地域限定の文化情報誌として愛読する『季刊清水』の最新号43号が発売になりました。郷土史の貴重な記憶として、あるいは地域の暮らしや営みを後世に伝える記録として実に読み応えのある雑誌で、清水に本店のある戸田書 店の鍋倉伸子さんが編集発行されています。
私は清水で生まれましたが小学校に上がる時に静岡へ越してしまったので、入江鶴舞町の生家と幼稚園を往復した大曲界隈の記憶しかありません。
ちびまる子ちゃんが漫画になったとき、そういえば生家のすぐ近くに駄菓子屋「みつや」があってよく通ったし、さくら幼稚園もも組だったな~と懐かしく思い出したものです。
清水の町がグ~ンと身近に感じられたのは、平成3年に清水西高校の80周年記念誌「春風の夢」の編集をまるごとドーンとまかされたとき。同窓会長の山下冴子さん(元横浜監督山下大輔さんのお母様)はじめ、清水を知り尽くしたお歴々に“清水高女”と呼ばれた頃の歴史や恩師の思い出をうかがいました。
私は清水西高の卒業生ではありませんが、80年分の学校史はそのまま清 水の町の歴史。…大変な重みがありました。
1冊まるごと編集するという仕事も初めてだったので、パートナーのデザイナー池上直子さんに全面的に頼るしかありません。池上さんは自分の母校の先輩でもあったので、自分たちの同窓会誌を作るような感覚で取り組めました。
西高生が通ったという手芸小物店『和泉屋』さん、万年筆の『愛林堂』さん、おでんの『みやじま』、甘味喫茶『甘寅』『あさひ屋』、そして『戸田書店』等を取材させてもらい、ひょっとしたら自分も経験したかもしれない清水の町の歩みを疑似体験できた編集作業・・・。表紙はご覧の通り、西高出身のさくらももこさん。
私は編集の傍ら、本文のイラスト挿絵を描かせてもらって、気分だけはちびまる子ちゃんと共演!?
西高同窓会誌の仕事が記憶から薄れかけていた数年前、NPO情報誌で鍋倉さんを取材したのがきっかけで時折お手紙やメールを交換させていただくようになり、私が清水出身だと知って、今年の夏ごろ、「季刊清水の“清水と私”というコラムに1本書いてみませんか?」と思いがけないお声掛け。嬉しくて舞い上がってしまいました。
6歳までの記憶しかないけど生家周辺の思い出にするか、清水西高80周年記念誌の編集裏話にするか、朝鮮通信使にしようか、テーマ選びに悩みましたが、やっぱり落ち着いたのは『清水の地酒』。しずおか地酒研究会を立ち上げた頃、温かく支援してくださった三和酒造の元専務・小泉美登里さんのことを興津醸造場のスケッチ画を添えて紹介させてもらいました。
43号のメイン特集は飯田地区。私の祖母の実家(味噌醸造店)があった高橋、夜景スポットでも知られる山原など近しい地名がたくさん出てきて、時間があると夢中で読んでいます。
以前、『あかい奈良』の紹介記事でも書きましたが、『季刊清水』のような上質で奥深い、しかも広告収入に頼らない地域情報誌を、このご時世に発刊し続けるって並大抵のことではないでしょう。編集者も寄稿者も無報酬で作っておられるようです(私は執筆料として図書カードをいただきました)。
でも、地酒と同じで、“地誌”があるって、地域の豊かさの証明のような気がする・・・。とくにライターにとっては、「あの雑誌に書かせてもらえたら」と目標に出来る媒体が地域にあるって、本当に貴重なことですから、なんとしてでも続けていただきたいと願うばかりです。
『季刊清水』は戸田書店で発売中。1冊500円です。清水にゆかりのある方も、そうでない方も、ぜひ一度は手に取っていただければ。よろしくお願いします