急に寒くなって秋を飛び越えていきなり冬になった陽気・・・。今年は紅葉が楽しめないんでしょうかねぇ
先週末は京都の興聖寺さんの達磨忌法要に行ってきました。10月第3日曜に行うので、紅葉シーズンにはちょっと早くて、参道のまだ青々とした楓が25℃近い夏を思わせる陽気の中、ちょっぴり所在なさげに風に揺れていました。
今回も元静岡新聞の平野斗紀子さんをお誘いしました。日本舞踊や三味線・長唄を嗜む平野さんは京都の花街や歌舞伎などにも造詣が深く、年に何度も一人で通う京都通。今回は、二人して、「気になっているんだけど一人で入る勇気のない店を探索しよう」とお店巡りを楽しみました。
23日昼は四条大橋のたもとにある北京料理『東華菜館』。かのヴォーリズが建てた唯一の飲食店で、エレベーターは1924年製のOTIS=日本最古のエレベーター!。よく洋画に出てくる、蛇腹式内扉に時計針のようなフロアインジケーターが付いていて、エレベーターマンがちゃんと乗ってます。
ここ、学生時代から、一度中をのぞいてみたいな~と思いつつ、見るからに値段が高そうで一生縁がないと思ってた店でしたが、ランチならなんとかなるかも、と、思い切って入ったら、意外にもフツウにチャーハンやギョーザが食べられました(ラーメンはなかったけど・・・)。
5階のテーブルフロアには鴨川に面したバルコニーがあり、一番見晴らしのいい角の席を陣取ったら、直射日光がモロに差し込んできて、日焼け止めなんてもう要らないとタカをくくって、UVケアをまったくしていなかった私は大慌て ・・・でも昼間っから飲む生ビールと日本人の口によく合う上品な味付けに大満足でした
ランチの後は、ガイド本に載っていた寺町四条の『御多福珈琲』へ。地下1階のこじんまりしたレトロチックなカフェで、マスターが1杯ずつ丁寧にドリップで淹れるコーヒーは私好みの香りと丸みのバランスのとれたマイルドな味わい。一見客なのに気さくに声をかけてくれるマスターに、平野さんと「ここなら一人でも入れるね」と顔を見合わせニッコリでした。
カウンターの隣に座っていた若い男性が、その隣の男性客やマスターとの会話の中から静岡市から来たとわかり、あれあれと思い、話をし始めたら、なんと、職業はイラストレーターで、「東京と京都の仕事が多いけど、地元では静岡新聞社の○○さんにお世話になっている」と、平野さんの親しい女性記者の名前が出てきたから、さらにビックリ! 世間が狭いのか、類は類を呼ぶ典型的な現象なのか、人の出会いって面白いですね・・・
午後は平野さんおススメの上賀茂神社社家の西村家庭園へ。社家とは神社の広大な社領を管理する神官達が住んでいた家のことで、西村家の庭園は現存する社家の中では最も古い、養和元年(1181)に上賀茂神社神主・藤木 重保が作庭したものだそうです。
神社のそばを流れる明神川の水を引き込み、曲水の宴を愉しむ小川を作り、その流れはふたたび元の明神川に返すという工夫がされています。
ここも、あと1ヶ月経てば見事な紅葉が拝めたことでしょう。それにしても明神川沿いの苔むした土橋や土塀、妻飾りの棟の低い母屋など、この一帯の社家のたたずまいは、絵にかいたような古都の情景。国の上賀茂伝統的建造物群保存地区に指定されているそうです。この日は工事でシートがかかった土塀が多く、ちょっぴり興ざめでしたが、1ヶ月後の紅葉シーズンにはさぞかし見栄えがすることでしょう。
北の上賀茂神社からグーッと南下し、夕方は奈良国立博物館でこの日から始まった『第62回正倉院展』へ。17時30分以降はオータムレイトタイムで入場料が安くなり、なおかつ日中ほど混雑してないだろうと思ったのですが、今回の目玉である世界唯一の古代五絃琵琶こと『螺鈿紫檀五絃琵琶』は、東京国立博物館の阿修羅展のときのように、行列が展示物の周りで何重にも管を巻いていて、立ち止まってゆっくり観ることも出来ませんでした・・・
でも1300年前のものとは思えない、完璧な美しさをまざまざと見せつけられ、まるで琵琶自身が命を持っているのではないかとさえ思えました。
正倉院展では古文書のコーナーは地味なせいか、わりと空いていて、閉館時間が迫っていたのでササッと眺めるだけにしようと思っていたら、『駿河国』とか『遠江国』と書かれた正税帳を見つけ、おおーっと足を止めました。
ご先祖様たちが納めた税の帳簿が、平城京に届けられ、正倉院で大切に保管され、1300年後の子孫の前に現れる・・・税の帳簿って、ホントにその時代に生きた人々の暮らしの証ですものね、五絃琵琶とはまた違う価値があると思います。
正倉院展は11月11日(木)まで開催中です(期間中無休)。静岡県民は古文書コーナー必見ですよ!
つづきはまた明日。