先週末(10月15・16日)は、2日続けて静岡市内の同好会の集まりにお呼ばれし、いろ~んな趣味人たちがいろ~んな活動をしているんだなあ、静岡の文化レベルって捨てたもんじゃないなあって実感しました。と同時に自分の人間の器のちっちゃさを思い知らされました・・・。
まず15日(土)夜は、清水区のスノドカフェで開催された日本酒同好会「うわばみの集い」で『吟醸王国しずおかパイロット版』の試写会を催していただきました。うわばみの会というのは、スノドカフェを会場に年2~3回開いている20~30代中心の日本酒愛好会で、私は今まで接点がなかったのですが、スノドカフェのオーナー柚木康裕さん が試写会を無理やり?ブッキングしてくださったのです。こんなふうに別のご縁で知り合った人が、吟醸王国のことを支援してくださるなんて本当に嬉しい
準備もあろうかと少し早めに行ったら、すでに大勢集まっていて、とくに始まりの挨拶とか決まったプログラムもないまま、ダラダラと呑んだりしゃべったりで、主催者が誰で何をする会なのかわからず(苦笑)。長年この業界にかかわっていると、どうしても、どこの酒屋or飲食店が仕掛けているのか、な~んて“ウラ”を読もうとしてしまうのですが、1時間ぐらい経ってから、何のウラもない純粋な日本酒ファンの主催者(一般人)が自分の好みの酒と、料理達人の友人の手料理を仲間内で楽しむホームパーティーのような飲み会だとわかりました。
お酒は残念ながら県外酒ばかりで、今のトレンドのカプロン酸系の酒が多く、「自分の好きな酒なんで」「酒はしょせん趣向品だから」「やっぱり静岡より新潟」な~んて言われてしまうと何もいえず、日本酒の味の幅や奥の深さを伝えるって難しいなあって改めて感じました。
味の好みはそれこそ趣向品なんで、個人の価値観を押し付けるわけにはいきません。私の場合は、取材者という立場を活かして、身近にいる造り手や売り手の姿勢を伝え、まず人間に惚れてもらおうと考え、しずおか地酒研究会では参加者に相互理解を深めてもらう工夫を心掛けていますが、今の若い消費者には面倒臭いと思われるかもしれませんね。
いろんな意味で、少々ジェネレーションギャップを感じた会ですが、それでも日本酒を目的に、業界臭のない若い消費者が集まる機会って大変貴重です。また料理は日本酒に合うよう、上品に味付けたおでん、漬物、焼き物類が素晴らしかった。パイロット版試写の後は温かい拍手をいただき、12人から1000円ずつ寄付をいただきました。
柚木さん、うわばみの集いのみなさん、本当にありがとうございました。ぜひとも長続きさせ、できるだけ広い選択肢の中から、日本酒の味の奥深さを発掘・冒険してみてください。
16日(日)は駿府公園紅葉山庭園茶室で開かれた『羅漢会』の茶会に、望月静雄先生と末永和代さんとご一緒しました。まだまだ、まったくお茶の作法を会得していない自分が、いきなりお茶会なんて冒険が過ぎるかと思いましたが、やっぱり異次元の冒険でした(苦笑)。
『羅漢会』というのは、県内で活動する男性茶道家有志による会で、毎月第3日曜に紅葉山庭園で茶会を開いているそうです。流派にこだわらない、堅苦しくない趣味人の会だからと望月先生にお声掛けいただいたのですが、行ってみたら着物をビシッと着こんだ女性たちがズラリ。なんでも亭主を務めた粟野淳さんの亡きお母様が有名なお茶の師範で、その縁で市内で茶道教室を主宰する先生方がお弟子さんを伴って続々と集まり、本席に通されるまで待ち合い広間で2時間も待つことに・・・。
でも待ち合いの間にも、ちゃんとおもてなしがあって、冬瓜の生姜風味のお吸い物と梅茶が出てきたんです。これがビックリするほど美味しかった・・・! お箸の持ち方、お椀の取り方、お椀の蓋の置き方、いただいた後に懐紙でお椀の中を軽く拭く等、ちゃんとお作法があって、いちいち感心させられました。
待ち合いの広間の床には、芳賀幸四郎氏(芳賀徹静岡県立美術館長のお父様)が書かれた般若心経の軸が。以前、芳賀幸四郎氏が大学の恩師だという北村欽哉先生(朝鮮通信使研究家)を県美の芳賀館長の元へご案内し、お父様の思い出話をご一緒にうかがったことがあったので、軸を拝見し、お会いしたことはないのになんだか懐かしい人がそこに居るような思いがしました。
本席の床には李白の詩『松高白鶴眠』(まつたかくして はっかくねむる)が。すっと伸びた老松の枝に白鶴が一羽とまって眠る清々しい情景を謳ったものです。じっくり鑑賞したかったけど、狭い茶室に13人も押し込まれて(苦笑)、私は出入り口の角で小さくなって、まともにお辞儀もできない状態。隣の末永さんに逐一手ほどきをしていただいて、なんとかお菓子とお茶をいただくことができましたが、緊張&正座の辛さのせいか、ただ順番に食べて飲んだだけで終わってしまった・・・。
一方、望月先生はじめ茶席に慣れたみなさんは、亭主粟野さんが心を尽くされた道具類やお菓子についてじっくり味わっておられるようでした。茶の素人かつ取材を生業としている私としては、わからないことはその場で聞いておきたいのに、さすがにお稽古ではなく本番の茶席というのは、気軽に質問できる雰囲気ではありません・・・。
前夜の酒の会では、聞いてほしい、詳しく伝えたいことが山ほどあるのに、誰も質問してこないストレスを感じ、お茶会ではこちらが聞きたい、教えてもらいたいことが山ほどあるのに質問できないストレスを感じました。・・・でもこんなストレスでも、上手に受け止めて消化できるようになれば、本来心を豊かにしてくれるはずのお酒やお茶との出会いを、心底楽しめるようになるんですね。
いやはや、人間を鍛える意味でも大変勉強になった、価値ある2日間でした。写真を撮る余裕がなかったので、文字だけの報告でスミマセン。