杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

死と隣り合う映像の役割

2010-02-16 11:06:20 | しずおか地酒研究会

 人生、50年近く生きてくると、お祝い事よりもお悔み事に接する機会が増えてきます。私は10代のころミッションスクールに通いながらも、仏像や仏教の本に興味を持って、大学では東洋美術や仏教伝来史を学びました。40代になってふたたび禅の本を紐解くようになり、実際に座禅にも通うようになり、死生観を持つ訓練をしている、と自覚もしています。

 ・・・そうはいっても、観念上の訓練は空論にすぎません。実際に近しい人の死に接すると、自分でも驚くほど気力が萎え、意味もなく(…いや意味はあるんでしょうけど)泣けてきます。

 このブログでも何人かの近しい方の訃報をお伝えしてきましたが、今回も辛いお知らせです。

 

 先週末、お2人の訃報が届きました。お一人は、敬愛する利き酒師・日本酒学師の萩原和子さんのご主人總三さん。76歳で今なお酒売り場に立つお元気な萩原さんを、陰ながら支え、82歳でお亡くなりになりました。突然死でした。

 

 直前までお元気だったそうで、萩原さんもさぞかし驚かれたと思いますが、昨夜の通夜では、「私に一切世話をかけることなく、存分に働く時間を与え、旅立ってくれた、見事なお父さんです」と気丈に語っておられました。一緒に参列した地酒研メンバーが思わず、「失礼な言い方になるかもしれませんが、理想の最期ですね」と。總三さんとは一度お会いしたことがあり、お電話ではちょくちょくお話もさせていただいたことがあります。萩原さんが半世紀以上も販売員としてキャリアを重ねてこられたのは、こういう懐の深いパートナーのおかげなんだなぁと羨ましく感じていました。

 『吟醸王国しずおか』映像製作委員会で、萩原さんが個人でポンと大吟醸会員になってくださったのも、ご主人のご理解の賜物だと感謝しています。

 

 萩原さんは、しばらくお休みされた後、職場復帰されると思いますので、はぎさんファンの方、職場(篠田酒店ドリームプラザ店)でぜひ慰労してさしあげてください。

 

 

 もうお一人は、静岡県の大吟醸を客に初めて呑ませた伝説の鮨職人こと、『竹島』の竹島義高さん(69歳)です。

 

 竹島さんの功績については、過去の記事(09年3月4日)(09年3月20日)をご覧いただくとして、竹島さんの長い闘病生活の間、『吟醸王国しずおか』の撮影にご協力いただき、その後は力を合わせて『竹島』の暖簾を守り続けてきたご家族のみなさまに、まずはお悔やみと、心からの感謝を伝えたいと思います。

 

 

 染色画家の松井妙子先生から、「竹島さんがかなりお悪いようだけど、映画の完成を心待ちにされているみたい」とうかがったのは今年1月半ば。すぐにお店にうかがって、お見舞いはむずかしいが映像を見てもらうことはできそうだとわかり、カメラマンの成岡正之さんに無理をお願いして、竹島さんで撮影したシーンだけを取り出してDVDにダビングしてもらい、お届けしました。

 

 

 今月に入って、ふたたび松井先生から「映像はご本人も見たようだけど、こん睡状態で反応がないらしい」と連絡をいただき、不安な日々を送っていましたが、2月13日にとうとう逝ってしまわれました。

 

 息子さんから一報をいただいた時は、不覚にも電話口で泣いてしまいましたが、冷静になってみたら、『吟醸王国しずおか』は、07年6月の酒米研究家永谷正治先生の死が直接の“着火”となり、08年8月に能登へ波瀬正吉さん(開運杜氏・09年7月逝去)を撮りに行き、直後に作ったパイロット版で故・栗田覚一郎さん(元静岡県酒造組合専務理事)ほか亡き功労者の写真を編集し、09年3月に竹島さんを撮影・・・。つねに先人の死と隣り合ってきたわけです。

 

