10月16日 NHKBS1「国際報道2019」
イランの精鋭部隊 革命防衛隊が
アメリカなどの持っていた高度な軍事用ドローンの技術を獲得して
それを自らの支配下にあるイエメンの反政府勢力や
パレスチナ レバノンの武装組織に提供し
イスラエルなどをけん制している構図がある。
9月に襲撃されたサウジアラビアの世界最大級の石油施設。
世界の原油供給量の約5%にあたる生産が一時停止し
世界に衝撃が走った。
攻撃に関与した18機の軍事用ドローンはイランのものだったと
サウジアラビアは主張している。
これに対してイランは関与を全面的に否定。
ただ低コストで製造できる軍事用ドローンの開発には力を入れてきた。
(イラン革命防衛隊 元司令官)
「イランにとってもはやドロン製造はおもちゃ作りと同じだ。」
イランがドローンの技術だけでなく
それを操る戦闘員まで中東各地に送り込んでいる実態がある。
今年8月
レバノンのシーア派組織ヒズボラが首都ベイルートで大々的な葬儀を行った。
隣国シリアでジハード(聖戦)のため殉教したヒズボラの2人の戦闘員を弔うためである。
亡くなったのはヤセルとハサン(23)の2人。
イランの母国語ペルシャ語でイスラム教の歌を歌う様子がある。
♪ 私は空にはばたくハト
あなたに懇願するこの姿を見よ
ふたりが生まれ育ったのはベイルート市内のヒズボラの支配地域。
幼い頃からハサンはヒズボラの幹部候補を養成する学校に通っていた。
そのハサンの6歳の時の映像。
僕はハサン。
ヒズボラが運営するマハディ学校に通ってる
学校で知り合い親友となったのがもう1人の若者ヤセルだった。
ふたりを取材した地元紙のアミン記者。
ふたりは優秀な成績で高校を卒業。
ヒズボラの勧めでイランの大学に留学することになったという。
(地元紙 アミン記者)
「ヒズボラは
優秀な若者に高度な教育を受けさせるために
奨学金を与えてイランに留学させてる。」
ヒズボラはシーア派の地域大国。
イランと密接な関係がある。
そのためヒズボラの若者がイランに留学することは珍しくない。
ハサンもイランでの留学中に中部のシーア派の聖地を訪れ宗教上の教えを学んでいた。
しかしヒズボラの内情を知るアミン記者は
ハサンたちのイラン留学は勉強や新工場の理由とは別に特別な目的があった
という見方を示した。
(地元紙 アミン記者)
「彼らはイランにただ勉強に行ったわけではない。
本当の理由は
イランで高度な航空工学を学んでヒズボラの武装闘争に貢献するためだ。」
対イスラエルでイランと共闘するヒズボラ。
イランから年間1,000億円以上の資金提供を受けていると指摘される。
支援の1つには軍事用ドローンの開発も含まれている。
シリア内戦では専門のドローン部隊を発足させ
実践でその能力を高めてきた。
ハサンたちの留学先はテヘラン郊外にある「イマーム ホサイン大学」だったことが分かっている。
その大学の卒業式の映像では
学生たちは軍服姿で式典にのぞんでいる。
最高指導者ハメネイ師が挨拶の言葉を述べる。
(イラン 最高指導者 ハメネイ師)
「この非常に敏感で重要な施設に参加できることを神に感謝する。」
壇上に並ぶのは革命防衛隊の幹部たちである。
ハサンたちの留学先が革命防衛隊直轄の軍事アカデミーだったことがうかがえる。
この大学の設立に携わった革命防衛隊の元司令官。
大学の目的は最新の軍事技術の向上だとし
ドローンの開発にも力を入れていると明かした。
(イラン革命防衛隊 元司令官 キャナニモガダム氏)
「イマーム ホセイン大学ではドローンの研究や開発が行われている。
そこでの研究などが実際の戦闘で使われる科学技術の基礎となっている。」
この大学に留学したふたりはイスラエルにマークされていた。
イスラエルはふたりがイランの革命防衛隊が駐留するシリアとイランとの間を行き来し
ドローンを操縦する戦闘員として活動していたとみている。
今年8月下旬 イスラエルはシリアでその姿を追っていた。
複数の人が運ぶドローンのような物体。
ハサンたちが操縦に携わっていたとされている。
(イスラエル軍 報道官)
「2人は宇木曜の夜にドローンを発射しようと試みていた。
イスラエル軍はその発射を妨害し防いだ。
だが土曜日に彼らが再び発射を試み
イラン攻撃を阻止するために空爆した。」
空爆でハサンとヤセルは死亡。
イスラエルは“イランのドローン攻撃を防ぐための自衛措置だった”と主張している。
イランが新たに兵器として支配勢力に提供続ける軍事用ドローン。
中東での拡散が続いている。