。ワインって1本数10万円の価格がつくものもあるから、そりゃぁ、買おうと思えば外車1台分ぐらいの値段になるのも不思議じゃないですね。…日本酒ではありえない話です。

 

 

 

 それはさておき、現場を指導する小田久文部長のお話で印象に残ったのは、女性スタッフへの気配りです。

 

 委託の仕事とは、どんな単純ミスでもミスは即、信用問題につながります。そんな大事な現場作業をまかなうのは、女性のパート・アルバイト・派遣のみなさん。いろんな雇用形態で、勤務時間もバラバラなスタッフを、「誰が、どのセクションに回っても、同じレベルの仕事をミスなくできるように」教育しなければなりません。

 

 たとえば、菓子メーカーとアルコール業者では、梱包の仕方から伝票の形態、発送の手順などありとあらゆる方法が異なり、統一したマニュアルや自動化は不可能。すべて手作業での対応です。

 

 「慣れやマンネリがミスを生む元凶。つねに何かに“気付く”感性を持たせることが肝要だ」と言う小田部長。出社時点から“気付き”の訓練が始まります。Imgp1905 食品を扱う場所だけに、外からゴミは持ち込ませないよう、下駄箱は一足ずつ収納ケースに入れ、ケースはつねに拭き掃除で清潔に保ちます。傘立ても同じです。

 

 オペレーションルームは廊下からガラス越しで丸見え状態にし、戸棚は扉を外してつねにオープン状態。机の引き出しは、必要な文具以外収納できない構造にしています。

 

 

 Imgp1911 さらに徹底しているのが、トイレや食堂。トイレットペーパーの柄を毎月換えて、「月が変わったことを気付かせる」。食堂の椅子(2色)は毎日並び替えて、「日が変わったことを気付かせる」。和室のテーブルはそのつど片付け、忘れ物やごみがないかつねに確認できるようにする。・・・これ、すべて小田部長の発案だそうです。

 

 

 

 

 「次に使う人に不便をかけないように、という心掛けが身に着けば、作業現場での連携も円滑になる」

 「“気付き”が出来なければ、“改善”はできない」

 

 

 

 小田部長は、工賃ワーカーを指導するにはこれくらい徹底しないと、と真摯に語りますが、どんな仕事でもチームワークで取り組む時はとても大切ですよね、こういうことって。

 

 「あと、女性に気持ち良く働いてもらうには、全員に平等に接すること。これが大事です。私はその日の出勤社員には全員に1日3回必ず声をかけるようにしていますし、全社員の誕生日を覚えて、ささやかなお祝いをしています。女性同士の職場では、とかく、誰が特別に声をかけられたとか、ひいきにしてもらっているという噂が広がりやすい。これが一番怖いです(苦笑)」。

 

 

 

 

 倉庫会社の見学でしたが、ふだん、気軽に利用しているネット通販の裏側で、人間が集団で作業する現場の、ある意味、アナログで切実な実態が垣間見えて、大変興味深い取材でした。便利なことって、裏でやっぱり手がかかっているんだなぁって改めて発見&感謝です。