 このことの意味と、この映像プロジェクトの役割を理解してくれる人は、多くはないと思いますが、竹島さんの死は、自分が、先人たちと、後継者たちをつなぐポジションにいることを、痛いほど思い知らせてくれました。萩原總三さんの死も、間接的にこの映像プロジェクトを支える多くの力があるのだと、改めて知らしめてくれました。

 

 

 竹島義高さんの遷霊祭(通夜)は2月18日(木)18時から。告別式は2月19日(金)10時30分から。場所は静岡市駿河区のあいネットホール新川です。本日(16日)付けの静岡新聞朝刊訃報欄もご参照ください。


平素の工夫覚悟

2010-02-14 11:53:09 | 本と雑誌

 先週、大河ドラマ『龍馬伝』を見ていたら、黒船に乗り込もうとした吉田松陰がやたら熱血漢に描かれていて、「あれ、松陰ってこんなストレートで熱いキャラだっけ?、ちょっと浮世離れした思想家じゃなかったっけ?」と引っ掛かり、幕末長州モノの名作・司馬遼太郎の『世に棲む日々』を読み返しました。司馬さんの幕末モノをじっくり読むのは高校時代以来です・・・。

 

 黒船来航で攘夷だ開国だと混乱するこの時代、実際に黒船に乗り込もうと実力行使に出た松陰。今の時代なら、さしずめ、宇宙から飛来してきたUFOに単独で乗り込もうとした民間の科学者みたい?。

 

 ただし、スピルバーグ映画に出てくるような、少年の頃の夢や好奇心を純粋培養させたような人ではなくて、少年期に既に山鹿流という日本の兵法を極め、日本中を歩いてまわって、日本の国防力を冷静に分析する兵学家でした。

 

 その上で、司馬さん曰く「かれは攘夷家であった。しかしながら他の攘夷家のように、日本国土に宗教的神聖さがあるとしかれら墨夷の靴によってその神聖国土が穢されるといったふうの情念のようなものはあまりもっていなかった。かれの攘夷は奇妙なほどに男性的であった」そう。

 「おおかたの攘夷は、日本人の対外感情の通性がそうであるように、女性的であった。松陰はちがっている。海をこえてやってきた「豪傑」どもと、日本武士が武士の誇りのもとにたちあがり、刃をかざして大決闘を演するというふうの攘夷であった。このため敵を豪傑として尊敬するところが松陰にはある」。

 

 ・・・なるほど、SFファンタジーのスピルバーグではなく、ジョン・フォードか黒澤明の世界か。で、あの熱血描写か…と妙に納得してしまった私。

 

 

 

 一方、師の佐久間象山とのやりとりで、師匠から論語でも読んで頭を冷やせと言われると、自分には思想哲学を論じるものより、実際にあったことを述べる歴史書のほうが役に立つと言い返し、「経書の究明をよりどころにする必要はなく、平素の工夫覚悟をよりどころにします」と明言する。

 それほど己が立派か、と象山が腹を立てると、「人間、生を肯定するところにおいて、世のいっさいがあります。(中略)ところが寅次郎はすでに生をすてております。生を捨てることが“平素の工夫覚悟”であります。生をすててみれば、視界は雲なく霧なく、きわめて澄みわたり、世の現象がいかにもクッキリとみえ、自分がなにをなすべきかの道も、白道一筋、坦坦として眼前にあります」と。象山から見ても、松陰は誇大妄想の徒ではなく、他の誰よりも謙虚で慎み深い弟子であるだけに、反論できない。

 

 

 “平素の工夫覚悟”という言葉に、私の好きな、白隠禅師の“動中工夫勝静中”を思い起こしました。生(への執着)をすてたと断言するところなど、禅を極めた高僧に我が身を重ねたようですね、ほんと。20代前半でそんな境地に至るなんて、どんな精神構造をしているんだろうと思います。彼を単に奇人変人扱いするのはカンタンですが、考えてみれば、ゴルフの石川遼くんみたいに、10代であの落ち着きはナニ!?って大人がドギマギするような逸材というのは、いつの世にも降って湧いて出てくるんですね。

 

