杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

2011秋・古都の旅その4~洛中洛外風散歩

2011-11-03 13:06:37 | アート・文化

 10月の京都旅行の報告の続きです。今回の旅行のイチバンの目的は、興聖寺(堀川寺之内)が毎年10月第4日曜に行う達磨忌。平野斗紀子さんをお誘いするのも今回で3回目で、「年中行事みたくなってきた」と楽しんでいただきました。

 

 久しぶりに『大悲呪』と『観音経』をたっぷり読経し、経典の音読が、特別な宗教行為ではなく、日本人の暮らしや伝統に根付いた、セラピーの一環のような気がしました。お寺巡りが好きだからといって、特別信仰心が厚いわけでもないのに、読経した後はどこか清々しい気持ちになります。終了後は興聖寺特製のおろしそばと古田織部流の抹茶が無料でふるまわれます(半ば、これが目的なんですが・・・)。

 いつもご馳走になりっぱなしなので、今年は達磨大師に似せた白隠さんの自画像がラベルになっている『白隠正宗』特別純米を庫裏にお届けしました。

 

 

 堀川寺之内は茶道千家の本部や西陣界隈とも隣接している風情あるエリアです。ブラブラ歩きの途中で見つけた『京都西陣蜂蜜専門店ドラート』で、いろ~んなハチミツのテイスティングを楽しみました。そばのハチミツ、コーヒーのハチミツ、なんてのもあるんですね、ビックリです。

 

 午後は、ドラートの店長さんからもらった町家ショップのラリーマップ『洛中洛外風散歩』をもとに、茶道千家本部の近くにある茶道具の店『みやした』、京都御所近くの『自家焙煎 王田珈琲専門店』、高麗美術館近くの『手しごとの店 工藝百職』をはしごしました。4軒はしごすると、最後のお店でオリジナル賞品がもらえるのです。静岡deはしご酒と同じですね、はしごショップの法則なのかしら? 『工藝百職』では可愛いがま口をいただきました。

 

 どのお店でも、20~30代の若いショップオーナーが、古い町家を上手にアレンジし、さりげなく(押しつけがましくなく)、「眺める」「試す」「選ぶ」愉しさを演出していました。若い世代の、いろ~んなモノや情報を取捨選択する眼力というのは、大したものだなあと改めて感心させられます。個人オーナーによる個性的なセレクトショップが増えている街って魅力的ですね。特別買う目的がなくても、通いたくなります。残念ながら静岡の街中には、物販でも飲食店でも、「何度でも通いたくなる」店が少ないんですよねえ・・・。

 

 『洛中洛外風散歩』ラリーは12月10日まで開催中ですので、機会があったら利用してみてくださいね!

 

 

 夕方、錦小路室町を歩いていたら、古い織物店を改装した膳處漢(ぜぜかん)という中華料理店を発見。建物はごっつぅ豪華&レトロで、平野さんは「上海の老舗高級料理店みたい」と大喜びでしたが、メニューを見たら、ファミレス並みのお手頃価格 こりゃ個人オーナーじゃなく、本格的な外食プランニング会社が入っているなあと想像しつつ、ビールと小菜でのどを潤し、平野さんは一足先に新幹線でご帰還。私はいつもの『第一旭たかばやし』でラーメンを食べ、壬生にある日帰り入浴施設で時間をつぶし、京都発23時59分発の夜行バスで戻りました。

 

 ショップ巡りばかりの古都旅行でしたが、観光都市を支える現在(いま)のビジネスの一端を垣間見れた貴重な3日間でした。

 

 最新のトレンドや情報は東京のほうが豊富ですが、京都のお店には、日本の商業ビジネスの方向性みたいなものが示唆されているような気がする。今回感じたのは、空間の活かし方とコミュニケーション能力。寺や神社や古い町家に見られる一見無駄な空間が、日常と非日常をさりげなく橋渡ししてくれる、その距離感を上手にお店に取り入れています。しかも現代アートにみられる無機質な空間ではなく、自然の色彩や風を感じ取れる実に豊かな空間です。日本人は家の中だろうと外だろうと、自然に寄り添っていなければ癒されない民族だと改めて思います。

 

 

 その、自然と人間の関係性を編集・体系化したものが「茶道」なんだと、最近、やっと気付きました。茶道の基本は「おもてなし」。これは接客商売の基本中の基本でもありますよね。・・・京都に学ぶことはまだまだ多いと実感します。