12月17日 NHK海外ネットワーク
旧ソビエトの後ろ盾を失い、経済的にも行き詰っているのが
旧ソビエト圏とEUの境にあるモルドバである。
モルドバには肥沃な農地が広がる。
旧ソビエト時代、各地にコルホーズと呼ばれる集団農場が設けられた。
収穫された小麦をソビエト各地に出荷することで、
モルドバの人々は安定した生活を送っていたが
ソビエト崩壊後、コルホーズが解体され生活は一変する。
広大な農場を住民自ら運営することが出来なくなり農業は衰退した。
多くの国民が外国で出稼ぎをしている。
モルドバ西部にある農村カルピネニ村。
村の住民1万2千人のうち4千人が外国に働きに出ている。
村の幼稚園の子供たちのほとんどの親が出稼ぎに行っている。
小さな姉弟の両親はイタリアで働いているため、祖母と生活している。
イタリアから毎月送られてくる1万円の現金と缶詰など食料は
収入が月5千円ほどしかないので大きな支えである。
仕送りの中には人形、ミニカーなどおもちゃも入っている。
両親が帰国できるのは毎年、年に1度だけ。
祖母の息子3人は、イタリアで働く長男、
次男はギリシャで、3男はロシアで働いている。
農業が衰退する中でモルドバ経済を支えているのがワインの製造。
地下坑道のあとを利用したワインの貯蔵庫がある国営のワイン工場。
モルドバのワインは品質が良いとして
ソビエト時代からコレクターの間で高い評価を得てきた。
ずらりと並ぶ年代物のワインの数は約600本は、
ロシアのプーチン首相のコレクションである。
モルドバのワインの最大の市場はロシアだが、
ここ数年、販売量は伸び悩んでいる。
南部にあるワイン工場は新たにEUに販路を求め、
イタリア製の高価な最新設備を購入、
高級感を演出しようとラベルも一新したが、
EUで知名度の低いモルドバのワインは思うように売れなかった。
モルドバ政府は独立後、低迷する経済を建て直すため
ロシアとの関係を維持しながらEUとのつながりも深めようとしてきた。
モルドバ ルプ大統領代行
「モルドバは地理的に位置する場所から言っても
旧ソビエト諸国ともヨーロッパとも良い関係を築かなければならない。」
しかし国の舵取りをするはずの政治が混乱している。
ロシアとEU、どちらとの関係を強化するかをめぐり議会が対立、
2年前大統領が辞任し、今も大統領不在のままである。
ソビエト崩壊から20年、
モルドバはかつて盟主だったロシアとEUの狭間で国の発展の糸口すら見出せずにいる。
ソビエト連邦を構成した15の国のうちバルト3国がEUに加盟を果たした。
ソビエト時代の負の遺産を払拭しようとした国々にとってもロシアの存在は大きく、
経済的に依存せざるを得ない部分がある。
そのロシアのプーチン首相は、
「ユーラシア連合」構造をうちあげ、
旧ソビエトの間で経済を中心に統合を進めるという旧ソビエト連邦を思わせる動きもある。
リトアニアの独立を率いた リトアニア アダムクス前大統領
「ロシアが周辺国に友好的に対応してくれることを臨む。
共存できるようにしていく必要がある。
その鍵は若い世代にある。
民主主義、表現の自由、人権などの価値観を持つ若い世代が生まれていることに
希望を持っている。」
EUの一員となって発展した国もあれば
期待したようには国の再建が進まなかった国もある。
ロシアに飲み込まれず、
ヨーロッパにも埋もれず、
如何に独り立ちをはかっていくのか真価が問われるのはこれからである。