 …松陰は少年寅次郎の時代から叔父の玉木文之進にスパルタ英才教育を受け、長州藩主毛利慶親も彼の賢さを引き立て、19歳で藩の防衛偵察員に抜擢する。長州というお国柄が彼を純粋培養させたともいえるでしょう。教育環境って大事なんですね、ほんと。ちなみに玉木文之進って親戚の子だった乃木希典の教育係も務め、同じようにスパルタ教育したそうな。

 

 

 

 そんな松陰も、密航の直前、「おそらく九分九厘失敗して刑死するであろうこの快挙を断行するにあたって、虫のように殺され、その死の意味も知られずにおわるということが、どうにも気に入らなかった」ようで、同志に打ち明け、失敗して下田から囚人駕籠で護送されるとき、「なぜ自分の名前を貼札しないか」と役人に本気で怒ったとか。・・・なんだか人間臭くて好感持てます。

 

 

 彼はその後、ご存知の通り、獄中で囚人仲間に日本の危機を説き、自身がとった行動を話して聴かせて「衆、みな感動」させ、長州に戻されてからは、野山獄を、一芸を持つ囚人仲間を互いに「師」とする囚人学校にしてしまい、それが松下村塾へとつながります。このあたりは、司馬作品よりも、私の愛読書である歴史ギャグ漫画・みなもと太郎の『風雲児たち』のほうが面白くてわかりやすいかな。いずれにしても、まさに、“平素の工夫”を覚悟して実践したわけですね。

 

 

 

 下田には親戚がいるので、小さいころから何度となく幕末ゆかりの史跡を散歩したりしてましたが、ペリーやハリスや唐人お吉ゆかりの寺、龍馬が勝海舟のはからいで山内容堂に脱藩の罪を許される場所など有名史跡がいっぱいありすぎて、海岸の松陰像も、その中の一つぐらいにしか意識して見てませんでした。

 しかし、この年になって『世に棲む日々』を読み返すと、あの時代にあの若さ(密航時は24歳、刑死したのは29歳)で禅の境地のような行動をとり、理想に殉じた、人間としての行動原理の純度に感動させられ、史跡一つ、見る目も変わってくるだろうと思えます。

 

 

 今年は下田で『下田龍馬伝』という町おこしもやっているようですので、久しぶりに訪ねてみようかな。


しずおか子育て応援メッセ2010

2010-02-11 10:11:41 | 吟醸王国しずおか

 昨日(10日)はあざれあで開かれた『しずおか子育て応援メッセ2010』に行ってきました。子なしシングルの私には縁のない内容ですが、NPO法人活き生きネットワークさんが県から制作を請け負った『出産・育児で困ったときに相談しやすいところ』という小冊子の編集をお手伝いした関係から、見本版を初披露するこの日、参加者の反応を確かめにうかがったのでした。詳しくは活き生きネットワークさんのブログをご覧ください。

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 定刻よりちょっと遅れて会場入りしたら、県の事業を委託した4団体の事例発表が行われていました。

 このうち、異なるジャンルの団体が協働で子育て支援を行う事例として、聖隷クリストファー大学とNPOが取り組んだ『親子向け食育イベントと“子育てひろばたっくん”』、NPO法人ころころねっとが聖隷浜松病院等と取り組んだ『ふたごみつご先輩ママ相談員育成講座&出前支援』は、なるほど、行政だけでは手の届かない、現場のニーズに即応した活動だなぁ、と門外漢ながら感心しました。

 

 とくに双子や三つ子など多胎児を授かった家庭では、それが初産ならばなおのこと、傍からはうかがい知れない苦労や悩みがあろうかと思います。子どもを預けて働きに行くどころか、買い物に行くだけでも一苦労でしょう。「他のお母さんたちのように、お母さん同士で集まって気分転換をはかったり、情報交換する場すら持てない」というのが現実です。

 

 

 それでも心強く感じたのは、発表者のNPO法人ころころねっと理事長の池谷貴子さんが「でも、一人子育てで、その子一人しか目に入らず、ちょっとしたことでもクヨクヨ悩むお母さんに比べたら、2人3人同時に育てるお母さんのほうが大らか」とおっしゃったこと。テレビでもよく見ますよね、子だくさん家族のお母さんのたくましい姿。“この子はこう”“その子はそう”とふんぎりがつきやすいんだと思います。

