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台湾 メガソーラー建設 生態系に影響も

2021-01-24 07:13:07 | 報道/ニュース

2020年12月24日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


台湾の蔡英文総統は2016年の就任以来
脱原発を掲げ
再生可能エネルギーへの転換を積極的に推し進めている。
特に力を入れているのが太陽光発電で
「メガソーラー」と呼ばれる大規模な太陽光発電所が続々と作られている。
環境に優しいはずのこの太陽光発電だが
一部の地域では生態系や環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている。

台南市にある台湾最大級のメガソーラー。
214ヘクタール
サッカーコートが300面とれる広さに46万枚を超える太陽光パネルが敷き詰められている。
2020年9月から試運転を開始していて
電力会社によると
将来本格的に稼働すれば
5万~6万世帯分の年間消費電力を賄えるという。
かつてこの地域一帯には塩田が広がっていたが
天日で乾かす塩づくりは産業として成り立たなくなり
今世紀の初めにすべての塩田が廃止された。
あとに残された広大な土地はこれといった使い道がなかったが
当局の新しいエネルギー政策により一気に脚光を浴びることになった。
(台湾電力 経理)
「塩田があった場所なので日差しがたくさん降り注ぎます。
 太陽光発電所の建設で荒れ果てた土地を活用できます。」
しかし塩田の跡地を先に利用していた生き物がいる。
クロツラヘラサギである。
東アジアに4,800羽ほどしか確認されていない希少な鳥で絶滅のおそれがある。
全体の半数以上が台湾で冬を越し
このあたりの湿地だけで400羽前後飛来する。
ここで保護活動を続けている台湾クロヘラサギ保護学会の陳さん。
日本など各国の保護団体と連絡を取りながら個体数の増減を毎年観察している。
陳さんによると
今シーズン初めの9月下旬~10月上旬にかけて飛来したクロツラヘラサギの数は
去年の同じ時期より大幅に減った。
ここ1か月ほどは平年並みの数に戻ったが
以前は3か所に分かれてエサを捕っていたクロツラヘラサギが
今はほぼ1か所に集中しているという。
メガソーラーの建設が関係しているのではないかと推測している。
(台湾クロツラヘラサギ保護学会理事 陳さん)
「鳥は飛来する場所に変化がない限り毎年そこにやってきます。
 太陽光パネルがもっと増えればエサが減り鳥の数も減るでしょう。」
メガソーラーの間近にある頂山里という集落。
塩田が閉鎖された後は目立った産業がなく
若い世代を中心に人口が流出している。
一方 湿地には今の季節クロツラヘラサギの他にもいろいろな野鳥が集まってきて
その姿をカメラにおさめようとする人が少なくない。
集落のトップである里長の陳さん。
自然豊かなふるさとが無機質な太陽光パネルで覆われることにが違和感をおぼえている。
メガソーラーをこれ以上増やすよりも
渡り鳥を生かす方が自地元のためにもなるのではないかと考えている。
(頂山里 里長 陳さん)
「製塩をやめたあと雇用機会が全くなくなりました。
 もし現状を維持できれば
 エコ観光に活路を見出せるかもしれません。」

台湾当局が策定した計画では
2025年の太陽光発電の設備容量を2,000万kwになっているが
業界関係者や専門家からは野心的な目標だという声が聞かれる。
つまり高い目標だということである。
2020年末までに6050万kwに達するはずだったが
当局はこれが2021年前半まで遅れることを認めた。
また計画では当初2,000万kwの内訳は
太陽光パネルを地面の近くに設置する地上型が1,700万kw
建物の屋上に設置する屋上型が300万kwとなっていたが
現在は修正されていて
地上型が1,400万kw
屋上型が600万kwとなっている。
地上型は立地によっては農業や生態系に影響への影響が懸念されて
思ったほど簡単ではなかったようである。
(経済部エネルギー局 李副局長
「目標への道筋を変えないというわけではありません。
 環境も変化しますし
 実際にやってみないとどんな困難があるか分からないからです。」
台湾では一部の例外を除いて太陽光発電所の建設を前に環境アセスメントの必要がない。
このことが各地で住民や環境保護団体との対立につながった要因の1つだと言える。
メガソーラーの近くにある別の塩田の跡地でも
野生生物の保護を担当する部門が生態系が影響を受ける恐れが高いという線引きをしているにもかかわらず
エネルギー局は太陽光発電所の建設計画の申請を受け付けていた。
この計画は結局2020年11月に退けられたが
住民たちが不信感を抱いても不思議ではない。
エネルギー局は
漁業に影響が出る可能性がある水面での太陽光発電所の計画について
地元の住民から意見を聞いたか
野生動物の保護区などに面していないかといったチェックリストを作って
民間の専門家を交えた会議で審査する制度を作った。
一歩前進と言えるが
こうした審査に透明性を持たせて
影響を長期的に検証できるようにしていくことが課題となる。

 

 

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