ななきたのご隠居~野崎 幸治

千葉市美浜区で行政書士をしています。
地元では「ななきた(磯辺7丁目北自治会)のご隠居」と言われています。

奥の細道旅行譚(那須)

2016年05月08日 | 旅行

2016年大型連休もそろそろ終わりですね。心豊かに過ごされたでしょうか。

奥の細道の足跡を訪ねる旅も昨年は「室の八島」で終わっています。

今年も季節が良くなってきてゆるりと続きを行ってみたいと思います。

芭蕉一行は室の八島から鹿沼・日光と訪ねますが現在は日光陽明門はまだ修理中で見られません。

当ブログでも以前に日光東照宮は紹介していますがその時も修理中でした。

来年4月には工事が終わる予定なのでその頃東照宮はもちろん中禅寺湖から戦場ヶ原あたりまで行ってみたいと思います。

とりあえず鹿沼・日光は飛ばします。

JR西那須野駅から国道461号線を黒羽市街に向かっていくと広い水田がどこまでも続き田植えの真っ最中です。

芭蕉一行も陽暦の5月20日頃歩いていたわけで皐月の風にそよぐ早苗を見ながら何を思っていたのでしょうか。

感慨深いですね。千住を出発して「行く春」から「夏(げ)の初め」そして「夏木立」と季節が移って行きます。

日光を出て、川室(かわむろ)、大渡(おおわたり)、船生(ふにゅう)、玉生(たまにゅう)、矢板、大田原と芭蕉の時代そのままの地名が現在も残っているのがすごいなと思いました。

日光から那須へ向かう本街道を利用しないで近道の荒地であった「那須野が原」を踏破したため困難だったようです。

日没になり雨に降られてどうにか農家に泊めてもらいます。

曾良の日記によると農家でなく翠桃宅(のちにでてくる黒羽藩家老浄法寺図書の弟)に泊まったようです。

その後馬を借りてしばらく進みますがここには可愛い女の子が登場します。これもフィクションだそうです。

紀行文と言っても事実だけ書いていたのでは旅情感が出ないので創作して初めていいものができるのでしょうかね。

「草刈るおのこ」「小娘」「野飼い馬」など那須野の原野をを幻想的に筋立てにしているそうです。陸奥を舞台にした謡曲「錦木」など意識しているという説もあります。ただぶらりと旅に出たわけではなく事前調査万全ででかけたのでしょう。

江戸時代から、いやもっと昔から日本の5月には新緑と青空を泳ぐ鯉のぼりの風景があったのでしょうね。

日本の一番いい季節です。

 

奥の細道(那須)

那須の黒ばねと云所に知人あれば、是より野越にかかりて、直進(すぐみち)をゆかんとす。遥かに一村を見かけて行くに、雨降日暮る。

那須の黒羽に知人がいるのでこれより本街道を行かずにまっすぐな近道をして行くことにした。はるか向こうに見える一村を目当てに行くと雨が降ってきて日も暮れてしまった。

農夫の家に一夜をかりて明ければ又野中を行。そこに野飼の馬あり。草刈るおのこになげきよれば、野夫といえども、さすがに情しらぬには非ず。

そこで農家の家に一夜をかりて夜が明けるとまた一面の野原を歩く。と、原の中に放し飼いの馬がいた。草を刈っていた農夫に馬を貸してくれと頼みこむと田舎の人とはいえ人情を持ち合わせていた。

「いかがすべきや。されども此野は縦横にわかれていてうゐうゐ敷旅人の道ふみたがえん、あやしう待たれば、此の馬のとどまる所にて馬を返し給え」とかし侍りぬ。

「どうしたものかな。忙しいので案内するわけにもいかないがこの辺は道がむやみやたらに分かれていて初めて旅する人にとっては道に迷いそうです。この馬に乗って行って止まったところで馬を返してください」

ちいさき者ふたり、馬の跡したひてはしる。独は小姫にて、名を「かさね」と云う。聞きなれぬ名のやさしければ、

子供が二人馬の跡をついて走ってくる。一人は可愛らしい女の子で「かさね」という名前だ。あまり聞きなれない名前が優雅なので

かさねとは 八重撫子(やえなでしこ)の 名成るべし   曾良

可愛らしい女の子をよく撫子にたとえるが、花弁を八重に重ねた(かさね)八重撫子の名であろう

やがて人里に至れば、あたひを鞍つぼに結びつけて馬を返しぬ。

ほどなく人家のある村里に着いたので、駄賃を鞍壺のところに結んで馬を返した。

 

「憧れの日光を見た後でなんだか鄙びた場所になってしまいましたね」

「日は暮れるし雨は降ってくるし心細いね。あれに農家が見えてきた。曾良さん!宿泊交渉してきてよ」

「有名人なんだから自分でお願いしたら?僕の行くところにはいつも人が待っていると自慢してるじゃないですか」

「僕は大所高所の人だから細かいこと苦手なんだ」

「頭下げるの嫌いな人ですねぇ」

「宿泊 O K で~す」

(翌朝)

「今日も野原を歩くかと思っていたら馬を借りられてよかったね」

「レンタカーいやレンタホースですね。その上、乗り捨て自由、料金後払い。気が利いてますよね」

「更には自分で車庫いや馬屋まで帰って行く。まさに自動運転。スバル、レガシィの自動運転より優れもの。ガソリンも食わなくてなおさらいいや」

「後ろから可愛い女の子がついてくるよ。曾良さん飴玉でも持っていないのかい?」

「いや何もないから手品でもやってみましょうか」

「お嬢ちゃん!この横縞手ぬぐい見ていてね。ぐるぐるって丸めて懐に入れるでしょう。そして出したら縦縞になっていた。不思議だよね」

「ちっとも面白くない!!」

「今どきの子にマギー司郎の真似したってうけないよ」

「ところでお嬢ちゃん年はいくつ?」

「おいおい女性に年を訊いたら失礼だよ」

「失礼じゃないけど、個人情報だから簡単に言わない!」

「ギャフーン。今どきの子はしっかりしているね」 

「それじゃ名前も教えてくれないね」

「うん。あだ名なら教えてあげる!」

「源氏名なんていうかと思った」

「ぞうりに(かさね)って書いてあるよ」

「ばれたか~」

「撫子みたいに可愛いからつけたのかな?それとも将来はなでしこジャパンみたいに活躍してほしいのかな」

「どうでもいいけど私の名前をかたっておれおれ詐欺なんかやらないでね」

「ウーン。最後まで寂しい世の中になったのを感じるねぇ」

 

コメント
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