 

 

 子育てとはまったく違いますが、今、私も、『吟醸王国しずおか』映像製作委員会で有志を募って、苦境にある資金集めや広報戦略について何度か話し合いの場を持っています。一匹狼で仕事してきた身にしたら、チームワークで一つのミッションに取り組む不慣れが原因で、メンバーを束ねてベクトルを合わせることだけでもフゥフゥ・・・。一度に大勢からいろんなことを言われて混乱している状態ですが、多胎児のお母さんに比べたら、まだましかなぁ。(有志の皆さん、赤ちゃんと同列扱いしてしまってゴメンナサイ・・・)。

 この人はこう、あの人はああなんだって、ちゃんと個人個人を理解すれば、つまりその人がなぜそういう言動をとるのか、その人の立場に立って考えてみれば、クヨクヨ悩むことはないんですよね。

 

 私は、子育て中のお母さんたちをやっぱりどこか他人目線で見ていますが、実際には、子育てに取り組むお母さんたちから教わることのほうが多いのかもしれないな、と思いました。

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 ところで、私もお手伝いした小冊子『出産・育児で困ったときに相談しやすいところ』は、若干の直しを加え、3月中には発行予定です。県中部(静岡市、焼津市、藤枝市、島田市)の子育て相談機関の連絡先を網羅してありますので、出産を控えた方や育児奮闘中のご家庭に届けばいいな!と思っています。


ネット通販の裏側で

2010-02-09 10:50:26 | ニュービジネス協議会

 昨日(8日)は(社)静岡県ニュービジネス協議会西部部会の企業視察で、創業1889年という老舗の倉庫会社・浜松委託倉庫㈱米津出荷センターを訪問しました。中田島砂丘の西、米津浜に近い、国道1号線バイパス沿いにあり、遠州のからっ風を覚悟し、ババシャツとスパッツを着込んで向かったのに、春のようなポカポカ陽気で風もなく、海岸をお散歩したくなる気分でした。

 

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 ここは3年前に改装した最新式の倉庫で、ネット通販の出荷代行を主業務とし、マイナス25℃の冷凍倉庫、10℃の定温(低温)倉庫、常温倉庫を完備しています。せっかく防寒服で来たのだし、マイナス25℃を体験するなんてめったにないから、喜び勇んで入ったものの、冷気をガーッと浴びて「ひぇ~っ!」と思わず声を上げてしまいました。すぐに10℃の定温フロアに出ると、10℃のフロアがなんと暖かいこと・・・!

 

 

 クライアントは有名菓子メーカー、輸入食品卸業者、ホテル、酒販店、健康食品業者、美容理容関係など。この日はバレンタインデー間近とあって、1階の10℃の定温フロアでは女性スタッフがチョコレート菓子の配送準備に追わImgp1916 れていました。

 2階はワイン、日本酒、ビール類がズラリ。私が愛飲する静岡の○○や、地酒通に愛される△△なども。でも圧倒的に多いのはワインで、過去には一人で1回に600万円分注文した人もいたとか。ワインって1本数10万円の価格がつくものもあるから、そりゃぁ、買おうと思えば外車1台分ぐらいの値段になるのも不思議じゃないですね。…日本酒ではありえない話です。

 

 

 

 それはさておき、現場を指導する小田久文部長のお話で印象に残ったのは、女性スタッフへの気配りです。

 

 委託の仕事とは、どんな単純ミスでもミスは即、信用問題につながります。そんな大事な現場作業をまかなうのは、女性のパート・アルバイト・派遣のみなさん。いろんな雇用形態で、勤務時間もバラバラなスタッフを、「誰が、どのセクションに回っても、同じレベルの仕事をミスなくできるように」教育しなければなりません。

 

 たとえば、菓子メーカーとアルコール業者では、梱包の仕方から伝票の形態、発送の手順などありとあらゆる方法が異なり、統一したマニュアルや自動化は不可能。すべて手作業での対応です。

