杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

紅葉前の古都トリップその2

2010-10-29 18:45:56 | アート・文化

 23日夜は京都へ21時頃戻り、宿のある祇園界隈をブラ歩きして、平野さんがかねてから「入りたいけど一人じゃ勇気がない」と目を付けていた縄手通りの路地裏の中華そば店へ。

 カウンター5~6席ぐらいの小さな店で、壁には古い映画のポスターがたくさん貼ってあって、祇園で遊んだ映画関係者なんかが腹ごなしに来るのかしらんと想像しました。ラーメンは私の好きな第一旭よりも麺が太くてコシがあって、スープは和風であっさりしていて、飲んだ後にはちょうどいいかも! 場所は覚えているんだけどお店の名前が最後まで解りませんでした(苦笑)。

 

 

 四条通に出て、来たバスに飛び乗って烏丸方面へ。ガイド本で見た『西村鮮魚店』という昼間は魚屋、夜は居酒屋という店に行きました。マンションらしきビルの1階の一角にあって、六角通りに面した魚屋さんは、もちろんこの時間は電気が消えていて、ショーケースもカラでしたが、奥へまわってみるとカウンターだけのスタイリッシュなバルが。

 

 

 日替わり入荷の魚メニューがずらり並ぶ中、青魚に目のない私は、シマアジ、シメサバをつまみに、地酒メニューに合った2種類(松の司、梅の宿)をいただきました。駿河湾や相模湾のアジに食べ慣れている私にとって、瀬戸内で上がったシマアジは、筋肉質というのかな、プリッとして旨みがのっていて、「アジがあるな~」とおやじギャグをかましてしまいました

 

 

 シメサバは、水っぽさがなく、実がしっかり〆てあって、ほんのり甘い酢がくどくなくって、「これは魚を知り尽くしたプロの仕事だな~」と唸ってしまいました。シメサバが大好物の『喜久醉』青島社長に食べさせた~い

 

 

 サバは関西では、ほんと、静岡人にとってのマグロ並みにメジャーな存在みたいですね。酢で〆ても美味しいし、焼き鯖も本当に美味しい。これが純米のぬる燗によく合うんですよね~。口うるさそうな客だと思ったのか、お燗番役の若いスタッフが、錫製の燗付け機『かんすけ』を使って慎重に燗を付けてくれて、「ちょうどいい温度! お兄さん、上手上手!」とついつい、上から目線のおばさん口調で褒めたら、ご主人が「おい、褒められたぞ」と冷やかしてました

 

 後でガイド本を見直したら、この店では私がウイスキーの中では一番好きな、アイラ島のシングルモルトが飲めるみたいで、魚のうまい北の島の酒だもんな~と、ボウモアの香りを思い浮かべました。

 

 ・・・でも「日本で獲れる魚に合う酒は、やっぱり日本酒だよね・・・」なんてなウンチクを際限もなくダラダラとつぶやきながら、京都ではおそらく初めて、こんなにも味わい深い刺身と酒の組み合わせが体験できたことを、この上なく幸せに感じました。静岡にも出来ないかなあ、魚屋が夜開く酒のバー・・・。

 

 

 

 翌24日は、10時30分から興聖寺の達磨忌へ。久しぶりにナムカラタンノーの『大悲呪』と『観音経』を読誦したら、腹式呼吸ができてないせいか、途中で何度も息切れしてしまいました。寺を訪れるたびに、ダイエットしなきゃ、腹筋を鍛えなきゃと、いっとき決心するんですが、帰りに美味しいものを食べちゃったりすると、ま、いっか、で終わってしまいます。これが俗世に生きる俗人の俗人たるゆえんでしょうね

 

 古田織部創建の寺だけあって、法要のあとは織部流のお抹茶をいただき、興聖寺特製のおろしなめこそばに舌鼓。上品なだしの味が香る、あっさりしたおそばは、二日酔いの腹に最適でした。

 

 

 午後はあいにくの雨だったので、街中を買い物がてらブラ歩きをし、夕食には、ガイド本に頼らず、よさそうな看板を見つけて入ってみようと、先斗町界隈をブラブラし、三条先斗町の小路にある『余志屋』という店に飛び込んでみました。扉を開けたら、カウンターに板前さんがズラリ。・・・なんとなく高そうな割烹料理店で、一瞬ビビったけど、ちょうど2席、キャンセルが出たから19時30分までならOKと言われ、偶然空いたのならこれも運だと思い、京都らしい湯葉の煮もの、だしまき卵、ぐじ(アマダイ)のから揚げ、やっぱりあると頼んでしまうシマアジとシメサバなどを頼みました。

 シメサバは『西村鮮魚店』よりもやわらかかった。・・・自分はご飯でも豆腐でも麺でも、かたいほうが好きなので、西村~のしめ方のほうが好みかな。でも、ぐじのから揚げやだしまきは、ホントに上品で洗練された味わいで、これぞホンモノの京の味でした。

 

 

 ご主人は見るからに貫禄ある板長さんという感じ。1階は7~8人のカウンターと小さな小上がり、2階に10席ほどの座敷がある、そんなに大きなお店じゃないのに、若い板前さんが3人ぐらい忙しく働いていました。

 ちょうど先斗町の踊りの発表会が終わった時間らしく、舞妓さん&お母さん、芸妓さん&だんなさんといったカップルやグループが、あっという間に席を埋め、平野さんはすぐ隣に可愛い舞妓さんが座ってお母さんに「おつかれさんどした」とワインを注ぐ姿に目を爛々とさせ、「こういうお店だったなんて感激~」と悦に入ってました。

 

 

 

 私は菊正宗を冷やで、平野さんはビール大瓶2本を飲み、しめに、じゃことかつおぶしの釜飯をいただき、余った分はおにぎりにしてもらい、20時すぎの新幹線で帰路へ。『余志屋』のことを後で調べたら、なかなか予約の取れない人気店らしくて、ホントにラッキーでした。

 

 

 

 

 『余志屋』といい、『西村鮮魚店』といい、『御多福珈琲』といい、お店巡りを愉しむという今回の旅の目的は120%ぐらい達成できた感じ  旅の醍醐味ってやっぱり飲食店のよしあしがモノを言いますよね~