元・入船鮨ターミナル店の看板鮨職人で、静岡県の大吟醸を客に初めて呑ませた男こと竹島義高さん(69)の葬儀告別式に参列しました。竹島さんの功績にふさわしく、大勢の方々がお見送りをされました。
入船鮨ターミナル店のころから、竹島さんのお店の壁や暖簾を飾ってきた染色画家松井妙子先生とご一緒し、先生がご自分の“分身”でもあるフクロウの絵ハガキを花と一緒に納棺されるのを傍で見てきました。
はじめ、先生が遠慮して竹島さんの足元に置こうとされたのを、奥さまや妹さん方が「松井先生、胸元へぜひ」とお声かけされていて、竹島さんが大好きな松井先生のフクロウに守られて旅立たれることに心癒されました。
私も、手前味噌ですが、昨年3月に『吟醸王国しずおか』で撮影させてもらい、亡くなる前に息子さんに託した映像を、受付の横に置かれたテレビモニターで流していただいて、カウンターに立つお元気な竹島さんのお姿をみなさんに観ていただくことができました。
「本当に撮っておいてよかったわね」と松井先生にも褒めていただき、この映像は静岡の地酒の伝承と発展を目指し・・・な~んて大上段に構えるばかりでなく、ご縁をいただいたお一人おひとりに喜んでもらえることこそ本望だなぁ・・・と感じました。
このところ、映画制作の話をブログに書いていないので、どうなっているのかと思われているかもしれません。
まだ撮影はこの桜の季節ぐらいまで続ける予定ですが、資金調達が思うように進まず、いつフィニッシュできるのかはっきりメドが立ちません。このご時世に自主映画を作るという暴挙?に出たツケかもしれません(苦笑)。
とはいっても、カメラマンをはじめ実働スタッフには正当な労働対価を払わなければなりませんし、何より映画の完成を心待ちにされながら旅立たれてしまわれた竹島さんはじめ、これまで支えてくださった多くの方々のご恩に応えなければなりません。
現在、吟醸王国しずおか映像製作委員会で、とくに熱い応援を寄せてくれる10人ほどのメンバーに助けてもらって、資金調達や広報戦略を考えてもらっています。今まで独りで抱え、悩んでいたことを、わがことのように考えて、活発に意見交換してくれる仲間の存在―。公私ともに一人ぽっちの自分に、まるで新しい家族が出来たようで、なんだかとても不思議で、くすぐったい心境です。
仲間の協力と励ましのおかげで、来月には『吟醸王国しずおか』のオフィシャルサイトが開設できる運びとなりました。専用ブログも付随しますので、これから映画や酒のネタはそちらで披露させていただくことになります。決定次第、お知らせいたしますので、よろしくお願いします!。
ところで、仲間といろいろ意見交換していく中で、なぜこの映画を作るのかという根源的な議論にもなりました。
・・・そもそも自分は、20数年見つめ続けてきた酒の世界で得た感動を、映像という形でより多くの人に伝えられたら、そのチャンスが自分にあるならぜひ活かしたいという単純明快な理由で始めたわけですが、まさか波瀬さんや竹島さんの生前最後の動画になるなんて思いもしなかったし、映像を見たテレビ局が1時間番組を作ってくれるなんて想像もしてなかったし、「この映画作りを通して地域活性のモデルを考えたい」「モノづくりの価値を伝えるためにも、子どもや学生に見せたい」といった感想をもらうことも、まったくの想定外。もはや、個人の単純な夢ではくくれない段階に来ています。
資金面での裏付けがない中で、夢や理想を膨らませても・・・と心にブレーキを踏みつつ、この膨張ぶりは何だろうと思えます。膨張というとなんだか実態のないバブルみたいですが、ようは、人と人が不思議に次々とつながっていくんです。
たとえば20数年の集大成として本を書くとか単にホームページを立ち上げるというのであれば、個人の夢の範疇で収まっていたでしょう。映画を作るという無謀な目標たればこそ、の、膨張ぶり=つながりの拡張なのかもしれません。
仲間を得たこと、そして竹島さんの旅立ちをきっかけに、映画作りも新たな段階に移っていきます。
竹島さん、どうか天国で映画の完成まで温かく見守ってくださいね。