 

 「慣れやマンネリがミスを生む元凶。つねに何かに“気付く”感性を持たせることが肝要だ」と言う小田部長。出社時点から“気付き”の訓練が始まります。Imgp1905 食品を扱う場所だけに、外からゴミは持ち込ませないよう、下駄箱は一足ずつ収納ケースに入れ、ケースはつねに拭き掃除で清潔に保ちます。傘立ても同じです。

 

 オペレーションルームは廊下からガラス越しで丸見え状態にし、戸棚は扉を外してつねにオープン状態。机の引き出しは、必要な文具以外収納できない構造にしています。

 

 

 Imgp1911 さらに徹底しているのが、トイレや食堂。トイレットペーパーの柄を毎月換えて、「月が変わったことを気付かせる」。食堂の椅子(2色)は毎日並び替えて、「日が変わったことを気付かせる」。和室のテーブルはそのつど片付け、忘れ物やごみがないかつねに確認できるようにする。・・・これ、すべて小田部長の発案だそうです。

 

 

 

 

 「次に使う人に不便をかけないように、という心掛けが身に着けば、作業現場での連携も円滑になる」

 「“気付き”が出来なければ、“改善”はできない」

 

 

 

 小田部長は、工賃ワーカーを指導するにはこれくらい徹底しないと、と真摯に語りますが、どんな仕事でもチームワークで取り組む時はとても大切ですよね、こういうことって。

 

 「あと、女性に気持ち良く働いてもらうには、全員に平等に接すること。これが大事です。私はその日の出勤社員には全員に1日3回必ず声をかけるようにしていますし、全社員の誕生日を覚えて、ささやかなお祝いをしています。女性同士の職場では、とかく、誰が特別に声をかけられたとか、ひいきにしてもらっているという噂が広がりやすい。これが一番怖いです(苦笑)」。

 

 

 

 

 倉庫会社の見学でしたが、ふだん、気軽に利用しているネット通販の裏側で、人間が集団で作業する現場の、ある意味、アナログで切実な実態が垣間見えて、大変興味深い取材でした。便利なことって、裏でやっぱり手がかかっているんだなぁって改めて発見&感謝です。

 

 

 


食卓発、景気浮揚のスグレモノ

2010-02-05 11:52:46 | アート・文化

 2月3日は東京ビッグサイトで開催中の『第7回グルメ&ダイニングスタイルショー~ニッポンいいもの再発見!』に、4日は東京ドームで開催中の『テーブルウェア・フェスティバル2010~暮らしを彩る器展』に行ってきました。景気が悪い悪いと言いながらも、どデカイ会場に所狭しと並ぶ新開発・ニューデザインの商品群を眺めていると、日本の底力は大したものだと実感させられました。

 

 

 まず先のブログでもご紹介した『第7回グルメ&ダイニングスタイルショー』では、静岡県商工会連合会が開発したデザート用ふりかけのマーケティング調Imgp1870 査をお手伝いしました。10時過ぎから17時ぐらいまで、途中休憩をもらいながらも立ちっぱなしで200人以上のアンケート調査をするって、運動不足の身にはけっこう来ました。立っていただけなのに、夜ホテルで靴下を脱いだらしっかりマメが・・・(苦笑)。4日間の期間中、職務とはいえ、ぶっとおしでブース番をする商工会スタッフの方々には頭が下がります。いつもは言いたい放題ばかり言っちゃって、本当にすみません・・・。

 

 

 デザート用ふりかけの名前はご覧のとおり『ふりーらフルーら』。愛称“ふりImgp1868 フラ”で決まりました。“フルーツのふりかけをふる”に、静岡弁の“~ら”をくっつけて、「ふりかけフルら?」って意味を込めてみました。いかにも苦肉の策って感じでしょう?(苦笑) ブログでネーミング変更の顛末を書いたのは、前案『デコフリフリ』が新聞発表されてしまって、私のところにも問合せがあったから。正直なところ、『デコフリフリ』ってどーなのよ?って思いは個人的にもありましたし(苦笑)。

 

 

