5日(金)は静岡県観光振興室の広報事業の一環『静岡の酒プレスツアー』が開かれました。昨年から始まった事業で、私はちょうど1年前の、藤枝の4酒蔵プレスツアーに引き続いてのお手伝い。首都圏の新聞・雑誌の編集者やライターさんたちを静岡へ招いて、静岡の魅力を記事にしてもらおうという事業です。
今年は午前中に富士宮市の富士高砂酒造見学と富士宮やきそば試食、午後は焼津市の磯自慢酒造見学と大旅籠柏屋・一祥庵での食事&試飲というプログラム。
高砂さんは富士山周辺観光をPRしたいという県の推薦で決まったようで、「もう一か所どこか静岡を代表する酒蔵を」と相談を受け、「静岡を代表するといったら今は名実ともに磯自慢でしょう」と提案させてもらいました。
『吟醸王国しずおかパイロット版』の試写もできるということで、それならなおのこと、映像に登場する磯自慢さんの、ネームバリューをはるかに超える蔵の実力をしかと見ていただきたいと、ご案内することに。蔵の内部は取引先関係者以外、非公開という磯自慢さんも、映画制作のPRになるなら、と一肌脱いでくださいました。
午後、富士宮からバスで到着した10名のプレスの皆さんを、磯自慢酒造の寺岡洋司社長がお出迎え 昨日はご承知のとおり、半袖でも過ごせるぐらいのポカポカ陽気だったので、屋外で簡単なレクチャーをした後、いざ銘酒・磯自慢生誕の地へ。「うちの編集長が大ファンで」「私の父の愛飲酒です」と参加プレスのみなさんは目を輝かせて入っていきました。
いきなり通されたのはステンレスに覆われた冷蔵庫並みの低温仕込み蔵。伝統的な酒蔵をイメージしていた人はビックリしたかもしれません。
私も平成元年2月に初めてここに入ったとき、まだ部分的でしたが、仕込み蔵すべてを冷蔵庫にしてしまうという大胆さに驚き、また、暖かい静岡でいい酒を仕込むには、このようなハード対策が必要不可欠であり、それができる蔵だけが生き残るんだろうと漠然と感じたことを思い出しました。
2階はちょうど出麹が終わった後の休憩時間でした。本醸造用の麹ですが、この蔵では山田錦60%精米を使用します。
麹室や酒母室にも案内し、仕込み計画表まで細かく解説してくれる寺岡さん。「みなさんがこれを取材して何かに載せて、他の蔵元が見て真似ようとしても、同じ酒はできませんから」と自信を示す寺岡さんの言葉は、自社の杜氏や蔵人への絶対的な信頼感に裏打ちされているんですね。
試飲タイムでは、この秋、一般に初お目見えする田んぼ指定の酒を、私も初めて試飲させてもらいました。田んぼ指定というのは、寺岡さんが長年かかって信頼関係を築いてきた山田錦のトップ生産地・兵庫県東条町特A地区(秋津地区)の中でも、3か所の区画を特に指定し、そこで収穫された山田錦だけを使って3種類の酒にする、という試みです。
3区画―西戸(さいと)、常田(つねだ)、古家(ふるけ)という田んぼ名が書かれた試飲用の300ml瓶から貴重な一滴を順に試飲し、みなさんで人気投票し、一番人気の高かったのは西戸。サミット晩さん会用の酒も、西戸産山田錦の酒だったそうです。さすが口の肥えたプレスの方々ですね! ちなみに私は味が一番すっきりしていると感じた常田に投票しました。
夕方は、藤枝市岡部町の旧東海道沿い、大旅籠・柏屋(かしばや)の土蔵を改装した食事処「一祥庵」で、パイロット版の試写と食事・試飲を楽しんでいただきました。
実は2日に柏屋のすぐ近くにある初亀醸造に撮影にうかがったとき、同行取材してくれたフリーアナの神田えり子さんが、「一祥庵の女将さんから、5日に真弓さんの関係する会があって、ぐいのみが足りないと聞いたので、私がお貸ししたんです」と言うのでビックリ。撮影後、一祥庵を一緒に訪ねて、ご挨拶とお願いをしておいたのでした。
一祥庵は地域の食材を大切にし、自家製豆腐やとろろ汁など旅籠の食事処らしい風趣あふれるメニューがそろっています。
私が酒蔵探訪の連載をしていた雑誌『sizo;ka(しぞーか)』をはじめ、藤枝周辺の情報をあつめたミニコミ誌やイベント案内などもたくさん置いてありました。お店では、sizo;kaの連載でも好評だったピンホールカメラの体験イベントなども開かれているそうです。地域文化の発信地になっているみたいですね。
『吟醸王国しずおかパイロット版』を見たプレスのみなさんからは、「“祈り”のパートで思わず涙ぐんでしまった。酒造りが神事と深くつながっていることを、改めて思い起こさせてくれた」「音楽がとても合っていた、選ぶのに苦労したでしょう?」「最後、搾りたてを試飲した青島さんの“生まれました”の一言がいいねぇ」と激励をいただきました。東京の同業者の方から励ましていただくって本当に心強い!!
午後の見学の時、寺岡さんが、20数年前、蔵を大改装して新しい磯自慢を創っていこうと決断した自分を、東京の長谷川酒店さんはじめ、富士宮の横関さん、静岡の山崎さんなど志ある酒販店さんたちが「我々が売り切る!」と後押ししてくれたことが、どんなに心強かったかを強調されていました。
不安なとき、苦しく辛いときにかけてもらう言葉や、金額にかかわらず支援の気持ちを示してくれる人々の存在が、どんなにありがたいか。・・・磯自慢の成功物語とはレベルが違いすぎる話ですが、この映画制作においても、そのことを決して忘れずに頑張ろうと、思いを新たにしました。
今回のツアーを企画した県観光振興室の影島さん、県観光協会の今井さん、日本パブリックリレーションズ研究所の天坊さん、磯自慢酒造の寺岡さん、一祥庵の女将さん&神田えり子さんに心から感謝いたします。
プレスのみなさん、ご参加ありがとうございました。静岡の酒へのご支援、なにとぞよろしくお願いいたします!
○参加プレス=東京FM、Pen、月刊居酒屋、主婦と消費行動研究所、料理通信、日刊ゲンダイ、夕刊フジ、ヴィノテーク (敬称略)