杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

茶壺と陰陽五行説

2011-11-27 11:18:40 | 駿河茶禅の会

 9月から月2回のペースで開催中の(社)静岡県ニュービジネス協議会『茶道に学ぶ経営哲学研究会』、今月の2講座の紹介が遅くなってしまいました。参加者が若干減ってきているけど、内容は回を増すごとに濃~くなってます。

 

 11月は茶道の世界の1年の始まり、だそうです。炉開き(畳の一角をはずして炉を炊く)をし、茶壺で保存されていたお茶を「口切り」(封切り)します。そんな決まりごとの意味を、11月の講座では望月静雄先生に詳しく解説していただきました。

 

 

 

 

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 11月2日(水)は、JR静岡駅ビルパルシェの7階会議室での座学でしたが、茶道の哲学の根幹をなす陰陽五行説の基礎知識を伝授していただきました。

 ち~っとヤヤこしいけど、日本の伝統的な暦や時間の見方にも参考になるので、オトナの常識として知っておきたいところですが、一度や二度の講座ではさわりのさわりぐらいしか理解できない、底抜けの奥深さ・・・。でもこういう古い哲学に基づいて茶の湯の世界観が形成されていることが解り、あー、もっと早く勉強し始めればよかったと痛感しました。

 

 

 

 

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 そして11月16日(水)、あざれあ茶室での講座では、陰陽五行が茶室でどのように表現されているかを具体的に解説していただきました。茶壺の封を切る“口切り”にちなみ、望月先生が、茶壺を封する見事な組紐のテクニックも披露してくださいました。

 

 

 

 

 陰陽も五行も、中国の古い哲学で、陰陽は、陰と陽という相反する2つの気によって自然の秩序が保たれているという考え。天を重視した老荘思想家(道家)が主張していました。

 

 五行は、万物が5つの元素ー木・火・土・金・水から組成されているという考え。人を重んじる儒家によって広まりました。道家と儒家の思想であるこの2つの哲学を組み合わせたのが〈陰陽五行〉で、3世紀に中国に入ってきた仏教と習合し、密教の基盤となりました。日本には7世紀ごろ伝来し、日本流の陰陽道が確立されます。

 

 

 

 

 五行の中で大切な考えに〈相生=そうしょう〉と〈相剋=そうこく〉があります。〈相生〉は文字通り、相手を生かすもの。木から火を、火から土を、土から金を、金から水を、水から木が生まれると考えます。つまり、木は燃えて火となり、燃えた後の灰は土になり、土が山となって金属を産み、金属は分解して水を生じる。そして水は木を育てる・・・というわけです。

 

 一方、〈相剋〉は、木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に剋つということ。木は土を押しのけて成長し、土は水をせきとめて吸収し、水をかければ火は消え、火は金属を溶かし、金属は木を切り倒す・・・というわけです。戦国時代の“下剋上”なんて言葉もこの考えから来ているようです。

 

 

 

 

 茶道では、茶室を、陰陽五行が保たれた理想の宇宙空間だと位置づけ、天板は天を、地板は地を、4本の柱は東西南北や春夏秋冬を示しています。床の間を北に、東南に灯りをとって、亭主は北=陰を向いて点前をし、正客は南=陽を向いて座ります。ちなみに裏千家では茶室に入るとき、右足から入り、畳の敷き合わせを踏む時も右から。

 

 

 炉の中にも五行が示されています。木の炉縁、火の炭、土の炉壇、金(鉱物)の釜、そして湯(水)。五行棚といって、板、炭火、土風炉、釜、湯の5つを納める中置き用の棚まであるそうです。

 

 

 

 

 

 

 陰陽五行の考えに基づき、木、火、土、金、水、(もく、か、ど、ごん、すい)の五行にそれぞれ陰陽2つずつをあてはめた十干=甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸が生まれました。音読みするとこう、おつ、へい、てい、となりますが、十干はふつう訓読みします。すなわち順に、きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと。この語尾の「え」が陽、「と」が陰を指すんですね。きのえは木の陽、という意味というわけです。

 「えと」の呼び名はここに由来していて、「えと」は本来、十干の呼称でした。

 

 

 

 

 十二支=子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥にも五行が配されています。その前提として、春が木、夏が火、秋が金、冬は水と定義し、土は、各季節の最後の月を指します。各季節に十二支をあてはめてみると、

  • 春は、2月、3月、4月(五行は木、木、土)
  • 夏は、5月、6月、7月(五行は火、火、土)
  • 秋は、8月、9月、10月(五行は金、金、土)
  • 冬は、11月、12月、1月(五行は水、水、土)

 

 

 

 十二支の陰陽は、子→丑→寅の順に、奇数番目は陽、偶数番目は陰となります。十干・十二支は、陰・陽ではなく、陽同士、陰同士の組み合わせにするので、10×12=120の半分の60通りになります。60年で暦が一巡するというわけです。

 

 ちなみに甲子園球場は甲子(きのえ・ね)の年に造ったもの。十干の一番目・甲(きのえ)と、十二支の一番目・子(ね)が組み合わさった60年周期のスタートの年です。古い暦って、こうして作られたんですね。

 

 

 

 

 

 陰陽五行はさらに易学にもつながっていきました。よく知られるのが、“あたるも八卦、あたらぬも八卦”の八卦(はっけ、はっか)で、8つの基本図像があります。

 以下の図像はウィキペディアからコピペさせていただきました。

  • Ken.png
  • Da .png
  • Ri .png
  • Shin.png
  • Xun.png
  • Kan.png
  • Gon.png
  • Kon.png

 

 

 

 ごらんのとおり、卦は、─(陽)と--(陰)の2つの記号の組み合わせで構成されています。韓国の国旗(大極旗)の四隅には卦のマークが使われていますよね。京劇の衣装にも八卦マークがデザインされていて、相撲の行司の「ハッケヨイ」も“八卦良い”から来ているとか・・・。う~ん、深い・・・!

 

 茶室では、茶釜の湯を温める炉の灰に、水を意味するKan.png)の絵を描くそうです。火を鎮める、との配慮からです。

 

 

 

 八卦の組み合わせやその意味については、さらに複雑でとても理解しきれなかったので、またの機会に。

 

 

 

 

 茶道に学ぶ経営哲学研究会、来月は12月7日(水)18時ぐらいから、駿府公園紅葉山庭園でお点前実践、12月21日(水)夜は茶懐石の店・御所丸(葵区大鋸町)で懐石マナーの実践を予定しています。興味のある方はご一報ください。

 

 

 

 

 最後にコマーシャル。(社)静岡県ニュービジネス協議会が11月15日に開催した『2011静岡県ニュービジネスフォーラムin沼津』の報告記事が、11月28日(月)付けの静岡新聞にて掲載されます。紙面の都合上、概略の報告になってしまいましたが、当ブログでも紹介したニュービジネス大賞やEQコミュニケーションについて書いてますので、ぜひご一読ください!