 

 名前はともかく、会場では、なんといっても、ふりかけをアイスクリームやヨーグルトにふって、紅ほっぺや三ケ日ミカンやアメーラとまとの味に変身させるというアイディアが大いに受けました。

Imgp1871_2  豆腐とかゼリーとか、スタンダードな食品ならば、ちょっとネーミングやパッケージで遊んでみたりすることで斬新さを打ち出す価値もあるんでしょうけど、この商品は、発想そのものが斬新だから、ネーミングなんて二の次三の次なんだろうなぁと落ち込みつつも、試食した人の好反応には素直に感激!名のある販売店さんや流通業者さんから「大量注文できるか?」「卸価格は?」と具体的な質問を次々にフラれて、ふりかけ加工業者さんも目をフリフリさせていました(笑)。

 

 川勝知事は、食と農の6次産業=1次(農業)+2次(加工技術)+3次(販売企画)の重要性をさかんに述べているようです。この商品はそのお手本になれるのでは、と、会場の反響を肌で感じながら確信しました。

 静岡県内の発表会は2月22日(月)に県産業経済会館で開催予定です。県内の流通業者やマスコミのみなさま、ぜひご期待くださいまし!

 

 

 

 

 翌4日は、午前中、東京ドームの『テーブルウェア・フェスティバル2010~暮Imgp1900 らしを彩る器展』へ。静岡市の伝統工芸作家のみなさんが共同でテーブルセッティングの提案を行っています。詳細レポートはこちらをご覧いただくとして、著名な料理研究家やテーブルコーディネーター、俳優や空間プロデューサーたちが提案する華やかな食卓デザインも魅力的でしたが、アマチュアデザイナーたImgp1890 ちの斬新なアイディアや、日本酒を注ぎたくなる、日本酒を楽しむ空間に使いたくなるモノたちに大いに惹かれました。

 こちらはテーブルウェア大賞(コーディネート部門)を受賞した長野県の中村麻子さんの「おんばしら祭に」。テーブルの真ん中に木板をドンと据え、祭りと日本酒を見事に伝統マッチングさせていました! 

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  木材利用では、華やかなブースが多い中で、この桶榮(東京・深川)の木桶だけの世界観もハッとさせられます。四角錐の木のとっくり、いいですよね~。 

 

 

 昨年もこの会場で記憶に残した嘉久房窯Imgp1882 (長崎・平戸)の美しいフォルムの白磁。静岡吟醸の最上級クラスを注ぎたくなります。

 

 

 

 

 

 

 今年はこの木製酒器に感動しました。木材のきれはしだけで造った岐阜の河村寿昌さんの「ぐいのみいろいろ」。

 日本酒は、原料の米が土の力で育ったImgp1886 ものだから、注ぐ器も土から作られる陶磁器がベストだろうと思っていましたが、米から酒に発酵するとき、とくに核心部分である麹造りでは、木製の麹蓋を“寝床”にする。枡のようなちょっと飲みにくい形状でなければ、木製のぐいのみもいいなぁと最近思い始めていたところ。木材によってこんなに種々さまざまな表情が楽しめるなら、静岡県産の木材の余り部分を再利用して、オリジナルの酒器が出来ないだろうかと想像を膨らませました。

 

 

 天竜川水系や大井川水系、安倍川水系、富士山水系と、酒蔵の水源地は木材産地でもあります。環境を考える上でも、木材業者さんや木工職人さんたちと共同で何か仕掛けられないかと思います。…関係する方がいらしたらぜひ一考願います。

 

 

 食卓に並ぶ食品や器は、金額にしたら景気を左右するほどのものではないかもしれませんが、消費者がふだんづかいのものに、いくら使うか、どんな基準で商品選びをするかは、とても大事だと思います。小さな器ひとつ、食品ひとつに懸命に知恵とデザインを凝らして、新しい価値を生み出そうとするクリエーターたちのモノづくりパワーと、東京ビッグサイトと東京ドームに詰めかけた人々の“ヒット商品を発掘したいパワー”は、日本人の底知れぬしたたかさを伝えてくれました。