9月13日付 読売新聞編集手帳
普段はろくに目も留めない文章を二度三度と読み直した。
ポップコーンの袋に印刷してある。
〈品質には万全を期して製造しておりますが、万一不都合な点がございましたら…〉
取り換えてくれるという。
閣僚名簿にもこの文章を添付してはどうだろう。
失言の責任を取って鉢呂吉雄経済産業相があっさり辞表を出し、
野田首相もあっさり受理した。あっさりしすぎて、
かえって気にかかる。
「死の街」の稚拙な表現力も、
「ほら、放射能」の悪ふざけにしても、
かばうつもりはさらさらないが、
読者のお叱りを覚悟の上で正直な感想を述べれば、
「謝罪」以上、
「辞任」未満あたりが妥当な“量刑”に思えてならない。
軽重で言えば、
一川保夫防衛相が述べた「安全保障に関して素人だ」のほうが、
はるかに罪が重いだろう。
銀行の警備責任者が「私は警備の素人だ」と公言すれば、
どこの誰が銀行の金庫に悪心を抱かぬとも限らない。
不用意な発言が領土領海をめぐって近隣諸国の要らざる挑発行為を招かないか、
心配である。
お菓子並みに“お取り換え”の利く内閣には、
「あっさり」の第二弾を注文しておく。