10月10日 NHKBS1「国際報道2019」
ユニセフ国連児童基金がインドの人たちに向けて作った公衆衛生の啓発ポスター。
落ちているごみが少なく川もきれいな状態を目指そうと呼び掛けているが
実際にはインドでは
長年ゴミのポイ捨てやトイレの普及の遅れなどによって生活環境が汚染されてきた。
そこでモディ首相は2014年に就任したときから
「きれいなインド」を重点政策として掲げ
国を挙げて改善に取り組んでいる。
そして最近では3年後の2022年までに
プラスチック袋などの使い捨てプラスチック製品を全面的に禁止するという
大胆な環境保護政策を打ち出した。
こうしたモディ首相の方針を先取りして
インド西部の州では去年6月からすでに使い捨てプラスチックの全面禁止に踏み切った。
人口の急増や経済成長に伴いあふれ出るプラスチックごみの対策に追われているインド。
モディ首相は
9月国際会議で各国の代表を前に
使い捨てプラスチックを禁止する方針を示した。
(インド モディ首相)
「インドは今後 数年で使い捨てプラスチックを廃止する。
世界も使い捨てプラスチックに別れを告げる時が来ている。」
インド西部の町ムンバイ。
人口約2千万人が暮らす巨大な商業都市である。
ムンバイを含むマハラシュトラ州では
去年6月からいち早く
全面的に使い捨てプラスチックを禁止する措置をとっている。
カフェのストローは紙製。
規制の対象となっているのは
レジ袋やスプーン・フォークなどの食器
小さいペットボトルなど
使用だけでなく製造も禁止である。
1回目の違反で5,000ルピー
日本円で8,000円近い罰金が科せられる。
違反が3回以上になると罰金が5倍になり3か月の禁錮刑も科せられる。
禁止後は布製のエコバッグを持つ人が増えるなど
市民の間に環境対策への意識も芽生え始めている。
(市民)
「排水溝にプラスチックごみがつまると水があふれ家が水浸しになることも。
布の袋を持って歩くのは当然のことです。」
「神聖な牛がプラスチックを食べたら大問題です。
プラスチックが禁止されてよかったです。」
またプラスチックを拾うイベントもインド全土で定期的に行われている。
この日ムンバイの大学で開かれたイベントには900人超が参加した。
(大学生)
「こんなに大量のプラスチックごみが出てきて驚きました。
私たちの世代がプラスチックの削減とリサイクルを進めることが大切です。」
一方 規制の徹底は容易ではない。
市場にある果物を売る店。
人気商品は新鮮なパイナップル。
州の規制では
食品を包むプラスチック製の袋は厚手のものに限られている。
耐久性が高くリサイクルしやすいからである。
ところが今も禁止されている薄手の袋を使う店が少なくない。
店主の1人は
厚手の袋は値段が高く
できれば使いたくないと訴える。
「許可された袋は高くて
我々が買える範囲を超えています。
禁止するのはいいですが
その前に代わりをどうするか決めるべきです。」
施行から1年余。
業界団体は“プラスチック製品の全面禁止は現実的ではない”と訴えている。
(インド小売業協会 CEO)
「すべてのプラスチックが禁止されたら
コストへの打撃は想像もつきません。
今のところ代替品がないからです。
プラスチックの適切な使用法と処分法を社会全体で整えるのが正しい解決策です。」
プラスチックごみとの戦いに乗り出したインド。
しかしそこには
手放しがたい便利さや手軽さという壁が立ちはだかっている。