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なでしこの足跡にまた大輪の花が咲いた

2012-01-15 17:59:40 | 報道/ニュース



  1月11日付 読売新聞編集手帳


  小説家の故・豊島与志雄の随筆より。
  〈衆に媚(こ)びず、
   孤独を恐れず、
   自己の力によって自ら立ち、
   驕(おご)らず卑下せず、
   霜雪(そうせつ)の寒にも自若(じじゃく)として、
   己自身に微笑(ほほえ)みかくる、
   揺ぎなき気(き)魄(はく)である〉。

  梅の花を語っている。
  未来社『豊島与志雄著作集第6巻』から引いた。
  いかがだろう。
  種明かしをしなければ、
  女子サッカーの日本代表(なでしこジャパン)を取り上げた論評と
  勘違いする人がおられるかも知れない。

  梅花の〈気魄〉には、
  脚光を浴びることのなかった女子サッカーで不遇の季節に耐えて昨年、
  ワールドカップ優勝を果たしたなでしこたちに通じるものがあろう。

  主将の沢穂(ほ)希(まれ)選手(33)が
  国際サッカー連盟の「女子世界最優秀選手」に選ばれた。
  あなたのつけた足あとにゃ きれいな花が咲くでしょう…と
  『三百六十五歩のマーチ』にあるが、
  国民栄誉賞や菊池寛賞などに続いて、
  足跡にまた大輪の花が咲いた。
  なでしこの優勝は暑い夏のことであったが、
  心の温度で計るならば震災後の列島を〈霜雪の寒〉が包むなかで、
  救いのような朗報であったのを思い出す。

ひとの“足あと”ほど美しい花器はない。
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