2020年12月18日 NHKBS1「国際報道2020」
生理や不妊 更年期症状など
女性特有の体の悩みをテクノロジーで解決しようというグッズやサービス
Female と Technologyと を合わせて
FemTech “フェムテック”と呼ばれ
いま世界中で開発が進んでいる。
女性の社会進出などを背景に投資や起業が相次いで
世界の市場規模は2025年には5兆円にのぼるという試算もある。
市場拡大をけん引する国の1つ
アメリカの最前線はー。
新しいフェムテックが次々と生まれているアメリカ シリコンバレー。
妊婦の悩みを解決するフェムテックで世界的に注目を集めるスタートアップ企業がある。
エリック・ディ代表。
2年前に開発したのが陣痛モニター。
お腹に貼りつけ子宮の動きと妊婦と胎児の心拍を計測できる。
妊娠後期になると時々子宮が収縮するが
それが出産につながる陣痛なのか
多くの場合 妊婦自身には分からず病院に行くのが遅れて胎児に危険が及ぶこともある。
このモニターを使うとスマホで子宮収縮の頻度を確認でき
それが規則的になると陣痛が始まった可能性があるといち早く分かるという。
(陣痛モニターを開発 bloomlifeエリック・ディ代表)
「女性たちが自宅にいながら自分の体に何が起きているか分かる初めての装置です。
これによって妊娠中もより安心して過ごせます。」
このモニターを特に支持しているのが働く女性である。
パーキンスさんは去年 妊娠中にこのモニターを活用していた。
看護師として1日12時間以上働いてきたパーキンスさん。
14年前の1人目の出産は予定日より3か月早い早産だった。
長男は1500gで生まれ集中治療室で5週間治療を受けた。
(パーキンスさん)
「私のせいだと自分を責めました。
私が仕事をしていたのがいけなかったのか。」
アメリカでは妊婦の10人に1人
年間38万人が早産している。
早産で生まれた子どもは病気や障害のリスクが高く医療コストもかかるため
大きな社会問題となっている。
去年 妊娠中にこのモニターを知ったパーキンスさん。
利用料は月額20ドルと手ごろで
安心して過ごせるならと使い始めた。
すると出産予定の2か月前
異変に気付いた。
(パーキンスさん)
「波形を見て驚きました。
陣痛が始まっていることを示していたのです。
病院に駆け付け医師に見せると
急を要することがすぐに伝わりました。」
病院で子宮収縮を抑える薬を投与されたパーキンスさん。
なんとか早産を回避でき
その後 娘のアメリアちゃんを無事出産した。
(パーキンスさん)
「私たちの命を救ってくれました。
これなしに妊娠生活を送ることはもう想像できません。」
ディさんがこのモニターを開発した背景には自身のつらい経験があった。
妻は1人目が生まれるまでに3回流産を経験。
その過程で
妊婦検診でしか胎児の状態が分からないなど
周産期医療のあり方に問題意識を持ったという。
(陣痛モニターを開発 bloomlife エリック・ディ代表)
「これほどイノベーションが起きていない医療分野は他にありません。
この十数年 出産年齢の上昇など出産に関わるリスクは高まっていて
解決すべき課題だと思いました。」
ディさんは今このモニターによって収集されたビッグデータの活用にも取り組んでいる。
「これが女性たち1人1人のデータです。
子宮収縮が記録されています。」
このモニターを使った妊婦はこれまでに1万2,000人以上。
ディさんは蓄積された100万時間以上の記録をデータベース化している。
これをそのほかの医療データと組み合わせAIで解析することで
胎児の異常や突然死 早産などの兆候を早期発見できないか研究しているのである。
「モニターの電極を増やしました。
これで妊娠初期から胎児の心拍のデータが取れ異常を早く検知出来ます。」
(提携する産婦人科医)
「すばらしい。
周産期医療のあり方自体を大きく変えていきそうですね。」
このモニターが世界中に普及し新たな治療法などにもつながる可能性があるとして
投資家や大手製薬会社 海外の研究機関などが注目。
これまでに1,400万ドル超の投資が集まっている。
「こうしたデータには非常に価値があるということを彼らは知っています。
投資家などが『女性の健康が巨大な未開拓市場だ』と気づいたことが
資金の流入につながっているのです。」