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ボタンととれた上着の似合う首相もたまにはいい

2011-09-02 08:00:26 | 編集手帳



  

  8月30日付 読売新聞編集手帳


  街灯のそばで、
  地面に這(は)いつくばった男がいる。
  「何かお捜しですか?」
  「上着のボタンを落としましてね」
  「ここで落としたんですか?」
  「いいえ。でも、ここがいちばん明るいものですから…」。
  西洋のジョークにある。

  国民の信頼というボタンを、
  民主党はどこかに落とした。
  東北地方の被災地、
  不手際で国益を揺るがせた尖閣諸島沖、
  「普天間」で迷走した沖縄…
  心当たりの場所はいくつもあるだろう。

  かつて一度は光り輝いた政権公約(マニフェスト)という“街灯”の周囲を
  うろうろしていればボタンが見つかる。
  そう考える人がいまも党内にいることが不思議でならない。

  野田佳彦氏が民主党の新しい代表に選ばれた。
  街灯の下を離れ、
  野党の手も借りてボタンを捜そう、
  と説いた人である。
  マニフェストを守れば国民の信頼は戻る、
  と唱えた対抗馬が敗れたのは、
  当然というほかはない。

  辞を低くして野党に協力を仰ぐ場面もあるだろう。
  あまり格好のいい役回りではないが、
  金ピカの衣装で見得(みえ)を切る花形役者になりたがった首相のあとである。
  ボタンのとれた上着の似合う首相もたまにはいい。
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